業務改善提案とは?提案書作成の方法やポイントを解説

業務改善を効果的、効率的に行うためには、業務の現状や問題点を把握し、的確な改善策の提案を行うことが重要です。しかし、改善点は明確になっているものの提案方法がわからない、業務改善提案書になにを記載すればよいかわからないという方は多いかもしれません。

 

そこで今回は、そもそも業務改善提案とはどのようなものかという点から、業務改善提案書に記載すべき項目、提案書作成時に気をつけたいポイントまで詳しく解説します。

業務改善提案の目的とメリット

業務改善提案とは、その名の通り、業務改善につながる取り組みや施策を決定権者(上司や経営陣など)に提案することを指します。一般的に、業務における問題点やその解決策をまとめた提案書(報告書)を作成し、提案を行う方法が多くとられています。

 

業務改善提案を行う目的・メリットとしては、大きく以下の2点が挙げられます。

  • 業務改善をスムーズに進めるため
  • 従業員の意識改革

 

それぞれについて、詳しく確認していきましょう。

 

業務改善をスムーズに進めるため

業務改善提案は主に、業務改善の必要性を訴え、改善に向けた取り組みをスムーズに進めるために行われます。業務の現状や問題・課題を可視化し、改善策や改善活動を行うメリットを提示することで、提案を受けた上司や経営層はもちろん、関係者や関係部署からの理解を得やすくします。

 

業務改善提案により改善活動が効率的に進めば、組織全体の生産性向上、従業員のモチベーションアップ、労働環境改善など、業務改善による成果や効果も得やすくなります。

 

従業員の意識改革

業務改善提案では、従業員自らが業務の見直しや問題点の抽出、改善策の思案を行います。そのため、日頃から問題意識を持って業務に取り組んでいないと、問題がどこにあるかわからない、本質的な改善につながる策が思いつかないなど、満足な提案ができない可能性が高くなります。

 

近年では、主体的に業務に取り組む従業員の増加や仕事に対する意識変革、意欲向上を期待して、従業員に業務改善提案を求める企業も増えつつあります。

 

業務改善提案の方法・手順

業務改善提案は一般的に以下の手順で行います。

 

 ① 業務を可視化する

 ② 課題を明確化する

 ③ 取り組む優先順位を決める

 ④ 改善策を考案する

 ⑤ 業務改善提案書を作成する

 

それぞれ詳しく確認していきましょう。

①業務を可視化する

まずは、現在行っている業務内容や業務プロセスの可視化を行います。可視化を行うことで、属人化・複雑化した業務が明らかになり、課題点や問題点が見つけやすくなります。

 

業務の可視化は、業務プロセスをフローチャート化して行うのが一般的です。業務の流れだけでなく、担当者や関係する部署などの情報も併せて記載すると、業務内容がより正確に把握できます。

 

②課題を明確化する

業務の現状把握ができたら、次は業務が抱える課題や問題を洗い出します。課題や問題を見つけ出す際は、業務に「ムダ」「ムリ」「ムラ」がないかに着目するとよいでしょう。業務における課題・問題を明確化しておくことで、改善策や解決策が立てやすくなります。

 

③取り組む優先順位を決める

業務上の課題・問題が複数ある場合は、どこから取り組むか優先順位を決めます。重要度や緊急度の高いもの、投資対効果の高いものから優先的に取り組むと、業務改善は効果的、効率的に進みます。

 

優先順位の付け方に迷った場合は、「時間管理のマトリクス」などのフレームワークを活用するのもおすすめです。

 

④改善策を考案する

優先順位をもとに課題や問題に対する改善策を考察していきます。改善策を考える際は、「改善の8原則」に着目するとよいでしょう。

 

  • 廃止:なくせる業務はないか
  • 削減:減らせる業務はないか
  • 容易化:より簡単にできる方法はないか
  • 標準化:ルール化できないか
  • 計画化:計画的に進める方法はないか
  • 同期化:まとめられる業務はないか
  • 分担検討:分担・分割できる業務はないか
  • 機械化:システムやアウトソーシングなどを活用し自動化できないか

 

改善策が出てきたら、実行に必要なリソースや期待できる効果、実現可能性なども併せて検討しておくと、業務改善提案書の作成がしやすくなります。

 

⑤業務改善提案書を作成する

業務における課題・問題や具体的な改善策がまとまったら、業務改善提案書を作成します。

 

業務改善提案書は、業務改善の必要性を訴え、改善案の実行を承認してもらうために重要な書類です。業務の現状、課題、改善策等の必要事項をA4用紙1枚程度に簡潔にまとめ作成しましょう。

 

業務改善提案書の書き方

説得力のある業務改善提案書を作成するためには、要点や必要な情報をしっかりと記載する必要があります。ここからは、業務提案書に記載すべき内容や書き方のポイントについて解説します。

 

全体概要

提案書を読んだ人が、一目で提案内容を把握できるよう最初に概要を記載します。業務改善を実施するために必要な情報と改善案の要点を簡潔にまとめるのがポイントです。

 

書き方に迷った場合は、5W1H(いつ、どの範囲で、誰が、どの業務を、なぜ、どうやって)を意識し、記載するのがおすすめです。

 

業務の現状

業務の現状を説明し、業務改善の必要性を伝えます。文章だけでなく、図や表を用いたり、具体的な数値を示したりして、客観的かつ具体的に現状を記載すると効果的です。

 

