【最新版】ブロックチェーンのビジネス活用事例をご紹介!基本からビジネスモデルまで解説

ブロックチェーンは、これまで仮想通貨ビジネスや金融領域で活用が進められてきました。最近では非金融領域にも広がり、将来的には様々なビジネスと関わっていくことでしょう。

本稿では、ブロックチェーンの特徴や他ビジネスとの関係性、今後活用が進むであろう領域や最新の活用事例について解説します。

この機会にブロックチェーンとは何か、またその真価について抑えて頂ければ幸いです。

ブロックチェーンとは?市場の変遷

ブロックチェーンとは?

ブロックチェーンとは、高い耐改竄性を持つ分散管理台帳(データベース)です。

高い耐改竄性や「ブロックチェーン」という名前は、その特徴的な構造に由来します。

通常のデータはタンスの引き出しに服をしまうように、ディレクトリ(フォルダ)毎に、それぞれ独立に格納されます。一方のブロックチェーンでは、すべてのデータはひと繋ぎの特徴的な構造で保存されます。ある程度データが溜まると「ブロック」と呼ばれるデータのまとまりを作り、それを他のブロックと「チェーン」で繋げるのです。

ブロックチェーンの仕組みは後ほど詳しく説明します。

ビジネスモデルの変遷

ブロックチェーンは、仮想通貨ビットコインの取引台帳として生まれました。その後様々な仮想通貨がこの仕組みを模倣することで、仮想通貨の一大ブームとなりました。

当初は仮想通貨ビジネス(1.0 世代)に始まり、その後金融領域(2.0 世代)へ拡大します。様々な応用展開が可能と言われていましたが、最近では非金融領域(3.0 世代)への活用事例も耳にするようになりました。

国内外の市場規模予測

矢野経済研究所調べでは、2022年度の国内ブロックチェーン活用サービス市場規模(事業者売上高ベース)予測は1,235億9,000万円です。また、2017年度~2022年度の5年間の年平均成長率(CAGR)は108.8%と予測されます。

一時期に比べ、ブロックチェーン関連のニュースを耳にする頻度は減りましたが、まだまだ成長著しい分野です。

参考資料:ブロックチェーン活用サービス市場に関する調査を実施(2019年) | ニュース・トピックス | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所

世界規模でも成長は続いていくことでしょう。Global Information, Inc. の全世界を対象とした調査によれば、ブロックチェーン市場規模は、2020年の30億米ドルから2025年には397億米ドルへと拡大します。また、CAGRは67.3%という驚異的な成長を遂げると予測されています。

最大の市場となるのは、GAFAを始めとした巨大なIT企業がひしめく北米です。

参考資料:ブロックチェーンの市場規模、2025年まで397億米ドルに成長、CAGRも67.3%を記録する見込み – 株式会社グローバルインフォメーションのプレスリリース

ブロックチェーンの仕組みと特徴

ここからは、ブロックチェーンの仕組みについて解説します。ブロックチェーンがなぜ注目を集めているのか、どうして様々なビジネスと相性が良いのか仕組みを理解する必要があります。

ブロックチェーンの仕組み

ブロックチェーンを形作る重要な概念として、「ブロックとHash関数」「不可逆性」「分散管理」の3つが挙げられます。

ブロックとHash関数

ブロックチェーンはデータベースです。いつでも取り出せる形にデータを蓄積する点は他のデータベースと大差ありません。

ブロックチェーンが他と異なるのは、データの保存方法です。ブロックチェーンはデータが一定量溜まるとデータのまとまりである「ブロック」を形成します。そして、各ブロックは「Hash関数」というチェーンで結び付けられています。

ブロックはチェーンで繋がれているので、特性のブロックを抜き出して、他のブロックで置き換える、ということが出来ません。Hash関数は、データベース全体の正しさ(改竄が行われていないこと)を担保します。

