IoT活用事例を一挙大公開 〜工場・物流・医療編〜

  • 3月 30, 2020
  • IoT
IoT

近年、通信技術の発達により、スマートフォン、ウェアラブル端末、家電、ヘルスケア機器、乗用車など、身の回りのあらゆるモノに「IoT」が導入されています。

また、2020年から、日本で5G「第5世代移動通信システム」の提供が開始され、5Gのインフラが整備されることもあり、IoTはより普及し経営に大きな影響を与えるでしょう。

しかし、「IoT」という言葉は知っているが、具体的に活用されているイメージが湧かないという方も多いのではないでしょうか?

そこで、本稿では、

  • IoTの仕組みと市場動向
  • 業界別の最新IoT導入事例
  • 海外の最新IoT導入事例
  • IoT導入時の課題

など、業界別に国内外で導入されている、最新のIoT事例や導入時の課題をご紹介します。

IoTの仕組みと市場動向

IoTとは何か

IoTは「Internet of Things」の略称で、家電や自動車などのモノがネットワークにつながる技術のことを指します。IoTはモノ自体、あるいはモノに取り付けられたセンサーが通信機能を保有しているため、ネットワークを経由して情報の送受信が可能です。

また、IoTを活用することによって、遠隔から対象のモノを操作できるため、様々な分野や領域での活用が期待されています。

IoTの仕組み

IoTの対象となるモノには、センサーや無線通信機能が搭載されており、モノの状態や動きを感知して情報を収集します。収集した情報をネットワークを介して解析し、人やモノに伝達するという一連の流れがIoTの基本的な仕組みです。

このIoTの仕組みを利用することで「モノを操作する」「モノの状態を知る」「モノの動きを検知する」「モノ同士で通信し合う」ことが可能になります。

IoTの市場動向

世界110ヵ国以上における、IT産業分野の市場機会や動向を調査している調査会社IDCによると、IoTに対する総支出額は、2019年に7,450億ドルで、2018年の支出額6,460億ドルを15.3%も上回る形となりました。2022年には、1兆ドルの大台に乗ると予測されています。

業界別で総支出額を見ると、製造(組立製造1,190億ドル、プロセス製造780億ドル)・物流(710億ドル)・エネルギー(610億ドル)業界が高い比率を占めています。また、2017年から2022年までの年間平均成長率を見ると、保険(17.1%)・中央官庁(16.1%)・医療(15.4%)業界が伸びていることが分かります。

参考:2019年、全世界のIoT支出額は製造、個人消費者、運輸、公共/公益といった産業分野がけん引し、7,450億ドルに達するとIDCが予測

次の段落では、IoT機器の導入が加速している、製造業界・物流業界・医療業界での導入事例をご紹介します。

業界別のIoT導入事例

医療業界

(1)排泄予知デバイス 「DFree」

「目指すは、おむつゼロの社会」を目指し、トリプル・ダブリュー・ジャパンが開発した、世界初の排泄予知デバイスです。人体に影響のない超音波センサーで膀胱変化を捉え、専用アプリでスマートフォンやタブレットから排尿のタイミングを事前に知らせます。下腹部の恥骨の上に超音波用のジェルと医療用テープで固定するだけなので、装着は簡単です。

介護施設や在宅介護でのトイレ誘導や自立支援に活用できます。一台導入すると、約3万円以上のおむつ代の削減につながるという報告も上がっているため、大きな注目を集めています。

[参考文書]排泄予測ロボット DFree(ディーフリー) トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社

(2)患者の見守りシステム「biblle」

認知症予知技術の開発をしている、ジョージ・アンド・ショーンが開発したソリューションです。biblleは、失くし物の防止を目的に日本国内で普及してきました。行方不明者の探索にも活用でき、医療施設や介護施設での患者の見守りにも効果があるとして国内の病院に導入されるなど、大きな注目を集めています。

[参考文書]タグの位置情報・距離を表示することができる なくしもの防止・見守りタグ | biblle

(3)通過検知システム「RecoFinder 」

TEIJINが開発した、UHF帯ICタグ(RFID)を用いた常時監視システムです。電波の範囲を限定する技術を活かした、通過検知システムです。管理対象物のみ正確に検知することができ、リアルタイムにデータを記録することが可能です。

