業務改善に役立つフレームワーク13選|メリットや活用ポイントも解説

業務改善の必要性は理解しているものの、何から手をつけ、どのように進めればよいかがわからない方は多いのではないでしょうか。そのような課題の解決に役立つのが「フレームワーク」です。

今回は、業務改善を進める際に有用な13のフレームワークを紹介します。業務改善にフレームワークを活用するメリットや、活用のポイントも併せて解説するので、参考にしてみてください。

業務改善にフレームワークを活用するメリット

フレームワークは、「枠組み」や「構造」という意味を持つ言葉で、論理的な思考を助けるテンプレートのようなものです。ビジネスから日常生活に至るまで、多くのシーンで活用されており、適切に取り入れることでさまざまな効果が見込めます。

ここからはフレームワークを活用して業務改善を行うことのメリットを3つ紹介します。

問題が可視化されやすくなる

残業時間を減らしたい、不要なコストを減らしたいなど、業務改善に取り組む目的はさまざまです。しかし、問題点の要因やなぜその目的を達成する必要があるのかが明確でないと、本質的な改善にはつながりません。

 

フレームワークを活用し、業務の可視化を進めていくと、自社の抱える問題や課題が把握しやすくなります。具体的な取り組みや効果的な解決策も思案しやすくなるため、業務改善の成果に結びつきやすい点も、フレームワーク活用のメリットといえるでしょう。

 

企業・社員の業務負担軽減につながる

フレームワークを活用すると、問題や課題の洗い出し、解決策や優先順位の決定など、業務改善に必要なステップがスムーズに進みやすくなります。

 

業務改善が進むことで、属人化の解消や非コア業務の削減など、従業員にかかる負担を軽減できます。また、従業員がコア業務に専念できるようになるため、企業に全体の生産性向上にもつながります。

 

思考時間の短縮が可能

業務改善に役立つフレームワークには、状況や考え、思考の手順をわかりやすく図表化したものが多くあります。そのため、フレームワークに沿って考えを進めていけば,

分析や検討がスムーズに進みます。論点がずれたり、そもそも間違った検討をしたりといった心配が少ないため、思考時間の短縮にもつながります。

 

業務改善に役立つフレームワーク13選

ここからは、業務改善に役立つフレームワークの特徴やメリットについて紹介します。

 

ECRS(イクルス)の原則

ECRSは、「Eliminate(排除)」「Combine(結合)」「Rearrange(代替)」「Simplify(簡素化)」の頭文字をとった言葉で、業務改善を検討する際の視点と順番を表しています。それぞれの要素が示す視点は以下の通りです。

 

  • Eliminate(排除):不要な業務や無駄なプロセスを取り除くことはできないか
  • Combine(結合):業務をまとめることはできないか、分割すべき業務はないか
  • Rearrange(代替):業務の順番や担当者を入れ替えることはできないか
  • Simplify(簡素化):業務をわかりやすく、シンプルにできないか

 

ECRSの原則に従って業務改善に取り組む場合は、文字の並びの通り、E→C→R→Sの順番で検討を進めていきましょう。前方に置かれている要素ほど、問題として把握しやすく、改善による効果も得やすい傾向があります。

 

BPMN(ビジネス・プロセス・モデリング表記)

BPMNは、「Business Process Modeling Notation」の略称で、ビジネスプロセスをフロー形式で図表化する方法を指します。BPMNでは、国際標準規格(ISO19510)に基づいた以下のような図や記号を用いて業務フロー図を作成します。

 

  • イベント(円):ビジネスの開始、中間、終了を表します。開始は円、中間は二重の円、終了は太線の円を用いて使い分けます。
  • アクティビティ(角丸・横長の長方形):各タスクや業務内容を表します。
  • ゲートウェイ(ひし形):業務の条件分岐や並行処理を表します。条件分岐はひし形の中にクロス記号を、並行処理はひし形の中にプラス記号を記入し、使い分けます。
  • シーケンスフロー(右向き・実線の矢印):業務の手順を表します。
  • メッセージフロー(始点に円の付いた破線の矢印):異なる業務フロー図とのやりとりが必要なことを表します。メッセージフローの記号は、コメントとともに使用されます。

 

視覚的にわかりやすいことはもちろん、社内の標準化や従業員への共有がしやすい点はBPMNの大きなメリットとして挙げられます。

 

KPT

KPTは、「Keep」「Problem」「Try」の頭文字をとった言葉で、振り返りにより業務改善を行うフレームワークを指します。業務の振り返りの際に以下の3つの項目をそれぞれ書き出しディスカッションしていきます。

 

  • Keep:よかったこと・今後も継続すること
  • Problem:悪かったこと・今後はやめた方がよいこと
  • Try:今後挑戦すること

 

一般的にKPTは、それぞれの要素を付箋に書き出し、ホワイトボードや模造紙等に貼っていくという流れで行います。付箋により振り返りの内容が可視化されるため、課題や問題の早期発見につながるでしょう。また、一緒に業務に取り組んだチームやグループ全員で行うことで、組織力の向上も見込めます。

