With/Afterコロナのサプライチェーン改革とは?押さえるべき4つの最新トレンド

世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルスの影響で、多くの店舗は時短営業や休業を余儀なくされました。製造・物流においては、感染リスクを考慮したサプライチェーンの再構築に迫られている企業も多いことでしょう。

事実、「手洗い」・「検温」・「3密を避ける」といった現場での対策を行いながら、抜本的なサプライチェーンの見直しに着手している企業が相次いでいます。

本稿では、

  • 新型コロナウイルスが与える経済的影響
  • サプライチェーンにおける4つの最新トレンド
  • RFIDによるサプライチェーン改革

に触れ、最後にサプライチェーンの可視化や在庫管理の効率化を実現するために注目が高まっている「RFID」がどう役立ち自社に活用できるのか、どのようなステップで導入すればよいのかについてご紹介します。

新型コロナウイルスが与える経済的影響

新型コロナウイルスが経済に与える影響は計り知れません。2020年4月、IMF(国際通貨基金)は2020年の実質GDP予測をマイナス3%に下方修正しました。日本での4~6月期のGDPは「前期比21.7%減」と、戦後最悪のマイナス成長を記録する見込みです。

また、東京商工リサーチの調査によると、決算発表の延期を公表した企業は累計686社で、全上場企業3,778社の約2割(18.1%)に上ります。業種別では製造業の346社(同50.4%)が最多で、約半数を占めています。

新型コロナウイルスによる店舗の休業や時短営業に伴い流通量が減少したことに加え、特に海外に生産拠点を持つ企業でサプライチェーンに影響が出たことが大きな要因です。

一方、増収・増益を達成している業界もあります。特にデジタル関連が好調で、電子契約サービス「クラウドサイン」を手掛ける弁護士ドットコムでは、2020年1~3月の純利益が過去最高益を達成しています。

デジタル機器やネット接続事業も業績を伸ばしており、リモートワークやオンライン学習を活用した「場所にとらわれない生活」にシフトしていることが伺えます。

株式会社ゼノデータ・ラボは、大量のニュースデータ、上場企業の開示資料をAIで解析し、新型コロナウイルスの影響を企業ごとに分析して、影響度スコアとして各業界が受ける1年程度の影響予測を発表しています。

出典:ゼノデータ・ラボ「新型コロナウイルスAI予測分析」から作成

「7割経済」におけるサプライチェーンの再構築

新型コロナウイルスのワクチン開発には1年ほどかかる見込みです。そのため、ウイルスの終息を待つのではなく、ウイルスと共存する「Withコロナ」と捉えて、ビジネスモデルを再構築する必要があります。

新型コロナウイルスの蔓延で人やモノの移動に制限がかかり、従来の7割程度の経済活動となる「7割経済」が到来しているとの見方もあります。パンデミックが再燃すれば、さらに制限がかかるでしょう。このような中でも安定した供給ができるよう、サプライチェーンの再構築が求められています。

日本電産の永守会長兼CEOは、「これほどまで部品の供給網が寸断されるとは、想定していなかった。グループ各社は複数の仕入れ先企業に幅広く発注してきました。ところが、その仕入れ先は分散していなかったので、モノが入ってこなくなった。築き上げたはずの供給網も完璧ではなかった。これからもやってくる感染症の拡大を前提としたグローバルな生産態勢を作る必要がある。」と朝日新聞の取材に答えています。

参考資料:日本経済新聞|「マイナス21%成長予測 4~6月民間平均、戦後最悪に」

参考資料:日本経済新聞|「逆風の中 133社が最高益 1~3月、上場企業の6% デジタル関連好調」

参考資料:東京商工リサーチ|「上場企業「新型コロナウイルス影響」調査 (5月13日時点)」

参考資料:ゼノデータ・ラボ|「新型コロナウイルスAI予測分析特設サイト」

サプライチェーンにおける4つの最新トレンド

グローバルなサプライチェーンが大きく混乱した今回の新型コロナウイルスを新たな教訓として、多くの企業がリスクマネジメントの見直しに取り組み始めています。ここでは、サプライチェーンの将来像を見据える上で重要になる「4つの最新トレンド」をご紹介します。

