ピッキングとは?ピッキング種類から業務効率化の方法まで徹底解説

倉庫業においてピッキングは重要な役割を持ちますが、商品探索に時間がかかったり、誤出荷をしてしまったりと、課題を抱える企業が多いでしょう。

近年では、次世代物流システムの登場やRFIDタグの低価格化・高性能化が進んでいます。それにより、この機会にピッキング作業の見直しを行う企業が増えています。

富士経済の調査報告書「次世代物流システム・サービスの市場を調査」では、次世代物流システム市場は、2025年度に8,496億円に達すると予測されています。2017年度は4,405億円の市場規模のため、5年間で市場規模は約2倍に伸びているのです。

この市場調査からも、ピッキング作業の見直しをしている企業が増えていることが分かるでしょう。サービスの品質を高める動きが各社で出てきているのです。そのため、ピッキング作業効率化は、競合に打ち勝つためにも必要不可欠となります。

本稿では、ピッキングの種類から業務効率化まで詳しく解説します。ぜひ、本稿を参考にピッキング作業を見直してみてください。

ピッキングとは

ピッキングは、作業指示書(ピッキングリスト)に記載されている商品の摘み取り作業のことです。摘み取った商品は、検品担当者や梱包担当者へ渡します。ピッキングは、出庫作業に欠かせない役割を持つ作業です。あらゆる倉庫内で、ピッキングが行われていますが、倉庫規模が大きいほど、取扱商品数が豊富となります。

 

メリット

デメリット

シングルピッキング

  • 作業内容がシンプル
  • 作業精度が高い
  • 作業員の移動距離が長い
  • 同一商品を何度もピッキングすると無駄が多い

トータルピッキング

  • 作業員の移動距離が短い
  • 同一商品を何度もピッキングする必要がなく無駄を省ける
  • 仕分け作業に熟練を要する
  • 仕分け場所が必要

マルチオーダーピッキング

  • 同一商品を何度もピッキングする必要がなく無駄を省ける
  • 仕分け場所が不要
  • 仕分け作業に熟練を要する
  • 誤出荷の恐れがある

デジタルピッキングシステム

  • ヒューマンエラーの防止
  • 進捗管理の可視化
  • 導入コストがかかる
  • トラブル発生時に復旧対応が必要

デジタルアソートシステム

  • ヒューマンエラーの防止
  • 作業標準化
  • 導入コストがかかる
  • 保管場所の変更ができない
  • トラブル発生時に復旧対応が必要

音声認識ピッキング

  • 両手で作業ができる
  • 導入コストがかかる
  • トラブル発生時に復旧対応が必要

レーザーピッキングシステム

  • 両手で作業ができる
  • ヒューマンエラーの防止
  • 作業標準化
  • 導入コストがかかる
  • トラブル発生時に復旧対応が必要

ピッキング作業は企業ごとに異なる

ピッキング作業は企業ごとに異なります。小さな商品を取り扱う企業もあれば、台車に載せて運ばなければならない大型商品を取り扱う企業もあります。冷凍食品のピッキング作業では、防寒着を着用してピッキングをしなければいけません。

このように、各企業でピッキング作業は異なるため、作業効率化の方法も異なります。最新システムを導入することが正解であるとは限らず、自社に合ったものを採用することが大切です。

各企業が抱えるピッキング作業の課題は様々です。ピッキング指示の課題は以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

ピッキング指示の課題と解決方法!最新のピッキング動向もご紹介

ピッキング方法の種類

ピッキングの方法は大きく3種類あります。それぞれの特徴を理解した上で、最適なピッキング方法を採用しましょう。

1.シングルピッキング(摘み取り方式)

シングルピッキングとは、出荷オーダーごとに商品を摘み取る作業方法です。1件ずつ出荷オーダーごとに作業するため、お客様の注文内容に合わせた正確な作業が行えます。そのため、一般消費者向けの通販サイトで採用されるケースが多いです。また、作業方法がシンプルなため、新人でも簡単に作業が行えます。

2.トータルピッキング(種まき方式)

