IoTとは?IoTの最新動向と活用事例をわかりやすく解説

  • 3月 3, 2020
  • IoT
IoT

近年、「IoT」という言葉を、業界に詳しくなくとも、一度は耳にした経験が誰しもあるのではないでしょうか?さらに、2020年から、日本で5G「第5世代移動通信システム」が提供開始される背景もあり、私達の身近な暮らしの中でも徐々に活用が広がり始めています。

しかし、「IoT」によって、実際どのように私たちの暮らしが変化するのか?また、自社のビジネスに対して、どのように活用していくべきか?など、ハッキリと答えられる人は意外にも少ないのではないでしょうか?

そこで本稿では、

  • IoTとは何か
  • IoTの市場規模や活用事例
  • AI/ブロックチェーン

などの最先端技術との組合わせに触れながら、最新動向を分かりやすく解説します。

IoTとは

IoT(Internet of Things)は、「モノのインターネット」という意味で使われています。従来のインターネットは、コンピューター同士をネットワーク間でつなげる技術でした。対して、IoTは、コンピューターに留まらず、あらゆるモノをネットワークでつながる技術を指します。

IoTの構成要素

IoTは、主に以下の3つの構成要素から成り立ちます。

モノに取り付けたセンサーで情報を収集
収集したデータを一か所に集約
集約したデータを解析

順番に見ていきましょう。

①モノに取り付けたセンサーで情報を収集

身近な例でいうと、商品の売れ行き、エアコンの使用量、ウェアラブル端末からのバイタルデータなど、モノに取り付けたセンサーによってデータを収集します。

普段使っているスマートフォンにも実はセンサーが搭載されています。このセンサーの機能によって「GPS機能を利用した経路案内」、「光を検知して画面の明るさを自動調節」、「Suicaなどの端末決済」などが利用可能になります。

②収集したデータを一か所に集約

ネットワークに接続されたセンサーで収集したデータは、クラウド上に集約されます。今後、IoTの普及が進むにつれてあらゆるモノ同士が繋がり、通信量が増えます。

通信速度の遅延を防止するため、センサーで収集したデータをクラウドに送る前に事前に処理(エッジコンピューティング)し、負荷を分散する仕組みも活用されます。

③集約したデータを解析

集約したデータを解析することで、車両の位置、河川の水位、建築物の劣化状況など、様々なモノの状態を定量化し、必要なアクションにつなげます。

膨大なデータを処理するため、迅速な解析にはサーバーのデータ処理性能がカギを握ります。将来的にはスーパーコンピュータの処理性能をはるかに凌ぐと言われる「量子コンピュータ」が実用化されると期待されています。

IoTの市場規模

米調査会社IDCの調査(※)では、国内IoT市場におけるユーザー支出額について、2023年までに年間平均13.3%で成長し、市場規模は11兆7,915億円に達すると予想されています。

日本でのIoT支出額を産業分野別に見ると、①製造/資源(12.6%)、②公共/インフラ(10.3%)、③個人消費者(8.8%)の順番で、この傾向は少なくとも2023年まで維持される見通しです。製造業がIoT市場をけん引し、他業界への普及に伴ってIoTの市場が拡大を続ける流れとなるでしょう。

(※)出典:国内IoT市場 ユースケース(用途)別/産業分野別予測を発表

IoT普及のカギ

IoTの普及には、センサーの普及とネットワーク通信がスムーズに行えるインフラが必要です。

そのためには、センサーの低価格化、ネットワーク通信性能の向上、ハード(処理能力)の性能向上など、複数の要素の技術革新が欠かせません。

センサーの低価格

モノに取り付けるセンサーの低価格化は、IoT普及の大きなカギを握っています。センサーが高価であれば、IoTの費用対効果が下がるため、普及の足かせになります。反対に価格が下がれば、普及が加速する要因になるでしょう。

顕著な例では、アパレル業界におけるRFIDタグの普及が挙げられます。これまでRFIDタグは、価格が高価であるために、多くの企業が導入を見送っていました。しかし、ユニクロが全商品にRFIDタグを取り付けるなど、アパレルメーカーによる牽引もあり、10~15年前は1枚数十円だったRFIDタグが、今では1枚3~10円にまで下がりました。価格が下がったことにより、製造業やアパレル業界以外でもRFIDの導入を進める企業が増えています。

RFIDタグ価格の最新動向と導入事例についての詳細は、以下の記事をご覧ください。

→「RFIDタグの価格は1円以下を実現!?気になるタグの最新価格動向と導入事例を徹底分析!

