【完全版】SCM(サプライチェーン・マネジメント)とは?メリット・デメリットや導入成功事例をご紹介!

  • 2月 28, 2022
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現在、物流業界では、SCM(Supply Chain Management サプライチェーンマネジメント)による業務効率改善が進められています。

なぜ近年SCMが注目を集めているのでしょうか?

本稿ではSCMのメリットとデメリットを解説し、効果的にSCM導入に成功した事例を紹介していきます。

SCM(サプライチェーン・マネジメント)とは

SCMの意味

サプライチェーンとは、供給業者から最終消費者まで、製造から販売までの流れ全体を指します。

SCM(Supply Chain Management サプライチェーンマネジメント)とは、この流れ全体を統合的に見直し、プロセス全体の最適化を実現するための経営管理手法です。

その特徴は、局所最適に留まらない全体最適を目的とする点であり、顧客目線で最適なサービス、製品の提供を実現します。

SCMとEPRの違い

SCMとERPの違いは「管理領域」です。

SCMは「仕入→生産→物流→販売」の業務プロセスが管理領域です。仕入先から顧客の手に渡るまでの業務プロセスを最適化するマネジメント手法をいいます。

ERPは「人・物・金・情報」の経営資源が管理領域となります。サプライチェーンの業務の流れを効率化するためには、経営資源の活用は欠かせません。

SCMが必要とされる背景

SCMが必要とされる理由は、企業のグローバル化とビジネスモデルの変化です。

海外に製造拠点を置くケースや、海外市場に製品を販売する機会が増えたことで、資材調達や販売経路確保がより一層重要になりました。これまでの製造業のように限られた企業とだけ取引するのではなく、広く浅く多くの企業と連携してビジネスを推進する流れは加速していくでしょう。

また、アマゾンに代表されるEC(電子商取引)販売は大きく成長し、顧客がインターネット上で注文を行ってから商品が届くまでの時間は目覚ましく短縮されました。企業は、人手不足が深刻な現状でも一定水準のスピードを要求され、今後も顧客から要求されるスピードが下がることはありません。

国内の製造業に携わる人口は減少しているにも関わらず、物流・販売に関する仕事量は増加の一途を辿り、業務効率の改善は不可欠なものとなりました。こうした背景がSCMを推し進めています。

更に、近年問題となっているのは新型コロナウイルスによるサプライチェーンの断絶です。

新型コロナウイルスの地域的パンデミックにより、一部地域に依存したサプライチェーン構築の危険性が顕在化しました。With/Afterコロナの物流には、薄く広く分散しつつも全体が連携し、断絶しても都度対応できる柔軟性を持つ、という大変高度なサプライチェーンの構築が求められます。

新型コロナウイルスはSCMの重要性をより一層高めました。

With/Afterコロナのサプライチェーン改革とは?押さえるべき4つの最新トレンド | Locus Journal

SCMの種類

SCMのマネジメント手法には、以下の3つの方法があります。

予測・計画

商品販売数を予測して、物流や生産、仕入を逆算して計画していくマネジメントです。具体的には、販売数を予測後に在庫数を確認して生産を計画していきます。欠品を発生させず、在庫過多になる状態を避けて販売することを目的としています。

実行・実施

計画通りに実行していくためのマネジメントも必要です。円滑に業務が進むように経営資源を上手く活用して、他部門と連携しながら業務効率化を図っていきます。例えば、販売実績データを共有しておけば、スピーディーな発注が行えます。このように、業務効率化には情報連携が欠かせません。

評価・モニタリング

マネジメント手法も定期的な見直しが必要です。そのため、予測・計画・実行・実施までのマネジメントの効果を評価してください。当初の計画通りに販売ができたか、商品に欠品が生じなかったかなどサプライチェーンの業務を見直して、改善すべき点がないかを確認してください。

SCMのメリット・デメリット

以下ではSCMのメリット・デメリットを解説し、SCMについての理解を深めていきます。

SCMのメリット

供給スピードの向上・需要変動への素早い対応

SCMはサプライチェーン全体を俯瞰し、最も効果的な方法で、最終消費者に届くまでの供給スピードを向上させます。

また、SCMシステムの中には、集約した情報を元に需要の変動を予測する機能や、生産計画、販売計画を立案する機能を有するものもあります。市場変化に受動的に追随するだけでなく、需要変動を先回りして予測可能になるということです。

需要予測は市場の変化をいち早く掴み、素早い対応に繋がります。

人材や費用の最適配分

サプライチェーン全体を一元管理すると、どの部署に、いつ、どれだけの人材や費用が必要かを見積もることができます。

現在配置されている資源と、必要な資源の差異を考慮して再配分を行い、人的、金銭的無駄を削減します。

在庫の可視化

SCMは、上記の人的、金銭的な最適配分と同様に、資材についての最適配分も実行します。

必要な資材についての見積もりを、現在配置されている資材(在庫)の情報と照らし合わせ、無駄な余剰在庫や欠品を発生させません。

在庫管理にはSCMを用いる場合と、在庫管理専用のツールを用いる場合がありますが、どちらを使うかは企業が抱える課題次第です。

サプライチェーン全体を見据えた在庫管理にはSCMが有効です。つまり、生産から販売までの配送、生産までの資材調達など、「物流」に課題が存在するならば、導入すべきはSCMです。

