ウェアラブルデバイスによって開く製造業の未来! 製造業におけるウェアラブル端末活用事例3選をご紹介

Apple Watchを筆頭に「ウェアラブルデバイス」が随分と身近なものになってきました。

ウェアラブルデバイスは個人での使用に留まることなく、様々なビジネスシーンにおいても、導入が進められています。ドイツの製造業では現在、ウェアラブルデバイスがIoT技術と結びつくことで、大きな変革を迎えています。

本稿では、ウェアラブルデバイスに詳しい人も、そうでない人も知っておくべき「ウェアラブルデバイスが変革をもたらしたビジネスモデルの現在と未来」をご紹介します。

ウェアラブルデバイスとは

ウェアラブルデバイス (Wearable Device)とは、「身に着けられるデバイス」という意味で、服や時計のように常に身に着けて操作するコンピュータを指します。スマートフォンやラップトップPCと異なり、身に着けたまま操作できるため、両手がふさがっている状態でも快適に使用できます。

最もイメージしやすいウェアラブルデバイスの例は「Apple Watch」でしょう。こちらは「時計」の形状をしており、音声認識機能や各種センサーを搭載することで、手を使わず、いつでもどこでも電子デバイスを操作することが可能です。

他にも眼鏡型、耳装着型のようなアクセサリー状のデバイスや、衣服に組み込むタイプのデバイスなど、様々な形状が存在します。

拡大するウェアラブルデバイス市場

「ウェアラブル」という考え方が提唱された当初、医療・ヘルスケア関連の応用展開に大きな期待が集まりました。衣服のように人体と密着しながら快適に使用できる電子デバイスを活用すれば、脈拍や発汗などの身体の情報をモニタリングし、健康管理に役立つと考えられたためです。

現在では、ウェアラブルデバイスの認知度の向上とともに価格も低下し、フィットネスや健康管理に留まらない大衆向け製品となりつつあります。

IT専門調査会社IDCによる調査報告 (03/2020)、「Worldwide Quarterly Wearable Device Tracker 2019Q4」のデータに基づくと、2019年第4四半期 (10~12月)の世界ウェアラブルデバイス出荷台数は、前年同期比82.3%増の1億1,894万台となりました。このうち、耳装着型デバイス(音声アシスタント対応イヤフォン・ヘッドフォンなど)は6,575万台で前年同期比235.1%増と著しい成長を示しました。

参考資料: 2019年第4四半期および2019年通年 世界/国内ウェアラブルデバイス市場規模を発表

ユーザーの使いやすさに配慮し、目的に応じた形状を有することもウェアラブルデバイスの特徴です。今後、耳装着型に限らず、様々な形状のウェアラブルデバイスが開発され、より身近なものになっていくでしょう。

このようなウェアラブルデバイス市場の拡大に伴い、個人向けの用途に限らず、様々なビジネス用途でのウェアラブルデバイスの導入が進められています。

以下ではその事例について紹介します。

ウェアラブルデバイスの活用事例(製造業以外)

ウェアラブルデバイスはスマートフォンに劣らない高い汎用性を持ち、様々なビジネスシーンで活用され、現在も新たな活用方法が模索され続けています。

ヘルスケア

ウェアラブルデバイスの代表的な用途は「健康管理」です。

最新の「AppleWatch 5」は心拍数や脈拍、歩数、移動距離を記録する機能があり、健康管理に役立てることができます。また、転倒を検知する機能によって、1人暮らしの年配者の死亡事故を防ぐことにも貢献します。

参考資料:Apple Watch Series 5

Apple Watchに限らず、医療、介護の様々な場面でウェアラブルデバイスの導入が進められています。健康管理はウェアラブルデバイスの最も得意とするところです。人体の最も近くに置かれる電子デバイスであるからこそ、身体情報を取得するうえで最適です。

上記以外にも、各種センサーを搭載することで、血圧、血糖値、発汗の計測や記録などが可能です。

参考資料:ウェアラブルディバイスでいつでも健康管理-医療への応用-

小売

ウェアラブルデバイスは小売業にも大きな影響を与えました。

その一例が「ウェアラブルPOSシステム」です。

POS (Point Of Sales:販売時点情報管理)システムは購入した商品の商品名、価格、数だけでなく、購入された日付、時間帯、天気など様々な情報を購入時に一括管理するシステムです。

