【最新事例付き】物流会社のIoT活用方法とは?5Gスマート物流を徹底解説!

  • 3月 18, 2022
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運ぶだけの物流の時代は終わりを迎えようとしています。

大手物流会社の佐川急便では、物流の課題解決に挑むプロジェクトチーム「GOAL」を発足しました。佐川急便のCMは、俳優の織田裕二さんが演じるGOALプロジェクトチームリーダーが造船所を訪問し、造船所の課題解決に挑んでいくストーリーとなっています。

造船所の資材倉庫での資材探索時間の短縮、業務効率化でRFIDを提案していたことから、RFIDが多くの方に注目される機会となりました。

RFIDをはじめとするIoTシステムを導入することによって、物流会社が抱える課題は解決されていき、その先の事業成長も大きく期待できるのです。

いかがでしょうか?IoTに興味が湧いた方もいるのではないでしょうか?

本稿では、物流会社に求められていくIoTの活用方法についてご紹介します。

大手物流関連会社のIoT導入事例

スマート点呼を開発した「ヤマトホールディングス」

宅配便のシェアNo.1を誇るヤマトホールディングスは、2018年11月にIoTを活用したドライバーと車両の健康状態を自動計測する「スマート点呼」を開発しました。

OBD診断機(※1)・バイタルセンサー・アルコールチェッカーの各種IoT機器で計測したデータは、クラウドへ収集されます。不調な車両を発見した場合、運行前に整備を行うことで路上での故障を未然に防止できます。また、ドライバーの健康起因による交通事故の減少にも貢献しました。

(※1.OBD(On-Board Diagnostics)は、車に異常が出た際に点灯したり、診断されたコードを取得したりすることができます。)

無人宅配の実験が開始されているロボネコヤマトと合わせた自動運転配達サービスも大きな注目を集めています。

参考資料:ヤマトオートワークスが運送事業会社向けの「スマート点呼」を開発~「事故のない社会」に向けIoT活用で人と車両の健康状態をチェック~

RFIDで探索時間の短縮を提案するCMが話題「佐川急便」

佐川急便では、「顧客現場に最適な物流を提案する」を合言葉に先進的なロジスティクスプロジェクトの提案に取り組む組織「GOAL」を発足しました。

CMの中では、資材倉庫の中の資材探しにRFIDタグを活用する提案をしています。造船所の資材探しは半日以上もかかるほど手間になりますが、RFIDタグを活用することで、資材の保管場所を特定し探索時間の効率アップが目指せるとして、大きな注目を集めました。

佐川急便では、配達時間や梱包の質を上げることはもちろん、IoTを活用した作業効率を上げるベストソリューションの提案で付加価値のあるサービス提供を目指しています。

参考資料:「運ぶ」から『物流』の最適解へ導く先進的ロジスティクスプロジェクトチーム「GOAL」

RFIDの位置情報取得について詳しく知りたい方は、以下の記事を、ぜひご覧ください。

RFIDの位置情報で探し物が見つかる!?入出荷・棚卸しだけではないRFIDの新たな活用法

自動倉庫の実現を目指す「ファーストリテイリング」

RFID読取りセルフレジを実現したファーストリテイリングは、2019年11月に完全自動倉庫の実現を目指すことを表明しました。自動倉庫は5年以内に誕生する見通しとなっています。

2018年10月にパートナシップ契約を締結したダイフクをはじめ、新たにMUJINとExotec Solutions SASと契約を締結したことが発表されました。ロボットコントローラメーカーのMUJINとは、アパレル用の知能ロボットの共同開発をするそうです。物流倉庫の入出荷や保管・ピッキングまで、完全自動化できる物流倉庫の開発に大きな期待が寄せられています。
参考資料:ファーストリテイリング/完全自動倉庫を世界で実現する

参考資料:ユニクロ自動倉庫の次なるピース、ピッキングロボ導入へ

ユニクロにおけるRFIDの活用事例については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

RFIDタグを導入したユニクロから学ぶ他業界RFID活用のヒント

5Gスマート物流実証実験を開始した「日本通運」 

2020年2月に日本通運は「スマート物流」に関する発表会を行い、次世代通信の5Gで多数の端末との同時接続に関する実験を開始したと発表しました。

例えば、トラックからのカメラ映像は大容量のため、従来の4G通信ではブロックノイズが発生して、カクカクと動いていましたたが、5Gの通信技術によって、スムーズなカメラ映像を送ることが可能となりました。

管理センターには、センサーやカメラ映像などのデータが集積されていきます。貨物状態情報・集荷情報・積載状態情報・位置情報などを活かし、作業の効率化と省力化の実現を目指しています。

参考資料:5Gを活用したスマート物流の実現に向けた実証実験を実施

コア事業を強化する「日立物流」

日立物流では、専用パレット1つ1つにアクティブRFIDタグを取り付けて、所在地や所在地ごとの在庫管理をするシステム構築の提案などの荷役用資材の開発をするコア事業を強化しています。

