ピッキング作業の効率化を検討する企業は多いですが、現場で使用する機器を、ピッキング搬送に最適な製品に切り替えることで、作業の効率化が図れます。
本稿では、ピッキング搬送の作業効率化におすすめのフォークリフト・ピッキングカートをご紹介します。
物流業界が抱える大きな課題が「小口配送増加」や「労働者不足」です。そのため、作業員1人当たりの労働負担が大きいことが課題となっています。このような背景から、2016年に「改正物流総合効率化法案」が閣議決定されました。業界全体で業務効率化を図るための取り組みが実施されています。
2020年8月には、日本通運が協働型ピッキングソリューションの本稼働を発表しました。実証実験を行っていたAMR(自律型協働ロボット)に、ピッキング業務に必要な機能を追加し、現場の物流ノウハウを共有することで、ピッキング作業の効率化・生産性向上・作業者の負荷軽減の効果が出ているそうです。
参考資料:日通、倉庫向け協働型ピッキングソリューションの本稼働を開始
このような業界動向にあわせて、ピッキング搬送に必要なフォークリフトやピッキングカートの仕様が見直されています。これを機に自社の設備を再検討してみましょう。
本稿では、業務効率化が行えるおすすめのフォークリフトとピッキングカートをご紹介します。
工場内搬送やピッキングは自動化へ
ピッキング搬送におすすめの製品を紹介する前に、近未来のピッキング作業はどのように変化していくのかを簡単にご紹介します。
2020年2月に「国際物流総合展2020-INNOVATION EXPO-」が開催されました。本展は、経済活動のインフラとして不可欠な物流・ロジスティクスの先進情報が収集できる日本唯一・アジア最大級となる展示会ですが、ロボットを活用した自動化・省人化ソリューションが登場して大きな話題を集めました。
工場内搬送の自動化
現在は、フォークリフトを活用して工場内搬送を行っていますが、近未来では搬送支援ロボットが登場します。台車型物流支援ロボット「CarriRo」や無人フォークリフト「CarriRo Fork」、物流支援ロボット「CarriRo AD+パレットタイプ」が発売予定です。
環境側に設置する反射ポールマーカーを用いたレーザー融合型方式で、±10mm~20mmの動作精度が実現できるとして大きな注目を集めています。
参考動画:ZMP「CarriRo」牽引 国際物流総合展
ピッキングの自動化
現在は人手によるピッキングが行われていますが、近未来ではロボットによるピッキングが実現します。アメリカのスタートアップ企業RightHandRoboticsは、ロボットピースピッキングシステムのデモを実施しました。
3次元ビジョンとクリッパーの吸引を組み合わせた独自システムで、商品のマスター登録することなく任意の商品をピックアップすることも可能です。同社のロボットは、PALTAC倉庫でも採用されているそうです。
参考動画:RightHand Robotics 国際物流総合展2020 オカムラブース
物流業務を手助けする自律ロボットも登場予定
機械学習やロボティクス、ソフトウェアを利用したフォークリフトの自動運転化の実証試験も行われています。トヨタAIベンチャーズも出資するThirdWaveAutomationでは、フォークリフトの自動運転化によって、サプライチェーンやロジスティクスの安全と作業効率を追求すると表明しました。
この自動運転フォークリフトは「shared autonomy」と呼ばれる最新のマシンラーニング・コンピュータービジョン・ロボットが用いられています。フォークリフトの自動運転化には時間を要しますが、自動運転化が実現すれば、サプライチェーンは大きく変わることは間違いありません。
参考資料:TECHBLITZ「【直接取材】オンラインイベントプラットフォーム、自動運転フォークリフトなど、最新資金調達スタートアップ6社」
ピッキング搬送の見直し:フォークリフト
国内メーカーのフォークリフトも、年々性能が向上しています。現在使用中のフォークリフトを見直すことで業務効率化が図れるでしょう。その前に、ピッキング作業の搬送に使用するフォークリフトの役割や特徴についておさらいをしておきます。
