ファクトリーオートメーションがもたらす4つのメリットとは?スマートファクトリーとの関係性についても徹底解説!!

ファクトリーオートメーション(FA)は、工場で製造工程の自動化が始まった1950年代ごろから使われている言葉で、現在ではAIやIoTの活用も含みます。製造業向けロボットの世界市場規模は2019年で約1兆円、2025年にはおよそ2倍の約2.3兆円にまで成長すると見込まれ、ファクトリーオートメーションの市場は順調に成長しています。

参考記事:製造業向けロボットの世界市場を調査~2019年は米中貿易摩擦の影響で縮小今後は5G普及でスマートフォン関連、半導体関連がけん引

本稿では、ファクトリーオートメーションの概要および主要メーカー、メリットを解説するとともに、製造業で注目されているスマートファクトリーとの関係についても触れていきます。

ファクトリーオートメーション(FA)とは

ファクトリーオートメーション(Factory Automation)とは、生産工程を自動化すること、またはそのシステムを指します。

JIS規格では「工場における生産機能の構成要素である生産設備(製造,搬送,保管などにかかわる設備)と生産行為(生産計画及び生産管理を含む。)とを,コンピュータを利用する情報処理システムの支援のもとに統合化した工場の総合的な自動化。」と定義されています(JIS  B 3000:2010)。

ファクトリーオートメーションの要素技術

ファクトリーオートメーションでは、センサー、RFID、産業用ロボットなどの技術を用いて「測る」「制御する」ことで「工場の自動化」を行います。生産技術の精度向上に伴い、ファクトリーオートメーションも大幅に進化しています。

センサー

温湿度センサー、画像センサーなどにより対象物の状態や変化を把握します。製品に付いた傷を検出する検品システムや、サイズ把握による自動仕分けなどの分野で活用されています。

ファクトリーオートメーションに必要不可欠なIoTセンサーについて、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

参考記事:IoTセンサーとは?IoTに不可欠なセンサーの役割と活用事例

RFID

RFIDタグを取り付け、専用のリーダーライターで読み取ることで個体識別情報を管理します。ピッキング自動化やコンテナの管理などの分野で活用されています。

RFIDについて詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事をご覧ください。

参考記事:RFIDとは?最新動向と活用事例を解説!

産業用ロボット

腕のような動きが可能な垂直多関節ロボットにより、人間の代わりに作業を行います。製品の運搬、組み立て、仕分けなどの分野で活用されています。

産業用ロボットについて詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事をご覧ください。

参考記事:産業用ロボットの基本と世界4強メーカーを初心者向けに解説

ファクトリーオートメーションの主要メーカー

三菱電機

幅広いソリューションを提供する総合FAメーカーで、製造機器のほとんどが国内売上シェア上位です。

キーエンス

各種センサー、2次元測定器などの計測機器を製造・販売するメーカーです。

SMC

空気圧制御技術に強みを持ち、関連する自動制御機器を製造・販売しています。

横河電機

売上の約9割を制御事業が占めます。ここ数年は海外制御事業の比率が向上しています。

アズビル

1906年に創業されました。元々は、工業機械・計器の製造を行うメーカーでしたが1950年代からオートメーション事業に進出しました。計測と制御に強みを持ち、AI・IoTと組み合わせた高度な計測・制御装置や監視システムを開発しています。

オムロン

売上高の半分以上をFA分野が占めます。センサー技術に強みを持ち、センサーやロボット、制御機械が主力事業で制御機器関連の国内シェアは約40%です。

ファクトリーオートメーションとスマートファクトリーの違い

ファクトリーオートメーション」と似た概念として「スマートファクトリー」があります。

スマートファクトリーは、ファクトリーオートメーションと比較し、明確な定義はなく、一般的にドイツ政府の国家戦略「インダストリー4.0」の世界を体現した工場、すなわちIoT・ビッグデータ・AI・ロボットなどのデータを活用して、ネットワーク化、自動化、全体最適化された工場を指します。

スマートファクトリーにはセンサーによるデータ取得(IoT)、データ分析(AI)が不可欠です。機器同士をネットワークでつなぎ、データ分析結果に基づいて自律的に動作させることで「自分で最適な状態を考える工場」を実現します。

どちらも生産工程の自動化を行う点では共通していますが、ファクトリーオートメーションが生産工程のひとつひとつを自動化することを目的としているのに対して、スマートファクトリーはデータを活用して工場全体を最適化することを目的としています。

スマートファクトリーを実現する手段のひとつがファクトリーオートメーションだと言えるでしょう。

スマートファクトリーについて詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事をご覧ください。

参考記事:スマートファクトリーとは?実現に必要な2つの要素と成功事例をご紹介!!

製造業の国内回帰と人手不足

近年、製造業のトレンドとして、アジア諸国の人件費上昇や品質管理上の問題などを理由にした国内回帰があります。

さらに、新型コロナウイルス感染症の影響で、海外生産していた部品の輸入が途絶えるなど、グローバル化したサプライチェーンの脆弱性が明らかになったことで、国内回帰の流れは一層加速すると考えられます。

政府も2020年度にサプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助⾦として、2,200億円を投じるなど、生産拠点の国内回帰を推進しています。

こちらの記事では、With/Afterコロナ時代のサプライチェーンにおいてのトレンドを解説していますので、ぜひご覧ください。

参考記事:With/Afterコロナのサプライチェーン改革とは?押さえるべき4つの最新トレンド

一方で、国内では深刻な人材不足の問題があります。国立社会保障・人口問題研究所が公表している資料によると、生産年齢人口(15~64歳)は2015年には7,700万人以上だったのが2040年には6,000万人にまで落ち込み、約1,700万人の働き手が減少すると推計されています。

