10分でバーコード・QRコード・RFIDを利用した在庫管理がわかる

適切な在庫管理は生産性を高め、企業の競争力も高めます。

「在庫管理を全くやっていない」という企業は少ないと思いますが、「在庫管理を手作業でやっている」という企業はまだまだ多いのではないでしょうか。

本稿でご紹介する「バーコード」などを在庫管理に導入するだけで「棚卸作業にかかる時間が1/3になった」という事例もあり、バーコード・QRコードやRFIDは在庫管理の助けとなるでしょう。

「難しそう」という理由だけで切り捨てるのは早計です。

本稿では、在庫管理にバーコード/QRコードやRFIDを導入することのメリットと、導入方法、導入にあたって注意すべき点について解説します。

バーコード・QRコードを使用した在庫管理について

バーコードとは?

「バーコード」とは縞模様上の線の太さとスペースによって、数値や文字を機械が読み取れる形に表現したものです。バーコードを製品に取り付け、在庫管理に用いることで、人力、手作業での棚卸を簡易化できます。

バーコードどころにて作成

バーコード導入によってできること

在庫管理にバーコードを導入することで、以下が可能となります。

1. 入出荷時の検品作業の簡易化

入出荷時に製品に張り付けたバーコードを読み取ることで、入出荷数や種類を自動で確認し、データ入力の手間を省きます。入力ミスを失くすこともできます。

2. 棚卸データを自動で反映

棚卸業務にバーコードを用いることで、棚卸データを自動で反映できます。

3. 在庫照会・ロケーション管理

棚の情報と紐付けることで「ある商品が、どこに、どれくらいあるのか」という在庫状況を管理できます。

バーコードで在庫管理するメリット

在庫管理にバーコードを導入するメリットは、主に以下の3つです。

1. 作業ミス防止

手作業によって起きる入力ミスや、数え間違いを防止できます。

2. 業務効率向上

在庫管理のスピードが上がるだけでなく、バーコードを読み取るだけ、と作業がシンプルになるため、教育コストと時間を削減できます。

在庫管理にバーコードを導入することで、棚卸作業時間が半分になったという事例もあります。

参考資料:【原料在庫管理システム】ハンディ端末を用いた在庫管理で在庫確認の手間と棚卸工数を削減

3. 在庫量をリアルタイムに把握できる

PC上での在庫数と、実際の在庫数を常に一致させることができ、無駄な発注や欠品を防げます。

QRコードとは?

1次元の情報の配列であるバーコードを2次元に広げたものがQRコードです。QRコードの特徴はその情報量であり、バーコードのおよそ100倍のデータを格納することができます。

発想自体はシンプルで、古くから多くの企業が2次元コードの研究開発をしていました。

2次元コードは読み取り精度が低いことが課題でしたが、現在主流となっているQRコードを開発したデンソーウェーブは、既存の2次元コードを改良し、現在のQRコードを作り上げました。コードの3つの隅に目印を置くことで、素早く認識できるようにし、上下左右方向の識別も可能にしました。

RFIDタグを導入したユニクロから学ぶ他業界RFID活用のヒント へのリンク

QRコードで在庫管理するメリット

QRコードには多くの情報を含めることができるので、QRコードを用いると、賞味期限や製造ロットなどの商品属性まで記録することができ、より高度な在庫管理をすることができます。

在庫管理に必要な情報量を考慮し、バーコードと使い分けると良いでしょう。

RFIDを使用した在庫管理について

バーコードやQRコードによる在庫管理は、データ入力のための業務を大幅に減らし、手作業の場合と比べ、時間の短縮を図ることができます。

しかし、バーコードやQRコードは光学的にコードを読み取るため、遠隔からの読み取りはできず、同時に複数の読み取りをすることもできません。また、一度傷が付いてしまうと読み取れなくなる恐れがあります。

例えば、高所にある物品を読み取るには一度物品を下ろす必要があり、段ボールの中の物品を読み取るには1つ1つ箱から取り出して読み取る必要があります。

こうした問題を解決するのが、RFIDです。

RFIDとは?RFIDの仕組み

RFIDタグ(ICタグ)はバーコードやQRコードと同様に、情報が埋め込まれたタグのことです。バーコードやQRコードとの違いは、データの読み取り方法にあります。

RFIDタグは電波による無線通信で情報を読み取ります。そのため、RFIDタグとRFIDリーダーとの間に距離があっても、タグの情報を読み取ることが可能です。また、ダンボールなど遮蔽物越でもRFIDタグを読み取ることもできます。

以下にバーコード、QRコードとRFIDタグの違いについてまとめます。

【バーコード、QRコード、RFIDタグの違い】

 

UHF帯RFIDタグ

QRコード

バーコード

通信距離

長い (~10 m)

短い (数 cm)

短い (数 cm)

同時読み取り

可能

不可能

不可能

記憶容量

表面汚れ耐性

強い

弱い

弱い

RFIDについては、こちらの記事で詳しく説明していますので、ぜひご覧ください。

RFIDとは?最新動向と活用事例を解説!

