ブロックチェーンが解決するIoTの課題!国内の活用事例とあわせて徹底解説!!

身の回りにあるセンサーの数は今この瞬間にも凄まじいスピードで増え続け、Internet of Things (IoT)は着実に進展しています。

しかしながら、IoTがそのポテンシャルを最大限に発揮するには、まだまだ多くの課題が残っています。

ブロックチェーンは課題を解決し、IoTを次のステップに押し上げる可能性を秘めています。

本稿では、IoTやブロックチェーンの基礎から、両者の関係性、また両者を組み合わせた事例について紹介していきます。

ブロックチェーンとは?その特徴

ブロックチェーンは耐改竄性、透明性の高い分散管理データベースです。

「ブロックチェーン」という名前は、その特徴的な「データ保存方法」に由来します。

従来データベースは、データをそれぞれ独立したものとして保存します。これはタンスの引き出しに服をしまうようなものです。服はいつでも取り出せますし、服を捨てることも、新たな服をしまうことも、(家主にとっては)自由です。

一方のブロックチェーンでは、データのまとまりを「ブロック」という箱に納めて密閉した後、各ブロックを鎖(チェーン)で繋いで、全体が繋がった形で保存します。鎖をちぎって別のブロックと取り替えることは(運営者さえ)できません。新たなブロックを作ると、一番最後に作ったブロックの後ろに、鎖でつながれます。

また、ブロックチェーンは分散管理であることも特徴の1つです。

従来、データベースは1箇所にしか置いていなかったので、持っている方の家を訪問し、見せてください、とお願いして拝見していました。しかし、ブロックチェーンでは関係者全員が同じデータベースを所有して、いつでも内容を見ることができます。

ブロックを追加するときには「今から追加するよ」と全員に了解を取った後で追加するので、データの追加に少々時間が掛かります。

IoTとは?IoTの抱える課題

あらゆる「モノ」をネットワークに接続するシステムや、その試みを Internet of Things(IoT)と呼びます。インターネット回線の高速化とセンサー数の増加によって生まれた概念です。

IoTはネットワーク経由でセンサーやアクチュエータ(入力電気信号を物理的運動に変換する装置)を遠隔操作します。これにより様々な恩恵が得られると言われています。

例えば、橋にセンサーを付けて情報を常時取得すれば、橋の劣化や亀裂を見つけるためにわざわざ人を派遣する必要がなくなります。

皮膚にセンサーを付ければ、発汗や心拍、体温、血中成分を分析ができます。病気の初期症状や精神的不安、生活サイクルをモニタリングして、健康増進のための適切なアドバイスが可能です。

空想に夢が広がるIoT。しかしながら、社会的にも技術的にも抱える問題は少なくありません。そもそも生活を常時監視されることを良く思わない人も一定数存在し、IoTの普及には彼らの説得が避けては通れないでしょう。

そちらは政治や広告業者に任せることとし、以下では技術面で抱える課題を一部紹介します。

セキュリティ問題

1つ目の課題は「セキュリティ」です。センサーデバイスから送られるデータは、書き換えられたり、読み取られる可能性があります。

IoTという技術は膨大な数のセンサーに支えられています。IoTを使ったシステムを巨大な家だとすればセンサーはその入口、つまり玄関です。玄関の数が膨大な家を想像してみて頂けば分かる通り、大変悪さをしやすそうな構造をしています。

玄関を通り過ぎる情報を盗み見たり、書き換えたり、虫を紛れ込ませて嫌がらせをしたりしても、玄関が多ければバレなさそうです。

IoTを実現するためには玄関を通過する情報群を、外的から毅然とした態度で守らねばなりません。

センサー数のスケーリング問題

建て増しを前提に家屋を建設することは稀ですが、IoTでは後からシステムの構成要素であるセンサーを増やすことは珍しくありません。

IoTシステムは建て増しが簡単なので、それを前提としてシステムが構築されます。というのも「1コ数十円」程度の非常に安価な使い捨てセンサーを用いる場合も多いからです。

しかしその場合、センサーの数が増え続けると、アクセス記録や情報処理に必要な労力も増加していくことになります。コンピュータに求められる処理性能も高いものになり、当然そうした機器はお値段も高くつきます。

これがIoT実現に向けた第2の課題、「センサー数のスケーリング問題」です。スケーリングとは雪だるまのように、加速度的に巨大化することを意味します。

ここで挙げた課題は一部に過ぎません。その他、IoTの基本や、解決すべき課題、最新動向などについて詳しくは以下で解説しています。ご一読ください。

IoTとは?IoTの最新動向と活用事例をわかりやすく解説 | Locus Journal

ブロックチェーンが解決するIoTの課題

ここまでIoTの課題を紹介してきましたが、ブロックチェーンを使えば、これら課題を解決できるかもしれません。

それぞれの課題がどのように解決されるのか解説していきます。

耐改竄性 & 透明性 → セキュリティ問題

ブロックチェーン上の情報は耐改竄性と透明性を持っています。これら特徴はIoTデータ通信におけるセキュリティやデータの信頼性を高めることが可能です。

分散管理 → スケーリング問題

ブロックチェーンは中央データベースを介さず、末端の機器同士で相互に通信し、情報を共有します。つまり、中央に情報が集中してパンクすることがありません。また、ハイスペックで高価なコンピュータが不要になります。