フォークリフトとは
フォークリフトとは、油圧を利用して昇降・傾斜ができる荷役自動車のことをいいます。貨物を運ぶフォークが車体前面に備えられているため、「フォークリフト」という名称が付けられました。
フォークリフトは、車体前方のフォークを貨物の下部やパレットに差し込んで持ちあげて運搬します。重量のある荷物を持ち上げた状態で走行可能なため、荷物移動の大幅な作業時間短縮が見込めます。
フォークリフトには、リーチリフトとカウンターリフトの2種類があるので、それぞれの特徴をよく理解しておくことが大切です。
リーチリフトの特徴
リーチリフトは、前部にフォーク形の鉄板が突き出ており、それを上下させることで荷物の積み下ろしや運搬を行うものです。リーチリフトの大きな特徴は、人が立って操縦する点にあります。フォークが伸び縮みするのも特徴の一つです。
また、タイヤが約90度回転するので最小回転半径が小さく、小回りが利きます。しかし、ハンドル以外にレバーも使用するため、操作が難しいともいわれています。
カウンターリフトの特徴
カウンターリフトは形状が自動車に似ています。自動車と同じように、座席に座り、ハンドルを操作して運転します。後方部の重りでバランスを取っているため、安定して荷物を運べることが魅力です。
また、フォークの上昇・下降作業速度もリーチリフトより速いので、安定性と作業効率の良さを兼ね備えています。しかし、小回りが利かないため、狭い場所での作業には不向きです。
ピッキング搬送におすすめのフォークリフト
荷役の多様化が進む中で、フォークリフトに対する要望も様々です。ユーザーの声をもとに、機動性・操作性・安全性などにおいて満足できる新機能が搭載されたフォークリフトが登場しています。ここでは、おすすめのフォークリフトをご紹介します。
ハイピックリフト(トヨタL&F)
(出典元:http://www.toyota-lf.com/HPL/index.html)
ハイピックリフトは、新開発の荷役・走行ACモーターが採用されており、従来車と比較すると約80%稼働時間が長くなりました。(従来車の稼働時間は6時間45分、新型ハイピックリフトの稼働時間は12時間10分と5時間25分も稼働時間が延長しました。)
また、改善要望が多かった前方視野の拡大を図り、操作性に優れた荷役サムレバーも標準仕様として採用しています。オプションの簡易自動揚高停止機能も装備すれば、安全性を確保しながら業務効率化が実現できるとして高い支持を集めている製品です。
ピッカーエース(三菱ロジスネクスト)
(出典元:https://www.logisnext.com/assets/dl/product/ctlg-03-01.pdf)
ピッカーエースは、業界初の機能が搭載された先進性が際立つフォークリフトです。
作業の安全性を高めるためのデジタル荷重計、リール式安全ベルト、オートプレストップ、オートパレットロック、アンチロールバック機能が搭載されています。荷重計は、オーバーロードの防止、オートパレットロックは意図しないパレット抜けの防止に役立ちます。
また、ゆったり広い運転席フロアが採用されているので、作業の安全性を重視したい方から高い支持を集めている製品です。
フォークリフトFHシリーズ(コマツ)
(出典元:http://www.lift.co.jp/distrib/engine/fh50/index.html)
フォークリフトFHシリーズは、環境に配慮した低燃費と作業性を両立した新世代のフォークリフトです。コマツ最新エンジンテクノロジーが搭載されており、車両の稼働状況を把握できるKOMTRAXが標準搭載されていることで大きな注目を集めています。
KOMTRAXは、車両の位置情報、稼働状況に加えて、燃料消費量などお客様に車両の情報を提供するため、いつもベストコンディションでフォークリフトが使用できるとして、高い支持を集めています。
コマツ社はIoTの先駆者として、とても注目されています。こちらの記事でも解説しているので、ぜひご覧ください。
IoTとビッグデータの関係性とは?目的別の活用事例4選をご紹介!!
