業務用3Dプリンターの価格を5つの造形方式別に徹底解説!材料費など導入にかかる費用も記載

With/Afterコロナのサプライチェーン構築において、産業用ロボット・3Dプリンターなどの「テクノロジーによる自動化・省人化」が注目されています。

With/Afterコロナのサプライチェーン改革とは?押さえるべき4つの最新トレンド

特に「魔法の箱」とも呼ばれる3Dプリンターは、人員を割かずに自動で製作できる特徴から、試作品の製作を中心に製造業での普及が進み、3Dプリンター導入に興味のある企業も多い状況です。

しかし、特に業務用3Dプリンターは基本的にメーカーへの見積りが必要で、なかなか価格相場を知る手段がありません。

「メーカーに見積りをとる前に大まかな価格感を抑え、3Dプリンター導入における費用対効果をシミュレーションしたい」と考える方も多いのではないでしょうか。

そこで本稿では、

  • 3Dプリンター導入にかかるコスト
  • 3Dプリンターの価格相場
  • 5つの造形方式別の価格帯

について詳しく解説し、最後に「ものづくり補助金」をご紹介します。

3Dプリンター導入にかかるコスト

3Dプリンターの導入方法は、「購入」・「レンタル」・「造形代行」の3種類の方法があり、それぞれ必要となるコストが異なります。

【3Dプリンター導入にかかるコスト】

導入方法

IC(初期費用)

MC(材料費用)

RC(保守費用)

EC(設備費用)

購入

レンタル

不要

造形代行

不要

不要

不要

不要

IC(Initial Cost:初期費用)

IC(Initial Cost:初期費用)には、3Dプリンター本体の料金に加え、3Dデータを作成するためのソフトウェア費用が含まれます。

業務用3Dプリンター本体及び3DCADソフトのおすすめについてはこちらの記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

【製造業向け】おすすめの業務用3Dプリンター7選と選び方を徹底解説!

【2020年最新版】おすすめ3Dプリンター用3DCADソフト7選

MC(Material Cost:材料費用)

MC(Material Cost:材料費用)には、フィラメント・石膏など、造形に使用する材料、及びサポート材の費用が含まれます。

フィラメントについてはこちらの記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

3Dプリンターフィラメントの種類別の特徴と利用用途を徹底解説!!

RC(Running Cost:保守費用)

RC(Running Cost:保守費用)には、3Dデータ制作ソフトウェア、3Dプリンター本体などの年間保守料が含まれます。金属3Dプリンターの場合、年間保守料が300万円を超えるケースもありますので、確認すべきポイントです。

金属3Dプリンターについては、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

【金属用3Dプリンター徹底ガイド】基礎から人気メーカー7社まで総まとめ

EC(Equipment cost:設備費用)

EC(Equipment cost:設備費用)には、空調設備、洗浄装置などの費用、及びプリンターを設置する場所代などが含まれます。

次に、「購入」、「レンタル」、「造形代行」の費用対効果を確認するためにも、それぞれのメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。

3Dプリンター導入方法別の違いについて

①購入

3Dプリンターを購入する場合、「自社で行うため、短納期で製作できる」、「3Dプリンターに関するノウハウを蓄積できる」などのメリットがある一方、「在庫を抱える」、「コストがかかる」などのデメリットへの考慮が必要です。

購入は、製品開発において、現行の機械から3Dプリンターに置き換える場合に検討すべき方法です。

家庭用3Dプリンターであれば、Amazon、楽天、メルカリ等の販売プラットフォームを活用することで、価格相場が分かります。

業務用3Dプリンターの場合は、メーカーに見積りを依頼した後、何社かの製品デモを受け、比較検討し、購入を決める流れが一般的です。

②レンタル

3Dプリンターをレンタルする場合、「在庫を抱える必要がない」、「購入前に低価格で利用できる」などのメリットがある一方、「設置するための設備が必要」、「レンタル可能な機種に限りがある」、「そもそも利用できるサービスが少ない」などのデメリットへの考慮が必要です。

レンタルは、実際に運用してから購入を決定する場合に検討すべき方法です。

サービスの一例として、DMMでは販売価格の1割の料金で、3ヶ月間のレンタルが可能です。レンタル以降に本格導入する場合は、差額(9割)で購入できます。

参考資料:合同会社DMM.com「3Dプリンターレンタル 一覧」

3Dプリンターのレンタルサービスは、こちらの記事で詳しく解説しています。

5分でわかる3Dプリンターレンタルサービス!基本的なサービスの流れから、おすすめ業者9選を徹底解説

③造形代行(出力サービス)

造形代行サービスを利用する場合、「在庫を抱えない」、「3Dプリンターに関するノウハウが不要」、「3Dデータ制作が不要」などのメリットがある一方、「製品によっては仕上がりまでに時間がかかる」、「単発では良いが、複数回利用するとコストが高くつく」などのデメリットへの考慮が必要です。