 

As is / To be

As is/To beとは、現在の状態(As is)と理想の状態(To be)のギャップを可視化・分析することで、課題や取り組むべき行動を明確にしていくフレームワークです。As is/To be分析は、一般的に以下のような流れで進めていきます。

 

  1. テーマを決める
  2. 「To be(理想の状態)」を決める
  3. 「As is(現在の状態)」を分析する
  4. 両者のギャップから課題を導きだす
  5. 課題解決のための具体的なアクションを考える
  6. 実行と振り返りを行う

 

As is/To beは長期的・短期的、組織・個人などさまざまなシーンで活用できるフレームワークです。シンプルで取り組みやすいため、業務改善の際に行う現状分析や課題の洗い出し、アクションプランの決定などにも役立ちます。

 

ロジックツリー

ロジックツリーとは、課題や問題が起きている原因を樹形図に書き出し、分解、分析することで、解決策を導き出すフレームワークです。樹(tree)が枝分かれする様子に似ていることからその名がついたといわれています。

 

業務における課題や問題が可視化されるため、チーム内での共有がしやすく、課題解決に向けた行動に取り掛かりやすくなります。

 

ロジックツリーには、問題の原因究明を目的とする「Whyツリー」、問題の解決策を見出すことを目的とする「Howツリー」などさまざまな種類があります。業務改善の目的や目標に合わせて適切に使い分けるとより効果的です。

ロジックツリー

5W2H

5W2Hは、一般的な「5W1H」に「How much(いくらで)」を加えた以下の7つの観点で事象を捉える基本的なフレームワークです。

 

When(いつ)・Where(どこで)・Who(誰が)・Why(なぜ)・What(何を)・How(どのように)・Hou much(いくらで)

 

5W2Hを活用することで、情報の抜け漏れが起こりにくく、問題点や課題点の抽出や具体的な改善計画が立てやすくなります。業務改善のみならず、プレゼンテーションや企画書作成など幅広いシーンで活用できます。

 

MECE

MECEは、「Mutually Exclusive,Collectively Exhaustive」の頭文字をとった言葉で、「モレなく、ダブりなく」事業を列挙、分類することを指します。ロジカルシンキングの基本概念とされ、物事の論理的解決に役立つフレームワークとして知られています。

 

MECEな考え方を用いると、全体像が正確に把握でき、思考時間の短縮にもつながります。業務改善を行う際、漏れや重複のないよう事業を整理していくことで、本質的な問題や、解決策が見出しやすくなります。

 

PDCAサイクル

PDCAサイクルは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の頭文字をとった言葉で、継続した業務改善を行う際に役立つフレームワークです。PDCAそれぞれのステップの概要とポイントは以下の通りです。

 

  • Plan(計画):目標や目的の達成に向けた具体的な行動計画を策定します。目標は定量的に設定し、達成までの期限も併せて決めておきましょう。
  • Do(実行):立案した計画を実行に移します。できる限り計画通りに進め、実行した内容を記録しておくことが重要です。
  • Check(評価):結果の評価を行います。評価だけでなく、計画通りに実行できたか、計画に妥当性はあったか、目標達成に結びついたかなど、その結果が生じた要因についても併せて分析しましょう。
  • Action(改善):評価によって明らかになった問題や課題などを踏まえ、改善策を検討します。検討を終えたら、再びPのステップに戻り、新たなサイクルを回していきます。

PDCAサイクル

バリューチェーン分析

バリューチェーン分析とは、企業の一連の活動(価値連鎖)を「主活動」と「支援活動」に分類し、分析するフレームワークです。主活動は原材料調達から販売までの各工程を、支援活動は企業活動を支える以下のような業務を指します。

 

  • 主活動:購買物流、製造、出荷物流、マーケティング、販売、サービス
  • 支援活動:インフラ管理、人事・労務管理、技術開発、資金調達

 

バリューチェーン分析は、自社の強みや弱みの把握、無駄なコストの洗い出しや、競合他社との比較分析に役立ちます。そのため、経営戦略やマーケティング戦略の立案、顧客満足度の向上や売上拡大を目的とした業務改善活動などさまざまなシーンで活用されています。

 

4象限マトリクス

4象限マトリクスとは、縦横の軸を中心で交差させできた4つの枠に、事象を分類することで可視化を行うフレームワークです。

 

業務改善で利用する場合は、重要度と緊急度を2軸に設定する「時間管理のマトリクス」が多く利用されます。重要度、緊急度の高低を基準に、業務や改善すべき問題を振り分け可視化することで、優先順位が明確となり、効率的に業務改善が進みます。

 

マンダラート

マンダラートとは「曼荼羅(マンダラ)模様」と「アート」を掛け合わせた造語で、9×9のマス目にアイディアを書き込むことで、思考や情報の整理、拡大を図るフレームワークです。メジャーリーガーの大谷翔平選手が、目標達成のためのツールとして高校時代に活用していたことでも知られています。