新規ブロックを作るとき、Hash関数はそれまでに連なるすべてのブロックを用いて、Hash値を算出します。Hash値とはブロックの持つ識別番号です。

既存のブロックから計算されるHash値と、新規ブロックのHash値が同一であれば、各ブロックの確かさを証明できます。

不可逆性

先に「ブロックはチェーンで繋がれているので、特性のブロックを抜き出して、他のブロックで置き換える、ということが出来ません」と述べました。

しかし、任意のブロックのデータを書き換え、空いたブロックの穴にすっぽり収まるブロックを見つけることができれば、誰に気付かれることもありません。つまり、他のブロックのHash値と矛盾しないHash値を計算することができれば、事実上改竄は可能になります。

そうした改竄を「不可能」と言えるほど困難にしているのが、Hash関数の持つ「不可逆性」です。

関数の不可逆性とは「四捨五入」という演算を考えると理解しやすいでしょう。14の十の位を四捨五入すると10になりますが、10から四捨五入する前の数字(14)を確定することはできません。これが不可逆性です。

ある数を四捨五入して、37を掛けて、四捨五入して、14足して、十の位と百の位の数を掛けて、四捨五入して、、、という計算は特段難しくありません。しかし、出てきた答えから元の数を計算する労力はどれほどか、想像に難くありません。場合によっては、答えを1つに定めることもできないでしょう。

Hash関数の計算(入力→出力)は複雑で時間が掛かりますが、Hash関数の逆計算(出力→入力)にはそれとは比較にならないほどの労力が必要です。ブロックチェーンからブロックを抜き取り、そこにすっぽり収まるブロックを作るには、天文学的な時間が必要となり改竄を困難にしています。

分散管理

通常の取引台帳であれば、オープンなものであっても何らかの管理者が存在し、その管理者は台帳の中身を自由に書き換える権限を持っています。対して、ブロックチェーンには特定の管理者は存在しません。利用者が他の全ての利用者と対等な関係にあります。

絶対的な権限を持つ管理者がいない代わりに、各利用者がブロックチェーンを分散して管理することもブロックチェーンの特徴の1つです。

各利用者はデータを入力する際にHash関数の計算を行います。その度、データに改竄が行われていないかを(利用者も知らないうちに)チェックします。こうして各利用者がブロックチェーンの堅牢性に寄与しているのです。

特徴とメリット

上記のようなブロックチェーンの構造・仕組みは、様々なメリットを生みます。

耐改竄性

上述したブロックチェーンの仕組みにより生まれたブロックチェーン最大のメリットは、高い耐改竄性能です。その仕組みは誰もが知ることができるのに、時間やマシンパワーの制約が改竄を不可能にしています。

ブロックチェーンは、システムの運営者ですら内容を書き換えることができません。

透明性

ブロックチェーン上の取引はすべて公開情報であり、利用者なら誰でも内容を確認することができます。

透明性は、ユーザーの信頼を高めるためには重宝しますが、ブロックチェーンを使用できる場面を制限する特徴でもあります。ブロックチェーンを銀行の預金通帳にそのまま適用すれば、他の利用者も自分の預金残高を確認でき、小金持ちであることが周囲にバレてしまいます。

運用コストが廉価

中央集権的なオープンデータベースであれば、多くのアクセスや操作を処理するために高速計算可能なコンピュータが必要です。

ブロックチェーンは計算の負担を利用者に分散させるため、高速なコンピュータは必要ありません。システムダウンを防ぐためのメンテナンスコストも、セキュリティソフトも不要です。よって運営コストが安くつきます。

ブロックチェーンの短所

上述した特徴も場合によっては短所になりますが、多くの場合長所として機能します。しかし、ブロックチェーンには明確な短所があります。それはスピードです。

ブロックチェーンは取引情報が正しいかどうか利用者全員で確かめながら処理を行うため、一定の時間が必要となります。即時決済が必要な場所に使うことができません。

ブロックチェーン3.0(非金融領域)のビジネスモデル

ブロックチェーンは仮想通貨から始まり金融領域へ、そして非金融領域へ拡大しています。

ブロックチェーンは「高い耐改竄性」と「透明性」を有していますが、取引スピードに関しては如何ともし難く、簡単に解決される課題ではありません。つまり、ブロックチェーンの活用が期待できるのは、情報の耐改竄性や透明性が求められ、かつ即時性が求められない場面でしょう。

