毎年の棚卸作業をどのように行っていますか?
棚卸作業は、数百人単位の人員が同時に作業する場合が多く、「人海戦術だよ」と答える方も多いと思います。
業務のアウトソーシングを含め、棚卸作業の効率化・省力化に関心がある方も多いのではないでしょうか?
本稿では、棚卸作業の基本から作業効率を高める方法まで、詳しくご紹介します。
棚卸作業とは
棚卸作業(棚卸し)とは、いわゆる「在庫確認のこと」です。
在庫確認の結果は棚卸表に記載します。在庫を抱える全ての企業に棚卸表の作成が義務付けられているため、この記事を読まれている方であれば、棚卸作業を経験していると思います。
なお、棚卸作業には、大きく分けて「帳簿棚卸」と「実地棚卸」の2通りがありますが、本稿では「実地棚卸」を取り上げます。
棚卸しをする目的とは
棚卸作業の目的は3つあります。
1.正確な利益を計算する
売上総利益(売上-売上原価)は、在庫も含めて計算する必要があります。在庫数に応じて売上総利益は変動するため、正確な利益を把握するためにも棚卸作業を行いましょう。
2.商品在庫数の差異を確認する
商品在庫数の管理は、手入力やエクセル管理されているケースが多いです。そのため、誤入力や入力忘れにより帳簿と実際の在庫数に差異が発生することがあります。このような差異をなくすためにも、定期的な棚卸作業が必要です。
3.販売機会の損失を防ぐ
棚卸作業を行うと滞留在庫(需要が低い商品)や不良在庫(欠陥のある商品)を洗い出せます。商品の中には賞味期限が設定されている物があるはずです。このような商品の販売機会の損失を防ぐためにも棚卸作業を行いましょう。
棚卸作業の進め方
棚卸作業の進め方には、一斉棚卸と循環棚卸の2種類があります。
一斉棚卸
仕入れやピッキングを止め、全ての在庫に対して、一斉に棚卸作業を行う方式です。日中のみ稼働している店舗や日中に稼働する工場で行われます。
循環棚卸
特定の場所(棚など)ごとに棚卸作業を行う方式です。一斉棚卸に比べて、1回ごとの作業量を減らせるメリットがあります。業務を止めるのが難しい24時間営業のコンビニエンスストアや1日中稼働する工場などで行われます。
棚卸作業の進捗管理
棚卸作業の進捗管理には、タグ方式とリスト方式の2種類があります。
タグ方式
在庫が保管されている棚に「棚札(タグ)」を張り付け、棚卸作業が終了した後に回収する方式です。「タグが回収されていない棚は、棚卸作業が終わってない」と分かりますので、作業漏れを防げるとともに、作業の進捗を小まめに確認できます。
リスト方式
在庫管理システムから出力されたリストをもとに、実際に保管されている棚卸資産の数量がリスト上の数量と一致していることを確認する方式です。在庫を目視で確認し、リストと不一致がある場合のみ、詳細な確認を行います。
棚卸作業で知っておきたい3つの方法
棚卸作業の方法は、主に「手書き」「タブレット」「ハンディリーダー」の3種類があります。
①手書き
プリントアウトした棚卸表に、手書きで在庫状況を記入していきます。工場内の機械、倉庫内のパレットなど、大型モノの棚卸作業に適しています。
棚卸表について詳しく知りたい方は、【2020年最新版】棚卸表とは?種類とポイントを徹底解説!をご覧ください。
②タブレット
在庫管理システムを導入している場合、タブレットを携帯しながらの棚卸作業が可能です。
有線は電源やネットワークケーブルを確保する必要があるため、移動可能な距離が限られます。スタッフが動きながら棚卸作業を行う場合は、無線タイプの方が良いでしょう。
③ハンディリーダー
商品の棚入れやピッキング、棚卸作業は、多くの場合、手元で操作が可能なハンディリーダーを活用します。
手書き、タブレットとは異なり、1商品ごとの照合になりますので、棚卸作業の確認漏れを防げるのが最大のメリットです。
バーコード、QRコード、RFIDなど、商品が管理されているタグをベースにハンディリーダーを選ぶと良いでしょう。
おすすめハンディリーダーについて詳しく知りたい方は、「10分でバーコード・QRコード・RFIDを利用した在庫管理がわかる」をご覧ください。
棚卸作業の3つの注意点
棚卸作業を行う場合は正確性を保つために、以下の点に注意をしましょう。
棚卸実施計画を立てる
棚卸作業の責任者は、実施棚卸計画書を作成して段取り良く作業が行われるようにしましょう。
・棚卸作業の目的
・作業日
・作業時間(開始時刻・終了時刻)
・棚卸対象品(新品・中古品・欠陥品)
・棚卸表の作成(有・無)
・棚卸金額の算定法
・参加人数
・責任者
作業範囲と責任を明確にする
棚卸作業の責任者は棚卸作業の経験を持つ人を選任してください。棚卸作業者の責任者が実施棚卸計画書や実地棚卸マニュアルを作成して、各担当者に正しい作業方法を教えていきます。
カットオフ計画を立てる