トータルピッキングとは、まとめてピッキング作業してから、仕分けをする作業方法です。複数のオーダーの商品をまとめて摘み取るため、商品探索時間や倉庫内移動距離を短縮できます。

しかし、梱包する前に仕分け作業が必要となるため、そのスペースを確保しなければなりません。取扱商品数が少なく、出荷件数が多い企業で採用されるピッキング方法です。

3.マルチオーダーピッキング

マルチオーダーピッキングとは、複数オーダー分のピッキングと仕分けを同時に行う作業方法です。シングルピッキングとトータルピッキングの長所を併せ持つ方法です。

しかし、作業者の負担が大きくなり、複数オーダーの商品摘み取り作業や仕分け作業を行わなければならないため、ヒューマンエラーが発生しやすくなります。

ここでは、3種類のピッキング方法をご紹介しましたが、表示器や音声認識システムを活用したピッキング方法も登場しています。

ピッキング方法の種類の詳細が知りたい方は以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。
どれが早い?ピッキングの種類の解説とスピードアップ方法を大紹介

ピッキング作業効率化のポイント 

ピッキングの方法以外でも、ピッキング作業の効率化を図るコツがあります。ここでは、ピッキング作業効率化のポイントをご紹介します。

ロケーション管理を行う

ロケーション管理とは、倉庫内の在庫保管場所を管理することです。保管場所1つ1つの番号を設定して、商品と紐づけます。ロケーション管理をすることで、探索時間の削減など、生産性向上が可能です。

また、出荷が多い商品は移動距離が短くなるように配置するなど、ロケーション管理を適切に行うことで作業効率化が図れます。

副資材の使い方を見直す

副資材の使い方を工夫することで、ピッキング作業効率化が図れます。例えば、ピッキング作業に梱包作業も付随する場合は、作業性の高い緩衝材を使用することで、作業効率化が図れます。また、製函機や自動梱包機などを導入することによって、処理待ちを削減することができます。

作業標準化(マニュアル化)する

現場作業者が作業方法・手順を迷わないように、マニュアルを整備することが大切です。マニュアルを整備しなければ、作業方法が作業者によってバラバラになり、生産性に悪影響を与えます。誰が作業しても、一定水準以上の成果が出せるように、作業を標準化しておくことが大切です。

デジタルピッキングシステムを導入する

デジタルピッキングシステムを導入すれば、作業指示書のペーパーレス化を実現できます。作業者はタブレットなどのデバイス上の指示に従って、ピッキングすることに集中できます。その結果、作業が効率化します。

業務効率化を実現するデジタルピッキングには、様々な種類があります。以下の記事で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。

デジタルピッキングのメリット・デメリットを解説

マテハン機器を導入する

物流の現場では、荷物の積み下ろしや運搬作業などの重労働があります。マテハン機器は、フォークリフトや台車など、運搬作業に使用される機器のことで、マテハン機器を導入することで、運搬作業の効率化が図れます。

ピッキング支援ロボットを導入する

近頃は、ピッキング支援ロボットが登場しています。作業者の場所までピッキング棚を搬送するGTP(Goods to Person)型ロボットなどがあります。これらを活用すると、作業員の負担を軽減することができます。

ピッキング支援ロボットについては以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

ピッキングロボットで作業時間を1/4に!物流業界の救世主を徹底解説!

ここからはピッキング作業の効率化に有効な「デジタルピッキング」「マテハン機器」をさらに詳細にご紹介します。

デジタルピッキング

デジタルピッキングシステム

デジタルピッキングシステムは、デジタル表示器を利用してピッキングするためのデジタルシステムです。商品棚に表示器を備えつけて、表示器のランプに従って商品をピッキングするだけなので、作業員の経験やスキルに関係なく、作業を標準化でき、生産性向上が見込めます。

デジタルピッキングには他にも様々な方法があります。

デジタルアソートシステム

デジタルアソートシステムは、アソート(種まき)向けの仕分け作業を支援します。倉庫現場に応じた表示機が用いられ、在庫管理データと連携させることで、商品を何個仕分ければ良いのかを表示器で確認することができます。