通信性能の向上

IoTでモノがインターネットにつながると、膨大な量のデータのやり取りが発生し、通信が遅くなる、あるいは通信しきれない問題が生じることが懸念されています。

この問題は、次世代通信技術である5Gにより、通信性能が格段に向上することで解決されることが期待されています。5Gは4Gに比べて通信速度は20倍、遅延は10分の1、同時接続は30倍ととなります。多くのモノがつながる多数同時接続が可能になれば、モノ同士が常時、データのやり取りを行えると期待されています。

例えば、IoTの応用が期待されている自動運転では、自動車を追跡する際に大量のデータが発生します。高速通信で位置をリアルタイムに解析できるようになれば、安全性がさらに高まります。「安全な技術」との認識が広まれば、IoTによる自動運転はより身近な技術として、存在感を増していくでしょう

IoTの活用事例

IoTの活用事例として、スマートファクトリー、クロステック技術、RFIDの3つを取り上げます。

順番に見ていきましょう。

スマートファクトリー

スマートファクトリー(Smart Factory)とは、「工場内の機器や設備をネットワークに接続(IoT)し自動化する仕組み」を指します。スマートには、「賢い、すばやい」などの意味があり、「スマート◯◯」とは、IoTを活用した洗練された仕組みを意味します。製造業以外でも、スマート農業」、「スマート家電」などがあり、どのような業界にも造語として使われます。

工場内の生産機器にセンサーを取付け、機器の稼働率や生産状況をリアルタイムに把握する仕組みを構築し、より効率的な稼働を実現します。また、ロボット導入による生産のオートメーション化もスマートファクトリーの一例です。

X-tech(クロステック)

X-tech(クロステック)とは、「様々な業界の境界でテクノロジーをコアに発生する新しいビジネス領域」を意味します

「◯◯テック」はクロステックの一部で、金融(Finance)とテクノロジー(Technology)を掛け合わせたFintech(フィンテック)、医療(Medical)とテクノロジーを掛け合わせたとMedtech(メドテック)などがあります。

【テックの種類】

業界

テック技術名

代表サービス

金融

(Finance)

フィンテック

(Fintech)

端末決済、家計簿サービス、給与計算ソフトなど

不動産

(Real Estate)

リーテック

(REtech)

VRを活用した不動産内見など

医療

(Medical)

メドテック

(MedTech)

薬の飲み忘れを防止する投薬管理、ウェアラブル端末からのバイタルデータ収集など

健康

(Healthcare)

ヘルステック

(HealthTech)

睡眠用ヘッドホン、空気中のウィルスを検知して数値化する空気感染予防システムなど

教育

(Education)

エドテック

(EdTech)

AIを活用した個人別の課題(苦手問題)分析、ロボットによる英会話学習など

人材

(Human Resource)

エイチアールテック

(HRTech)

AIによる採用・人事評価・人材配置など

農業

(Agriculture)

アグリテック

(AgriTech)

ドローンを活用した農薬散布、気象を予測した適切な栽培時期の分析など

政治

(Government)

ガブテック

(GovTech)

オンラインでの各種行政手続き、ブロックチェーンを活用した投票システムなど

法律

(Legal)

リーガルテック

(LegalTech)

弁護士マッチングサービス、オンライン契約など

スポーツ

(Sports)

スポーツテック

(SportsTech)

スポーツ選手の肉体管理、野球:ピッチャーの球種分析、バレーボール:攻撃パターン分析など

ファッション

(Fashion)

ファッシュテック

(FashTech)

