新しい働き方に変える!「働き方改革」活用のポイントとは?

新型コロナウイルスの収束は、未だ出口が見えていません。

企業の働き方を担当している部署では、

「感染リスクを減らしながら、今よりも効率的で、組織・従業員が共に満足する働き方に変えていきたい」

と、議論を重ねているのではないでしょうか?

その際、ほぼ全ての企業が「働き方改革」をキーワードに掲げています。

しかし、業界や業種により働き方が異なるため、働き方改革の実行方法に正解はありません。例えば、物流センターの倉庫運営ではテレワークは難しいでしょう。自社と似た業種の取り組みを参考にして、最適な方法を模索することが必要です。

本稿を読めば、

  • 働き方改革の概要
  • 各企業の取り組み事例
  • 新しい働き方のポイント

が分かります。

働き方改革の概要と、自社に合った新しい働き方に変えるためのヒントが得られます。ぜひ最後まで読み進め、「働き方改革」活用のポイントをしっかりと抑えていきましょう。

働き方改革の概要

まずは、働き方改革の概要をご紹介します。

働き方改革とは?

正式名称は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」です。平成30年7月6日に公布されました。

働き方改革をまとめたガイドラインは、厚生労働省の公式サイトからダウンロードできます。

参考資料:厚生労働省「働き方改革~ 一億総活躍社会の実現に向けて ~」

全22ページでボリュームも少なく、社内研修用の資料としても適しています。まだ見たことがない方は、一度目を通しておくとよいでしょう。

働き方改革の目的

以下、厚生労働省の公式サイトからの引用です。

「働き方改革」は、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。

引用:厚生労働省

目的は、

  • 少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少
  • 育児や介護との両立など、働き方のニーズの多様化

といった、日本が抱える課題に対応することです。

昨今は新型コロナウイルスの影響で、感染リスク軽減のため「従来の働き方を変えなければならない」状況です。法案が施行された2018年に比べ、より柔軟な働き方が求められています。

働き方改革の3つの柱

働き方改革は、

  • 長時間労働の解消
  • 非正規社員と正規社員の格差是正
  • 多様で柔軟な働き方の実現

の3つの柱で構成されています。

順番に見ていきましょう。

①長時間労働の解消

以下、厚生労働省の公式サイトからの引用です。

①時間外労働の上限規制の導入

時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度に設定。

② 中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直し

月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)について、中小企業への猶予措置を廃止する。(平成35年4月1日施行)

③ 一定日数の年次有給休暇の確実な取得

使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならないこととする(労働者の時季指定や計画的付与により取得された年次有給休暇の日数分については指定の必要はない)。

引用:厚生労働省「1 労働時間に関する制度の見直し(労働基準法、労働安全衛生法)」

労働時間の制限が「義務」となりました。遵守しなければ罰せられます。従業員一人一人が長時間労働解消の意識を持つことが大切です。

しかし、「終わらない分は自宅でやろう」と、持ち帰り残業で従業員の働く時間が隠されては意味がありません。働き方改革の目的である、生産性の向上に繋がらないからです。

この問題に対応するため、業務端末のアクセス時間を定期的に監視している企業もあります。

システム面での対応は、隠れ残業防止の有効な手段となりえます。対策を検討しておくとよいでしょう。

②非正規社員と正規社員の格差是正

以下、厚生労働省の公式サイトからの引用です。

同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

同一企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消の取組を通じて、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにします。

・パートタイム・有期雇用労働法:大企業2020年4月1日、中小企業2021年4月1日より施行
・労働者派遣法:2020年4月1日より施行

引用:厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」

「正社員と非正規雇用労働者の待遇を全く同じにしなければならないのか」と素朴な疑問が沸く方が大半ではないでしょうか?

