【最新】ポカヨケとは?最新事例とともに解説!

ヒューマンエラー防止対策である「ポカヨケ」の概念は、日本能率協会の技術コンサルタントであった新郷重夫氏が発明したとされています。トヨタでは60年近く前から導入されており、トヨタ生産方式の基本概念のひとつです。技術革新が進んだ現在でもポカヨケは重要な施策として多くの企業・工場で取り入れられています。

本稿では、ポカヨケの基本的な考え方と併せてITを活用した最新事例をご紹介します。

ポカヨケとは?意味や重要性を解説

人的ミスを配置や識別タグなどで物理的に防止するポカヨケは、ローテクで時代遅れだと感じる方もいるでしょう。しかし「失敗しそうな個所を発見して予防策を講じる」というコンセプトはヒューマンエラーを防ぐ有効な方法であり、現在でも多くの企業で実践されています。

ここでは改めてポカヨケの重要性や基本的な考え方について整理してみます。

ポカヨケの意味

ポカヨケとは、不注意から起きる失敗(ポカ)を回避する(ヨケ)ための物理的な対策を指します。例えば中身を間違えないよう容器を色分けする、上下が逆にはまらないよう器具を設計する、などの工夫です。ひとつひとつは小さな改善ですが、それらが積み重なると大きな効果が期待できます。

ハインリッヒの法則として知られている事故発生についての法則では、「1件の重大な事故が発生する背後には、29件の軽微な事故が発生しており、さらにその背後には事故には至らなかった300件の危険な事象(ヒヤリハットまたはポカ)が隠れている」と言われています。ポカの発生を減らしつつ、万が一発生した場合は速やかに対策を行うことで、ヒューマンエラーの発生を防ぐだけでなく事故防止にもつながります。

ポカヨケの重要性

人が関わる作業では、どんなに対策を行ったとしてもヒューマンエラーをゼロにすることは難しいでしょう。本来であれば全ての工程、全ての製品で検査を行うことが理想ですが、工数的にもコスト的にも現実的ではありません。

そのため極力間違いが起きないように仕組み化することが求められ、担当者の負担を減らしながら全数検査と同等の効果を上げる方法としてポカヨケが重要視されています。

ポカヨケの概念の始まり

ポカヨケは、トヨタ生産方式の基本概念のひとつです。トヨタ生産方式ではジャストインタイムと共に「自働化(「働」はにんべん)」という考え方が柱になっています。これは正常に完了したときに機械が安全に停止し、異常が発生したときは機械が自ら異常を検知して停止することです。「自働化」を実現する手段としてポカヨケが生まれました。

ポカヨケの基本的な考え方

ポカヨケの基本的な考え方は、全工程の最後に検査をするのではなく、それぞれの製造工程内で改善点を発見することで次工程に不良品を流さないようにすることです。そのための方法としては、以下のようなものがあります。

・ミスが発生しないようにする
  例)色分けで識別
・ミスが発生したときに適切な対応をする
  例)アラームで通知
・ミス発生後に適切な対応をする
  例)検査を実施し不具合があれば除外する

ポカヨケを徹底する方法とは?

ポカヨケを徹底する方法としては以下の4つの方法があります。

専用治具の取り付け

治具とは、加工や組み立ての際に部品を固定したり作業指示を行ったりする装置のことです。作業効率向上や作業のバラツキを抑えるだけでなく、ポカヨケ防止としても活用されます。例えば、部品に突起をつけて一方向にしか組み合わせできないようにすると逆向きに組み合わせてしまうミスを防止できます。

バーコードリーダー導入

識別作業や更新作業を自動化する方法のひとつがバーコードリーダーです。棚と製品それぞれにバーコードを付けて一致しているか照合する、作業完了時に作業者がバーコードを読み取り進捗を報告する、指示書と部品をバーコードで照合するといった作業をすることで、照合ミスや作業漏れを防止します。

バーコードリーダーを利用した在庫管理方法について詳しく知りたい方は、下記の記事をお読みください。

関連記事:『10分でバーコード・QRコード・RFIDを利用した在庫管理がわかる

置き場や色分けによる識別

組立・加工工程では、作業に使用する部品の置き場を固定すれば、誤った部品を組立に使うリスクを低減できます。検品の際は良品を青色のケースに、不良品なら赤色のケースに、というように色分けすることで不良品の後工程への流出を防ぎます。