MM総研の調査によると、「3Dプリント出力サービスの市場規模」は、2021年には2017年比で約3.2倍になると予測されています。

参考資料:MM総研「国内法人における3Dプリンターの導入実態調査(2019年5月調査)」

3Dプリンターの主要な導入方法は「造形代行サービス」になる見込みです。

その背景を分析する上では、同調査の「3Dプリンターの導入目的は?」とのアンケートにおいて、約7割の企業が「試作品の作成」と答えていることが参考になります。

試作品は、毎日作るものではなく不定期でニーズが生まれるため、「必要な時にだけ使えるサービス」が主流になると見込まれています。

3Dプリンターの出力サービスは、こちらの記事で詳しく解説しています。

3Dプリンター出力サービスのメリットとは?製造業での活用事例とおすすめ業者を徹底解説

3Dプリンターの価格相場

冒頭でもお伝えしたように、業務用3Dプリンターはメーカーへの見積り依頼が必要になるケースが多く、ほとんどのメーカーの公式サイトには、「要見積」など、価格の記載がありません。

では、どうすれば具体的に3Dプリンターの価格相場を知ることができるのでしょうか?

インターネット上に溢れる様々な情報の中で、RICOHが公開している情報・サービスがとても参考になりますので、ここでご紹介します。

疑問①:どの価格帯の製品が売れているのか?

RICOHが3Dプリンターを導入している412社に対して行ったアンケート調査によると、最も多い購入価格は「100~300万円未満(24.3%)」で、続いて「300~500万円未満(20.9%)」になります。1,000万円以上は全体の10%未満です。

詳しくは本稿の造形方式別の価格帯でご紹介しますが、100~300万円の3Dプリンターは、大半が熱溶解積層方式(FDM法)か光造形方式(SLA法)のタイプです。

参考資料:RICOH「2018年度 3Dプリンタ導入活用に関する調査結果」

疑問②:どのようにメーカーを探すのか?

業務用3Dプリンターのメーカーを探す場合、インターネットで検索するか、製造業メーカーが出展するリアルイベントに参加するケースが多いと思います。

しかし、この方法では、実際に足を運び、見積りをとって、デモを依頼して決める、と購入まで多くの時間がかかっています。さらに昨今の新型コロナウイルスの影響でリアルイベントの中止や延期が相次いでいます。

そこで、最近注目が高まっているのが「デジタル展示会」です。

一例として、RICOHが実施している「3Dプリンター デジタルEXPO 2020」では、9社がエントリーしており、各社の主要モデルの詳細をオンラインで確認できます。

デジタル展示会の参加費は無料です。

【3Dプリンター デジタルEXPO 2020/出展企業一覧】

参加企業

出展モデル

株式会社イグアス

3D Systems

株式会社3D Printing Corporation

AON3D

APPLE TREE株式会社

FLASHFORGE

株式会社日本HP

HP

株式会社データデザイン

MarkForged

日本3Dプリンター株式会社

RAISE 3D

ローランドディージー株式会社

Roland

エス.ラボ株式会社

Slab

アルテック株式会社

stratasys

概算も公開されていますので、50万円から1億円を超える製品まで、豊富な価格帯を確認できます。本記事を参考にして頂ければ、概算の分析もしやすくなるでしょう。

外出制限の影響から、今後はデジタル展示会やオンラインセミナーが盛んになると予想されます。3Dプリンターの導入を検討する際には、積極的に活用すると良いでしょう。

参考資料:RICOH公式サイト「3Dプリンター デジタルEXPO 2020~ものづくり工程の改革~」

疑問③:見積り以外で概算を知る方法はないか?

RICOHの公式サイトでは、取り扱っている全てのモデルの概算が確認できます。

参考資料:RICOH公式サイト「3Dプリンター商品一覧」

100万円から1億円を超える商品まで、価格帯別に詳しく解説されていますので、「価格の相場を知りたい」と考えている方にとっては、とても参考になります。価格順にソートもできます。

もちろん、RICOH以外にも、3Dプリンターを取り扱っている企業は多数あります。しかし、業務用3Dプリンターの価格を公開しているサイトは見かけません。メーカーへの見積り以外で概算を確認したい場合は、RICOH社の公式サイトを確認すると良いでしょう。

5つの造形方式別の価格帯

3Dプリンターの価格は、

価格 = 造形方式 × 性能(速度・積層ピッチ) × 大きさ

が一般的です。

安価な造形方式であっても、高性能で一定の大きさがあると高額になります。

例えば、光造形方式の3Dプリンターは、家庭用で5万円を切る製品が登場していますが、業務用モデルでは、1,000万円を超える製品もあります。

造形方式は価格帯を知る上で重要な要素になりますので、それぞれ詳しく見ていきましょう。

①熱溶解積層方式(FDM法)

積層方法

フィラメントを熱で溶かして積層

メリット

安価、材料(フィラメント)の選択肢が多い

デメリット

サポート材が必要

価格帯

100万円~

FDM法は、3Dプリンターの中でも安価で知られる造形方式です。家庭用3Dプリンターでは、FDM法とSLA法の製品が多く、製造業の試作品製作でもよく使われます。様々な材料(フィラメント)が使用できることも、広く使われている大きな理由です。

フィラメントについてはこちらの記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

3Dプリンターフィラメントの種類別の特徴と利用用途を徹底解説!!