課題・問題点

現在行っている業務の課題や問題点について記載します。課題や問題点がわかりやすく説明できれば、提案書の読み手に業務改善の必要性をより強く訴えられます。

 

課題や問題点を伝える際は、「ミスが増えている」「長時間残業が発生している」などの漠然とした表現ではなく、以下のように数値を盛り込んだ具体的な記載を心がけましょう。

 

  • 〜が原因で生じた納期遅れが月⚪︎回の頻度で起きている
  • 〜が原因で起きた入力ミスのフォローに月⚪︎時間の工数がかかっている

 

改善策

前述した課題・問題点に、どのようなアプローチで改善に取り組んでいくかを記載します。改善策には、「〜したい」といった個人的な意見や理想ではなく、効果や成果が期待できる具体的な案を記載することが重要です。

 

予想される効果

改善策を講じた場合に予想される効果や期待できるメリットについて記載します。生産性や利益向上、コスト削減等、改善策の実行が企業にとって有益である点をしっかり伝えましょう。

 

効果やメリットを伝える際は、漠然とした表現ではなく、具体的な数値を盛り込み定量的な記載を心がけましょう。

 

必要なリソース

改善策を行うにあたり必要となる社内リソースについて記載します。「人員」「コスト」「時間」がどの程度かかるか、具体的な数値を挙げて提案書を作成しましょう。

 

一般的に、費用対効果の高い提案ほど、経営層の理解が得やすい傾向があります。そのため、多大なコストや時間がかかる、多くの人的リソースを割く必要があるなど、実現性に乏しい提案や費用に見合う効果が期待できない提案は採用されにくいといえます。

 

提案が却下された場合は、改善策に優先順位をつけ、実現性を高めた上で再度提案を行いましょう。

 

実施スケジュール

提案した業務改善策の実施スケジュールを記載します。着手から完了までの具体的な期間に加え、なにがいつまでに完了するかなど、具体的なスケジュールを明記することで、提案の現実味や説得力が増します。

 

想定されるリスク

改善策の実行によりリスクやデメリットが生じる可能性がある場合は、併せて提案書に記載しましょう。マイナス要素も事前に記載しておくことで、トラブルの防止や、読み手が感じる不安や疑問の解消に役立ちます。リスクやデメリットの低減策や回避策も一緒に記載すれば、より説得力のある提案書が完成します。

 

業務改善提案書作成時のポイント

業務改善提案書の作成時にはどのような点に注意すればよいのでしょうか。ここからは、提案書作成時に押さえておきたいポイントを4つ紹介します。

 

目的・ゴールを明確にする

提案の採用可否を決める上司や経営層にとって、業務改善の目的やゴールは提案書の中で最も重要なポイントの一つです。そのため、目的やゴールの設定が曖昧だと、提案の承認や内容の理解を得ることは難しくなります。

 

提案書作成時には、業務改善の目的やゴールを明確に提示した上で、目的達成のための具体的な方法やメリットも併せて伝えると効果的です。

解決手段やリスクを明確にする

提案を採用されたいという想いが強いと、メリットや成果などプラス面ばかりを主張してしまうことがあります。しかし、デメリットやリスクが全く記載されていないと、逆に読み手に不信感や不安を与え、提案に対して懐疑的になる可能性も高くなります。

 

そのため、計画段階で想定できるリスクや、考えられるデメリットを洗い出し、解決手段とともに業務改善提案書に記載するとよいでしょう。具体的な解決手段を事前に明記しておくことで、トラブルが発生しても迅速に対応できる安心感を読み手に与えられます。

 

客観的でわかりやすい記載をする

提案書は読み手を意識し、客観的かつわかりやすい表現を心がけましょう。例えば、読み手の中に詳しい業務内容や業務プロセスを把握していない人がいる場合はより詳しく手順や方法を説明する、課題点や問題点の記載時には主観的な表現を避けるなどが挙げられます。

 

業務に関わっていない人が読んでも、提案の内容や業務改善の必要性がすぐに理解できるよう、専門的な用語は避け、一般的な表現で記載することも重要です。

 

数値を用いて定量的に記載する

業務改善提案書には、コストや時間、人員、工数など数値が記載できる項目が多数あります。このような項目は、具体的な数値を用いた定量的な記載を意識しましょう。

 

具体例として、業務効率化を目的とした提案書に記載された以下の2つの文章を比較してみましょう。

 

 ① この取り組みにより業務効率が飛躍的に向上します。残業時間も減り、人件費の大幅な削減も見込めます。

 ② この取り組みにより業務時間の3割削減が期待できます。残業時間は現状の20時間から10時間まで減り、人件費も2割程度の削減が見込めます。

 

①のように抽象的な表現で記載すると、提案する側と読み手に齟齬が起きる可能性が高くなります。また、改善によるメリットが具体的にイメージしにくく、業務改善の必要性が正しく理解されないリスクもあります。

 

一方、②のように数値を用いてわかりやすく記載すると、読み手に業務改善のメリットが正しく伝わり、説得力も増します。

 

まとめ

業務改善提案は業務改善をスムーズかつ効果的に進めるために欠かせないものです。業務改善提案書には決まった様式はありませんが、必要な項目やポイントを押さえて記載することで、読み手に与える印象や説得力が増します。

 

客観的かつわかりやすい提案書を作成し、業務効率や生産性の向上、労働環境の改善など、企業にメリットをもたらす業務改善を実現させましょう。