一方で、「倉庫」の周辺に課題が集約される場合には在庫管理用のツールを導入すべきでしょう。

在庫管理について以下の記事でも詳しく解説しています。ご参照ください。

在庫管理とは?基本から効率化するツールまで徹底解説 | Locus Journal

トレーサビリティを高める

トレーサビリティとは、製品がどのような経路を辿って、消費者に届けられたかを追跡する能力を指します。

物流の一元管理は企業のトレーサビリティを向上させ、消費者の安心・安全を高めます。また、製品に問題が発生した際に迅速な対応が可能です。

トレーサビリティの基礎からブロックチェーン活用まで!食品・医療分野の注目技術を徹底解説 | Locus Journal

利益の最大化

上記に挙げた「供給スピードの向上」は、より短い時間で多くの商品を顧客に届けることを可能とし、加えて、顧客の満足度を高めることで売上の向上に貢献します。

また、人材や資材配置の最適化は、業務効率を改善することで企業から出ていくお金を減らすことができます。こちらも結果として企業の利益を高めます。

SCMの課題・デメリット

システム導入コストとマンパワー

SCM導入には多くのコストが必要です。

導入には金銭的コスト(SCM用パッケージソフト導入費用、ベンダーのサポート費用など)のみならず、人的、時間的コスト(業務プロセスの変更、SCM運用のための研修など)も必要です。

更に、導入には全ての部署間での連携が不可欠です。事前の見積もりを慎重に行い、上手に選定しましょう。

SCMシステムの導入に際して注意すべき点や、SCMの効果を最大化するポイントについては以下の記事でも取り扱っています。

Link : SCMシステム

一部顧客の需要を反映しないこと

SCMはサプライチェーン全体を俯瞰的に捉え、「全体最適」の妨げとなる構成要素を切り捨てる経営手法です。

ニッチな需要を満たすための製造設備が全体最適を妨げるならば、SCMがそれを不要なものと判断する可能性は十分にあり得ます。そこでニッチな需要を切り捨てれば、結果として一部顧客の需要を反映できなくなるでしょう。

「顧客の小さなニーズを細かく反映すること」が会社のカラーであれば、会社の信用を大きく失うことにも繋がります。SCMは良くも悪くも企業の在り方を変える可能性があることには注意が必要です。

SCMシステムに関して詳しく知りたい方は「物流を効率化させるSCMシステムを解説!導入時に注意すべきこと・成功のためのポイントとは?」を参考にしてみてください。

SCMの導入事例

以下では、SCMを効果的に取り入れ、業務効率改善を実現した事例を紹介します。

花王株式会社

「化粧品」や「スキン・ヘアケア」で最大手の花王株式会社はSCMを応用して小売店まで素早く、確実に納品を行う仕組みを構築しています。

花王は小売店との間にある卸店すべてを廃し、自社内のカスタマーマーケティングセンターから小売店へ直接納品を行うよう、物流を刷新しました。

この仕組みにより、小売店までのサプライチェーン全てを掌握しています。小売店までのサプライチェーン全てを管理下に置くと、SCM導入の最大の障壁となる、「取引先との連携」は不要です。物流に関する情報を社内で一元管理できるため、業務効率は格段に向上しました。

全国8工場で生産された1500種類以上の製品は、国内21箇所の物流拠点に集められ、受注から24時間以内に小売店に納品できる体制が構築されています。

参考資料:ロジスティクス

株式会社トーハン

出版取次大手トーハンが進める「TONETS NETWORK」は、出版社から書店まで、書籍に繋がるすべての業者間で情報共有を実現するプラットフォームです。

書店での売り上げ、出版社の在庫など、あらゆる情報を TONETS NETWORK で一元管理します。書店と出版社、相互の情報共有により市場チャンスを拡大するとともに、需要予測や需要開拓などの販売施策も行っています。

参考資料:情報流通機能 | 事業内容 | 株式会社トーハン

株式会社日本アクセス

株式会社 日本アクセスは総合食品商社として、「鮮度」が重要となる食品に特化した 3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)を展開しています。

鮮度管理、温度管理の難しい製品にも対応した受発注機能を持ち、食品メーカーと小売業者までのすべての物流を統合的に管理します。

また、メーカーから小売業者間の情報共有をすることで、データに基づく需要予測が可能です。

3PLセンター|ロジスティクス|事業・サービス|株式会社日本アクセス | 株式会社日本アクセス

まとめ

新型コロナウイルスやグローバル化の影響によって物流の範囲は拡大し、流動性は増しました。業界全体の人手不足も相まって、サプライチェーン全体を統合管理するSCMの需要は大きく高まっています。

本記事でSCMをサポートするツールについて詳しくは触れませんでしたが、SCM実現のためには「膨大な情報の取得・管理」が鍵です。以下の記事でも触れていますが、SCMのための情報管理をサポートする様々なパッケージソフトが販売されています。

Link: SCMシステム

「情報の取得」には RFID (Radio-frequency identification) の活用が大きな効果を発揮します。RFIDは情報が埋め込まれたRFIDタグ(ICタグ)とRFIDリーダーで、近距離無線通信によって情報をやり取りする技術です。商品の一括読み取りができるため、サプライチェーン上の各ポイントでのすばやく情報を取得できます。

「大量一括読み取り」と「個体識別」により業務を効率化し、サプライチェーン改革に大きな効果を発揮するでしょう。

SCM導入を検討する際には、情報取得の効率化のためRFID導入も検討してみてください。

物流を効率化させるSCMシステムを解説!導入時に注意すべきこと・成功のためのポイントとは?

RFIDの最新動向について詳しく知りたい方は「RFIDとは?最新動向と活用事例を解説!」をご覧ください。