各店舗からの販売情報を本部データベースに取り込み、情報を分析して新たな経営戦略に活かすことができます。コンビニエンスストアに置かれている商品が店舗によって多少異なるのは、POSシステムを活用して、付近に住む顧客情報を収集し、店舗周辺地域毎の顧客ニーズを反映しているためです。

コンビニエンスストアなどのレジは据え置き型のPOSシステムですが、近年アメリカを中心に導入が進められているのが、ウェアラブルPOSシステムです。

店員がウェアラブルPOS端末を常に携帯し、まるでレジを持ち歩くように、接客をしながら会計作業を行うことができます。これにより、レジ待ちを解消し、在庫管理を迅速に行えるようになりました。

参考資料:ウエアラブルPOS導入で店内どこでも決済可能なお店の誕生

衣料レンタル、リネンサプライ

富士通フロンテックのソフトリネンタグは貸衣装やリネン類 (シーツ、枕カバー、タオル)の管理を目的としたウェアラブルデバイスです。

衣服の内側に取り付けて使用する長さ 5 cm ほどの小さな板状タグで、衣服の着用時にも気になりません。RFIDによる無線通信を行い、外部と情報の交換を行います。

最大の特徴は、曲げや伸びに強く、300回の洗濯やドライクリーニングでも破損せずに使用できることです。これにより、何度も洗濯をする衣服やリネン類に取り付けての使用が可能となりました。

リネンサプライ業や衣料レンタル業界では、従来、バーコードによる貸し出し管理と棚卸を行っていたので、作業に人手と時間が必要でした。

RFIDソフトリネンタグは、無線通信技術を用いることによって、「離れた場所から」、「一度にたくさん」の物品の管理を可能にしました。

「商品が今、どこにあって、何回洗濯されたのか」、また、「適切な場所に適切な数を供給できているのか」という情報も、従来より細かく管理できます。結果として、物品管理に必要な人手と時間を減らすことに成功しています。

RFIDタグについて詳しく知りたい方は、以下の記事を、ぜひご覧ください。

RFIDタグの失敗しない選び方〜タグメーカーを一挙紹介〜

参考資料:富士通/洗える「RFIDリネンタグ」累計出荷数が1億3000万枚突破 

参考資料:1億枚のその先へ。UHF帯RFIDリネンタグが創り出す未来

建設業

就業者数が減少し、技術継承が課題となる「土木・建設業」に対し、ウェアラブルデバイスとICTを用いて課題解決を試みた事例です。

エコモット株式会社のウェアラブルカメラ「MET-EYE (メットアイ)」はヘルメットに装着して使用し、作業者目線のリアルタイム映像をモバイルネットワーク経由で遠隔地から閲覧可能にしました。

技術的に未熟な新規就業者の作業行程を熟練者が同じ目線で監督することによって、的確な作業指示や安全指導を行うことが可能です。新規就業者が技術を習得する際の効率や、安全性・生産性の向上が期待されています。

参考資料:ヘルメット装着型ウェアラブルカメラ「MET-EYE (メットアイ)」

ウェアラブルデバイスの活用事例(製造業)

製造業の現場では、ハンズフリーに操作できるというウェアラブルデバイスの特徴は大きな利点となります。ウェアラブルデバイスは「作業の邪魔になる」という実務上の物理的・精神的障壁を取り除き、ICTによる管理体制へのシフトを容易にします

ICTによる管理体制を確立することができれば、企業も、そこで働く人々も、様々な恩恵を受けられます。以下では、ウェアラブルデバイスが近年のICT技術とどのように関わり、どのような変革をもたらしたのか、実際の事例をもとに紹介します。

「ICT」については、下記記事にて詳しく説明していますので、ぜひご覧ください。

「ICT」と「IoT」の違いを徹底解説!総務省が推奨するICT・IoT8分野の活用事例とは?

