「ICT」と「IoT」の違いを徹底解説!総務省が推奨するICT・IoT8分野の活用事例とは?

  • 4月 16, 2020
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ITは一般的に知られている用語ですが、近年はICTやIoTという用語を見かけるようになりました。ICTやIoTはビジネスにおいて重要性が増しており、総務省は未来投資戦略にてICT・IoT活用を推奨しています。そのため、これらの用語について正しく理解しておくことで、ビジネスチャンスを掴むことも可能です。

本稿では、IT・ICT・IoTの違いから、総務省がICT・IoT活用を推奨する「未来投資戦略2018」の内容についても解説します。ぜひ、今後のビジネスにお役立てください。

IT・ICT・IoTの違いとは

IT以外にも、ICTやIoTという用語を見かける機会は増えましたが、これらの違いは何でしょうか?まずは、3つの用語の違いを分かりやすく解説します。

「IT」は情報通信関連の機器や技術の総称

IT(Information Technology)は「情報技術」のことです。パソコンやスマートフォンの「ハードウェア」、OSやアプリの「ソフトウェア」、5GやWi-Fiの「通信技術」の3つの要素で構成されています。

1990年代後半からPCの普及が加速し、複雑で高度な作業や大量の情報交換が容易になりました。2000年以降にブロードバンド(※1)や携帯電話が普及していくと同時にIT基本法(※2)も成立し、IT革命の時代を迎えたため、多くの人に認知されている用語です。

(※1)ブロードバンド:「ブロードバンドネットワーク」の略。大容量通信ができるインターネットサービスを指します。
(※2)IT基本法:2001年1月6日から施行されている「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」のこと。 すべての国民が安心してITの成果を享受できる高度ネットワーク社会の確立を目指し、理念・方針が定められた。

「ICT」はITを使用した情報伝達技術

ICT(Information and Communication Technology)は「情報伝達技術」と訳されます。ITを活用し「人と人」「人とモノ」のコミュニケーションを協調するものです。

ICTはIT技術の活用方法を示す言葉として使用されることもあります。2019年4月には働き方改革法案が施行され、それに伴って、テレワークを実施する企業も出てきており、ICTは大きな注目を集めています。

「IoT」はヒト・モノ同士をネットワークで接続する仕組みや技術

IoT(Internet of Things)は、あらゆるヒト・モノ同士をネットワークで接続する技術のことです。2000年代後半にスマートフォンやタブレット端末が登場して以降、ネットワークに接続されるデバイスの裾野は広がりました。

動画配信サービスを受信して閲覧できるTV、レシピ提案をしてくれる冷蔵庫などの提案型家電製品がムーブメントを起こしていますが、これらが「IoT」です。今後、IoTの需要は拡大していき、家電製品だけではなく、あらゆるモノがネットワークに接続される社会が到来すると予測されています。

以下の記事でより詳しくIoTについて解説していますので、本稿とあわせてご確認ください。

IoTとは?IoTの最新動向と活用事例をわかりやすく解説

IT・ICT・IoTの活用事例

IT・ICT・IoTの意味は理解できたと思いますが、各々の活用事例についても見ていきましょう。

ITの活用事例

観光業や飲食業では、インバウンドビジネスに向けたキャッシュレス化の対応に追われています。

政府は「観光ビジョン実現プログラム2019」を策定しており、2020年訪日外国人旅行者数4,000万人、消費額8兆円の目標を掲げていますが、この目標を達成するためには、訪日外国人旅行者がストレスなく観光ができ、消費機会を逸失しない工夫が必要です。

そのため、様々な企業で決済機器や翻訳ツールなどが導入され始めていますが、これらの機器を「IT」機器といいます

参考資料:国土交通省「観光ビジョン実現プログラム2019」

ICT の活用事例

厚生労働省の調査「必要医師数実態調査」によると、医師の人数は2019年過去最多の32万人となりましたが、地域によって医療格差が起きています。医師が集中する大都市には最先端の医療技術が揃っているため、医師が集中しているのです。その一方で、人口の少ない過疎地は、医師不足に陥っています。

このような医療格差は大きな問題として取り上げられていますが、ICTを活用することで、医療格差の解消が実現できると期待されています。例えば、遠隔治療の技術が確立すれば、医者不足の地域や過疎地域に住んでいる方も医療が受けられます。このように、IT技術を活用してコミュニケーションを取る方法を「ICT」と呼びます。

