Bluetoothによる位置測位の仕組みをわかりやすく解説-Bluetooth 5.1に追加された方向検知とは-

Bluetoothは、1990年代後半、PCの周辺機器を無線で接続することを目的に開発されました。スマートフォンやウェアラブル機器の普及により、身近な機器の多くが無線で接続されるようになりました。

2019年に発表されたBluetooth 5.1では「方向検知」機能が追加され、ビジネスシーンでの活用が急加速しました。

本稿では、Bluetoothの歴史と最新情報について徹底解説いたします。

Bluetoothのバージョン

Bluetoothの歴史

Bluetoothは1994年にスウェーデンのエリクソンで、乱立した無線通信規格を統合することを目的に開発されました。1998年にはエリクソン、インテル、IBM、ノキア、東芝によって「Bluetooth SIG」が設立され、規格制定に着手することになります。

1999年にはBluetooth規格(バージョン1.0)が発表され、2001年のバージョン1.1をきっかけに普及が開始されました。

Bluetoothのバージョンについて

2020年時点の最新バージョンは5.1です。ここでは1999年の誕生から最新バージョンまでの歴史を、表形式で振り返ります。

バージョン

公開年

特徴

1.0

1999

規格化され一般に公開された最初のバージョン

1.1

2001

普及のきっかけとなったことから、普及バージョンと呼ばれる

1.2

2003

Bluetoothと同じ周波数帯(2.4GHz 帯)を利用する無線LAN(Wi-Fi)との電波干渉対策が盛り込まれ、音質の改善などが図られる

2.0

2004

最大通信速度を3Mbpsに切り替え可能なEDR(Enhanced Data Rate)機能が追加され、大容量データが送信可能になる

2.1

2007

・ペアリング機能を改善し、簡単で高速に接続可能
・近距離無線通信のNFC(Near Field Communication)へ対応
・Sniff Subrating機能が追加され、マウスやキーボードなどのスリープ時間が多い機器のバッテリーを最大5倍になる

3.0

2009

・HS(High Speed)機能をオプションで追加し、最大通信速度が8倍の24Mbpsまで向上
・電力管理機能の改善で、低消費電力化

4.0

2009

Bluetooth Low Energy(BLE)が追加され、EDRと比べ大幅に省電力化することが可能になる

4.1

2013

BLEに携帯電話との電波干渉を抑える技術、直接インターネットに接続できる機能などが追加される

4.2

2014

BLEのアプリケーションスループットが2.5倍の650Kbpsに向上し、IPv6/6LoWPANへ対応可能になる

5.0

2016

・バージョン4.xと比較するとデータ通信速度が2倍、通信範囲が4倍、通信容量が8倍になる
・メッシュネットワークに対応

5.1

2019

方向探知機能が追加される

クラシックとBLE

Bluetooth規格にはバージョン3.x以前のクラシックと、4.x以降に追加されたBLEの2種類があります。それぞれ通信方式が異なるため、互換性はありません。

同時接続デバイス数、通信速度、消費電力の3つに大きな違いがあり、通信頻度の高さを求められないOA周辺機器などにはクラシック、通信頻度が高く消費電力を抑えたいIoTデバイスなどにはBLEが適しています。

Bluetooth 5.0について

Bluetooth 4.0でBLEが登場したのを契機に、あらゆる電子機器にBluetoothが搭載されるようになりました。IoTデバイスの需要に応えるべく、バージョン5.0では前バージョンの4.xと比べ「データ通信速度」「データ通信範囲」「データ容量」が大幅に進化しました。

データ通信速度

前バージョン4.xの1Mbpsから、2倍の2Mbpsになりました。バージョン3.x以前のクラシックでも24Mbpsを実現できましたが、消費電力が高く利用シーンが多くありませんでした。

バージョン5.xとして認証取得する場合、データ通信速度の性能保証は必須ではありません。

データ通信範囲

前バージョン4.xの100mから、4倍の400mとなりました。エラー検知(巡回冗長検査:CRC[Cyclic Redundancy Check])だけではなく、エラー訂正(前方誤り訂正:FEC[Forward Error Correction])に対応したことで、最大距離を大幅に改善しました。

