【目前となった2024年問題】物流業界における課題と改善ポイントを解説!

物流業界は、複数の課題を抱えていると言われています。2017年から2018年にかけて、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵政が次々と運賃値上げに踏み切ったのを覚えている方も多いでしょう。値上げの背景には、オンラインショッピングの増加、人手不足によるスタッフの労働環境悪化などがありました。さらに2020年に入り、新型コロナウイルス感染拡大から巣ごもり需要で物流量が増加する一方、人手不足は更に深刻化しています。

製造業にとっても、物流業界が抱える課題を理解し、改善することは非常に重要です。本稿では、物流に関する課題と改善ポイントについて取り上げていきます。

物流業界における課題とは?

物流業界が抱える課題として、主に以下の5つが挙げられます。

小口発送増加、積載率の減少

EC市場の拡大により、自宅にいながらインターネットで買い物をする人が増加しています。それに伴い、物流においてもBtoC向けの小口配送が増加しています。また国土交通省の資料からも、1回の運送で運ばれる貨物の重量の小口化が進む一方、物流件数は増加傾向にあることがわかります。物流は、「軽量の貨物が増加・多頻度化している」状況です。

人口減少などによる人手不足

物流業務を担う人材のうち、特に重要なドライバーは全産業の平均以上のペースで高齢化が進んでいます。彼らが退職すると今後はさらに人手不足が深刻になる可能性があります。トラック協会の調査でも、時期により変動はあるものの3~5割ほどが労働力不足を感じており、慢性的に人手不足が続いている状況です。

激務化・労働環境の悪化

増加する物流量に人手不足が重なり、スタッフ1人が受け持つ業務が増え労働時間が超過するなど、労働環境の悪化が課題となっています。

製造業と比較すると、物流業界は自動化が進んでおらず手作業の比率が高いのが特徴です。そのため非効率な部分が少なくないことも、激務化の一因となっています。即日配送、翌日必着など厳しい配送条件も激務化を加速しています。

人手不足解消を目指すためにも、労働環境の改善は急務と言えるでしょう。

業界の多重下請け構造

物流業界では、発送主から受託した事業者がさらに下請けの事業者に委託する下請けの多層構造が課題となっています。多層構造により引き起こされる問題点のひとつめは、元請けから下請けへは、はじめの受託金額よりも安く依頼することになるため、下請けになればなるほど金額が下がること。ふたつめは、多くの場合、力関係で取引条件が不公平になることです。雇用条件の悪化は人手不足につながります。

厳しい業界構造が物流業界における大きな課題となっています。

2024年問題が迫る

物流業界は2024年問題を避けて通れません。2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の規制が厳しくなり、年間960時間しか残業ができなくなります。

1人のドライバーが運べる荷物の量は減少し、これまでのルートを2人で交代して運ばなければいけなくなります。したがって、ドライバー不足、収益減などの問題を抱えることになるのです。

 

物流業界を取り巻く環境の変化

物流業界における課題をご紹介しましたが、物流会社を取り巻く環境も変化してきているため、理解を深めておきましょう。

 

デジタルトランスフォーメーション(DX)

さまざまな企業でDX推進がされており、物流会社でもデジタル技術を活用して業務変革する動きが出てきています。国土交通省『最近の物流政策について』では、以下のようなDXについて解説されています。 

物流分野の機械化

  • ドローン配送
  • 自動運転
  • 倉庫内作業の自動化
  • 配送ロボット

物流分野のデジタル化

  • 業務手続きの簡略化
  • 配車管理のデジタル化
  • AIオペレーション

 

大手企業では、2024年問題に対応するために、自動運転トラックの自動走行の実証実験が行われています。

DXについておさらいをしたい方は、下記の記事をお読みください。

関連記事:『デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?3つの成功事例から学ぶ技術戦略

 

SDGs 地球環境への配慮

2015年9月に国連サミットで国際目標SDGsが採択されて、地球環境に配慮しながら仕事を取り組む方向になりました。物流業界は二酸化炭素排出や梱包資材の使用が環境破壊につながるとされており、SDGsと深い関係がある業界です。

そのため、電機自動車を利用したり、環境に優しい梱包資材を採用したりと環境を意識した経営に切り替える必要性に迫られています。 

物流業界と深い関係にあるSDGsについて詳しく知りたい方は、下記の記事をお読みください。

関連記事:『物流業界のSDGs取り組み事例3選!取り組み方まで徹底解説

物流業界における課題への取り組み

物流課題を解決する目的で、2016年には物流総合効率化法が施行されました。これは輸送網の集約や輸配送の共同化を目指すなど業界の効率化への取り組みを国が支援するものです。