医療施設では、ME機器管理・手術材料管理・SPDカード管理・カテーテル管理・内視鏡管理・受信者管理・入出荷管理に利用できるとして、大きな注目を集めているソリューションです。

[参考文書]UHF帯ICタグを用いた常時監視システム | RecoFinder®とは

物流業界

(1)物流情報プラットフォーム「MOVO」

「運ぶを最適化する」をミッションとしているHacobuが「MOVO」を提供しています。

「MOVO」とは企業間物流の最適化を図るための、クラウドベースの物流情報プラットフォームです。「MOVO Berth(トラック予約受付)」「MOVO Fleet(動態管理)」「MOVO seek(流通資材モニタリング)」「MOVO vista(配送案件管理)」など、さまざまなサービスがあります。

動態管理は、抜き差し可能なスティック型車載端末が支給されるため、端末購入が不要で、車両1台あたり月額1,780円と低価格で導入することができます。5秒に1回位置情報を取得し、車両の細かい動態を把握できます。また、ジオフェンス機能という、位置情報を使って地上に仮想の境界線を作り、その出入りを把握する機能が搭載されており、ドライバーの操作なしで自動的に到着記録や滞留時間の記録も残せます。

[参考文書]MOVO | クラウド型物流ソリューション

(2)在庫管理自動化IoT機器「SmartMat」

SmartMatとは、マットが一定の頻度で商品の残量を計算し、在庫管理や自動発注をしてくれるマットです。汎用性が高く、在庫管理自動化IoT機器として注目を浴びています。在庫の下にマットを設置すれば、在庫表の作成やバーコードスキャンが不要になり、入出庫管理が自動化できます。

入出庫管理表は、日次、週次、月次で表示することができ、Webブラウザ上で動くため、スマートフォンで管理が可能です。また、A4・A3サイズのため、持ち運びしやすいことも大きな特徴です。そのため、PCがない飲食店やホテルなどのサービス業で普及しています。

[参考文書]在庫管理をかんたん自動化|IoT|重さを検知して自動棚卸、発注

(3)荷物の状況管理システム「World Keeper」

「World Keeper」は、陸上・海上・航空輸送での貨物の郵送状況をリアルタイムに監視・管理することができる物流ソリューションです。

例えば、輸送トラブル情報がアラート機能でいち早く知ることができるので、高額商品や希少品の輸送、盗難リスクが高い地域への輸送時に効果を発揮します。温度センサーや衝撃感知センサーも付いており、輸送過程を可視化します。

また、ASP方式(ソフト期間貸)で低コストで導入できるため、大手物流フォワーダー、航空キャリア、損害保険会社などで採用され始めています。

[参考文書]World Keeper|物流機器・輸送機器のレンタル

製造業界

(1)顧客協創基盤「Lumada」

「Lumada」は日立製作所が提唱しているIoTプラットフォームです。illuminate(照らす・輝かせる)とdataを組み合わせた造語で、「埋もれているデータに光を当てる、そしてデータによって顧客の未来を照らす」という意味が込められています。

IoTの進展により、社会やビジネスが生み出すデータは、急速的に増え続けています。これらのデータを活かすことが企業には求められます。日立製作所では、Lumadaに蓄えられる情報を積極的に活用していきたいという企業のコンサルティングサービスも提供しています。

[参考文書]Lumada とは:Hitachi IoT Platform Magazine

(2)在庫・物品管理システム「Locus Mapping」

「Locus Mapping」は、個体認識技術「RFID」と先進技術を掛け合わせてモノの所在と移動を可視化する社会の実現を目指している、RFルーカスによって開発されました。

入出庫管理・探索・自動マッピングの3つの機能を備えており、製造現場の在庫・物品管理/棚卸しのような非生産的時間を削減するためのソリューションです。

RFIDタグが付けられた在庫や備品の位置を取得して、デジタルマップ上に表示することができ、レーダー型の探索機能で簡単に探し物を見つけることも可能です。

安価なRFIDタグとLocus Mappingを組み合わせることで、位置情報を含めて在庫・物品管理が実現できます。

[参考文書]Locus Mapping | RFLocus

(3)製造現場の遠隔監視サービス「CareQube+」

「CareQube+」は、クオリカが提供している遠隔監視・予防システムです。IoT端末を産業機械に装着することで、機械の稼働状況データを集め、専用サーバーへ自動転送します。蓄積されたデータを基に、保守業務ワークフローを解析することも可能です。データは、産業機械メーカーとも共有できるため、故障を未然に防ぐ修理依頼ができ、製造業のロスに大きく貢献しています。