在庫分析、オーダーメードスーツ,仮装試着など

コネクテッドヘルスケア

コネクテッドヘルスケアとは、医療・介護・健康などのヘルスケア関連のデータが繋がって有効活用されることで、ヘルスケアの課題解決を目指すものです。

経済産業省が提唱している施策「コネクテッドインダストリーズ(Connected Industries)」を医療分野に置き換えた言葉です。

一例として、認知症患者の徘徊対策があります。無断で外出しないよう常時目が離せない精神的なプレッシャーは、介護疲れを引き起こす原因になるため、解決策が求められてきました。

コネクテッドヘルスケアを活用し、認知症の方にセンサーを取り付けることで、外部からでも「今どこにいるのか?」をスマートフォンなどで常時確認できます。

患者が無断で外出しそうになった際に素早く行動を起こせれば、徘徊(はいかい)のリスクを大幅に軽減できるでしょう。かかりつけの病院との情報共有としても活用できます。

ただし、認知症の症状には個人差がありますので、センサーを取り付けるのは精神的な負荷をかけてしまう場合もありますし、逆に十分ではない解決策の場合もあります。

センサーには「離床センサー」と呼ばれるベットからの起き上がりを検知するタイプや、「体感センサー」と呼ばれる人の動きを細かく検知するタイプまで、様々な商品が開発されていますので、状況に応じたセンサーを選ぶことが大切です。

厚生労働省の試算では「2025年には、65歳以上の5人に1人が認知症患者になる」見込みです。介護にIoTを活用して介護の疲労を少しでも減らせれば、介護問題解決の一助となるでしょう。

RFID

RFID(Radio Frequency Identification)とは、情報が埋め込まれたRFIDタグ(ICタグ)と、近距離無線通信によって情報をやり取りする技術です。周波数帯ごとに様々な活用例があり、例えばUHF帯のRFIDタグであれば、10m以内のモノをハンディリーダーで検知できますので、バックヤードや倉庫での棚卸の時間を大幅に削減できます。

一例として、ユニクロの導入事例があります。ユニクロを利用されている方であれば、無人レジを経験した方もいらっしゃるのではないでしょうか?ユニクロは全商品にRFIDタグを取付けて商品管理を行っています。

商品を精算かごに入れるとタグの情報を精算機が自動一括読取りし、合計金額が表示されます。これにより会計待ちの短縮になり、来店したユーザーの満足度向上につながっています。

詳しく知りたい方は、「RFIDタグを導入したユニクロから学ぶ他業界RFID活用のヒント」をご覧ください。

また、自社の顧客に対して新たなユーザー体験を提供するだけではなく、人材活用にもRFIDは真価を発揮します。働き方改革や人手不足への対応の一環として、RFIDを活用し従業員の負荷を軽減することができれば「主婦の方が、1日3時間だけ働く」「外国人労働者を積極的に配置する」など、フレキシブルな働き方での運営が可能になるでしょう。

生産・販売工程の効率化、人材活用の活性化など、RFIDの活用はビジネスの発展に直結するインパクトを秘めています。RFIDタグの価格は年々下がっており、さらにアパレルを中心に普及が進み、益々価格が下がることが予想されます。

今後、導入を検討する企業にとって追風となる状況が当面の間は続く見込みです。

IoT x AI/ビッグデータ/ブロックチェーンで広がる未来

IoTは様々な技術と組み合わせることで、より大きな力を発揮します。ここでは、特にインパクトが大きい、と期待されている技術との組み合わせをご紹介します。

AI

AIの発展には目覚ましいものがあります。囲碁で世界タイトルを20回以上獲得したイ・セドル棋士は「努力してもAIには勝てない」と引退を表明しました。深層学習の性質があるAIは、パターン化された作業では人よりも優れたパフォーマンスを発揮します。

AIが進化することで、「意思疎通が可能なロボット」が現場に投入される未来がくるかもしれません。受付業務、ヘルプデスク業務、工場の生産など、マニュアルに沿った対応が求められる業務での活躍が期待されています。