RFIDをパレットにつけることによって、300m以内に設置されているアクティブRFIDタグの波を受信することが可能なリーダーを用い、拠点内に所在するパレットを認識することが可能です。パレット管理システムで受信した拠点や日時のデータを自動で収集し、大幅な作業効率を図ります。

参考資料:株式会社日立物流公式ホームページ

RFID通信距離について以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

RFIDの通信距離に関する基礎知識と最新情報

IoTで解決する物流業界が抱える課題

IoTは物流会社が抱える課題を解決できる画期的なソリューションです。物流会社は、どのような課題を解決できるのでしょうか?IoT導入前に課題を押さえておきましょう。

労働力不足

厚生労働省が発表している有効求人倍率の推移では、2019年1月時点において、全職業平均が1.52なのに対し、運送業は2.76と2倍近くの数字を記録しています。人手不足を理由に、倒産する運送会社も出てきており、事態は深刻化の一途を辿っています。

また、帝国データバンクの「人手不足倒産」動向調査において、2018年度は、前年比20%増となる82件の運送会社がドライバー不足による倒産をしています。

トラック運送業界では、配送需要はあるものの、ドライバーを調達できないが故に受注ができず、その結果、資金繰りが悪化して倒産していることが調査結果から分かります。

参考資料:「人手不足倒産」の動向調査(2019 年度)

配達サポート

World Bankの調査結果では、日本の物流会社に対する世界評価は決して高くありません。欧米の物流会社では、ロジスティクスの高度な知識を持ち、合理的な在庫管理などの提案力を持っているのに対し、日本の物流会社は荷主のニーズのすり合わせを行う輸送サービスを提供しているからと言われています。

一般財団法人の運輸政策研究機構運輸政策研究所は、日本の物流会社が世界で活躍するためには、高度なロジスティクスに関する知識を持ち、手厚いサポートが行える人材育成が急務だと述べています。

参考資料:THE WORLD BANK

サービスの高度化

輸送重量は30億トン前後と増加はしていませんが、インターネット通信販売の増加に伴い、個人向けの低価格輸送のニーズが高まっています。低価格輸送のため、収益は増加しないのに手間が掛かる多頻度小口の物流が増えているのです。

また、EC販売の当日配送などのサービスに競争力が求められており、仕事量は増加しているのに人手が充足されないため、労働力不足問題を促進しています。これらの課題を解決するために、IoTの活用は不可避です。

「IoT」の基礎知識や活用事例について以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

IoTとは?IoTの最新動向と活用事例をわかりやすく解説

物流業界が得られるIoT導入効果

物流業界では、お客様のニーズに応えられるようにサービスが高度化しているため、IoT導入は拡大していくのは間違いありません。そのため、物流業界が抱える課題を把握した上で、IoT導入効果を確認しておきましょう。主にIoT導入効果は次の通りです。

効率的な配送が実現できる

配送車のIoT化によって、積載情報や空車情報を取得して、効率的な配送が行えます。例えば、荷物を積んでいない配送車を依頼人とマッチングさせたり、同じ方向の配送車の荷物をまとめるなど、無駄を省くことが可能です。空いている配送車を企業間でシェアする活用方法も期待できます。

車両、倉庫設備のメンテナンスの時期が的確に把握できる

車両や設備をIoT化すると、状態や作業進捗をモニタリングすることができます。モニタリングで収集したデータによって、メンテナンスや部品交換の必要なタイミングを把握できます。異常を検知したら通知を送るなどの仕組みを整えることも可能です。

リアルタイムの在庫状況を確認できる

IoT化されたハンディターミナルや在庫管理システムを活用すれば、リアルタイムの在庫状況を確認することが可能です。5Gのネットワーク経由で集約されれば、誤差なく商品や在庫の状況を把握することができます。後述の通り、RFIDを活用することにより、複数商品の同時読み取りも可能になるため、業務の大幅な効率化も図れます。

倉庫内の保管場所が瞬時に特定できる

商品にセンサーが搭載されていれば、保管場所を瞬時に特定できます。単なる位置情報だけではなく、温度状況なども確認することが可能です。IoTの導入により、商品の品質管理を徹底し、最適な状態で配達が可能となります。

物流業界で注目されるIoTソリューション

次に、実際に物流業界で活用できるIoTソリューションをご紹介します。

RFID 

RFIDはバーコードと異なり、離れた場所から複数のRFIDタグ情報をまとめて読み取ることができます。この機能を最大限に活用すれば、物流管理の効率化を実現できます。

例えば、一点ずつバーコードで読み取る検品作業はRFIDシステムの導入で一括読取り可能となり、リアルタイムの在庫管理や棚卸作業も容易に行うことが可能になります。経済産業省が「コンビニ電子タグ1,000億枚宣言」及び「ドラッグストア  スマート化宣言」を策定したので、RFIDは大きな注目を集めています。