[参考文書]クオリカ、保守・保全業務につながるIoTソリューション「CareQube+」をリリース

海外のIoT導入事例

NRI(Networked Readiness Index)の指標を参照すると、日本よりもIT技術を積極的に活用しているIT先進国があります。このような海外のIoT導入事例にも目を通しておくことで、IoTの知見は広がるでしょう。ここでは、海外のIoT導入事例についてご紹介します。

医療業界

(1) 子宮モニタリングシステム「Novii」

「Novii」は、GE Healthcareが開発した、ベルトやケーブルが必要ないワイヤレスの子宮モニタリングシステムです。胎児の心拍数や母体の心拍数、子宮活動を測定することができます。接続するパッチは防水仕様になっており、使い捨てのパッチとして使用できるため、業務効率化や入院患者の快適性を実現します。

また、取扱説明書やビデオなども充実しています。サポート窓口も用意されているため、アメリカのKimberly WallsやAmy Theissなどの医療機関でも導入されています。

少子高齢化が進んでいく日本の経済産業省の商務・サービスグループ ヘルスケア産業課も、未来医療を実現する医療機器として子宮モニタリングシステムを注目しているそうです。

[参考文書]Novii Wireless Patch System | GE Healthcare

(2) 服薬を管理する「Philips medication dispenser」

「Philips medication dispenser」は、服薬を管理するソリューションです。服薬過誤で注意を受ける患者数は、年間150万人といわれています。とくに、抗癌剤の誤服薬や過剰服薬による患者の死亡事故は、後を絶ちません。このような問題を解決するために、Philipsが服薬管理システムを開発しました。

このソリューションを活用すれば、服薬プロセスを自動化して、患者の自立した生活を支援できます。服薬ミスがあった場合は、アラート機能で病院に通知が届く仕組みとなっている遠隔監視システムです。海外では、病院を含む200,000人を超える医療従事者がライフライン商品として紹介するほど注目を集めています。

[参考文書]Automated Medication Dispensing Service | PHILIPS Lifeline

(3)救急病棟の病床の効率稼働をサポートするシステム「AutoBed」

ニューヨーク州のマンハッタンでは、救急病棟において、入院患者を受け入れる病床の効率化が課題になっていました。この課題に対してマンハッタンにあるマウントサイナイ病院と米医療機器メーカーのGE Healthcareで共同開発されたシステムが「AutoBet」です。

RFIDタグなどを通じて収集された病床の空き状況のデータを用いて、緊急治療室を訪れる患者の待ち時間を短縮し、年間受け入れ患者数を増やすことを目的に開発が進められています。従来は、1人の急患を病床に配置するために何度もコミュニケーションを行う必要がありましたが、AutoBedによって1度のやり取りで済むようになりました。

[参考文書]GE Healthcare Announces Development of New Applications for Caradigm Intelligence Platform

物流業界

(1)車両状態や運行状況をモニタリングする「Intangles lab」

「Intangles lab」は車両に装着したセンサーから情報収集を行い、車両状態や運行状況をモニタリングするシステムです。蓄積されたデータから、車両欠陥を引き起こす可能性や、交換すべきパーツの検出など、車両管理に関するアドバイスを行ってくれます。車両が故障する前にメンテナンスを行うことによって、車両管理コストを大幅に削減できます。

また、車両だけではなくドライバーの挙動監視、追跡もできるため、物流業界で大きな注目を集めているインド発のソリューションです。

[参考文書]Prognostic, diagnostic & Digital Twin Solution for fleets

(2)自宅に不在でも配送員が荷物を届けてくれる「AmazonKey」

「Amazon key」は、Amazon Prime会員向けに提供されている宅内配送サービスです。Amazon Key Home Kitを購入するとスマートロックとセキュリティカメラが届きます。これらのキットを設置すれば、宅配業者が荷物のバーコードをスキャンすれば玄関の鍵が解錠され、クラウドカメラの録画が始まる仕組みです。