さらに、AIとIoTと組み合わせることで、IoTでクラウドに集まった大量のデータをAIを使って解析できるようになります。

問い合わせ件数や内容、対応完了状況などのロボットの処理状況をタイムリーに把握することで、よりスピーディーなビジネス展開が可能になるでしょう

ビッグデータ

IoTで収集した膨大なデータは「ビッグデータ」と呼ばれます。

ビックデータの活用例として「病気の診断」があります。どの医療機関でも誤診を防ぐために細心の注意を払っていますが、誤診は完全にはなくならいでしょう。膨大な数の患者や検体を目にする医師は、その日の体調などから診断の見落としが無いとは言い切れません。

例えば、インフルエンザの検査結果は試薬反応ですぐに分かります。しかし、がんや一般的な疾患の特定には検査機関で検査データを解析し、数日間の時間が掛かります。明らかな陽性反応やレントゲンの分析は見落としや誤診が少ないと考えられますが、反応が弱い場合には正確な診断が難しいケースもあります。

検体や症例のビッグデータを活用することで、病名や医師の経験に左右されやすい「病名と疑わしい症状」をより高い精度で導き出せると期待されています。検査結果はあくまでも確率ですから、比較データが多ければその分診断の精度が向上し、結果として診断の見落としを防ぐことにつながるでしょう。

検体データは電子カルテとの連携が可能なので、将来は電子カルテの機能の一部として「病気の診断機能」が搭載されるかもしれません。AIによるレントゲンなどの画像解析も研究が進んでいて、画像データの処理にも注目が集まっています。AIと医師のダブルチェックで診断すれば、診断の精度は間違いなく向上するでしょう。重い病気ほど早期の正確な診断が大切なため、実現が望まれている分野です。

ただし、医療のビッグデータは患者の個人情報を含むうえに、本人や家族の意向などから「患者や家族にはあえて知らせない」データもありますので、取扱いには十分な注意が必要です。また、データ漏えい対策などセキュリティには万全の対策が求められます。

IoTとビッグデータの関係性についての基礎知識や活用事例を、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

→「IoTとビッグデータの関係性とは?目的別の活用事例4選をご紹介!!

ブロックチェーン

ブロックチェーンは、ビットコインなどの仮想通貨や、銀行(メガバンク)の独自のデジタル通貨でも採用されている基盤技術です。ブロックチェーンを活用した行政運営や選挙投票など、世界各国での応用事例が豊富にあります。

日本では、仮想通貨の熱が冷めてしまったことにより導入が遅れていますが、ブロックチェーンはインターネットに次ぐ技術革新と言われており、採用する企業が増えていくことが予想されています。

ブロックチェーンは、セキュリティに優れ、データの改ざんが事実上不可能です。例えば、製造業にブロックチェーンを導入することで「データの改ざんができない」検品が可能になります。自動車工場の検査データの改ざん、食品工場の賞味期限の改ざんなどのニュースはいつの時代でも目にします。

これは、人手を介した管理であるために起きるもので、ブロックチェーンで検品工程を管理すれば防げると言われています。ブロックチェーンは複数の個々のパソコン(ノード)にデータを保持する性質のため、全ての端末が破棄されない限り、履歴は消えません。トレーサビリティの透明性確保に適した技術と言えます。

IoTとブロックチェーンを組み合わせることで、セキュリティ・改ざん対策・トレーサビリティに優れたIoT環境を構築できるでしょう。

まとめ

IoTは豊富な活用事例があり、ビジネスを加速する可能性を秘めています。IoT普及のカギを握っている通信技術やセンサーの低価格化は、5Gの普及に伴って着実に実現していく見込みです。また、AI・ビッグデータ・ブロックチェーンなどの最新技術とIoTを組み合わせることで、よりセキュアで属人性を排除したIoT基盤を構築できます。

2025年には「団塊の世代」と呼ばれる世代が75歳以上の後期高齢者になることで、働く環境に大きな変化が出ることが予測されます。多くの企業が直面するであろう「人手不足」や「作業効率の向上」に対応するため、IoTの活用を検討してみてはいかがでしょうか?