 

1つの目標と8つの関連語を含む81のマス目を埋めていくため、目標達成のプロセスが明確になりやすく、短時間で多くのアイディアが引き出せるメリットがあります。

 

PERT(パート)図

PERT(パート)図とは、「Program Evaluation and Review Technique」の頭文字をとった言葉です。アローダイヤグラムとも呼ばれ、プロジェクト内のタスクの名称や所要時間、作業の順番を書き出し、全体のフローを図表化します。

 

業務フローが可視化されることで、メンバー間での情報共有が容易となり、ボトルネックとなっている業務の洗い出しがしやすくなります。

 

RACI(レイシー)

RACIとは、「Responsible(実行責任者)」「Accountable(説明責任者)」「Consulted(協業先)」「Informed(報告先)」の頭文字をとった言葉で、責任の範囲や責任者を明確にするのに役立つフレームワークです。RACIで決められている各役割の定義は以下のようになります。

 

  • Responsible(実行責任者):業務の責任を直接担う役割
  • Accountable(説明責任者):関係者へ業務進捗や結果を説明する役割
  • Consulted(協業先):メンバーの相談を受け、サポートする役割
  • Informed(報告先):業務結果や成果物について報告を受ける役割

 

RACIによって、役割や責任の所在が明確になることで、スケジュール管理や必要な人材の確保がしやすい、トラブル時の迅速な対応が可能になるなどのメリットが見込めます。

 

業務改善でフレームワークを活用する際のポイント

業務改善でフレームワークを活用する際にはどのような点に注意すればよいのでしょうか。ここからは、効果的にフレームワークを活用するためのポイントについて解説します。

 

課題・目標を明確にする

フレームワークを活用して業務改善を行う際に最も重要なのは、課題や目標を明確にすることです。課題や目標が不明確なままだと、的外れな行動をしてしまう、従業員に余計な負担をかけてしまうなどのリスクが高まります。そのため、課題や問題点の洗い出しは特に時間をかけて行い、可能な限り具体的で明確な目標を設定しましょう。

 

優先順位を決定する

業務改善は、どの取り組みを優先的に行うか、取り組む順番を決めてから実行に移しましょう。優先順位が曖昧なまま進めてしまうと、重要度や緊急度の高いものが後回しになってしまうなどの事態も起こり得ます。

 

優先順位がうまく決められない場合は、4象限マトリクスなど優先順位を明確にするフレームワークを活用するのもおすすめです。また、トップダウンではなく、実際に作業に取り組む従業員などからの意見を聞いた上で優先順位を決定すると、ミスが少なくなります。

 

QCDのバランスを考慮する

QCDは、「Quality(品質)」「Cost(予算)」「Delivery(納期)」それぞれの頭文字をとった言葉で、生産活動において重要な要素を表しています。業務改善に取り組む際には、どのポイントを重視するかを考えつつ、3要素のバランスを維持できるような計画を立てることが重要です。

 

現場との認識を合わせる

やみくもにフレームワークを導入しても、現場からの反発にあったり、そもそもフレームワークが活用されなかったりといった事態が起こり得ます。現場からの理解がスムーズに得られるよう、業務改善に着手する前にはきちんとヒアリングを行い、業務プロセスへの理解や改善の必要性を伝えていくことが重要です。

 

中長期的な目線を持つ

業務改善は、効果が出るまでに時間がかかるケースも多々あります。そのため、中長期的な目線を持ち、取り組みを進めていくことが大切です。すぐに結果が出ないからと取り組みを中断してしまうと、継続により得られる成果を逸してしまう可能性があります。

 

フレームワークに囚われすぎない

業務改善に役立つフレームワークは多数存在し、上手に活用すれば効率的、効果的に業務改善が進みます。しかし、フレームワークに囚われすぎてしまうと、業務改善の本来の目的や意図を見失い、時間やコストを無駄にしてしまう可能性も高くなります。

 

業務改善にフレームワークを活用する際は、自社の現状とフレームワークを照らし合わせながら、課題解決や目的達成に向けた取り組みを実施しましょう。

 

効果を確認・検証する

フレームワークを活用することで、新しいアイディアが生まれたり、逆に新たな課題が露呈したりケースもあります。さらなる業務改善に繋げるため、取り組みがひと段落したら、必ず効果の確認や検証を行いましょう。

 

また、期待以上の効果が出た場合は、今後も継続できるよう、定着化を目指した取り組みを検討することも重要です。

 

まとめ

働き方改革の推進や労働生産人口の減少などの背景から、業務改善は今後さらに重要な取り組みとなることが予想されます。フレームワークは、効果的に活用することで、業務の可視化、問題点の洗い出し、優先順位の決定、振り返りなど、業務改善のあらゆるステップで役立ちます。

 

実際に業務改善に取り入れる際は、フレームワークの特徴や用途をしっかりと理解し、自社の課題や状況に応じて適切なフレームワークを選択しましょう。