ポカヨケ機能付きツール

グリスガンやスプレー缶、チェックペンに検印スタンプなど、様々なツールに作業状況を可視化する仕組みを組み込むことでミスを予防します。代表的なツールとしてポカヨケトルクレンチがあります。

・ポカヨケトルクレンチ

締め付け作業に使う工具であるトルクレンチに通信機能を付けたものがポカヨケトルクレンチです。締め付け回数や締め付けトルクデータを管理して締め忘れを防止します。締め付け完了と同時に作業済みの証拠を残すタイプもあります。

例えば、締め付けの回数カウントや完了タイミング、規定トルクデータを管理し、無線もしくは有線で外部端末と通信できるトルクレンチなど挙げられます。作業者はデータで自分の作業結果を確認できるため、ミスの発生を大幅に防げます。

ポカヨケの最新事例をご紹介

ITを活用することで、よりヒューマンエラーを防止することができます。ここではRFIDやARといったテクノロジーがポカヨケにどう貢献するかを紹介します。

①IoT・AIを活用する【ピッキングで誤組み付け防止/安全手順の確認で事故防止】

IoTとは、センサーから取得した情報を分析して新たな価値やビジネスモデルを生み出す技術です。ピッキングにおけるポカヨケの例としては、部品箱にセンサーを取り付けて現在の作業に必要な箱が光るようにすることで、誤組み付けを防止する仕組みが挙げられます。

また、作業者の安全が求められる現場でヘルメットにセンサーを付けてあごひもの締め具合を検知、作業者のヘルメット着用状況を自動で記録・保存するポカヨケツールもあります。ヘルメットのかぶり忘れを防止するほか作業員の記録負担も軽減できます。
参考資料:新商品「“ヘルメットの着用モレ防止IoTツール” En-Guard(アンガード) ST-800T-HA01」発売のお知らせ(ヘルツ電子)

IoTやAIの活用方法について詳しく知りたい方は、下記の記事をお読みください。

関連記事:『人工知能・AIとは?基本知識から、IoT x AIの製造業での活用事例や注目サービスまで徹底解説

②RFIDを活用する【工具管理で確認モレ防止/商品情報の自動表示で管理ミス防止】

RFIDとは、ICタグの情報を無線通信で読み取る自動認識技術です。工具管理でのポカヨケの例としては、ひとつひとつの工具にRFIDタグを付けることで、工具箱に入っている工具を自動で確認し、工具忘れを防ぐ仕組みが挙げられます。従来は担当者が目視で工具を管理していたため確認作業に時間がかかっていましたが、RFIDによって自動化し、確認モレをなくし工具確認作業を効率化できます。

またRFIDタグの情報を読み取り地図上に表示する技術を活用することで、商品の管理ミスを減らします。
https://rflocus.com/service/

RFIDの仕組みや特徴について詳しく知りたい方は、下記の記事をお読みください。

関連記事:『【更新】RFIDとは?仕組みや特徴、最新の活用事例をわかりやすく解説!

③ARを活用する【手順指示で作業ミス防止】

ARとは、現実世界にデジタルの情報を付加する仕組みです。機器のメンテナンスにおけるポカヨケの例としては、対象機器にARマーカーを取り付け、タブレットをかざしてARや音声の案内を行う仕組みが挙げられます。紙のマニュアルでは理解しにくかった作業も、該当箇所を示しながらビジュアルで操作を説明することで手順に不慣れなスタッフでも間違いなく作業できミスを減らします。

まとめ

日本ではQC(品質管理)活動などを通じて品質向上のための取り組みを積極的に進めてきました。トヨタ生産方式の基本概念として知られるポカヨケもそのひとつで、「そもそもミスさせない仕組みを作る」という思想は工程の自動化が進んだ現在でも変わらず重要なものです。

従来は「間違いをおかさないための工夫」が主に行われていましたが、現在では「自動化・機械化によって人の手をかけない」考え方へとシフトしています。IoTやRFIDといった技術は、この思想をさらに発展させる手段としてさらなる活用が期待されています。