①デジタルシフトとコストカット

経済活動自粛による景気後退から、設備投資計画の見直しが起きています。特に費用対効果が見えない大型投資は敬遠され、コストカットの圧力も強まるでしょう。

一方でリモートワークをきっかけにデジタルシフトの加速が期待され、業務効率化とコストカットを同時に実現するソリューションへのニーズが高まる見込みです。そこで注目されるのがSaaS(Software as a Service)です。

昨今、SaaSが日本にも普及してきており、最新テクノロジーの必要な機能を、必要な分だけ利用し、初期投資を抑えられるサービスが増えています。月契約や年契約が一般的で、必要なくなれば解約できます。このようなSaaSを上手く活用しましょう。

出典:帝国データバンク「2020年度の設備投資に関する企業の意識調査」から作成

②サプライチェーンの短縮と多角化

新型コロナウイルスでのサプライチェーン断絶に加え、各国の保護主義的な動きも懸念されます。米商務省は2020年5月15日、米国の機器を使った半導体メーカーが米政府の認可なしにファーウェイに製品を供給することを禁止する措置を発表しました。商品安定供給体制確立のため、様々な産業でサプライチェーンの再構築が求められます。

まず、サプライチェーンに中間流通のプレーヤーが増えるほど、リードタイムが長くなり、リスクが高まります。そこで、一部の部品を自社で製造して、サプライチェーンに関わるプレーヤーを削減し、リードタイムを短縮することが検討されています。

また、中国から国内、または東南アジアや南米へ生産拠点を移すなど、特定国への過度な依存を改善し、サプライチェーンを多様化することで、耐性を高める見直しも進んでいます。その地で消費するものはその地で調達・製造する「地産地消」と、一部地域でパンデミックが起こった際も、別の場所から調達/製造できるような「グローバル分散」の2つの方向性で再構築が進む見込みです。

例えば、日本政府は製造業の国内回帰を促進するため、特定国の生産設備を国内に移転する場合、中小企業には工場建設や設備導入費用の3分の2、大企業には2分の1を補助することを発表しています。

そして、サプライチェーンマネジメント(SCM)で重要になるのは情報の可視化です。昨今、SCMへの関心が高まっていますが、目に見える成果を上げている企業は、まだ多くありません。

しかし、新型コロナウイルスをきっかけに、サプライチェーンの情報連携と可視化が改めて注目されるでしょう。一例として、三菱商事では、サプライチェーンをデジタルで再構築することを発表しています。まずは食品流通におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組み、蓄積した需給予測のノウハウを活かし、サプライチェーンの可視化を目指すとしています。

出典:日経新聞

『ロジスティクス4.0 物流の創造的革新(日経文庫)』で有名な小野塚征志氏は、「新型コロナウイルスのような危機に対応するためには、一社単独のリスクマネジメントでは限界があり、共通の取引先を持つ競合他社とも連携を図ることが有効」と唱えています。競合他社との情報共有が本当に進むかどうかは、リスクマネジメントのメリットと比較して検証されることでしょう。

③在庫の積み増しと管理の効率化

CBRE社が物流施設を利用するテナント企業361社に対して、新型コロナウイルスによる中長期的な物流の変化や対策を調査したところ、「不測の事態に備えて在庫量の積み増し」が最も多い回答でした。