データ容量

前バージョン4.xの31Byteから8倍の255Byteとなりました。ブロードキャスト通信容量(一方向・不特定多数に発信できる情報量)を多く発信できるようになったことがポイントになります。

データ容量は上がりましたが、バージョン1.1から搭載されているA2DP(Advanced Audio Distribution Profile)を使用しているため、オーディオ性能は上がりません。

Bluetooth 5.1について

2019年1月に発表されたバージョン5.1における最大の特徴は「方向検知」機能の追加です。

バージョン5.0までは、信号強度(RSSI)によってデバイス間の距離を検知していました。バージョン5.1の「方向検知」機能でデバイス間の距離と方向による位置計測が実現し、cm精度の測位が可能となりました。

これにより、資産追跡(アセットトラッキング)と屋内測位システムの市場が飛躍的に拡大することが期待されています。

Bluetooth 5.1における方向検知

バージョン5.1では、主に2つの方式(AoA、AoD)で方向検知を行います。2つの方式ともに、複数のアンテナ(アレイアンテナ)を用いて方向検知を行います。ここでは各方式に関する技術概要を説明します。

AoA(Angle of Arrival)による方向検知

信号の受信角度により、発信機の方向を検知します。単一アンテナの発信機からの方向検知信号を、複数のアンテナから構成される受信機で受信します。発信機は設備などに取り付けられ、受信機は天井などに取り付けられます。

発信機と受信機の各アンテナまでの距離が異なることで、発信機と受信機の角度の違いが生じます。受信機は受信した角度の違いから、発信機までの相対的な方向を検知することが可能です。

AoD(Angle of Departure)による方向検知

発信信号の放射角度により、発信機の方向を検知します。複数のアンテナから構成される発信機からの方向検知信号を、単一アンテナの受信機で受信します。発信機は天井などに取り付けられ、受信機はスマートフォンなどのモバイルデバイスを使用します。

発信機と受信機の各アンテナまでの距離が異なることで、発信機と受信機の角度の違いが生じます。受信機は放射された信号から、発信機からの相対的な方向を検知することが可能です。

位置情報サービスQuuppaと導入事例

Bluetoothタグを展開している代表的な会社として、フィンランドのQuuppa社があります。ここでは、Quuppa社の製品である”Quuppa Intelligent Locating System”の導入事例について紹介します。

・三井住友建設のプレキャスト製造工場における導入事例
工場内の設備や従業員にBluetoothタグを装着することで、物や人の動きを把握できるようになりました。例えば全作業工程における部材の移動履歴や、作業員の作業時間を1秒間隔で、50cmの位置精度で自動収集します。

工程毎の品質と製造時間を可視化することで、改善ポイントの抽出に役立てています。

参考資料:プレキャスト製造工場で“Bluetooth”を活用した生産管理システム

・マイアミのニクラウス児童病院での導入事例
病院内の設備や職員にBluetoothタグを装着することで、病院内にある救急カートの位置を把握できます。従来数時間かけていた設備探索を、数分まで削減することができました。

参考資料:「Quuppa社のメッセージ」と「海外での導入事例」

・フィンランドのプロアイスホッケーでの事例
アイスホッケー選手にBluetoothタグを装着することで、選手の位置や動きを可視化しています。位置情報が誤差範囲が50cm〜1mでリアルタイムに取得可能なため、高度な分析が可能です。

参考資料:Quuppa-demo, Finnish Hockey League

まとめ

Bluetoothによる位置情報サービスの活用が、ビジネスシーンで始まりました。消費電力が低く、位置精度が正確なBluetoothはIoT化が進む製造業向きといえるでしょう。

屋内測位技術には、今回ご紹介したBluetooth以外にもRFIDやUWBなどの技術があります。それぞれの屋内測位技術によって、用途の向き不向きがあります。

自社での導入目的に応じて、適した屋内測位技術を選択・検討してはいかがでしょうか。

こちらの記事では、RFIDによる位置特定技術の紹介をしています。ぜひご覧ください。

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