品質管理は、顧客満足度や企業信用力に大きな影響を与える業務です。不適合の製品が発生したら、どの工程で問題が起きたのか特定して改善しなければいけません。
品質管理の正確性を上げて業務負担を軽減したい方には「品質管理システム」がおすすめです。
今回は品質管理システムについて詳しく解説します。この記事を読めば、品質管理システムの特徴について把握できて、どの製品を導入すべきかまでわかるようになります。品質管理システムに興味がある方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
品質管理システムとは
品質管理システムとは、製品の品質をよりよくするために情報共有や情報分析するためのシステムをいいます。品質管理の「工程管理」「品質検証」「品質改善」の効率を上げるために活用されるシステムです。ここでは、品質管理システムの機能や導入効果について詳しく解説します。
品質管理システムの主な機能
品質管理システムには業務効率化するための機能が搭載されています。主な機能は以下の通りです。
検査指示 |
検査サンプルの情報を登録して検査依頼をする 定型業務の場合は検査依頼を自動化できる |
検査・測定 |
検査結果を入力して規格チェックを行う 規格には「社内規格」と「顧客規格」が登録できる |
規格判定 |
検査結果の入力値が規格の範囲内に入っているかを確認して合否確認する |
統計分析 |
生産過程の傾向を見極めるために統計分析を行う |
帳票作成 |
日報や月報の作成をする |
検査承認 |
承認権限を持っている人が、検査結果を承認する |
出荷指示 |
出荷情報を登録し、出荷依頼を受け付ける |
出荷承認 |
承認権限を持っている人が出荷情報を承認する |
成績表発行 |
納品時に添付する成績表を発行する |
出荷トレンド |
顧客や品目、検査項目別に出荷のトレンドを把握する |
検査装置連携 |
検査装置のデータを取り込む |
システム連携 |
外部システムから情報を取り込む |
品質管理システムを導入する効果
品質管理システムを導入すると、4つの効果が見込めます。
1.データ改ざんを防止できる
データ改ざんが発覚すれば、製品や企業の信用問題が浮き彫りになります。このような問題は、システムの権限を付与することで解決できます。
2.検査結果をフル活用できる
品質管理システムにデータを蓄積すればデータ分析が行えます。また、日報や月報、成績表の作成業務を短縮できます。
3.社内で情報を一元管理する
検査情報など紙で管理していた情報を、システムで一元管理できます。そのため、必要データの探索時間が削減できます。部門間連携がしやすくなることも大きな特徴です。
4.顧客の要望に早期対応ができる
システムでデータを一元管理すれば、誰でも迅速に情報を取得できます。そのため、顧客からお問い合わせが入った際に、データを瞬時に取り出して早期対応ができるようになります。
品質管理システムの市場規模
品質管理システムの世界市場規模は、2020年時点で約82億5,000万ドル(約1,237億5,000円)です。2030年までCAGR(年平均成長率)10.4%以上の健全な成長が見込まれており、2030年には206億6,000万ドル(約3兆9,900万円)に達成すると予測されています。(※調査会社Grand View Research, Inc. |による予測)
品質管理システムの市場規模が拡大している理由は、新型コロナウイルスの影響によるオンラインビジネスの普及です。また、IT技術の進化に伴い、業務効率化や業務自動化が行えるようになったことも要因となっています。
品質管理システムの選び方
品質管理システムには種類があるため、自社に見合うものを導入することが大切です。そのため、品質管理システムの選び方を覚えておきましょう。
タイプ
|
オンプレミス版 |
クラウド版 |
費用 |
× |
〇 |
導入期間 |
× |
〇 |
カスタマイズ性 |
〇 |
× |
拡張性 |
× |
〇 |
セキュリティ |
△ |
△ |
障害対応 |
× |
〇 |
品質管理システムのタイプには「オンプレミス版」と「クラウド版」があります。オンプレミス版とクラウド版を比較したものが上記の図です。
オンプレミスは、自社に設置されたサーバーを利用する方法をいいます。ベンダーに相談をすれば、システムのカスタマイズが可能です。セキュリティ面でもどこまで対策するかを決められるため、自社に適した品質開発システムを導入したい企業におすすめです。
その一方で、クラウドはクラウド上のデータセンターを利用する方法をいいます。自社にサーバーを設置する必要がなく、障害が発生したら遠隔操作で対応してもらえるため、出張費がかかりません。また、データセンター運用をお任せできるため、セキュリティ面が不安な方も安心して利用できます。カスタマイズ性には乏しいですが、ほかのシステムと連携がしやすい点が魅力です。
最適なクラウドサービスを活用すれば業務効率化が実現できます。コストを抑えて業務を効率化したい企業におすすめです。
機能性