ピッキング搬送の見直し:ピッキングカート
フォークリフトと同時に見直したい設備がピッキングカートです。まずは、ピッキングカートの特徴について解説します。
ピッキングカートとは
ピッキングカートは、商品をピックアップし、仕分けるための台車です。オーダーが画面表示されるなど、様々な機能があります。カートを利用したピッキングシステムでは、ピッキング・検品・仕分けを同時に行うことができます。また、複数オーダーのピッキングを一度に行えるので作業効率化が見込めます。
台車の画面表示に従って作業をするだけなので、従来のリストピッキングと比較するとエラーも削減できます。食品・医薬品・化粧品・雑貨の卸売りなど、さまざまな物流センターで導入されている製品です。
ピッキングカートのメリット
ピッキングカートを導入すると、一括で複数出荷先のピッキング作業が可能となります。また、ピッキングした商品はカートに入れていくため、両手で作業が行えます。
近頃のピッキングカートは、登録商品の重量を自動的に測定するものもあるため、作業ミスを低減できます。また、ピッキングカートに搭載されたモニターで作業指示を出せるので、作業全般の業務効率化が可能です。
ピッキングカートの導入効果
機種にもよりますが、ピッキングカートを導入すれば、登録商品の重量を自動的にピッキングカートが検知します。その結果、ピッキング商品数の間違いを撲滅し、作業効率を大幅に改善することができるのです。
また、EDIシステムと連携すれば、伝票処理が不要となり、全体的な納期短縮と循環棚卸時の工数削減も実現できます。
搬送におすすめのピッキングカート
荷役の多様化が進む中で、ピッキングにおける要望も様々です。作業効率向上・ミスの撲滅において満足できる新機能が搭載されたピッキングカートも登場しています。ここでは、おすすめのピッキングカートをご紹介します。
ピッキングカートシステム(日立物流ソフトウェア)
日立物流ソフトウェアでは、日立物流グループのノウハウから生まれたピッキングカートシステムを取り扱っています。カートは、複数間口のバケットを搭載しており、可変式間仕切りとシステム対応で、オーダー数に応じて12間口まで柔軟に変更できます。
また、搭載されたパソコン画面の指示に従って商品を投入していくだけなので、業務効率化も可能です。日立物流ソフトウェアが提供するピッキングカートシステムは、大量出荷がある物流センターから支持を集めています。
AIピッキングカート(寺岡精工)
(出典元:https://www.teraokaseiko.com/jp/products/PRD00209/)
AIピッキングカートは、物流倉庫で手間のかかるピースピッキング作業に最適な計量器が内蔵されたピッキングカートです。コンテナの下には計量器が導入されており、誤った商品や数量をスキャンするとモニター画面にエラーが表示されて、次のピッキング作業に進めない仕組みです。
このような仕組みによって、仕分け後の検品が不要となり、出荷精度の向上や業務効率化に貢献します。そのため、ピースピッキング作業が多い物流センターから高い支持を集めています。
FloorMaster PICs(島津エス・ディー)
(出典元:https://www.shimadzusd.co.jp/buturyu/buturyu6.htm)
FloorMasterPICsは、カートの軽量化やキャスターの最適配置によって、優れた直進性や旋回性を実現したピッキングカートです。また、台車には視認性の良い操作端末を搭載しており、ピッキングの間違いを徹底的に防止します。
台車に搭載されているスキャナでバーコードを読み取り商品間違いを防止したり、カート内の投入位置や数量が可視化できたりするので、数量間違いや仕分け間違いを瞬時に把握することができます。そのため、ピッキングミスを削減したい方から高い支持を集めている製品です。
まとめ
近未来では、ロボットを活用した自動化・省人化ソリューションが登場して、物流の全自動化が実現すると考えられています。全自動化システムが大きな注目を集めているのは事実ですが、実現には、まだ時間を要します。
しかし、物流業界は小口搬送増加や労働者の減少によって、業務効率化が急務です。まずはできるところから、フォークリフトやピッキングカート、システムなどの見直しをして、業務効率化を検討してみてください。
「ピッキングロボット」はこちらの記事でも解説しています、ぜひご覧ください。
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