デジタルテクノロジーによる業務効率化や郵送網の集約により、物流サービスの利便性は高まりを見せています。自社物流から物流アウトソーシングに移行する企業が増えてきているのです。
従来は委託先との情報共有の課題が挙げられていましたが、コミュニケーションツール導入などにより、課題も解決され始めてきました。本稿では、注目を集める物流アウトソーシングについて詳しく解説します。
物流アウトソーシングとは
まずは、物流アウトソーシングの特徴について解説します。
物流アウトソーシングの目的
物流アウトソーシングの目的は、自社内の物流業務を外部に委託して切り離すことです。出荷業務(ピッキング・梱包・出荷・追跡番号の取込・出荷メール送信)を委託できるため、注力すべき業務にリソースを投下できます。
また、プロにお任せすることで業務効率化やコスト削減効果も得られます。
物流アウトソーシングの特徴
物流業務を委託できる便利なサービスですが、メリットとデメリットがあります。
メリット |
デメリット |
・コスト削減 |
・柔軟な対応力は期待できない |
物流アウトソーシングと自社物流の違い
物流業務アウトソーシング化は、全ての業務を外部委託できるわけではありません。出荷業務を代行してもらえます。自社物流は人員や材料、倉庫などのリソースが必要になりますが、アウトソーシング化すれば必要なくなります。
自社リソースで対応 |
受注確認 |
在庫確認 |
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受付メール送信 |
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入金確認 |
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出荷データ作成 |
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送り状の印刷 |
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アウトソーシング範囲 |
ピッキング |
梱包 |
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出荷 |
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追跡番号の取込 |
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出荷メール送信 |
物流アウトソーシングの形態
物流アウトソーシングには(1)定額系物流サービス(2)カスタム系物流サービスの2つの形態があります。
定額系物流サービス
定額系物流サービスは「配送料」「入庫量」「保管料」で料金が成り立っています。公式サイトに料金表が掲載されているため、月間平均出荷数や荷物サイズから料金相場が把握できます。
商品1個から対応しているため、スタートアップ企業や個人事業主も気軽に利用できる物流サービスです。しかし、入出荷制限や即日配送制限などの制限もあり、販売機会損失を招くこともあります。
カスタム系物流サービス
カスタム系物流サービスは、荷主の要望に合わせてカスタマイズできます。定額系物流サービスでは在庫上限問題があるため、事業規模の拡大を検討している企業がカスタム系物流サービスに移行することが多いです。
配送エリアに応じて物流会社を変えたいという要望にも対応してもらえます。しかし、各企業の要望に柔軟に応えてくれる反面で、準備段階で時間を要します。
補足:どちらの形態を選ぶべきか
定額系物流サービスとカスタム系物流サービスの違いは以下の通りです。要望に見合う形態を選びましょう。
定額系物流サービス |
カスタム系物流サービス |
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メリット |
・料金体系がシンプルである |
・カスタマイズできる |
デメリット |
・融通が効かない |
・導入に時間を要する |
物流アウトソーシング利用時のポイント
要望に見合う業者を探すためにも、事前準備をしておくことが大切です。ここでは、物流アウトソーシング利用時のポイントについて解説します。
出荷件数を管理する
出荷件数を管理すれば、繁忙期や閑散期の把握ができます。繁忙期や閑散期の波がある場合は、アウトソーシングすることでリスク回避ができます。
年間出荷件数が少ない場合は、自社物流を利用したり、定額系物流サービスを利用してコスト削減を検討してもよいでしょう。
出荷サイズと比率について把握する
出荷件数だけではなく、出荷サイズの比率も正確に把握しておきましょう。これらを把握しておくことで、サービス料金が明確に算出できます。
出荷件数とサイズの比率は、物流サービスを構築する上で重要な項目です。そのため、システムを活用してデータ管理をしておきましょう。
