ピッキングロボットで作業時間を1/4に!物流業界の救世主を徹底解説!

「ピッキング」とは、工場や倉庫で指示書や伝票に基づいてモノを取り出す(ピックアップする)作業を指します。従来は人手で行っていましたが、近年ロボット導入が進んでいます。

動線が固定され自動化しやすかった製造業ではピッキングロボット導入が早くから進んでいましたが、人手不足等を背景に物流業界でも導入が増え始めています。特に2020年に入り、次の3つの理由からピッキングロボットへの期待が高まっています。

1つ目は、現場における人手不足の問題です。物流現場は人手不足が進行していて省人化が不可欠です。そのためロボットによる自動化・省人化が急務となっています。

2つ目は、EC化率の上昇です。2019年に経済産業省が発表した国内におけるBtoCのEC化率は6.22%でした。EC化は年々増加しているのに加え、新型コロナ禍における巣ごもり消費の拡大や厚生労働省が公開した「新しい生活様式」でネットショッピングを推奨している影響で、2020年はさらにEC利用が増加すると見られています。

参考資料:我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 (電子商取引に関する市場調査)

BtoCの商材はサイズも素材もバラバラでピッキング作業が複雑なため、手間も時間もかかります。人手不足のうえに注文数の増加が追い打ちをかけ、大量の注文に対応できなくなりつつあり、ロボットのニーズが急増しています。

3つ目は、新型コロナウイルス感染症予防対策です。倉庫は空調設備が整っていないことが多く、そのなかで多数のスタッフが作業する三密(密閉・密集・密接)が起こりやすい環境です。そのため、接触を避けた現場オペレーションが求められており、解決策としてロボットの活用が注目されています。

本稿では、ピッキングロボットの導入を検討している方向けに、押さえておきたいピッキングロボットの基本を簡潔に解説していきます。

ピッキングロボットとは?

ピッキングロボットとは、さまざまなモノを取り出して指定の場所に移動させるロボットを指します。搬送用ロボット・物流ロボットとも呼ばれます。

大別すると、「ロボットがコンテナや棚を人間のところまで運ぶタイプ」と「人間がピッキングしたものを運ぶタイプ」の2種類があります。前者はGTP(Goods-to-Person)、後者は磁気テープやマーカーなどのガイドに沿って動くAGV(Automatic Guided Vehicle:無人搬送車、自動搬送台車)とタブレット等の指示で自動走行するAMR(Autonomous Mobile Robot:自律走行型協働搬送ロボット)に分かれます。

富士経済によると、2017年に1,000億円規模だった物流・搬送用ロボット市場は 、物流向けの需要が増える影響で2025年には2兆400億円規模にまで急成長すると予測されています。最近ではキヤノンが独自の映像解析技術でAGV・AMR市場への参入を発表するなど、異業種からの新規参入も活発化しています。

参考資料:次世代AGV・AMRなどの移動ロボット市場に参入「移動ロボットの眼」となる映像解析ソフトウエアを提供開始

参考資料:様々な業界で導入が広がる業務・サービスロボットの世界市場を調査

ピッキングロボットを導入する5つのメリット

ピッキングロボットを導入するメリットとして、以下のようなことが挙げられます。

①生産性の向上

ロボットは、24時間、365日稼働できるので、遅延なく処理が行えるようになります。商品の即日発送、翌日発送のようなスピーディーな対応も可能になります。また人よりも作業時間が短縮できる場合があるため、労働生産性の向上に繋がります。

②人手不足解消・負担軽減

ピッキング作業は立ち仕事で荷物を持って何度も往復し、棚で上げ下ろしを行うなど、体力的な負担が大きい仕事です。また物流センターは敷地確保の都合で交通の便が悪い場所にあることが多いことから、人が集まりにくく人手不足になりやすい特性があります。ピッキングロボット導入により人手不足解消、作業スタッフの負担軽減が期待できます。

③品質が安定する(ヒューマンエラーがない)

人間が作業を行うとピッキング漏れや商品の取り間違いによる誤出荷などのミスがどうしても発生します。ピッキングロボットを導入することで正確性が向上し、作業品質が安定します。

④コスト削減(人がやるよりも、自動倉庫よりも安価)

ピッキングはアルバイトやパートの方が行うことが多いですが、複数人が必要になるため多額の人件費がかかります。ピッキングロボットの導入によって、 低コストで作業することが可能になります。また採用・教育などのコストも削減できます。

また1台月額数万円で利用できるものもあり、自動倉庫を構築するよりもピッキングロボットを導入するほうがコストを抑えられる場合があります。

⑤倉庫スペース削減(複数社の荷物を混在可能になる)