在庫量の積み増しと、倉庫需要の拡大(在庫を「極力持たない」から「常に一定量確保」)へシフトしていくと予想されています。

出典:CBRE「物流施設利用に関する意識調査」から作成

このような在庫管理の変化に伴い、注目が集まっているのが「RFID」です。

在庫管理の負担が大きくなる一方で、イレギュラーなオーダーへの対応や納期回答の明確化が求められるため、在庫を効率的に管理することが重要になります。大量の在庫を管理するのにBLE(Bluetooth Low Energy)やUWB(Ultra Wide Band:超広帯域無線)はセンサーに費用がかさむため不向きで、タグ1枚10円前後のRFIDは費用が安く最適です。

遠隔から大量一括読取り可能なRFIDは、アパレル・製造・物流などでの在庫管理に活用されていますが、さらに普及が進むと期待されています。

「RFID」については下記の記事にて詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

RFIDとは?最新動向と活用事例を解説!

【Locus Mapping活用事例】入出庫/棚卸し/探索の作業時間の60~90%を削減!

④テクノロジーによる自動化・省人化

物流現場では相変わらず人手不足が続いており、新型コロナウイルスをきっかけに事業継続や生産性向上への関心が更に高まっています。

そこで、物流効率化に向けて、人的資本に頼らないLA(ロジスティクスオートメーション)やFA(ファクトリーオートメーション)への投資が進むと予想されます。

しかし、課題もあります。倉庫内作業・納品現場ではテレワークが出来ないため、安全上の配慮がスタッフ部門のようにはいきません。倉庫は3密が起こりやすく、感染リスクを避けるためには少人数での対応が求められます。棚卸などの在庫管理の省人化や探し物など、無駄な時間を一層削減する必要があります。

テクノロジーによる自動化・省人化として、ロボットの活用が広がっています。一例として、物流支援ロボット「キャリロ」を販売するZMPは、新型コロナ軽症者向け施設での食事搬送やごみ回収での用途を含め複数の自治体が導入を検討するなど、引合いが増加していると言います。

「産業用ロボット」については下記の記事にて詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

産業用ロボットの基本と世界4強メーカーを初心者向けに解説

その他、RFIDと自動走行ロボットを組み合わせた無人棚卸にもニーズが高まっています。

出典:RFルーカス「ロボットと組み合わせた無人管理

「RFIDでの在庫管理」については下記の記事にて詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

RFIDで在庫・資産管理!?RFID x ロボットで棚卸しを無人化!

RFIDによるサプライチェーン改革

前章でご紹介したRFIDは、ユニクロ、BEAMS、ユナイテッドアローズ、シップス、NIKE、アシックス、AZUL、無印良品などアパレル業界で既に浸透しています。

昨今は、他業界にも広がりを見せています。例えば、日本通運がアクセンチュアやインテルと組んで、RFIDとブロックチェーンを活用した医薬品の輸送網整備に取り組むことを2020年3月に発表しました。偽造品の防止を目的に、原料や製品の輸出入から医療機関への納入までの過程をリアルタイムに追跡し、メーカー、卸、医療機関、などと共同で利用できる基盤にする考えです。

RFIDを活用したサプライチェーン改革はメディアで盛んに取り上げられており、各業界からの注目度が高まっています。「RFIDが気になる」と感じている企業が多い状況です。

そこで、ここからは「サプライチェーン改革にRFIDがなぜ役立つのか?」、「どのようなステップでRFIDを導入すればよいか?」について、詳しくご紹介します。

RFID導入を成功させる秘訣を一緒に確認していきましょう。

ユニクロやコンビニ・ドラッグストア実証実験から学ぶRFID活用法

RFIDは数百個の商品を瞬時に読み取れるため、サプライチェーンの各ポイントでのすばやい情報取得が可能で、入出庫や棚卸しの作業時間を80%ほど削減できます。また、RFIDタグのデータ容量は96bitや128bitが一般的で、バーコードでは入れられない個体識別できるシリアル番号も扱えます。

「大量一括読み取り」と「個体識別」というRFIDの特徴が、業務効率化とコストカットを同時に実現するソリューションとしてサプライチェーン改革に大きな効果を発揮します。