参考資料:日本の将来推計人口|国立社会保障・人口問題研究所(平成 29 年推計)

国内に生産拠点を移しても人手が不足するため、ファクトリーオートメーションが不可欠です。資生堂、ライオンといった大手メーカーでも国内回帰の動きが進んでいます。

資生堂

大手化粧品メーカーの資生堂では中長期戦略として「Vision2020」を掲げており、「SHISEIDO」をはじめとする高価格帯のプレステージブランド(いわゆる“デパコス”と呼ばれる対面販売ブランド)や販売が伸びているエリクシールなどのスキンケアブランドの販売を強化しています。

これら中高価格帯ブランドでは、メイドインジャパンに付加価値がつき安心安全に対するニーズも高いことから国内工場での生産を推進しています。2019年末には国内36年ぶりとなる栃木県那須工場を竣工し、国内生産体制を整えています。

同社ではもともと大量生産型の低価格帯ブランドでは製造自動化を進めていましたが、多品種小ロットで、かつ、構成材料も多いプレステージブランドでは自動化が遅れていました。

しかし、ロボットの活用によって徐々に自動化を進めています。前述の那須工場でも、設備稼働状況を把握するIoTシステムやデジタル化されたライン管理を導入するなど、最先端の技術を取り入れた工場づくりを行っています。

ライオン

日用品メーカーのライオンと大日本印刷(DNP)は2019年10月、ライオンが建設中の歯磨き粉の新工場に隣接して、容器工場を設置すると発表しました。これは歯磨き粉工場で製造した中身を容器工場へ自動搬入し、内容を充填する工程までを無人化する目的があります。

一般的な商材では印刷した容器を製造工場へ搬入して箱詰めすることになりますが、チューブ歯磨き粉のように内容物の充填が必要な商材では製造した中身のほうをパッケージ製造工場側に搬入する必要があります。工場を隣接させ自動運搬することで省人化、大幅な効率化が期待できます。

ファクトリーオートメーションがもたらすメリット

ファクトリーオートメーションの導入メリットとして、「人件費削減」「品質安定」「生産性向上」「データ取得」の4つのメリットが挙げられます。

①人件費の削減ができる

今まで人手で行っていた作業を機械が行うことで人件費の削減が期待できます。従来は人件費が安い海外に生産拠点を置いてコスト削減を行っていましたが、近年アジア諸国でも人件費が高騰しており、輸送費なども含めると海外生産のメリットはなくなってきています。

②標準化・品質が安定する

担当者ごとにバラツキが出る工程を自動化することで、製品が標準化され、品質が安定します。

③生産性が向上する

機械が作業を24時間365日行うため生産性が向上します。また長時間労働や夜間勤務などの人的負担も軽減できます。

④デジタルデータを取得できる

自動化することで、作業機械に設置したセンサーからデータを取得できるようになります。蓄積したデータは故障検知や各種分析への活用が可能です。

ファクトリーオートメーションとIoT、そしてスマートファクトリーへ

ファクトリーオートメーションは、5GやIoT、AI(人工知能)といったテクノロジーを取り入れることによって、従来の工程自動化から一歩進んだ、「データ活用によって工場を自動化、全体最適化する」スマートファクトリーの方向へと向かっています。

背景には、デジタルトランスフォーメーション(以下DX)の重要性が高まっていることがあります。企業が生き残るために最先端のテクノロジーを活用して、新たなビジネスモデルや企業価値を生み出す必要性が強く訴えられており、製造業にとってはスマートファクトリーがDX実現の手段になります。

例えば、工場内の閉じたネットワークで管理していたデータをクラウド上に保存し、複数ある工場の稼働状況比較や社内販売データと連携した分析・予測を行うことで、工場の制御や最適化を図ります。

2019年末からは企業が敷地内で自営できるローカル5Gの申請も開始されました。高速大容量な通信を利用できる環境が整うことで、より大量のデータをやり取りできるようになります。

一方で、工場のスマート化によって思わぬ被害に遭う場合もあります。2020年6月には自動車メーカーのホンダがサイバー攻撃にあい、海外工場を含む11拠点での生産がストップしました。

内部サーバーがマルウェアに感染し、そこから社内や海外拠点、工場などに被害が広がったと見られています。工場がインターネットにつながるのは多くのメリットがある反面、サイバー攻撃のようなセキュリティリスクも増えるため適切な対応が求められます。

こちらの記事では、様々なデジタル化に伴い、2020年以降に求められるセキュリティについての重要性や具体的な対策について解説していますので、ぜひご覧ください。

参考記事:2020年以降に求められるIoTセキュリティとは?セキュリティの重要性と具体的な対策を徹底解説!

まとめ

今のまま、なにも手を打たなければ2030年には生産労働人口が減り、製造業を担う人材不足の問題はさらに深刻化します。

しかし、ファクトリーオートメーション、さらにはスマートファクトリーを実現しDXを推進することで、製造業を含む全産業で2030年に実質GDP130兆円超に押上げるシナリオが描かれています。

多くの製造業にとって生産工程の自動化は不可欠ですが、それは人材不足に対応し、効率化を実現するだけではありません。自動化によって将来の変化に柔軟に対応しDXを実現することが自社の競争力を高めることになるでしょう。

参考資料:DXレポート~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~

DXの基礎知識や活用事例について、以下の記事で詳しく説明していますので、ぜひこちらについてもご覧ください。

参考記事:デジタルトランスフォーメーションとは?革新的な3つの活用事例から学ぶ技術戦略