倉庫専業の場合は、複数の企業が荷主としてスペースをエリア単位で契約して商品棚を確保します。従来は人が作業する前提でミスがないよう荷主ごとにエリアを分けていましたが、ロボットが作業する前提であれば、商品棚が分散していてもミスが起きません。その結果、複数社で同一スペースをシェアするなど効率的に棚を配置できるようになり、省スペース化に繋がります。

また人が移動しないタイプのピッキングロボットを導入した場合、倉庫内にはロボットが動ける幅さえあれば良く、人が移動する通路が不要になります。その分荷物を置くことができ、保管効率が上昇します。

導入する上で考慮すべき2つのデメリット

ピッキングロボットを導入する上のデメリットとして、以下のようなことが挙げられます。

①導入コスト・手間がかかる

システム導入のため初期費用がかかるほか、メンテナンスを行うスタッフも必要になるため人件費が発生します。また導入にあたっては事前に物流データの算出や検証、レイアウト変更等の手間がかかります。

②トラブル時に作業が止まる

ネットワークやシステムのトラブルでロボットがエラーを起こした場合、工場全体の稼働が停止してピッキング作業全体が止まってしまうリスクがあります。メーカーによってはリモートメンテナンスやロボット代替サービスを提供している場合がありますが、その分コストが発生します。

導入されている業界

ピッキングロボットが導入されている業界をご紹介します。大規模に導入している事例も多いですが、比較的小規模の企業でも効果が見込めるため導入が増えています。

①物流

物流業界は慢性的な人手不足から自動化・省人化に積極的で、2019年下旬から大手3社がAGVやAMRを相次いで導入しています。ピッキング以外にも業務自動化を推進している業界でもあり、AI・IoTの活用に積極的です。

・ヤマト運輸

ヤマト運輸では2019年よりロボットベンチャーZMPの台車型物流支援ロボットCarriRoを仕分けターミナル内で導入、ロールボックスパレットと呼ばれる箱型の荷役台とCarriRoを連結して自動運行させることで作業効率化とスタッフの省力化を実現しています。

また同社グループの中国法人雅瑪多国際物流有限公司でもGeek+のAGVを導入するなど、グループ全体でロボット導入を進めています。

参考資料:中国でEC事業を展開する企業向けに、自動搬送ロボットを活用した高品質な物流サービスの提供を開始~キャンペーンなどの一時的な出荷増でも品質を維持したまま対応が可能~

・日本通運

日本通運では2019年よりトピー工業のクローラー式搬送ロボット「セキシュウ・クローラー」を導入しています。セキシュウ・クローラーはジョイスティックによる手動操作または固定ポールを基準に自動走行するAGVで、クローラー型でアスファルトや傾斜、段差に強いのが特徴です。日本通運ではロボット導入により労働負荷軽減など現場の課題解決を期待しています。

さらに2020年7月にはAI・IoT技術を活用したショールーム型の先端物流施設「NEX-Auto Logistics Facility(NEX-ALFA)」を開設し、Geek+のEVEをはじめ画像処理技術を応用したプロジェクションピッキングシステム(アイオイ・システム)等を導入、さまざまなピッキング業務のデジタル化・自動化を推進しています。

参考資料:日通、ショールーム型の先端物流施設を開設

・佐川急便

佐川急便では2019年より蒲田営業所でGeek+の「EVE500」を32台導入し、ピッキング作業の負担軽減や働き方改革を推進しています。また2021年稼働予定の次世代型大型物流施設「Xフロンティア」ではEVE42台のほかカナダのClearpath Roboticsが開発する搬送用ロボット(AMR)のOTTOを14台導入するなど自動化を進めています。

参考資料:佐川グローバルロジ/Xフロンティア公開、自動化で省人化率5割

②EC

EC利用は利用者数の増加に伴い、発送業務を行うピッキングロボットの需要が高まっています。搬送用ロボットの導入が急増すると予測されている業界です。

・ナイキ

大手スポーツ用品メーカーのナイキでは、2020年に新設した市川物流センターでGeek+のEVEシリーズP500Rを200台以上導入しました。省人化を実現しただけでなく高い出荷効率も期待できることから、Geek+と共同で生産性改善プロジェクトを開始するなど積極的に取り組みを進めています。

参考資料:物流ロボティクスの(株)ギークプラス、NIKEをローンチカスタマーとして、コンサルティングサービスを開始

・Amazon

大手ECサイトのAmazonは、自動化・効率化を進めている企業として有名です。倉庫業務の効率化を図るためにKiva SystemsやCANVAS Technologyといったロボット開発企業を次々と買収しています。倉庫業務の自動化・効率化を独自に進めています。作業スタッフが歩き回る必要がなく効率化できることから作業時間が1/4に削減できたといいます。