RFIDによるサプライチェーンマネジメントの取り組みは、ファーストリテイリングの事例や経済産業省とNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の実証実験(※下図)が他業界にも参考になるでしょう。

出典:経済産業省の実験概要資料から作成

この実証実験では、異なる企業間でもサプライチェーンの情報共有システムを構築できると確認されています。本格的な効果測定は未検証で、他社(特に競合)との情報共有はためらわれるとの意見がありましたが、新型コロナウイルスを契機に同様の取り組みは進むと期待されます。

一方で、商品によっては「RFIDタグの単価」、「読取り精度」、「貼付技術」が課題になる場合もあるので要注意です。下記の記事にて詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

RFIDタグを導入したユニクロから学ぶ他業界RFID活用のヒント

サプライチェーン改革へのRFID導入ステップ

短期間でのRFIDの導入に成功したBEAMSの担当者は、「RFIDの導入は難しく考えないこと、まずは局所的な業務の効率化を目指すことが大切です。導入箇所を絞ることで、導入のハードルを下げることができます。」と、株式会社フジテックス社のインタビューで語っています。

参考資料:物流倉庫プランナーズ「物流IoT最前線~BEAMSの今とこれから~」

サプライチェーン全体へ一気にRFIDを導入しようとせず、経営戦略に応じてステップバイステップでRFIDの活用を広げていきましょう。

以下は、RFIDの活用法とメリットをまとめた図です。全てに取り組む必要はありませんが、RFIDを活用した最終形態と言えるでしょう。一般的には①から④に活用を広げていき、RFIDの費用対効果を高めていきます。

①在庫の入出荷検品・棚卸、または工場(金型・工具・機器など)や倉庫(パレット・カゴ車など)の物品・固定資産管理が、費用対効果を確認しやすいファーストステップです。RFIDが普及しているアパレルと言えども、大半の企業はこのステージです。省人化でコストカットしながら、RFIDの運用に慣れていくと良いでしょう。

②続いて、ロケーション管理や、会計の省力化・短縮など高度な活用に広がります。このステージにあるのはユニクロなど一部の先進的な企業です。

③今後取り組みが進むと予測されるのが、データ分析による活用の進化です。需要予測の精度向上、商品の位置情報を活用した棚割分析、その情報をメーカーと共有することで顧客ニーズの製品反映が可能となるでしょう。

④サプライチェーン間でデータ連携させることで可能になるのが最終ステージです。サプライチェーンが短く、関与するプレーヤーが少ないほど難易度は下がります。SPA(Speciality Store Retailer of Private Label Apparel:製造小売業)やPB(Private Brand:プライベートブランド)、自社物流を構築しているケース、パートナーと情報共有できるケースなどが比較的取り組みやすいでしょう。

まとめ

2020年5月25日、全国すべての緊急事態宣言が解除され、休業していた多くの店舗が営業を再開しました。しかし、予想されている第2波、第3波に備えて、今回の教訓を元にした対策が求められています。

今回ご紹介した、With/Afterコロナにおける製造・物流のトレンドには、「①デジタルシフトとコストカット」、「②サプライチェーンの縮小と多角化」、「③在庫の積み増しと管理の効率化」、「④テクノロジーによる自動化・省人化」があります。

特にサプライチェーンにおける「在庫の可視化」と「管理の効率化」を実現するためのソリューションとして、RFIDに大きな注目が集まっています。ECや店舗のデジタル化にもRFIDは活用されています。

「非接触型サプライチェーン」の実現にRFIDは強力なソリューションとなります。これを機に、皆さんもRFIDを検討してみてはいかがでしょうか?

最後に、RFID導入を検討するにあたり、自社の利用環境をしっかりと確認しましょう。金属や液体は読み取れるのか、費用対効果が合うのかなどお悩みかもしれません。

その際は、以下の『RFID導入チェックリスト』で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。