RFIDで在庫管理をするメリット

RFIDで在庫管理をすることで、以下のようなことが可能になります。

1. 棚卸作業の更なる時間短縮、効率化

「遮蔽物越しに」「遠隔から」「一度にたくさんの」読み取りができるというRFIDの特徴は、バーコード・QRコードと比較すると、早く、効率的に棚卸作業を進めることができます。RFIDの導入で、棚卸作業時間が1/8に短縮した事例もあります。

参考資料:https://www.toyota-tsusho.com/press/detail/190530_004390.html 

2. 在庫・物品の位置管理

RFIDタグ読み取り時の電波を解析することにより、タグの位置情報を取得できます。RFIDタグを貼り付けておけば、倉庫内での在庫・物品の位置管理や探し物の時間を短縮できます。

RFIDの位置情報については、こちらの記事で詳しく説明していますので、ぜひご覧ください。

RFIDの位置情報で探し物が見つかる!?入出荷・棚卸だけではないRFIDの新たな活用法 

ハンディターミナル・バーコードリーダーについて

ハンディターミナル・バーコードリーダーとは?

バーコード・QRコードやRFIDタグだけでは在庫管理システムの構築はできません。コードやタグを読み取るための機器が必要で、それらを「リーダー」と呼びます。バーコードを読み取るための機器が「バーコードリーダー」、RFIDタグを読み取るための機器が「RFIDリーダー」です。

バーコードリーダーはコンビニエンスストアのレジで活用されていて、誰でも一度はバーコードリーダーを目にしたことがあるでしょう。「QRコードリーダー」はスマートフォン向けアプリとして無料で高い読み取り精度を持つものが多く存在します。

この「リーダー」には情報を「読み取る」、「表示する」機能しかありません。

在庫管理においては、読み取った情報をデータベースと連携させ、在庫の種類や数を把握するため、「読み取る」「表示する」機能に加え、「数値の入力」と「通信」機能が必要です。

「データの読み取り」、「表示」、「数値入力」、「通信」という4つの機能を持った端末を「ハンディターミナル」と呼び、在庫管理においてはこのハンディターミナルが使われます。

バーコード・QRコードのおすすめハンディターミナル

ハンディターミナルに求められるのは、「コードの読み取り精度」や「使い勝手の良さ (データの打ち込みやすさ、重量など)」、また、後述する「システムとの連携のしやすさ」です。コードの種類、作業現場の状況に合わせた様々なハンディターミナルが開発されています。

以下では、バーコード読み取り用ハンディターミナル製品の一例をご紹介します。

BHT-600 / デンソーウェーブ

QRコードの開発に最も大きな功績を残したデンソーウェーブは、バーコード・QRコードの読み取りに多くのノウハウを有し、ハンディターミナルにも、それらのノウハウが生かされています。デンソーウェーブの開発したハンディターミナルBHT-600は高い安定性を有し、バーコードのみならず、QRコードの読み取りも可能です。また、システム連携などについてのサポート体制も充実しています。

BT-W300 シリーズ / キーエンス

国内ハンディターミナル市場最大手であるキーエンスのBT-W300シリーズは、多様な読み取りに対応していることが特徴です。1 m程度距離のあるバーコード、しわのあるバーコード、ビニール越しのバーコードなど、様々なバーコードを独自の技術で読み取り可能としました。

RFIDのおすすめハンディターミナル

SP1/デンソーウェーブ

RFIDハンディリーダーで圧倒的なシェアを誇るデンソーウェーブ社の「SP1」は、独自開発したアンテナで最大700タグ/秒、距離は約8mと高性能な読み取りを行えます。

RFR900

Bluebird社のRFR900はZARAやH&Mなど海外のアパレルでも採用されており、使い易さに定評があります。

RFID用ハンディターミナルについては以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

RFIDリーダーの価格や選び方を解説!最新のスマホ搭載型ハンディリーダーを一挙紹介

システムとの連携

バーコードやRFIDタグは、在庫管理システムと連携させることで本領を発揮し、在庫管理に関する幅広い業務を効率化します。

本稿を読み、バーコードやRFIDの導入を検討しようと思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

バーコードやRFIDタグを在庫管理に導入するときには以下の2点に注意が必要です。忘れずにチェックしてください。

1. 既存の在庫管理システムと連携できるか

国内のハンディターミナルはWindowsやiOS、Androidなど様々な種類があります。多くのハンディターミナルメーカーは機器の無料貸出を行っています。バーコードやRFIDを採用するにあたっては、既存の在庫管理システムとハンディターミナルに互換性があるか、よく確認しましょう。

2. 将来的にシステムを拡張することができるか

導入した在庫管理システムは、「在庫が少なくなると自動で発注を行うシステム」などに発展させることもできます。また、機器稼働状況管理や、生産指示管理、出退勤管理など、他分野へ応用することもできます。しかし、導入するシステムが在庫管理に特化した限定的な機能のみであれば、将来的なシステムの拡張は困難です。導入の際には、あらかじめシステムの最終目標を決め、拡張可能な柔軟なシステムを導入しましょう。

まとめ

バーコード・QRコードは、これまで手作業で行われてきた棚卸業務を簡略化し、業務効率を飛躍的に向上させます。

バーコード・QRコードはそれ単体で効果を発揮するものではなく、ハンディターミナルの導入やシステムとの連携が不可欠です。現行の在庫管理システムとの連携や現場の状況を考慮して、適切な機器、システムの導入を検討しましょう。

RFIDはバーコード・QRコードでは難しい遠隔からの読み取りや遮蔽物越しの読み取りを可能にし、在庫管理にかかる時間をさらに低減させることができます。

新型コロナウイルスの影響により、「非接触」で作業を行えるRFIDは注目を集めています。

新型コロナウイルスによる最新トレンドは以下の記事にまとめてありますので、ぜひ参考にしてください。

With/Afterコロナのサプライチェーン改革とは?押さえるべき4つの最新トレンド