特に製造業や物流業といった、非正規雇用労働者を多く抱える業種にとっては、抑えておくべきテーマです。

賃金格差を無くすと人件費高騰になり、ビジネスモデルの見直しに迫られるからです。

厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドライン(厚生労働省告示第430号)では、7つの例外を事例付きで紹介しています。ガイドラインを確認の上、現在の待遇で問題ないか確認しておくとよいでしょう。

③多様で柔軟な働き方の実現

以下、厚生労働省の公式サイトからの引用です。

テレワークは子育て、介護と仕事の両立手段となるとともに、ワークライフバランスに資することができ、多様な人材の能力発揮が可能となります。副業・兼業は新たな技術の開発、オープンイノベーションや起業の手段、そして第2の人生の準備として有効です。

この検討会は、今年3月に決定した「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)において、テレワークや副業・兼業について、「ガイドラインの制定など実効性のある政策手段を講じて、普及を加速させていく。」とされたことを踏まえ、平成29年10月から6回にわたり開催されました。

厚生労働省は、この報告を踏まえ、今後、雇用型テレワーク、自営型テレワーク、副業・兼業のガイドライン等の策定・改定を行い、柔軟な働き方の普及促進や環境整備を図っていきます。

引用:厚生労働省「柔軟な働き方に関する検討会」報告

柔軟な働き方を目指す目的は「ワークライフバランスの充実」、取り扱うテーマは「テレワーク」と「副業」です。

テレワークは、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(2018年2月施行)を制定。副業に関しては、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(2018年1月施行)を制定し、企業の取り組みを後押ししています。

テレワーク推進や副業解禁を検討している方は、一度、目を通しておくとよいでしょう。

働き方改革の実行価値

法案が掲げる目的「多様な働き方を選択できる」ことが達成できれば、実行価値があります。

そこでここでは、企業や従業員の立場に置き換え「本当にメリットを享受できるのか?」を考察します。

企業側:業務モデルを見直すチャンス

働く環境を見直すことは、ムダ・ムリ・ムラを把握し、より生産性の高い仕組みに変えていけるチャンスです。空いた時間を活用して、新しいプロジェクトを実行する時間も作れるでしょう。

昨今は、新型コロナウイルスの影響で「通勤のピークを避けて出社したい」と考える従業員が多い状況です。ビジネスにおいても、「できる限りオンラインで商談を進めたい」と考えている顧客も少なくありません。

「社員や顧客の理解が得られやすい」状況にあるため、改革を進めやすい時期です。状況をポジティブに捉え、業務モデルを見直す絶好の機会と捉えてよいでしょう。

従業員側:ワークライフバランスの充実

従業員側のメリットは、働く時間を自由にデザインできることによる、ワークライフバランスの充実です。

子育てと両立させやすく、女性の働き方にも多様性が生まれます。「自宅で介護をしながらテレワークで業務を遂行する」といった、介護問題にも対応できます。

働き方改革を実施している企業は、従業員側からは、「働きやすい職場」と認識されるでしょう。

働き方改革のテーマ別の取り組み事例

ここでは、テレワーク、生産性向上、ワークライフバランス、副業について、各社の取り組み例をご紹介します。

テレワーク/サッポロビール株式会社

背景

同社の取引先は飲食店も多く、どうしても夜遅い時間の業務が発生していました。うまくメリハリをつけられずに長時間労働を行っている社員も散見される状況にあったといいます。柔軟に仕事ができる環境を整えるべく、テレワーク推進を決定しました。

対策

「働き方改革2020」と銘打ち、業務のやり方・あり方を見直し、働きやすい環境を構築するための制度を導入。テレワークはその1つであり、導入にあたっては1か月間のトライアルを実施しています。

トライアルでは、本社、営業、工場と様々な部署を指定して、半強制的にテレワークを遂行しています。ストレスなく利用できるよう、モバイル機器やIP電話用のヘッドセット等を会社で準備して環境を整えています。

効果

実施前はコミュニケーションや労務管理に関して、不安の声が多く寄せられました。

しかし、トライアル実施後の従業員へのアンケートでは、

  • 思っていたより仕事の成果が上がった
  • 無料通話ツールを上手く活用することでストレスなく仕事をすることができた

という前向きな回答が多く挙がったといいます。

長時間労働はこれまでの習慣が沁みついているため、すぐに変えられるものではありません。しかし、同社の取り組みは「強制力を伴う改革が、生産性を落とさずに長時間労働を改善する」ことを示しています。