参考資料:厚生労働省「必要医師数実態調査」

IoT の活用事例

2020年現在、世界各国が新型コロナウイルス「COVID-19」の感染防止拡大に向けて取り組んでいますが、自動運転などのモビリティIoTから得られるビッグデータソリューションを提供しているPSYGIG社は、Microsoft社のクラウドシステム「Microsoft Azure」を活用して、サーモグラフィー・カメラを通して自動測定、高体温者が出入りした場合はアラートを通知するシステムを開発しました。

体温測定の自動化とウイルス検知後の迅速な対応ができるとして、社会的な課題解決につながることが期待されています。このようにカメラなどのモノを繋げデータを取得して、クラウド上で膨大なデータを蓄積・解析し、現実世界で活用する技術を「IoT」といいます。

参考資料:Microsoft「テクノロジーを活用したCOVID-19」感染防止に向けた取り組み

「IoT」と「ビッグデータ」の関係性及び、活用事例については、以下の記事で詳しく説明しておりますので、ぜひご覧ください。

IoTとビッグデータの関係性とは?目的別の活用事例4選をご紹介!!

IT・ICT・IoTの比較

これまで、IT・ICT・IoTの違いを解説してきましたが、ここでは3つを比較します。

 

IT

ICT

IoT

正式名称

Information Technology

Information and Communication Technology

Internet of Things

意味

ハードウェア・ソフトウェア・通信技術の総称

ITを活用した情報伝達技術

モノ・ヒトをネットワークで接続する技術

活用例

・顧客管理システム(CRM)

・マーケティング自動化(MA)ツール

・クラウドシステム

・テレワーク

・チャットボット

・RPA

・スマートハウス

・ウェアラブルデバイス

・スマート工場

 

政府がICT・IoT活用を推奨「未来投資戦略」

日本政府は、ICTを活用した新産業創出を目指す「未来投資戦略」を発足しました。そのため、今後益々ICT活用は大きな注目を集めていくでしょう。ここでは、「未来投資戦略」について解説します。

「未来投資戦略」とは

2017年度のGDPは、2012年度495兆円から11%増となる549兆円となり、雇用状況も20年で過去最高の数値を記録するなど日本経済は好調ですが、新たな需要創出の欠如が課題として挙げられています。

そこで、政府は第4次産業革命の先端技術(IoT・ビッグデータ・人工知能)を各産業で導入し、一人一人のニーズに合わせたサービス提供を目指すという「Society5.0の実現」を掲げました。の目標を達成するために発足されたのが「未来投資戦略」です。

Society5.0実現に向けた基盤作り

Society5.0の実現に向けた基盤を作るために重点的にプロジェクトが進められるのは9分野です。

1

次世代モビリティ・システムの構築

無人自動運転による移動サービスの実現など

2

次世代ヘルスケア・システムの構築

オンライン医療の充実による医療格差の改善など

3

エネルギー転換・脱炭素化に向けたイノベーション

蓄電や水素利用などの技術開発など

4

FinTech・キャッシュレス化

金融・商取引関連法制度の見直しなど

5

デジタル・ガバメントの推進

デジタルファースト一括法案の提出など

6

次世代インフラ・メンテナンス・システム

建設から維持管理のプロセス全体の3次元データ化など

7

農林水産業のスマート化

農林水産業のあらゆる現場でAI・ロボット等の社会実装推進など

8

まちづくりと公共交通・ICT活用等の連携によるスマートシティ

モデル都市構築など

9

中小・小規模事業者の生産性革命の更なる強化

IT・ロボット導入の協力の推進など

参考資料:内閣官房日本経済再生総合事務局「未来投資戦略2018」

「未来投資戦略」の世間の反応

未来投資戦略の世間の反応としては、国が注目している分野からビジネスチャンスを見分けることができるという反応が多く、その意味でも有意義な戦略であることが分かります。国に任せるだけではなく、未来投資戦略の内容を確認し、自ら行動していくことで、より実現が近づきます。

世間の反応においては、下記のコメントが寄せられています。

「まずは「未来投資戦略2018」。「Society5.0」と「データ駆動型社会」をキーワードとして、日本が重点投資していくテック領域が網羅的にまとまっている。ビジネス機会を探すのに最適。」