②光造形方式(SLA法)

積層方法

光硬化性樹脂にレーザーを照射して積層

メリット

なめらか、複雑な形状(曲線)などに対応できる

デメリット

太陽光による劣化、長期間の使用に向かない

価格帯

300万円~

SLA法も安価な造形方式です。滑らかな仕上がりになるのが特徴で、模型などデザイン重視の製作において使用されます。

光造形3Dプリンターは、こちらの記事で詳しく解説しています。

【光造形3Dプリンター徹底ガイド】基礎から人気メーカーまで総まとめ

③粉末焼結方式(SLS法)

積層方法

粉末にレーザーを照射し、焼結させる

メリット

強度が高い、サポート材不要

デメリット

表面がざらつく、装置が大きい、高額

価格帯

1,000万円~

焼結するため、非常に強固な仕上がりになります。そのため、強度を重視する製品開発に使用されます。反面、装置が大きく高価です。費用対効果の面では、試作品開発のためだけに導入することには向いていません。

④インクジェット方式

積層方法

液状の紫外線硬化樹脂にレーザーを照射し、固める

メリット

積層ピッチが細かく、高精細

デメリット

サポート材を多く使う

価格帯

300万円~

インクジェット方式のプリンターをイメージしてもらうと分かりやすいかと思いますが、とてもカラフルな仕上がりになります。サポート材を多く使うため、他の造形方式に比べてサポート材のランニングコストが高くなります。

⑤粉末積層方式

積層方法

粉末を樹脂で接着し、積層

メリット

造形スピードが速い

デメリット

壊れやすい

価格帯

200万~

樹脂で接着しますので、他の造形方式に比べて造形スピードが速いことが特徴です。反面、壊れやすいため、製品開発よりは試作品段階での利用に向いている造形方式です。

補助金活用で3Dプリンターを購入

これまで見てきたように、業務用3Dプリンターは安価なタイプで100万円、高額になれば数千万円を超えます。

決して安い投資額ではありませんので、補助金を活用して購入する企業もあります。

ものづくり補助金とは?

ものづくり補助金とは、全国中小企業団体中央会が主催している補助金制度で、「一般型」「ビジネスモデル型」の2種類があります。

補助金であるため、返済義務がないことがポイントです。

一般型

【概要】

目的

働き方改革等の制度変更に対応するため、中小企業、小規模事業者の革新的サービス、試作品開発、生産プロセス改善を行うための設備投資等を支援する

補助額上限

1,000万円

令和元年(募集期間:3/10~3/31)に実施された1次締切では、2,287件の応募があり、1,429件が採択されています。(採択率:62.4%)

採択された応募の内、3Dプリンター関連事業はわずか5件ですが、3Dプリンターのニーズの高まりから今後申請が増えることが予想されます。

3Dプリンター関連事業においては、3Dプリンターの開発や、3Dプリンターを活用した製品開発などが該当するでしょう。

申請には、資本金・従業員数などの応募資格を満たしている必要があります。詳しくは公式サイトでご確認ください。

参考資料:全国中小企業団体中央会「ものづくり補助金総合サイト」

ビジネスモデル構築型

【概要】

目的

民間サービスとして継続して中小企業のビジネスモデル構築・事業計画策定を支援する。拡張可能な先駆的プログラムの立ち上げを支援

補助額上限

1億円

一般型は、個々のビジネスを支援する補助制度で、ビジネスモデル構築型は、複数の企業を支えるビジネスを支援することに大きな違いがあります。

予算(3,600億円)の内、採択件数に上限はなく、予算内であれば配分していく仕組みです。

3Dプリンター関連事業においては、3Dプリンター出力サービスの展開などが該当するでしょう。

申請には、「中小企業30者以上に対して、3~5年の事業計画の策定支援プログラムを開発・提供することが条件」とされています。詳しくは公式サイトでご確認ください。

参考資料:全国中小企業団体中央会「ものづくり補助金総合サイト」

まとめ

3Dプリンターの価格は造形方式によって異なります。

家庭用3DプリンターであればAmazonなどを使い、価格別に並び変えることで大まかな相場が確認できます。メーカーの公式サイトにも価格が掲載されているケースが大半です。

しかし、業務用3Dプリンターでは、基本的にメーカーへの見積りが必要になります。

気になった製品がある場合は、まずは今回の記事を参考に3Dプリンターの価格帯を抑え、3Dプリンターに詳しいベンダーに相談してみると良いでしょう。

なお、新型コロナウイルスの影響で、今後は「3Dプリンター デジタルエキスポ 2020」のようなオンライン展示会が盛んになることも予想されますので、積極的に活用することがおすすめです。

業務用3Dプリンターの選び方は、こちらの記事で詳しく解説しています。

【製造業向け】おすすめの業務用3Dプリンター7選と選び方を徹底解説!