さらに物流業界としても課題解決のために以下のような取り組みを進めています。

物流管理システムの構築

他の業界と同様、物流業界でもデジタル化が進んでいます。代表的なのが物流管理システムと呼ばれるもので、商品を管理する倉庫管理システム(WMS・Warehouse Management System)と商品配送を管理する輸配送管理システム(TMS・Transportation Management System)に分かれます。これらシステムの導入により、業務効率化、コスト削減などが実現します。

配送を依頼する荷主側では、オンライン上でドライバーを予約できる「トラック予約システム」を導入して効率化や運送状況の可視化を行う動きが進んでいます。

商品を管理する倉庫管理システムについて詳しく知りたい方は、下記の記事をお読みください。

関連記事:『WMS(倉庫管理システム)とは?導入のメリット・デメリットや選定のポイントを解説

再配達の防止

BtoCでは、配達時に不在だった場合にもう一度配達を行う再配達がドライバーの大きな負担になっていました。利用者側で宅配ボックスを用意する、コンビニなどで受け取るといった方法のほか、アプリによって再配達を防止する方法があります。

ヤマト運輸では、LINE上で再配達を受け付けるチャットボットを開発。配達予定を事前に通知し、利用者が受け取り時間の変更やコンビニでの受け取りを簡単に行えるようにすることで、再配達を削減しています。

ロボット、ドローンの導入

近年課題解決の手段として期待されているのが、ロボットやドローンの導入です。

搬送用ロボット開発などを手掛けるZMPは、自動運転技術を応用した宅配ロボットのDeliRo(デリロ)を開発。2020年5月には商用利用を開始しました。ロボットは50kgまで搭載でき最高速度6kmで走行、専用アプリのQRコードをDeliRoにかざして荷物を受け取ります。大学キャンパス内や都心エリアでの実証実験も行っており、事業所からのラストワンマイルの宅配手段として活用が期待されています。

大手通販事業者の楽天では、自動走行ロボットのほか、完全自立飛行による配達が可能なドローンを自立制御システム研究所と共同開発。離島や山岳部など、通常では配送が困難なエリアへの配送がスムーズに行える特性を生かし、2016年から各自治体と連携して実証実験を行っています。一般的なドローンのように人間が操作する必要がなく、離陸から商品を届けて帰還するまで、全自動で行えるのが特徴です。

同社では2021年をめどに宅配困難地域を中心にドローン配送システムの実用化を目指しています。今後はこのような自動配送が増加すると予測されています。

物流業務における改善ポイント

前項では、物流業界が行っている課題解決の取り組みについて紹介しました。物流における課題解決のためには、物流業界だけではなく、配送を依頼する側の改善も欠かせません。製造業で行われているQCの考え方は、物流業務においても当てはまります。ここでは、配送を依頼する側が行う改善において押さえておきたいポイントを紹介します。

3M(ムリ・ムダ・ムラ)を取り除く

作業のムリ、ムダ、ムラのことを、それぞれの頭文字を取って3Mと呼びます。後ろの文字を取ってダラリ、カタカナで3ムとも呼びます。作業量に対して多すぎる・少なすぎる人員配置で作業待ちやオーバーワークが発生する状況、ミスが多く手戻りが多い状況が該当します。

業務を改善するにあたり、3Mを見つけて原因を取り除くことがポイントです。

物流現場では、人手不足などの問題により人員の適正配置が難しく、3Mが発生しやすい状況です。また受注産業のため、入出荷量が日によって変動し、適正人数の配置が難しいという課題もあります。

IT技術の導入により、人を介する業務を減らすことで、3Mを減らすことができます。

工程を管理する

問題を発見し、取り除くためには、自社の物流工程の状況を把握する必要があります。QC活動では、はじめにデータを収集してどこにどのような問題があるかを明らかにします。同じように、社員に記録してもらうなどの方法で自社のデータを収集して状況を把握します。フローを明確にすることで、問題を発見しやすくなります。

IoT機器などを用いて自動でデータ収集をおこなうのも効果的です。リアルタイムで状況が把握できるだけではなく、人手では取得が難しいような細かなデータも取得可能です。工程管理により問題を明らかにすることで、改善を行いやすくします。

工程管理について詳しく知りたい方は、下記の記事をお読みください。

関連記事:『【必見】物流における課題と改善ポイントを解説!

