【徹底解説】Accessによる在庫管理データベース構築のメリットとその限界

Microsoft の有料ソフトである Access(アクセス)を在庫管理に導入する際に最低限知っておくべきことを解説します。

本稿をご覧頂ければ、複雑なデータの管理にAccessが有効である理由がお分かり頂けるでしょう。

在庫管理といえば「データベースの導入」だとお考えかもしれません。しかし、在庫管理においてAccessを導入することが万能とは言えません。Accessで「出来ること」「出来ないこと」を知ってから導入を検討しましょう。

在庫管理とは?基本から効率化するツールまで徹底解説

 

Accessを使った在庫管理の基礎知識

表計算ソフトとデータベースソフトの違いとは

例えば、Excelは表計算ソフト、Accessはデータベースソフトであり、ExcelとAccessではそもそも目的が異なります。

Excelなどの表計算ソフトは、数値データの「集計・分析」に用いられるソフトです。一方、Accessはデータ同士を関連付け、データベースにして「保存」するためのソフトです。

 

Excel(表計算ソフト)

Access(データベースソフト)

目的

データの集計・分析

データの保存

利点

・簡易な操作性

・データ入力方法に制約無

・データの参照、抽出が強力

・データの増減に対応が容易

有効な利用方法

・100人を対象としたアンケートの結果の集計とレポート用図表の作成

・製品ごとの見積書や請求書の作成

・毎月の売り上げを自動で計算

データ量が少ないときに、データベースソフトを利用する意味はほとんどありません。表計算ソフトの方が直感的に操作を行うことができ、素早く必要な図表を作成できます。

一方、データベースの構築には時間が掛かりますが、一度データベースを構築すれば膨大な量の情報を保存できます。また、必要な時に必要な分だけ情報を参照したり、抽出したりすることも可能です。

表計算ソフトでの在庫管理はこちらで詳細に解説していますので、ぜひご覧ください。

エクセルによる在庫管理!データ量と現場負担の関係について

ExcelとAccessの違いがつかめたところで、以下ではより詳細に、データベースについて説明します。

データベースとは

広義のデータベースとは、単に「データの集まり」を指しますが、以下で紹介する「データベース」は、テーマや目的に合わせてデータを細分化し、相互に関連付けた「リレーショナルデータベース」のことです。
Accessも、このリレーショナルデータベースを構築することができるソフトの1つです。

Accessの仕組み

Accessなどのデータベースソフトは主に「テーブル」「クエリ」「フォーム」「レポート」の4要素で構成されています。

以下では各要素について個別に解説していきます。

テーブル

テーブルとは「データを保存する場所」のことで、各商品の日々の変動がテーブルに記録されます。
在庫管理で言えば、入庫、出庫、在庫、品目、仕入先、保管場所など、各項目ごとにテーブルが存在します。

クエリ

データベースに対して行う問い合わせ内容(処理要求)をクエリと言います。Googleなどの検索エンジンに入力するキーワードもクエリです。

フォーム

フォームとはデータの入力や抽出のための操作画面で、入力されたデータはクエリによって適切に整理、テーブルに格納されます。テーブル内のデータを抽出する要求をするとクエリがテーブル内データを抽出し、レポートに加工されたデータが出力されます。

レポート

レポートとは加工されたデータの出力のことで、フォームでの要求に応じて納品書、見積書、ラベル、伝票などが簡単に作成できます。

Accessの特徴

テーブルには表計算ソフトと異なる方法でデータが格納されているため、テーブルに直接データを書き込むことはできません。テーブルにデータを書き込むためにはAccessの方法に従い、フォームを経由する必要があります。しかし、特殊な方法でデータが格納されているからこそデータの参照や抽出機能が強力で、複雑な処理を簡単な操作で行えます。

Accessのメリットとその限界

Accessで在庫管理をするメリット

Excelでの在庫管理と比較して、Accessでの在庫管理には以下のようなメリットがあります。

データ入力が容易になる
フォームに入力されたデータは、クエリによって適切な形に整理されてテーブルに格納されるため、入力が少なくて済みます。

Excelでもマクロや関数を駆使して同様のことはでき、単純な処理であれば大きな差異はありません。しかし、複雑な処理になるほどAccessでデータベースを構築する方が入力時の手間が減少し、急な仕様変更にも柔軟に対応できます。

データを多次元的に分析できるようになる
「夕方6時、20代後半~30代前半男性が、子供用のおむつとお酒をセットで購入することが多い」。
データベースを活用したとあるコンビニでは、上記のような分析結果を得ることができました。これは会社員の父親が、仕事終わりに育児用品と自身のための嗜好品を同時に購入するためと判断されました。その結果、コンビニは子供用おむつとお酒を近くに配置することで売り上げを伸ばすことに成功しました。

データベースの活用によって、「時間帯」「顧客の年齢」「商品の種類」などを多次元的に結び付け、分析することができます。

簡単に納品書や見積書を作ることができる
Excelを使う場合でも、フィルタ機能やソートすることでデータの並び替えや抽出ができます。しかし、条件が込み入っている場合は複雑な関数を設定する必要があり、場合によってはマクロが必要です。
例えば、「AかつB」という重複する条件でデータを抽出する場合や、特定の条件に合致するデータを抽出条件から除外するといった場合です。

データベースを使うと、上記のような抽出条件をクエリによって簡単に実現可能です。必要なデータのみを取り出し、数千、数万件に及ぶ納品書、見積書の作成も簡単にできます。

Accessの限界

データベースは入庫数と出庫数から在庫数を自動で計算し、リアルタイムに在庫数を表示することができます。理論上、在庫数は「残在庫数+入庫数–出庫数」で計算できますが、実際はさまざまな要因で計算と食い違ってきます。

データベースなどのソフトウェアは理論値であり、実際の在庫数を調べるときには効果がありません。棚卸作業など、実在庫の数量把握が課題であるならば、データベースの導入は見当違いであると言えます。

データ入力が課題である場合の改善策

実際の在庫数のデータ取得を円滑に進めるためには、専用のハードウェアを導入することが有効です。

バーコードやQRコードを使った在庫管理は棚卸作業の効率を高めることが実証されています。近年、アパレル業界で導入が進むRFIDは「遠隔・複数読み取り」が可能です。

棚卸業務の効率化を図るならば、更なる効率的な在庫管理を実現するRFIDの導入を検討してはいかがでしょうか。

RFIDはこちらの記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

RFIDとは?最新動向と活用事例を解説!

まとめ

Excelによる在庫管理に限界を感じときに、Accessの活用は大変有効な手段になります。
しかし、「データ取得の手間」が課題である場合にAccessを導入する意味はありません。
Accessに出来ること、出来ないことを理解した上でAccessの導入を進めて行きしょう。

データ入力の手間が課題であるならば、その解決策も入力するハードウェアの見直しにあります。
例えばRFIDはその解決策の1つです。

「データベース導入」だけはなく、何が自社の課題かをまず洗い出して、有効な対策を実施しましょう。

こちらの記事は、ユニクロから学ぶRFIDの活用ヒントです。こちらもぜひ参考にしてみてください。

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