長時間労働が常態化している企業は、違反者にはペナルティを課すなど、強制力を持たせるとよいでしょう。

生産性の向上・業務改善/ASKUL

背景

ASKULは、「顧客のためのスピーディーな変革」をビジョンに掲げています。

しかし、非効率なメールのやり取りに依存する文化が根強く、変えていかなければならないとの危機感を持っていました。

対策

  • 欲しい情報にすぐアクセスできる
  • 自由な時間を増やす
  • 仮説検証を高速で繰り返す

上記3点をキーワードに掲げ、これを実現するツールとしてSlackを導入しました。

効果

Slack導入後の従業員へのアンケートでは、

  • 以前よりも大事な情報を確実に周知できるようになった
  • 絵文字で気軽にリアクションできるようになった
  • メールに比べて返信のハードルが下がり、反応速度もアップした

という前向きな回答が多く挙がったといいます。

その結果、約50人の部署で月300時間分の作業の削減に成功しています。

Slackのようなコミュニケーションツールを導入する際には、目標の達成度にフォーカスすることを忘れてはいけません。ツールの導入がビジネスの加速をもたらさないのであれば、導入する価値が低いと言わざるを得ないからです。

ワークライフバランス/花王株式会社

背景

女性向け商品を数多く扱う同社は、在籍する女性社員も多く、産休・育児休暇を見据えた働き方は重要な位置付けです。

特に実店舗での接客の場合、妊婦にとっては移動が辛いケースもあり、働き方の選択肢を狭める要因となっていました。

対策

働き方の幅を広げることと、昨今のオンライン需要の高まりの両方を見据えた対策を検討。

アバターと楽しく会話の出来るリモート型のカウンセリングシステム「パルレ」を構築しました。

店舗スタッフに話しかけるように下着の選び方を画面のアバターに相談できます。店員にアドバイスを求めたい場合は、チャットでじっくり聞ける仕組みも用意されています。

参考資料:ワコール「Ava.COUNSELING パルレ」

効果

接客をアバターが担当することで、店舗スタッフの負荷軽減、販路拡大を同時に実現しました。「店員に質問しにくいことが気軽に聞ける」と顧客からの評判も上々です。

これは、人が対応していた業務をテクノロジーに一部代替させることで、働き方の幅が広がった好例です。似た例としては、チャットボット導入によるコールセンター業務の代替、AIを活用した与信審査などがあります。

現場作業の場合は、テクノロジー活用による業務負荷の軽減を検討すると、働きやすい環境作りに繋がることが期待できます。

副業/株式会社グロービズ

背景

副業を通じて、社員が能力、知見、人脈を広げ、本業へ還元することを期待しているため、副業を認めることを決定。2017年7月、正社員が会社の許可を得た上で、業務時間外及び休日に副業を行うことを認める副業制度を開始しました。

対策

業務に支障がでないよう基本ルール(抜粋)を設けています。

  • 他の組織と雇用契約を締結しないこと
  • 本業に支障をきたさないこと
  • 労働時間は、本業と副業を通算して法定労働時間内に収めること・必ず週に1日は休日を取得すること
  • 毎年、年度初めに副業申請をすること

これら全ての条件を満たした場合のみ、副業を認めることとしました。

効果

副業解禁後は、

  • 声楽家としてオペラ公演に多数出演、レッスンでは働く女性を指導
  • 地域観光協会の活性化企画をウェブで支援、自作ECサイトの立ち上げ
  • 動物関連団体を支援する公益社団法人に参画、経営企画に従事

など様々な事例が生まれています。

副業を認める際には、会社の資産を守るためにも、同社のような「副業を容認する条件」を明確に定めておくことが大切です。

「働き方改革」活用のポイント/キーワードはデジタル化

新型コロナウイルスの蔓延で働き方が大きく変わりました。テレワーク、オフピーク通勤は当たり前になり、多くの企業が試行錯誤しながら働き方改革を進めています。

業界・業種によって働き方改革の実現方法は異なりますが、一定のトレンドがあります。そのキーワードはデジタル化です。

テレワークの実現には、素早く情報にアクセスでき、オンラインで会議や商談を進めることができるツールが必須です。

対面販売でテレワークが難しい業種では、オンライン販売やロボット活用といったデジタル化を行うことで、生産性向上が期待できます。

生産性向上についてより詳しく知りたい方は、

「働き方改革の生産性向上について(/work-style-reform-productivity)」
「働き方改革におけるIT活用(/work-style-reform-it)」

を参照下さい。

新しい働き方に変えるべき時代に突入しています。「組織・従業員が共に幸せになる働き方」について、この機会に見直してみるとよいでしょう。