棚卸作業の責任者はカットオフ計画も忘れずに立てておきましょう。棚卸作業中も営業し続けなければいけない店舗や工場では、棚卸を行う範囲と棚卸を行わない範囲を決めておく必要があります。例えば、棚卸作業日に入荷した在庫や出荷予定の在庫は除外すると決めておくことも1つの方法です。カットオフ計画を立てて、作業範囲を明確にすることで、ダブリ検品などのミスが防げます。
棚卸作業の効率化
ここでは、棚卸作業を効率化する例をご紹介します。
バーコードを使ったモノ管理
ここでの「バーコード管理」とは、商品へのタグ付けではなく、モノを積み込むパレットにバーコードタグを張り付け、在庫を把握することを差します。
実際、多くの企業がパレット側面(または上面)に、商品名・数量の情報が格納されたバーコードが印字されたタグを張り付け、モノを管理しています。
棚卸作業は「ハンディリーダーでバーコードを読み取る」のみになりますので、作業がとてもシンプルです。
しかし、モノに高さがあったり、ロケーションが複雑だったりする場合は、読み取りづらく、モノ探しに時間がかかるケースがあります。
その場合は、最後にご紹介する「RFID」の活用がおすすめです。
在庫管理システムの活用
在庫管理システムとは、仕入れ、棚入れ、ピッキングといった、モノの流れを一元管理できるシステムです。
導入した場合「必要に応じて在庫状況を把握する」ことが可能です。
在庫量が正確に管理されますので「在庫リストの数と実際の在庫量が異なる」などの棚卸作業でのリスクが軽減できるでしょう。
在庫管理システムについて詳しく知りたい方は、在庫管理システム・ソフトの選び方のポイントとおすすめソフトを一挙にご紹介!!をご覧ください。
アウトソーシングする
小売業を中心に進んでいるのが、「棚卸代行サービス」です。実地棚卸をアウトソーシングすることで、棚卸作業に関わる人員を削減できます。
特に、棚卸作業が「棚に並べられた商品のバーコードタグを、ハンディリーダーで読み取るだけ」といった簡易的な作業の場合、アウトソーシングしやすいでしょう。
棚卸代行業者については、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
製造業で棚卸代行サービスを活用するメリットとは?おすすめ業者9選をご紹介!
目が離せないRFIDの動向
バーコードやQRコードで管理された在庫の棚卸作業の場合、在庫を1点ずつ照合する必要があります。
棚卸作業は「在庫数分の照合」が必要になりますので、効率化には限界があり、どうしても人手がかかってしまいます。
この課題を解消し、棚卸しにかかる時間を削減できると期待されているのがRFIDです。
「離れた場所から、一括で複数枚」タグ情報を読み込めるRFIDを活用すれば、棚卸作業を効率化することができます。
RFID は、アパレルを中心に普及が進んでおり、ユニクロ、BEAMS、豊田通商、佐川グローバルロジスティクスなどの企業が既に活用しています。
ユニクロから学ぶRFIDの活用については、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
RFIDタグを導入したユニクロから学ぶ他業界RFID活用のヒント
大きな転換期は2025年付近と予想
さらに、目が離せないのがコンビニの動向です。経済産業省は2025年までにコンビニの全商品をバーコードからRFIDに置き換える「電子タグ1000億枚宣言」を発表しています。
コンビニの商品がRFIDタグ管理に変われば、コンビニ業界だけではなく、流通、製造分野の検品・棚入れ・ピッキング・出荷の各作業が激変する可能性があります。
棚卸しも、RFIDを活用した方法が主流となるでしょう。
さらにRFIDについて詳しく知りたい方は、RFIDとは?最新動向と活用事例を解説!をご覧ください。
まとめ
近年は、棚卸作業の効率を高める様々なソリューションが登場しています。
商品がバーコード管理されているのであれば、ハンディリーダーによる1点照合と、在庫管理システムを組み合わせ、「在庫の可視化」を進めるとよいでしょう。
社内の作業人員を削減するには、棚卸作業のアウトソーシングを検討する方法もあります。
最後にご紹介したRFIDは、市場の拡大に伴い、アパレルを中心に採用する業界が増加しています。
バーコードでは難しい「離れた場所からの一括照合」が可能なため、モノの保管が複雑になりがちな製造業の在庫管理にもおすすめです。
それぞれの特徴を確認の上、自社に合ったソリューションを検討しましょう。
「RFID×ロボット」で「無人棚卸し」を行う取り組みも進んでいます。こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
RFIDで在庫・物品管理!?RFID x ロボットで棚卸しを無人化!