配達予定時刻はアプリ内で通知され、配達時の様子もモニタリング可能です。その都度、配達様子の動画は記録され、いつでもユーザーは確認することができます。このような仕組みで、不在時の宅配も可能にします。

[参考文書]Key for Home: Key Smart Lock Kits: Amazon Devices & Accessories

(3)荷物の配送時間まで管理できる「バッテリーレスBluetoothタグ」

イスラエルのベンチャー企業Williotが開発しているセンサータグは、電源を必要としないバッテリーレスBluetoothタグとして大きな注目を集めています。

トレーサビリティなどの観点で、物流現場では個別管理の関心が高まっており、現在はUHF帯RFIDを活用したICタグが主流ですが、Bluetooth技術を活用した、新たなタグとして大きな注目を浴びています。RFIDタグ程ではないものの、一枚数十円と比較的安価で大きな可能性を秘めています。

[参考文書]Battery-free Bluetooth Tags | Wiliot

製造業界

(1)製造設備メンテナンスのIoTソリューション「Integral Plant Maintenance」

製造業の生産性を維持するためには、機械の継続的なメンテナンスは不可欠です。機械メンテナンスの計画を最適化して、予定外の故障などは回避しなければなりません。

「Integral Plant Maintenance」は、IoT機器からデータを収集し、潜在的なパフォーマンスとコストを改善するコンサルティングサービスです。

[参考文書]Integral Plant Maintenance (IPM) | SIEMENS

(2)作業員をIoTでつなげる「Wearables for Connected Workers」

「Wearables for Connected Workers」は、ハネウェルとインテルが共同で開発したIoT機器です。作業員はウェアラブル端末を身に付け、管理者はPCで進捗・動態・安全確認を行います。

作業員が装着するウェアラブルセンサーにより、リアルタイムで管理できます。作業実績データに基づいた生産計画、非効率な箇所を洗い出し、作業の効率化と作業スペースの安全性改善を図ることも可能です。

[参考文書]Wearables for Connected Workers

(3)IoT技術の結晶とも呼ばれる「Giga Factory」 

「Giga Factory」は、米電気自動車メーカーのTeslaが建設している工場です。低価格の電気自動車を製造する目的で建設されています。広大な面積にソーラーパネルが取り付けられており、電力はソーラーで供給される実質ゼロエネルギーファクトリーです。この工場には自動化の機器も導入され、電気自動車の組み立てにかかる人件費も大幅に削減されます。Tesla社の新しい挑戦は、自動車メーカーをはじめ、さまざまな製造会社から注目を集めています。

[参考文書]テスラ ギガファクトリー | テスラ ジャパン

IoT導入時の課題

セキュリティ対策が必要

2016年に「Mirai」と呼ばれるマルウェアを使用した、Dyn社へのサイバー攻撃がありました。Miraiを監視カメラやルーターに感染させて、周辺機器も観戦させる危険な手口で、18万台が被害に遭いました。

IoT機器は業務効率化に寄与しますが、データ管理を行う上でサイバー攻撃に悪用される危険性を秘めています。2020年には、IoT機器に対するセキュリティ要件が追加されました。IoT機器を導入する際は、メリット/デメリットを理解したリスク管理が重要です。

人材教育が必要

業務効率化を進めていくためにIoTを導入しても、高度な技術に対する理解がある人材がいなければ活用しきれません。従来の職務スキルに合わせてIoTで収集したデータの分析能力や、IoTに関する仕組みの知識が求められます。そのため、ネットワークエンジニアやインフラエンジニアなど、高い知識を持った人材獲得・人材教育が必要となります。

《まとめ》

本稿では、2020年最新の業界別IoT事例をご紹介しました。医療・物流・製造業で、様々なソリューションが登場していますが、これらを活用することによって、業務効率化を図ることが期待されています。

今後は、5Gなどの通信環境も整えられ、あらゆるモノがネットワークに接続できる時代が到来します。IoTの活用度合いが企業の成長を左右するでしょう。ぜひ、本稿を参考にしていただき、IoTの導入を検討してみてください。