デジタルアソートシステムを導入すれば、探索時間を短縮できるだけではなく、仕分けミスを減らすことができます。

音声認識ピッキングシステム

音声認識ピッキングシステムは、音声指示に従って棚番を確認して、数量の音声指示に対して必要個数分を摘み取る作業方法です。ハンズフリーになるため、リストピッキングやバーコードピッキングと比較すると作業効率化が見込めます。

RFIDピッキングシステム

RFID(Radio Frequency IDentification)は、無線でRFIDタグ(ICタグ)を読み取る技術です。商品にRFIDタグを取り付けて、在庫数を把握します。

RFルーカスは、RFIDを用いて、商品在庫の保管場所をマップ上に可視化する「Locus Mapping」システムを提供しています。どこに何があるかが可視化されることで、効率的にピッキングを行うことができます。

また、株式会社エスケーエレクトロニクスの「Picking Tag」を連携した活用方法をご紹介します。Picking Tagは、配線がなく太陽電池で稼働するため、電池交換のメンテナンスが不要で、RFIDタグを内蔵した無線方式が採用されています。これによって、従来のデジタルピッキングシステムが抱える、配線や電池交換の課題を克服しています。ただし、広いエリアでは、光るPicking Tagが離れていると、目視で確認できないこともありました。
そこで、Locus Mappingと組み合わせれば、ピッキングタグに搭載されたRFIDタグを読み取って、棚位置を自動登録し、広いエリアでも、Picking Tagのある棚を瞬時に特定できます。また、管理対象物にRFIDタグを貼付しなくても活用できることが特徴です。詳しくは、以下のオンラインセミナーアーカイブ動画をご参照ください。

マテハン機器

マテハン機器とは、フォークリフトやピッキングカートなど、運搬業務を効率化するための荷役機器のことです。

マテハン機器の導入効果

マテハン機器を導入することで、運搬作業時間が短縮できたり、作業の安全性を確保したりすることができます。

ピッキングカートも複数可変式間口やタブレット搭載型が登場しており、ピッキング作業効率化も図れるようになっています。

フォークリフト

フォークリフトは、油圧を利用して昇降ができる荷役自動車のことです。車体前方のフォークで重量のある荷物を持ち上げて走行できるため、荷物移動の作業時間の短縮が見込めます。このフォークリフトには、リーチリフトとカウンターリフトの2種類があります。

・リーチリフト

リーチリフトは、操縦士が立ちながら操作を行います。フォークが伸び縮みしたり、タイヤが約90度回転したりするので小回りが利きます。しかし、ハンドルとレバー操作をしなければならないため、操作が難しいです。

・カウンターリフト

カウンターリフトは、自動車のように座席に座りながらハンドルを操作します。後方部の重りでバランスを保っているため、安定的に荷物を運ぶことができます。しかし、小回りが利かない分、作業場が狭い場合は不向きです。

ピッキングカート

ピッキングカートとは、摘み取った商品を運ぶために使用する台車です。タブレットが搭載されているものや重量計測ができるものなど、様々なピッキングカートが登場しています。

自動倉庫型ピッキングシステム

自動倉庫型ピッキングシステムは、コンテナとロボットが入出庫を行う次世代型倉庫のことです。コンテナを高密度に収納して、ロボットがコンテナを出し入れします。出庫時間が短縮できて、高い能力を発揮するピッキングシステムです。

マテハン機器については以下の記事でも詳しく紹介しています。ぜひご覧ください。

ピッキング作業効率化!おすすめフォークリフト&ピッキングカート

まとめ

本稿では、ピッキングについて解説しました。
各企業でピッキングの課題は異なりますが、デジタルピッキングシステム、マテハン機器、ピッキング支援ロボットなど、様々なソリューションが登場しています。

ピッキング作業の効率化を考えている方はぜひ自社にあったピッキングソリューションを検討してみてください。

以下の記事では、ピッキングに関わる在庫管理の方法について紹介しています。ぜひご覧ください。

在庫管理とは?基本から効率化するツールまで徹底解説