スケーリング問題を解決できるだけでなく、システム運営コストも同時に下げられるというわけです。

とはいえ、末端の機器ではブロックチェーン上に保存されている全てのデータを保存できません。ここでは一工夫必要になります。この問題に対しては、主要なデータは外部の記憶容量に保存して、各末端の機器ではメタデータのみを共有する、という解決手段が一般的です。少々難しいので、例え話をします。

ブロックチェーンを「図書館」と考えてみてください。図書館に勤める司書(あるいは図書検索システム)は各々が本の貸出や入荷、紛失などを管理しています。しかし、本の中身まで含めたすべてを記憶しているわけではありません。

図書の名前や分類番号というメタデータ(データについてのデータ)のみを全員が共有し、本の中身の膨大な情報については管理しないのです。「この本を借りたい」と言われたときだけ、すぐに取り出せる状態にしておけば問題ありません。

ブロックチェーンもメタデータとして管理すれば、管理する情報量が少なくて済みます。センサーの数が膨大になったとしても、共有すべきデータの容量はとても小さなものになるでしょう。

IoTにおけるブロックチェーン活用の現状

ブロックチェーンが示すIoTの課題解決方法は明解で、シンプルです。しかし、狙った通りにブロックチェーンが活用されているかと言えば、そうとは言い切れません。

ブロックチェーンの活用状況について見ていきます。

ブロックチェーンのハイプ・サイクル

ガートナー社は、ブロックチェーン技術の成熟度を表すハイプ・サイクルは幻滅期にあると主張しています。

ブロックチェーンに対する過度な期待は薄れ、ブロックチェーン関連のビジネスから撤退する企業も現れ始めました。ブロックチェーンが実用的な拡張性を得るのは早くとも2028年頃になるだろうと予想しています。

ブロックチェーンのコア技術は現在も進歩しています。今後のブロックチェーンの発展は、技術面と運用面が良好に適合する分野の開拓が鍵となりそうです。

出典:ガートナー、「ブロックチェーン・テクノロジのハイプ・サイクル:2019年」を発表

IoT×ブロックチェーン分野における課題

IoT×ブロックチェーン分野においても、様々な課題が行く手を阻んでいます。

ブロックチェーンは原理的に高い耐改竄性を持つとはいえ、ソフトウェア的バグによりセキュリティに脆弱性が生じることは十分有り得ることです。

また、ブロックチェーンはその構造上、データ保管効率が宜しくありません。従来のデータベースと同じデータ量を保管するために、その何倍もの容量が必要となります。

中央集権的な高性能コンピュータが不要である代わりに、末端の機器に従来より高い性能を要求し、複雑なシステム構成が必要です。結果として、必ずしも従来より安価なシステム運用ができるわけではありません。

現状では、ブロックチェーンを扱うことができる技術者が少ないことも問題です。上記課題への対策は(技術的)人手不足で中々進みません。

IoT × ブロックチェーンの国内活用事例

ブロックチェーンの活用には課題も多いですが、積極的に業界を牽引する企業も散見されます。以下では、そうした先駆的事例を紹介します。

NIKE / RFIDの活用による流通管理

米オーバーン大学RFIDラボは、スポーツ用品メーカーNIKEらと協力して、製品流通管理にIoTの導入を進めています。

研究チームは、製品にRFIDタグを取り付け、流通情報をブロックチェーン上に逐一記録していくシステムを構築しました。

製品情報を誰でも確認できる一方で、高い耐改竄性を持つ流通管理台帳を実現したのです。

参考資料:ナイキなどの製品22万個の流通をブロックチェーンで可視化に成功 ~米オーバーン大学がHyperledger活用のサプライチェーン実験結果を報告 – 仮想通貨 Watch

RFIDについて詳しくは以下リンクもご参照ください。

RFIDとは?最新動向と活用事例を解説! | Locus Journal

ブロックチェーンロック/カーシェア事業にブロックチェーンを活用

東京に本社を置くブロックチェーンロック社は、カーシェアリング事業にブロックチェーンを活用しました。

カーシェアにおける登録、返却などの面倒な手続きを軽減し、利便性を高めるだけでなく、セキュリティも高めることができます。

ブロックチェーンロック社の「KEYVOX」サービスは、カーシェアのみならず、ホテルの予約やレンタルスペースの利用など、様々な場面に使われています。

参考資料:ブロックチェーンロック社、エストニア国家のインフラ技術であるPlanetCrossと連携し、カーシェア事業に関する実証実験を実施|ブロックチェーンロック株式会社のプレスリリース

まとめ

本稿ではIoT × ブロックチェーンの関係性や、実現に向けた課題、実際の取り組みや現状について解説いたしました。

ブロックチェーンは、単体ではただのデータベースなので、他技術との関わり抜きに語ることができません。また、ブロックチェーンが他技術とどのように関わっているのかを知ることで、ブロックチェーンへの理解が深まるはずです。