ドイツ製造現場におけるウェアラブルデバイス導入例

ドイツはウェアラブルデバイスやIoTに早くから注目し、製造業に取り入れてきましたが、背景にはその地理的要因がありました。

水陸共に優れた流通経路を有し、国内よりも労働賃金が安い周辺国が存在するドイツですが、多言語、多民族が入り混じる多文化環境であるため、そのような人材を生かすシステム構築が課題でした。

ドイツの産業を支える高級車の製造にはオーダーメイド部品を1つ1つ組み立てなければならず、これら工程に対応することは熟練工にも困難な作業です。

ドイツはこれら少量多品種、かつ高付加価値の製造現場にウェアラブルデバイスを導入し、課題の解決を試みました。その一例が、「ウェアラブルデバイス」と「AR (拡張現実)」による作業支援です。

複雑な作業工程が必要とされる現場でウェアラブルデバイスにARのナビゲーションを映し出し、その指示に従って作業を進めることで、少しのトレーニングで複雑な作業を行えるようになります。

また、IoTシステムをウェアラブルデバイスに組み込むことで、急なオーダー変更にも対応できるようにしました。作業者の動き、作業の進行度など、大量の情報はAIによって最適化され、更なる業務効率の改善を図りました。

「IoT」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

IoTとは?IoTの最新動向と活用事例をわかりやすく解説

ウェアラブルデバイスは人材を適切に活用し、産業と人材を結びつける役割も担っています。人と機械のコミュニケーションだけでなく、人と人のコミュニケーションを手助けすることもウェアラブルデバイスに期待される役割の1つです。

参考資料:ドイツ事例に学ぶ、製造業企業が注目するウェアラブルの「真の価値」と「使い方」

ウェアラブルRFIDリーダー「TECCO」

株式会社ゴビのウェアラブルRFIDリーダー「TECCO」は、工場などでピッキング作業を補助するために開発されました。

籠手のように手の甲に取り付けるデバイスで、物品運搬の邪魔になりません。各部品の棚に取り付けられたRFIDタグを「TECCO」により瞬時に読み取り、正しい部品かどうかを判断することができます。

誤った部品を選んだ場合、デバイスの振動により使用者に知らせます。スピードを落とすことなく作業を進められ、作業ミスに対する使用者の心理的プレッシャーを軽減します。

バーコードと違い、RFIDタグを用いた場合にはタグの内容を電子的に書き換えられるため、レイアウト変更も棚に貼られたタグを書き換えるだけで対応することができます。

RFIDリーダーの価格や選び方について詳しく知りたい方は、以下の記事を、ぜひご覧ください。

RFIDリーダーの価格や選び方を解説!最新のスマホ搭載型ハンディリーダーを一挙紹介

参考資料:ウェアラブルRFIDリーダー「TECCO」

作業員の健康管理

作業員の健康管理、リスク管理にもウェアラブルデバイスが活用されています。

高温多湿下での作業には熱中症などのリスクが伴い、その対策が課題でした。しかし、単に温度計を携行するだけでは作業者を熱中症から遠ざけることはできません。熱中症の原因となる人体深部の体温は、外気温と必ずしも一致しないからです。

こうした問題を解決するため、ミツフジ (株)と前田建設 (株)は、産業医科大学との共同研究によって、ウェアラブルデバイスを活用した深部体温計測システムを開発しました。注目したのは心拍と深部体温の関係性です。

ウェアラブルデバイスは人体の近くに装着するため、従来より正確な心拍測定が可能です。深部体温の直接測定は困難ですが、心拍の経時変化から深部体温を予測するアルゴリズムを用いることで深部体温の推定を可能としました。

これにより、従来より簡易な測定システムでリスクの軽減に成功しました。ウェアラブルデバイスが可視化できるものは、暑熱リスクに留まりません今後、様々な作業現場におけるリスクを低減する仕組みとして、ウェアラブルデバイスの活用が期待されます。

参考資料:ウェアラブルで暑熱環境のリスクを可視化する新技術を開発~心拍情報で深部体温上昇変化を捉える~

まとめ

ウェアラブルデバイスは様々なビジネスへ浸透し始めました。多くの分野で活用され、また活用が検討されていますが、ハンズフリーに操作ができるというウェアラブルデバイスの特徴は、特に製造業と高い親和性を持ちます

製造業においては、ウェアラブルデバイスの活用により、従来より効率的に人が作業することが可能となりました。

経験の浅いスタッフからもベテランスタッフと同等のアウトプットを引き出すことができ、人材を適切に活かせるポテンシャルを持っています。

IoTと有機的に結びつくことで今後も発展するウェアラブル関連システムは、製造業において無視できないものとなっていくでしょう。