必要な条件を想定しておく
物流業務を外注するために必要な条件を挙げておきましょう。商品や保管温度、梱包方法やオプションを含めて条件を想定しておきます。必要な条件を想定しておくことで、スムーズに進めることができます。
課題を明確にしておく
物流業務コストの削減や人員配置転換など、各企業で課題は異なります。そのため、物流業者から具体的な提案を受けるためにも、相談前に課題を明確にしておきましょう。課題は数値化しておくことで、サービス導入後に振り返りや改善が行いやすくなります。
決め手となる基準の優先順位を考える
コスト削減やサービス品質向上、人員配置転換などサービス利用目的は各社で異なります。目的に応じて、業者選定時基準の優先順位も変わるはずです。そのため、物流アウトソーシングを利用する目的を具体的に考え、優先順位をつけておきましょう。
物流アウトソーシングの利用手順
利用手順は次の通りです。
1.問い合わせ
物流業者のホームページを確認して情報収集をしてください。気になる物流業者を見つけた場合は、電話・E-メール・Faxなどで問い合わせてください。問い合わせ内容の確認後、物流業者の担当者から折り返しの連絡が届きます。
2.打ち合わせ
アウトソーシングを検討している品物の特徴や物流業務の課題を伝えてください。以下の項目を伝えておくことで、物流業者から具体的な提案が受けられます。
- 出荷件数(月間出荷件数・年間出荷件数)
- 出荷サイズの比率
- 繁忙期や閑散期
- 抱えている課題
- 優先順位
3.見積もり
打ち合わせでヒアリングした詳細事項から、対応範囲を提案してもらえます。プラン提案時に見積金額も提示してもらえます。
カスタム系物流サービスは料金が高くなることがあるため、じっくり検討したくなるかもしれません。
そのような場合は、物流業者の倉庫見学をしてみましょう。実際の現場を確認することで、信頼できる業者であるかを見極められます。
4.契約
提案内容と見積金額に問題がなければ、契約を行います。契約時は内容を確認して、不明点がある場合には必ず質問してください。納得した上で契約を交わさなければ、トラブルの原因になるため注意してください。
5.業務委託開始
契約完了後に業務委託開始となります。課題は数値化しておき、サービス導入後に振り返りや改善を行っていきましょう。
大手物流アウトソーシングサービスの一覧
サービスを利用する場合は、信頼できる物流業者に相談してください。ここでは、物流アウトソーシングを提供している大手物流業者をご紹介します。
日立物流
日立物流は、1980年代に3PL(物流アウトソーシング)サービスの提供を開始しました。包括的アウトソーシングのみならず、各地の物流拠点と輸配送網にフォワーディング機能を組み合わせてグローバル展開をサポート。国際型3PL運営モデルの構築もできます。
また、先進的なIT技術を導入しています。40年以上、物流アウトソーシング業務に携わってきた実績に裏打ちされたノウハウに基づき、要望に見合う提案をしてもらえます。
三井物産グローバルロジスティクス
三井物産グローバルロジスティクスは、利用者の要望に応じた物流サービスを幅広く提供しています。物流業務だけではなく、付随業務(受発注代行やカスタマーサービス)もワンストップで依頼できることが魅力的です。
また、物流保険などの三井物産グループならではの総合力を発揮して付加価値のあるサービスを提案してくれます。
Yahoo!ロジスティクス
Yahoo!ロジスティクスは、商品入庫や検品、梱包、配送に至る物流業務をパッケージ化して提供しています。
配送はYahoo!ショッピングの注文当日配送サービスや注文翌日配送サービスにも対応。配送料が安くコスト削減ができるサービスとして支持を集めています。
出荷個数、費用、稼働日などの要望に応じた物流会社が選べるため、利便性が高いサービスです。
アートトレーディング
アートトレーディングが提供するサービス「AFS(ARTTRADING Fulfillment Service)」は、ワンストップ。EC事業の「受注代行」「物流管理」「在庫管理」「物流パートナー紹介」まで行ってもらえます。
10年以上の実績・100社以上のECサイト構築運用経験を持っているため、手厚いサービスが受けられます。業者選定の相談窓口としても利用可能です。
スタークス
スタークスが提供するサービス「クラウドロジ」は、EC事業の物流業務を外部委託できます。システムと専任担当制による倉庫管理で高品質でコストが良い発想を実現。
EC物流取引実績は国内No.1のため、どのような方法で物流を行えば良いか分からないEC事業者の強い味方となります。
まとめ
物流アウトソーシングサービスには、2つの形態があり、各企業で導入すべきサービスは異なります。そのため、自社の現状の課題を洗い出して、要望に見合う物流業者に相談してください。
課題を洗い出すときは数値化しておくことで、物流業務の定期的な見直しと改善が行いやすくなります。ぜひ、本記事を参考に物流アウトソーシング化を実現してください。