業務プロセスとは?改善の手順やアイデア・成功のためのポイントを解説!

生産性向上、業務効率化を遂げる手段として業務プロセスの改善に取り組む企業が増えています。今回は、業務プロセスの基本的な意味から、業務プロセスの改善が重要な理由、改善の流れや成功に導くポイントまで詳しく解説します。業務プロセスの改善に成功した企業の事例についても紹介しますので、ぜひ目を通してみてください。

 

業務プロセスとは

業務プロセスとは、端的にいうと「日常的に行われる業務の流れ」を意味します。

 

通常、企業は、営利に関わる業務、会社の基盤を支える業務など、さまざまな業務が関わり合うことで成り立っています。一般的に、直接企業の営利を生み出す業務は製造部門や営業部門ですが、製造や営業を成り立たせるには、人事や総務、経理など企業全体をサポートする業務が不可欠です。

 

つまり、業務プロセスとは、企業内における業務の組み合わせや連なりと、業務による営利獲得までの流れを表す言葉であるといえます。

 

業務フローとの違い

業務プロセスと似た言葉に「業務フロー」があります。業務プロセスと業務フローは、基本的には同じ概念とみなされるケースが多いですが、以下のような細かな違いもあります。

 

  • 業務プロセス:営利獲得までの業務の流れ
  • 業務フロー:業務プロセスを構成するそれぞれの作業がどのような順番で流れているか

 

例えば、製造業であれば、「各部品がどのような順に組み立てられ、どの工程でどのような作業が行われるか」を表すのが業務フロー、「部品の調達から製品の販売までの全体の流れ」を表すのが業務プロセスとなります。

 

業務プロセスの改善が重要な理由

業務プロセスの改善は主に以下のような点を目的に行われます。

 

  • 業務の属人化、複雑化、ブラックボックス化の解消
  • 業務にかかるコストや時間、人員の最適化
  • 業務の無理、無駄、ムラの削減

 

業務プロセスを可視化し、問題や課題が発生しているプロセスの改善に取り組むことで、業務効率化や生産性の向上が見込めます。

 

また、業務プロセスを可視化することで、業務上発生する可能性のあるリスクを事前に把握できます。非効率な業務による、品質低下や従業員のモチベーション低下、怪我など、起こり得るリスクを事前に防ぐためにも、業務プロセスの改善は企業にとって重要な取り組みといえます。

 

業務プロセス改善の流れ

業務プロセスの改善は一般的に以下のような手順で行われます。

 

  1. 業務プロセスの可視化
  2. 課題を明確にする
  3. 優先順位をつける
  4. 改善策を決める
  5. 改善策を実行し、効果を検証する

 

それぞれのステップについて詳しくみていきましょう。

 

業務プロセスの可視化

業務プロセスの改善を適切に行うためには、まず業務プロセスを可視化し、現在行っている全ての作業を把握する必要があります。

 

業務プロセスの可視化を行う際は、フローチャートや業務フローなどの図表を用いてまとめるのがおすすめです。長方形や楕円などの図と矢印を組み合わせて作成することで、業務の流れがわかりやすくなります。フローチャートを作成すれば、業務全体の流れが視覚的に把握しやすく、業務における課題や問題点も見つけやすくなります。

 

課題を明確にする

可視化された業務プロセスをもとに、業務における課題や問題点を洗い出していきます。洗い出しの際は、業務の「ムリ・ムダ・ムラ」に着目すると、問題点や課題が明確化しやすくなります。

 

また、課題や問題点は具体的であるほどその後の改善策が立てやすくなります。そのため、業務プロセスのどこに課題があるのか、細かく洗い出すのがおすすめです。

 

優先順位をつける

課題や問題点が明らかになったら、どこから改善に着手するか優先順位をつけていきます。全ての課題や問題を一気に解決するのは難しいため、優先順位をつけ、一つずつ改善に取り組むことが重要です。

 

優先順位は、問題の深刻度、重要度、緊急度などを考慮して決定すると効率的に業務プロセスの改善が進みます。

 

改善策を決める

優先的に取り組むべき課題、問題が決まったら、それに対する改善策を決めます。改善策を決める際は、なんのために業務プロセスの改善を行うのかを常に意識すると、ズレやブレのない施策が浮かびやすくなります。

 

また、改善策を決めると同時に期日と目標の設定も行っておきましょう。目標には、定性的なものだけでなく、定量的な目標を設定するのがおすすめです。具体的な数値を決めておくことで、改善策実行後の効果測定がしやすくなります。

 