「未来投資戦略2018なんていうのがあったんだ。やっぱり紙媒体の決裁書類って無駄だよな。もっと情報に強くならないと生き残っていけない。」

総務省が紹介するICT・IoT活用事例

総務省も第4次産業の発展を未来投資戦略にて表明していますが、実際にどのようにICTやIoTを活用するのでしょうか?ここでは、総務省が紹介している事例をご紹介します。

電子行政

戸籍手続き、年金手続き、子育て支援など、官公庁や地方自治体が住民に対して提供する行政サービスは、デジタル化で完結でき、国民や企業が負担する手続き時間やコストを大幅に削減します

また、今後は、行政データのオープン化を目指し、イノベーションや新ビジネス創出、次世代ヘルスケアシステムの構築を促進していく方針が定められています。

観光

訪日外国人が増加しているため、インバウンド観光に関する取り組みは欠かせません。ホームページの観光案内の多言語化、SNSを活用した情報発信・PR、無線LANアクセスポイントの設置など、外国人旅行者がストレスなく観光できるような整備が進められています。

医療・介護

画質や音質が飛躍的に進歩したIoT技術によって、医師不足の地域でも、大きなコストを支払うことなく必要な医療が受けられるようになります。ICT等の技術革新を積極的に導入し予防投資を強化すれば、高齢になっても健康が維持でき、患者の生活の向上に貢献することが可能かもしれません

社会医療法人祐愛会小田病院は、在宅状況のモニタリングサービスを提供開始しました。

金融

金融では集中管理型からブロックチェーン技術等を活用した分散管理型によるセキュリティの確保、新しい決済手法など最新の技術革新を取り入れることによって、国際競争でも互角に戦える体制が整備されてきています

代金決済は、場所や時間を選ばず、いつでもどこでも可能になりました。銀行等のオープンAPIの導入をフォローアップし、商流連携に向けた整備が行われています。

農林水産

農林水産業は、人材不足の危機に直面しますが、AIやIoT、ロボットの活用によるバリューチェーン全体の高付加価値化を実現します。IoTやICTを活用することによって、消費者のニーズの変化を的確に捉えた農産品の提供が可能になります。このような仕組みが整えば、農林水産業は、より稼げる雇用場となり若者を魅了するでしょう。

ものづくり

ビッグデータや5Gの通信技術を活用することによって、世界中の知識集約型の企業や大学・研究機関との連携が可能となります。2018年5月にサービスが開始された「Edgecross」は約150社以上と提携しており、生産現場データを収集しています。

生産現場のリアルタイム診断やフィードバック、生産現場のモデル化を提案してくれるプラットフォームです。このようなサービスを活用すれば、中小企業もプラットフォームで世界と繋がるようになり、地域発のイノベーションが生まれます。

インフラ・防災・減災

国土交通省は「スマートシティ」を「都市が抱える諸問題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメントが行われ、全体最適化が図れる持続可能な都市または地区」と定義しました。

交通・電力・通信主導の公共インフラ整備だけではなく、技術開発者や都市開発者、都市管理者の連携が必要で、常にマッチングできるマネジメント体制を築くことでスマートシティ構想の実現を目指しています。

移動

自動走行を含めたモビリティが発展していくことによって、便利な移動・物流サービスが生まれます。自動運転移動サービスが全国に広まれば、交通事故の減少や地域における移動弱者の減少など住民の生活が便利になっていくでしょう

2030年までに、地域限定型の無人自動運転移動サービスを全国100ヵ所以上で展開することが目標として掲げられており、自動運転車の公道実証実験は本格的に進められています。

参考資料:内閣官房日本経済再生総合事務局「未来投資戦略2018」

また、IoTの市場動向から国内外での最新導入事例を、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

IoT活用事例を一挙大公開 〜工場・物流・医療編〜

まとめ

今回は、IT・ICT・IoTの違いをご紹介しました。総務省も「未来投資戦略」を発足し、ICT化、IoT化を進めているため、さまざまな分野でICTやIoTは導入されていくでしょう。未来投資戦略を確認することで、今後、どのような取り組みが政府で行われていくのかを予想でき、ビジネスチャンスを見分けることができます。

ぜひ、ICTやIoTの導入を検討したい方は参考にしてみてください。