PSIとは?計画の進め方や成功のためのポイントを解説

需要の変動が激しく、過剰在庫や欠品が頻発している、顧客ニーズが多様化しており、市場動向を予測するのが難しいなど、在庫管理に課題を感じている方は多いかもしれません。

 

そこで今回は、在庫管理が抱える課題を解消し、在庫の最適化を目指すのに役立つ「PSI」について解説します。PSI計画の具体的な進め方やPSI管理成功のためのポイントについても触れていますので、参考にしてみてください。

PSIとは

PSIは、Production(生産)、Sales(販売)、Inventory(在庫)の頭文字をとった言葉です。PSI計画などの用語で使われ、生産計画、販売計画、在庫計画を同時に立てることで、在庫の適正化を図る取り組みを指します。

 

PSI計画は、日本語では「製販在庫計画」、海外では「S&O(Sales & Operation Plan)」とも呼ばれており、製造業を中心に、小売業や卸売業の現場でも活用されています。

 

近年では、グローバル化による競争の激化、激しい需要変動、原材料費や人件費の高騰などの背景から、PSI計画の重要性がより高まっています。

 

在庫を抱えるメリット・デメリット

企業が在庫を抱えるメリット、デメリットを把握すると、PSIの重要性がより深く理解できます。詳しく確認していきましょう。

 

在庫を抱えるメリット

企業が在庫を抱えるメリットとして挙げられるのは以下の3点です。

 

  • 機会損失の防止
  • 需要変動リスクへの対応
  • 仕入れコストの削減

 

それぞれについて詳しく解説します。

 

機会損失の防止

在庫が十分に備えられていないと、欠品や仕入れ不足が起こりやすくなります。欠品が起こると、受注から納品までに時間がかかり、顧客離れや販売機会損失につながる可能性も高くなります。

 

一方、在庫が十分にあれば、顧客からの需要ニーズにタイムリーに対応できます。顧客の待ち時間を最小化できるため、売機会を逃さないのはもちろん、高い顧客満足度やリピーターの獲得にも繋がります。

 

需要変動リスクへの対応

顧客の需要変動は近年激しさを増しており、何かのきっかけで急に需要が増加するケースも多々あります。在庫を十分に備えていれば、そのような急な需要変動にも慌てず対応できます

 

また、天候や災害等のトラブルで仕入れに問題が発生した場合でも、切迫した事態になりにくいというメリットも見込めます。

 

仕入れコストの削減

仕入れコストは、一般的に、少量をこまめに仕入れるより、一度に大量の仕入れを行う方が、安価に抑えられるとされています。在庫を十分に抱えるために、製品や、製品に必要な材料、部品を大量に仕入れれば、仕入れコストが減り、利益率アップが見込めます

 

また、発注作業や入荷作業など、仕入れに伴う業務負担も減るため、人件費や運搬費の削減も期待できます。

 

在庫を抱えるデメリット

企業が在庫を抱えるデメリットとして挙げられるのは以下の3点です。

 

  • 商品価値の低下
  • 税金の増加
  • コスト増による収益の悪化

 

それぞれについて詳しく解説します。

 

商品価値の低下

在庫の長期間保管は、商品の品質低下を招きます。特に、食品など消費期限のある商品は、影響を受けやすいため注意が必要です。

 

また、モデルチェンジやトレンドの変化により、需要が減り、商品価値が低下するリスクもはらんでいます。商品としての価値が下がり、過剰在庫となった商品は、多くの場合、正規価格では買い手がつきません。そのため、値下げ販売や廃棄処分を余儀なくされるケースも少なくありません。

 

税金の増加

在庫は、貸借対照表では「棚卸資産」として計上されます。期末の棚卸時点で残った在庫は会社の利益と見なされるため、課税の対象となります。つまり、抱える在庫が多くなればなるほど、企業が支払う税負担が増加すると言えます。

 

加えて、在庫の購入金額は、販売もしくは廃棄のタイミングでしか経費計上できません。そのため、在庫を過剰に抱えていると、帳簿上は資産が増えているのに、実際はキャッシュフローが悪化しているという事態に陥りやすくなります。

 

コスト増による収益の悪化

大量の在庫を抱えるためには、保管するためのスペースが必要になります。倉庫等を確保する場合、賃料や光熱費などの維持費、現品やデータを管理するための管理費、輸送費や人件費などのコストがかかります。さらに、過剰となった在庫の廃棄を行う場合は、処分費用などの追加コストも必要となります。

 

在庫を抱えるためにかかるさまざまなコストが、企業の収益や、資金繰りに悪影響を与えるケースも少なくありません。

 

PSI計画の進め方

PSI計画は一般的に以下の流れで進めていきます。

 

  1. 需要予測に基づいた販売計画の作成
  2. 在庫計画・仕入計画の作成
  3. 生産計画の作成

 