改善策を実行し、効果を検証する

改善策が決定したら、実際に運用を開始し、効果を検証していきます。改善策に効果が見られた場合は、改善した業務をそのまま通常業務として運用していきます。反対に、トラブルや問題が発生したり、思うような効果が得られなかったりした場合は、修正や見直しを行いながら、業務プロセスをより適切な形へ改善していきましょう。

 

業務プロセスの改善は一朝一夕にできるものではありません。問題や課題の深刻度、改善に取り組む規模にもよりますが、改善までに数か月〜数年と長い時間がかかるケースも多くあります。短期間で効果や成果が出ないからといって慌てず、PDCAサイクルを回しながら長期的な視点で取り組むことが重要です。

 

業務プロセスの改善を行う際のポイント

業務プロセスの改善を行う際は、特に以下のポイントを意識すると効率的、効果的に取り組みが進みやすくなります。

 

  • 改善後も継続して運用する
  • 現場のフォローを徹底する
  •  QCDを意識する

 

それぞれのポイントについて詳しく確認していきましょう。

 

改善後も継続して運用する

業務プロセスの改善は一度実行したら終わりではなく、継続して取り組むことが重要です。改善策がうまくいかなかった場合はもちろん、改善策の実行により効果が上がった場合でも、定期的に振り返りや見直しを行い、業務プロセスに問題がないか確認を行いましょう。

 

改善策の立案、実行、効果測定、振り返りを繰り返し行うことが、業務プロセス改善成功の大きなポイントとなります。

 

現場のフォローを徹底する

業務プロセスの改善には、現場の従業員の協力が欠かせません。そのため、改善策の検討時や運用時には、現場へのフォローを丁寧に行いましょう。

 

現場への説明やフォローがないまま、トップダウンで業務プロセスの改善を行ってしまうと、現場から反発が起きたり、業務の混乱を招いたりする可能性が高くなります。そのような事態を防ぐためにも、なぜ業務プロセスの改善を行うのか、改善を行うことでどのような成果や効果が見込めるかなど、事前に現場の従業員へ説明し、理解を求めましょう。

 

また、運用開始後も現場から意見やフィードバックをもらいながら、継続的な改善に取り組んでいくことが重要です。

 

QCDを意識する

QCDは、Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)の頭文字を組み合わせた言葉で、モノやサービスを提供し利益をあげるために重要な要素を表します。

 

業務プロセスの改善を行う際は、改善の目的をしっかりと定めつつ、QCDのバランスを意識しながら取り組みを進めていくことが重要です。

 

業務プロセスの改善に役立つアイデア

業務プロセスの改善に役立つアイデアにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、「業務の自動化」「外部委託サービスの活用」の2つについて解説します。

 

業務の自動化

手間のかかる業務を自動化することで、業務プロセスが劇的に改善するケースも多くあります。自動化ツールにはさまざまなものがありますが、代表的なものとして「RPA」と「RFID」が挙げられます。

 

RPAは「Robotic Process Automation」の略称で、コンピュータ上で行われる業務プロセスの自動化技術を意味します。データの登録や転記、システム管理、Webからの情報収集、同一性チェックなどの定型業務の自動化を得意としており、あらかじめ設定したルールに従い、ロボットシステムが業務を遂行します。人間が行うよりも、短時間でミスなく作業できるため、生産性の向上や業務効率化が期待できます。

 

RFIDは「Radio-frequency identifier」の略称で、無線通信を用いて情報の読み取りや書き込みを行う技術を指します。RFIDは主に在庫管理、資産管理などに活用されています。人手も時間もかかる物品管理をRFIDで省人化できるとして、アパレルや製造業、医療や建設現場など、幅広い業界で活用されています。

 

RPA、RFIDについてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご確認ください。

関連記事:RPAを導入して業務効率化した成功事例&おすすめソフト13選

関連記事:【更新】RFIDとは?仕組みや特徴、最新の活用事例をわかりやすく解説!