品質管理システムによって、搭載されている機能が異なります。検査試験や在庫管理に必要な機能だけが搭載されているシステムもあれば、MTSや安定性試験、試薬管理、SPC管理に関する機能が搭載されているシステムもあります。近頃はAIを搭載した品質管理システムも登場してきました。
品質管理システムの機能が充実していればよいわけではありません。その理由は、機能が豊富だと導入コストが高くなり、操作性が難しく感じてしまう恐れがあるためです。そのため、自社に必要な機能が含まれているかを確認しましょう。
操作性
業務効率化するためにも、現場担当者が操作しやすいシステムであるかを確認しましょう。現場担当者がシステムを操作できるようになるまでに時間がかかる製品を選んでしまうと、費用対効果は感じられません。そのため、操作が簡単なシステムを選ぶことが大切です。
操作しないと操作性はわからないため、システム導入前に操作させてもらえないか尋ねてみてください。
セキュリティ
品質管理システムに関する情報が漏洩しないように、堅牢なセキュリティとデータ保全による品質保証体制の基盤強化が必要です。
アクセスログやイベントログの監視を行い、データ改ざんされないような対策をしておくと、安心して運営できるでしょう。各システムでセキュリティ対策の機能は異なるため、しっかり比較してください。
サポート体制
品質管理システムで障害が発生したら、業務に支障が出てしまいます。そのため、障害発生時に保守専任チームが迅速な対応をしてくれるのか確認しておきましょう。また、品質管理システムの操作方法の指導など一貫したサポートサービスを提供しているベンダーを選ぶと、安心して利用できます。
おすすめの品質管理システム
品質管理システムの選び方をご紹介しましたが、豊富な種類の中から自社に合う製品を見つけるのは大変です。システムの比較・検討の手間を省きたい方もいるでしょう。そのような方向けにおすすめの品質管理システムを3つご紹介します。
リーズナブルな価格で利用できる「QC-One」
出典元:『宇部情報システム QC-One品質管理システム 公式サイト』
宇部情報システムが提供する品質管理システム「QC-One」の大きな特徴は、業務に必要な機能を選べること。検査や出荷業務に必要な機能の中から、欲しい機能をピックアップして導入できます。そのため、優先度の高い機能から段階的に導入していき、将来的に拡張することも可能です。また、他システムと連携させることもできます。
リーズナブルな料金で、必要な機能のみに絞って導入できるため、費用対効果が高い品質管理システムを探している方におすすめのシステムです。
業界に特化したシステムを提供「品質情報管理システム」
出典元:『横河電機 品質情報管理システム 公式サイト』
横河電機が提供する品質管理システム「品質情報管理システム」の特徴は、業界に特化していることです。
- 製造業向けの品質管理システム「Lab-Aid」
- 製薬業向けの品質管理システム「CIMVisionLIMS」
- 医薬品・医療機器の品質マジメントシステム「CIMVisionQA」
400種類を超える分析機能が搭載されているため、欲しい機能が搭載されているでしょう。業界に特化した品質管理システムを導入したい方におすすめのシステムです。
業務効率化とセキュリティ対策ができる「HYPERSOL QMS」
出典元:『三菱電機 HYPERSOL QMS 公式サイト』
三菱電機ITソリューションズ株式会社が提供する「HYPERSOL QMS」の特徴は、業務効率化とセキュリティ対策の強化ができることです。品質管理の業務を効率化するため、テンプレートが用意されています。
また、堅牢なセキュリティとデータ保全により、品質保証体制の基盤を強化します。アクセスログ・イベントログの監視ができるため、データ改ざんの防止に役立ちます。運用体制に合わせて、ユーザー権限を細かく設定することも可能です。
品質管理システム導入でセキュリティ対策をしたい方におすすめのシステムです。
品質管理システムの導入事例
株式会社エクセディは、タブレット端末による品質管理の見える化&ペーパーレスを実現しています。QC工程表(品質管理手順書)と工程チェックシートをタブレット入力にして、異常の発生を管理者に瞬時に報告できる体制を整えました。
以前は紙で品質管理を行っていたため、帳票の破損、紛失や内容変更などの課題を抱えていました。また、手書きの書類を見ながらデータ入力していたため負担が大きく、入力ミスが発生しやすい状況でした。さらに、チェックシートを回収して品質管理していたため、異常通知にタイムラグが発生することもありました。このような問題を品質管理システムで解決したのです。
タブレット端末入力により書類の紛失の心配がなくなり、リアルタイムに管理者と情報共有をできるなど、生産性向上の効果が得られています。
まとめ
今回は、品質管理システムの特徴をご紹介しました。品質管理システムを導入すれば、データ改ざんの防止や品質検査の効率化ができます。品質管理の精度を上げていけば、高品質な製品を低価格で希望納期にお渡しできるようになるでしょう。品質管理を手動で行っている場合は、これを機会に自社に合ったシステムへの切り替えを検討してみてはいかがでしょうか。