各ステップについて詳しく確認していきましょう。

需要予測に基づいた販売計画の作成

適正な販売計画を作成するため、需要予測を行います。需要予測とは、自社の製品が将来的にどの程度売れるかを予測する分析手法です。

 

需要予測はPSI計画を策定する上で最も重要なステップとなります。そのため、過去の販売データや、市場トレンド、季節性、消費者の動向など、さまざまな点を考慮して分析を行う必要があります。効率的かつ精度の高い需要予測を行いたい場合は、在庫管理システムやAI等を導入するのも有効と言えるでしょう。

 

需要予測が完了したら、算出されたデータを元に販売する商品の種類や個数、時期などを検討していきます。季節や諸条件により需要予測の数値が変化する可能性がある場合は、補足事項として書き留めておくと、次年度以降の販売計画作成時に役立ちます。

関連記事:需要予測の手法とは?基本の流れから具体的なやり方まで解説

在庫計画・仕入計画の作成

販売計画が完成したら、完成品・原料などの在庫の仕入れ時期や個数の計画を立てていきます。在庫計画や仕入計画は、事前に決めた販売計画の目標を達成できるよう数値設定を行いましょう。

 

Excelを使用してPSI計画を作成する場合は、横軸に日付を、縦軸に必要な項目を記載し、数値を記載していくのがおすすめです。

 

生産計画の作成

製品の製造を自社で行っている場合は、販売、在庫、仕入れの計画に加え、生産計画の策定も必要となります。生産計画を立てる際は、以下の点に注意して具体的な数値設定を行いましょう。

 

  • 販売計画および在庫計画で立てた目標を達成できるような数値設定をする
  • 必要な製品とその納期を考慮する
  • 原材料等の仕入れ時期を考慮する
  • 効率的に生産プロセスを回せるような計画を立てる

 

全ての計画の目標数値が決まり、PSI計画表が完成したら、最後に実際の数値を記録していきます。想定外の事態が起きる等、見込み数と実際の数値には必ず乖離が生じます。計画との数値差や、乖離が起きる原因を分析、把握しながら、柔軟に生産計画を調整していくことが重要です。

 

PSI管理を成功させるためのポイント

PSIを活用した在庫管理を成功させるためにはどのようなポイントに注意すればよいのでしょうか。詳しく解説します。

 

拠点間のスムーズな情報連携

PSI管理を効果的に行うためには、工場、配送センター、店舗など、各拠点でのモノの流れや情報が緊密に連携されることが重要です。

 

各拠点の情報がリアルタイムで連携できれば、需要の変動や市況の変化を生産計画や仕入れ計画にタイムリーに反映でき、適正在庫の維持もしやすくなります。

 

情報連携をスムーズに行うためには、ERP(Enterprise Resource Planning)システムやSCM(Supply Chain Management)ツールなど、リアルタイムで在庫の管理分析が可能なシステムやツールの導入が不可欠です。

 

システムやツールをうまく活用し、拠点間での情報連携を図ることで、より精度が高く、効率的なPSI計画・管理が実現できます。

 

分析・検証を行い精度を高める

適切なPSI管理を行うため、立案した計画と実際の数値の比較、分析は必ず行いましょう。計画の精度や改善点の有無を分析、検証する際は、KPIを活用するのがおすすめです。

 

KPIは、設定した目標に対する、達成度合いを定量的に評価する指標のことで、「重要業績評価指標」とも呼ばれています。KPIを実施して、分析、検証、改善を図れば、需要予測や各計画の精度向上が見込め、在庫最適化も実現しやすくなります。

 

適切なシステムの導入

前述した通り、PSIでは、精度の高い需要予測分析が非常に重要と言えます。需要予測の精度が低いと、全て計画の数値が実際の数値と大きく乖離してしまうリスクがあるためです。

 

需要予測の精度を高めるためには、客観的かつ膨大なデータの収集、分析が必要となります。近年では、リアルタイムに情報を収集し、分析、管理を行うシステムが数多く誕生しています。

 

取り扱う製品の種類や特徴、必要な機能を把握し、自社に合う適切なシステムの導入を進めれば、より効率的かつ精度の高いPSI管理が可能となるでしょう。

 

まとめ

PSIは、在庫管理が抱える課題を解消し、在庫最適化を実現するために欠かせない取り組みです。需要変動の激化、顧客ニーズの多様化が進む市場の中で、今後ますますPSIの重要度は高まっていくでしょう。

 

PSIを適切に運用するためには、精度の高い需要予測、リアルタイムでの在庫把握、拠点間の緊密な情報連携ができるシステムの導入が不可欠です。自社の業種や扱う商品、拠点数、必要な機能などを考慮し、適切なシステム導入を行いましょう。

 

関連記事:在庫最適化を実現するには?課題・方法など基本的な内容を紹介