例えば、非営利組織(NPO)への支援金の管理です。「恵まれない子供たちへ」「障害を持った方々へ」支援を行うという名目であっても、支援金が適切に運用されているとは限りません。資金の行方についてはNPOを信じ、委ねることしかできなったのです。

銀行のように巨大な組織へお金を委ねるならば、不正が発覚した際、銀行は多大なリスクを負うため、そうそう簡単には不正な取引に手を出しません。しかし、一民間組織に過ぎないNPOのお金の使い方を全面的に信頼することは難しいでしょう。不信感は支援者が資金を拠出する手を鈍らせます。これは、NPOにとっても、支援を受ける人たちにとっても痛手です。

ブロックチェーンはこうした問題を解決できるかもしれません。ブロックチェーンで管理された取引台帳は透明性を持ち、どこにどれだけお金を使ったか誰でも確認することができます。

また、事後に取引台帳を書き換えることもできません。支援者は安心して資金を提供することができ、NPOはこれまでより多くの信頼と利益を得ることができます。

仮想通貨ビジネスや金融領域の外側にも、ブロックチェーンと親和性の高い領域は多数存在します。例えば、IoTやトレーサビリティ、カーボンオフセット、保険業界などです。

ビジネスシーンにおける活用事例

最後に、実際のビジネスシーンにおけるブロックチェーンの活用事例をご紹介します。

ウォルマート

米国の小売最大手ウォルマートは食の安全・安心の実現のため、ブロックチェーンを活用しました。

「食の安全のためなら、多少高くてもお金を出す」という消費者層が増えたことを背景に、ウォルマートはトレーサビリティ実現への投資を増やしました。

そして、消費者が商品の生産者を追跡(トレース)できるようにシステムを構築しました。ここで大きな役割を果たしたのが、ブロックチェーンです。

ブロックチェーンを取り入れることで、食品のデータを虚偽のデータへ改竄することが難しくなり、消費者の安心感をさらに高めることができました。

参考資料:米小売最大手ウォルマート食の安心、安全に向けブロックチェーン活用 – 日経ビジネスオンラインSpecial

トヨタ、デンソー

国内自動車最大手のトヨタと、自動車部品生産のデンソーは相互補助的な関係にありますが、「会社」の壁は様々な障害を生みます。その1つが仕様の違いです。毎度異なる仕様の部品を逐一翻訳していては生産性が落ちるので、両社が共通して使うことができる生産管理台帳を作ることを考えました。

しかし、台帳を書き込む人が増えれば、悪意を持って台帳に手を加えようとする人も増えます。オープンな管理台帳はそれだけ多くのリスクも同時に抱えることになるのです。

そこで、ブロックチェーンの出番となります。両社は自動車サプライチェーンを一括管理する台帳にブロックチェーンを組み込み、改竄によるリスクを下げました。

参考資料:トヨタが始めるブロックチェーンって何だ?:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ) – ITmedia ビジネスオンライン

ソニー

ソニーが取り組むのは、デジタルコンテンツ権利の情報処理システム構築です。

今日誰でもデジタルコンテンツを発信することが可能となりましたが、それらの権利は効率的に管理されているとは言えない状況にあります。作者自身が十分に気を付けなければ、盗用を防ぐことは困難です。

著作物の権利情報処理に特化した本システムは、ブロックチェーンを活用することで、確かな権利情報を示すことが可能となります。

参考資料:Sony Japan | ニュースリリース | ブロックチェーン基盤を活用したデジタルコンテンツの権利情報処理システムを開発

まとめ

本稿では、ブロックチェーンの基礎から、ビジネスとの関係、様々なビジネスでの活用事例を紹介しました。

ブロックチェーンの仕組みや特徴を理解すると、様々なビジネスと高い親和性があることが分かります。