 

外部委託サービスの活用

業務内容によっては、アウトソーシングやBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)といった外部委託サービスの活用が有効なケースもあります。アウトソーシングとBPOの主な特徴や違いは以下の通りです。

 

  • アウトソーシング:自社業務の一部を切り出し、外部に委託すること
  • BPO:企業の業務プロセスを一括して外部に委託すること

 

ノンコア業務や定型業務、間接部門業務、専門性の高い業務などの一部または全てを外部に委託することで、人材、時間、資金といった社内の経営資源をコア業務に集中的に投入できるようになります。

 

特に、BPOの場合、一部業務の効率化だけでなく、業務内容の見直しや標準化、業務プロセス全体の改善まで一括して任せられます。業務プロセスの改善を行いたいが、自社だけ取り組むには限界がある、改善に着手したものの、思うような結果が出ないなどの悩みを抱えている方はBPOの活用を検討するのもおすすめです。

 

業務プロセス改善の成功事例

 

実際に業務プロセスの改善に取り組んだ企業は、どのような目的・方法で、どのような成果をあげたのでしょうか。ここからは、業務プロセスの改善に成功した企業の事例を紹介します。

ANA

デジタル機器の導入により、ペーパーレス化、業務効率化に成功したANAの事例を紹介します。

 

ANAは、サービス品質向上、業務改革のため、グループの全客室乗務員約6000名にiPadの配布を行いました。

 

iPad導入とともに、各種業務マニュアルの電子化を推進。客室乗務員はいつでもどこでも最新のマニュアルの閲覧が可能となり、乗務前の準備や、業務知識の習得が円滑に行えるようになりました。また、ペーパーレス化が進んだことで、紙や印刷にかかるコストが削減され、マニュアルの更新、差し替えも容易になりました。

 

さらに、教育訓練にiPadによる自主学習形式を取り入れることで、訓練期間の短縮を実現。音声や動画を活用した教育教材を使うことで、乗務習熟の早期化や乗務員のスキル向上に繋がりました。

 

ネスレ日本

Iotシステムの導入により、物流課題の解決、業務の効率化を実現したネスレ日本の事例を紹介します。

 

ネスレ日本の国内生産拠点の一つである島田工場では、積み込み待ちのトラックの長時間待機が課題とされていました。長い待機時間が発生する主な原因は、以下の三点と考えられていました。

 

  • トラックの配送先が工場に到着するまでわからない
  • 配送先がわからないため、事前に出荷準備ができない
  • トラック到着後に出荷作業を行うため相応の時間がかかる

 

待機時間発生の原因となる業務プロセスを改善するため、ネスレ日本はビーコン技術を活用したIotシステムの導入を決定しました。

 

Iotシステムを活用し、トラックが待機スペースに到着した時点で、工場へ情報が共有される仕組みを構築。これにより、これまで工場到着時までわからなかったトラックの配送先が事前に把握できるようになりました。出荷作業がスムーズに行えるようになったことで、トラックの待機時間は3割削減され、業務効率化、生産性の向上に繋がりました。

 

IoTについてより詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

関連記事:IoTとは?IoTの最新動向と活用事例をわかりやすく解説

 

東日本旅客鉄道株式会社

RFIDの活用により、業務プロセスの自動化・デジタル化に成功した東日本旅客鉄道株式会社の事例を紹介します。

 

東日本旅客鉄道横浜支社の管理倉庫では、物品、資料などの保管物が、紙の帳票により管理されていました。棚卸や出庫の際は、人が目視で、保管物の名称や数量、保管期限などの確認を行う必要があるため、多大な業務工数を要していました。

 

工数のかかるアナログ管理からの脱却、全体的な業務工数の削減を行うため、同社が導入したのがRFIDサービスです。今までエクセルで作成していた保管物情報の帳票をRFIDタグに置き換え、保管物のロケーション管理、物品の位置特定、出庫・廃棄業務や棚卸作業のデジタル化、自動化を実施しました。

 

RFIDサービス導入後は、従来の管理体制でも重要視されていた厳密さや正確さを保ちながら、入出庫作業で80%、棚卸作業で90%以上という大幅な業務工数削減が実現しました。業務工数の削減だけでなく、属人的なオペレーションミスの懸念がなくなった点、倉庫スペースの削減の繋がった点も、RFID導入の大きな成果といえます。

 

東日本旅客鉄道株式会社の事例についてより詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

関連記事:【東日本旅客鉄道株式会社】入出庫/棚卸し/探索の作業時間の60~90%を削減!

 

まとめ

慢性的な人材不足や働き方の多様化に対応するため、業務プロセス改善の必要性は今後ますます高くなるでしょう。

 

業務プロセスの改善を円滑に行うためには、業務の現状を適切に把握し、優先順位をつけて取り組むことが重要です。また、現場への説明やフォローを十分に行い、従業員の積極的な協力を得ること大切なポイントです。

 

近年では、業務プロセス改善に役立つサービスやツールも数多く誕生しています。自社内だけでは業務プロセスの改善が進まない、思うような成果が出ない場合は、外部のサービスやツールの導入を検討するのもおすすめです。