・京東商城(JD.com)

中国の大手ECサイトを運営するJD.comでも、完全自動化された倉庫でMujinのロボットコントローラーを組み込んだピッキングロボットや中国マルイノベーションのAGVを導入、作業の省人化・効率化を進めています。

参考資料:中国のハイテク企業マルイノベーションと国内販売代理店契約を締結

③アパレル

アパレル業界はEC化が進んでおり、ピッキングロボットの需要が高まっています。従来、衣類はロボットが掴みにくい形状のため自動化が困難でしたが、AIによる画像認識技術の向上によりピッキングロボットで対応できるようになっています。

・ファーストリテイリング

ユニクロ、GUなどを展開するファーストリテイリングでは、ロボットのコントローラーを開発するMujinと2019年にパートナー契約を締結。モーションプランニングAIを活用した垂直多関節型ロボットが商品の取り出しから箱詰めまで行います。同社では全世界の倉庫に導入し倉庫の自動化を進めていく予定です。

・TSIホールディングス

ナノ・ユニバースなどを子会社に持つ大手アパレルグループのTSIホールディングスでは2018年にGeeK+のEVE500を導入。人手で行っていた作業の削減を進めています。

注目のピッキングロボット

ここでは、ピッキングロボットの中でも特に知名度が高い4つを紹介します。

Amazon Robotics(アマゾンロボティクス)Logistics Robot【GTP】

Amazonの子会社であるAmazon Roboticsは、GTPロボットのDriveを開発したスタートアップのKiva Systemsを買収し、Logistics Robotの開発を行っています。ロボットは床面に貼ったQRコードをもとに自分の位置を把握するほか、センサーを搭載し、障害物などを自動で避けることもできます。

GreyOrange(グレイオレンジ)Range GTP(旧:Butler)【GTP】

シンガポールが本社の多国籍企業GreyOrange社のAIが組み込まれた物流ロボットがRange GTPです。AGVでラック(棚)ごと持ちあげるタイプで、インテリア小売業大手のニトリで採用され作業効率が4.2倍に向上したことが発表されました。AIが入出庫情報を分析してラックの配置を最適化するなど作業効率のさらなる向上を目指しています。

GeeK+(ギークプラス) EVE【GTP】

北京大学および清華大学でロボット研究開発を行っていた創業者が北京で創業したスタートアップで、中国における物流ロボットのシェアNo.1を誇ります。主力のEVEシリーズはナビゲーション方式にQRコードのほかSLAM(Simultaneous Localization and Mapping・周囲の状況をチェックして最適ルートを走行する方式)を採用。アスクル、ビックカメラ、TMALL、トヨタ自動車などで導入実績があるほか、アパレルではZARAやナイキが倉庫に採用しています。2020年7月にはロボット導入のコンサルティングサービスも開始しました。

ZMP(ゼットエムピー)CarriRo(キャリロ)【AGV】

AIやロボット開発を行う国産スタートアップのZMPが開発したのが物流ロボのCarriRo(キャリロ)です。台車型のロボットで、人がジョイスティックを操作して力をかけずに荷物を運べるほか、路面に貼ったマークを識別してロボットが自動走行します。

まとめ

人間の負担が大きいピッキング作業は自動化ニーズが高かった一方で、製造業と違いサイズや素材が多種多様なため自動化が困難でした。しかしAIが進化したことでルール化しやすいピッキング作業は、逆に自動化に適した業務に変わっています。本稿で紹介している事例の多くも2019年後半に導入しており、ここ1年ほどでピッキングロボットは大きく動きがあることを感じていただけるかと思います。

さらに現在は「人間が探して取り出した商品を運ぶ」という作業が主流ですが、AIを取り入れて商品の選別まで行えるようになっていることから、近い将来は選別から箱詰めまでの工程を全て無人化する、より高度なロボットの導入が増加すると考えられます。

ロボット導入によりピッキング効率4.2倍(ニトリ)、作業時間を1/4に削減(Amazon)するなど効果は絶大で、他社との差別化や自社の競争力強化にも貢献します。自社での導入を検討している企業は、まずはテスト導入してみるという選択もできるでしょう。

本稿ではピッキングロボットを取り上げましたが、以下の記事では産業用ロボットを解説しています。

産業用ロボットの基本と世界4強メーカーを初心者向けに解説

ロボット市場が現在どうなっているか、今後どうなるのかを知ることで、導入の際のヒントになると思います、ぜひご覧ください。