ミスの防止(ポカよけ)

ポカヨケとは、不注意から起きる失敗(ポカ)を回避する(ヨケ)ための物理的な対策を指します。カテゴリが紛らわしくピッキングミスが起きるのであれば、ラックを色分けする、ラベルを貼って一目で識別できるようにするなどの対策がポカよけに該当します。

ポカヨケを行うことで、そもそもミスが起きないようにしてムダの発生を防ぎます。

関連記事:『【2020年最新】ポカヨケを徹底する方法は?最新事例もご紹介!

作業の効率化

ピッキング業務の効率化、動線・レイアウトの変更、作業の自動化などを実現することで課題が改善できます。
ポイントは、非効率な作業など3Mを見つけ、減らしていくことです。

社員の日ごろの心がけを徹底する5S

5Sとは、整理、整頓、清掃、清潔、しつけの頭文字をとったものです。製造業では工場などで広く実施されています。ドライバーや物流業務に関わるスタッフが5Sを徹底して働きやすい環境を整備することで、ヒューマンエラーの防止、ムダの削減などが期待できます。

物流業務における改善事例

実際の現場でどのような改善が行われているのか、具体的な事例を紹介します。

マッチングサービスで人手不足解消

pickgo(ピックゴー)は、小口で商品を発送したい事業者と配送可能な運送会社、ドライバーをマッチングするサービスです。物流版Uberのようにドライバーのネットワークを構築することで、双方無駄なく配送を依頼できます。

荷主側は必要なときにすぐにドライバーを見つけることができ、ドライバー側は時間や条件で仕事を選べるメリットがあります。また、行きと帰りのタイミングを合わせて仕事を選択することにより車両稼働率の向上にもつながります。デジタル化で人手不足解消、ドライバーの待遇改善などを実現している事例です。

ロボット活用でピッキングを自動化・効率化

配送の際に、倉庫に保管している商品を集める作業がピッキングです。従来ピッキング業務は出荷指示書を見て人手で商品を集めており、業務効率化が課題となっていました。

改善方法のひとつがデジタルピッキングシステムです。ラックに設置した表示器が示す場所の商品を取り出せばよいので、作業ミス軽減や業務効率化に貢献します。

またロボットの活用も急激に進んでいます。商品が保管してあるラックごと作業者の元に運ぶピッキングロボットや、自動でピッキングした商品を箱詰めする高度なロボットも、大手物流企業を中心に活躍しています。

BtoB大手通販サイトのアスクルでは、物流センターにAIを搭載したMUJIN製のピッキングロボットを導入。形状や固さの異なる商品をピッキングしてコンテナに積むまでを自動化しています。(参照 https://www.mujin.co.jp/videos/piece-picking-robot-for-e-commerce-logistics-center-of-askul/

人手でおこなう作業を減らすことで、ミスによる時間ロス削減や生産性向上を実現している事例です。

RFIDで入出荷・棚卸・探索を効率化

RFIDとは、識別情報が含まれたタグと読み取り機器間で無線通信を行いデータをやりとりするシステムです。物流業界では、入出荷・棚卸・探索作業を効率化するなどの目的で活用されています。

RFIDは、「一括で読み取り可能」「中距離から読み取り可能」「箱を閉じたままでも読取り可能」といった特徴を持ちます。バーコードと違って遠隔から大量一括読み取りできるので、入出荷・棚卸の作業時間を大幅に短縮できます。

さらに近年技術は進化していて、段ボール1個単位で位置の特定までできるようになっています。RFルーカスでは、電波の波(位相)を解析してRFIDの位置を特定し、地図に自動マッピングするソリューション「Locus Mapping」を提供。倉庫での在庫・物流管理の作業時間削減を支援しています。

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まとめ

新型コロナウイルス感染症をきっかけに、BtoCでは置き配や宅配便ロッカーが普及しました。感染予防が主な目的ではありますが、同時に再配達の防止にもなっています。また巣ごもり消費の影響による物流量増加や人手不足に対応するために、さまざまなデジタル化、効率化に着手せざるを得ない状況です。

この傾向は2021年以降も続くと見られ、物流に携わる企業、商品配送を依頼する企業のどちらも、スムーズな配送を実現するためにデジタル化による効率化が強く求められています。

物流業務の改善は、課題解決につながるだけでなく、生産性向上やコスト削減にも大きく貢献します。アフターコロナを考えると共に、自社で改善余地がないか見直す機会としてはいかがでしょうか。

RFIDを活用した物流コスト削減のヒント
https://blog.rflocus.com/rfid/

RFルーカスの物流関連記事へのリンク
https://blog.rflocus.com/%e7%89%a9%e6%b5%81/