RFIDについて詳しく知りたい方は「RFIDとは?最新動向と活用事例を解説!」を参考にしてください。

画像認識

カメラで撮影した商品画像をAIに取り込むことで、事前に登録した商品画像との照合による検品が可能となる画像認識システムも活用されています。

バーコードやRFIDタグが付いていない商品でも利用することができるため、業務効率化に貢献します。画像認識は、ロボットが自動ピッキングを行うためにも必要となるシステムです。

画像認識について詳しく知りたい方は「画像認識AIモデル構築の流れとおすすめライブラリ9選」を参考にしてください。

WMS

WMS(Warehouse Management System)は、入荷・在庫・流通加工・帳票類の発行・出荷・棚卸などを効率化し、一元管理するソフトウェアのことをいいます。在庫の照会や補充、履歴管理、SKU管理、温度管理など、在庫のリアルタイムな管理を実現するシステムです。このシステムを導入することで、人的ミスを最小限に抑えて作業効率を上げられます。

WMSについて詳しく知りたい方は「WMS(倉庫管理システム)とは?WMSの有効な活用方法とおすすめのWMS6選をご紹介!」を参考にしてください。

自動倉庫システム

自動倉庫システムは、荷物や部材をスタッカーラックという荷物に収納し、製品の受け入れから保管、出荷までの一連の流れをコンピューターによって一元管理する仕組みの倉庫となります。

それぞれの倉庫に合った独自の倉庫管理システムを構築することによって、倉庫作業を自動化していくことになります。

TMS 

TMS(Transport Management System)の略語で、物流センター全体を管理する情報ツールをいいます。商品が物流センターから出荷された後、届け先までの輸配送をトータルに管理することができ、配車計画や運行管理を支援するシステムです。

配車計画は、運行スケジュールを自動割付し、ドライバーやトラックの割り振りを行います。また、デジタル地図により走行ルートをシミュレーションしたり、所要時間を計測することができるようになっているツールもあります。

運行管理は、GPSにより車両がどこにいるかをリアルタイムに知ることができるようになっています。また、トラックの荷室内にセンサーを搭載し、温度管理を可能にする機能を持つTMSも登場しました。

国際物流総合展2020から読み取る今後のIoT

物流・ロジスティクスの先進情報が収集できる専門展示会「国際物流総合展2020」が開催され、2万2,000人の来場者を魅了しました。国際物流総合展2020から読み取る今後のIoTの市場動向に関しては、次のようなものが挙げられます。

工場内・倉庫内物流の自動化

株式会社ZMPは、台車型物流支援ロボット「CarriRo」シリーズを展開しています。無人フォークリフト「CarriRo Fork」は、2DLiDARセンサと環境側に置く反射ポールマーカーを用いた融合型方式で±10mm~20mmの動作精度です。ラックや棚移動、荷物搬送までの運用の自動化を目指せるとして大きな注目を集めています。

参考資料:CarriRoクリエーション

ピッキング業務の自動化

物流業界で注目されているのが、自立モバイルロボット(AMR)と呼ばれる協働ロボットです。ロボットがピックアップすべき品物を示して、ピッキング作業終了後には、所定位置まで運ぶ作業を担うため、ピッキングする人の移動範囲や歩行距離が少なくなるとして注目を集めています。

フィブイントラロジスティクスは、AMRとベルトコンベアを組み合わせた自動仕分けロボットを開発しました。1台あたり80個から100個程度の荷物を仕分けることが可能として、大きな注目を浴びています。

参考資料:フィブイントラロジスティクス公式ホームページ

ピッキング業務の自動化について詳しく知りたい方は「ピッキングロボットで作業時間を1/4に!物流業界の救世主を徹底解説!」を参考にしてください。

荷物配送の無人化 

Googleの姉妹企業であるWingは、2019年10月からドローン宅配サービスの実証実験を開始しています。この実験は、アメリカの連邦航空局の許可を初めて受けたもので、大手物流会社FedExや薬局会社のウォルグリーンと提携して行われています。

宅配サービスで使用されるドローンは、約9.7kmの距離を往復可能で、時速は約97km、運用可能重量は約1.4kgです。さまざまな商品を迅速に配達してもらえるソリューションとして大きな期待が寄せられています。

参考文献:Wing公式ホームページ

まとめ

物流業界は、サービスの高度化や労働不足などの問題を抱えていますが、IoTを導入することによって、これらの課題は解決できます。大手物流会社では、RFIDやWMSの活用が進んでいます。RFIDタグの単価が下がってきているので、今後は中小の物流会社でも導入されるでしょう。

物流会社で課題を抱えている方は、IoT活用のスマート物流を検討してみてはいかがでしょうか?IoTに詳しいベンダーに相談することで、課題解決のヒントが見つかるはずです。