働き方改革関連法で時間外労働の上限規制がされたことにより「デジタル技術をうまく活用して業務効率化できないだろうか…?」と考える方が増えています。しかし、DXによる業務効率化は失敗に陥りやすいため注意が必要です。
- 「デジタルツールを導入したけれど利用率が低い…」
- 「デジタルツールの操作方法を教えるのが大変だ…」
- 「リモートワークを導入したけれど、コミュニケーションが減ってしまった…」
上記の失敗は、DX推進の取り組み方を間違えたことが原因で起きる問題です。今回は、このような失敗を起こさず、DX推進で業務効率化する方法について解説します。
DXとは
DX推進とは、デジタル技術を活用してビジネスを発展させることをいいます。
- RPAやAIなどを活用して業務効率化を実現する
- テレワークを導入して働きやすい職場を実現する
- 最先端のデジタル技術を活用して新規ビジネスを創出する
つまり、デジタル技術を活用してビジネスの競争力を高めていくことをいいます。
DXについて詳しく知りたい方は、下記の記事をお読みください。
関連記事:『DX推進とは?なぜ進まない?DX加速するための4つの手順を紹介』
DXによる業務効率化の3つの効果
DXで業務効率化すると、3つの効果が見込めます。
生産性向上で売上(利益)を伸ばせる
1つ目は、生産性の向上効果が見込めて、売上(利益)を増やせることです。
例えば、伝票や帳票のデジタル化を進めれば、用紙代や印刷代が削減でき、書類の保管スペースも不要になります。大手企業が伝票や帳票のデジタル化を進め、年間14億円の経費削減に成功した事例もあります。
労働者不足の問題を解決できる
2つ目は、労働者不足の問題を解決できることです。パーソル総合研究所『労働市場の未来推計 2030』では、2030年に644万人の労働者が不足すると予想されています。
また、厚生労働省『一般職業紹介状況』によると、令和4年度平均の有効求人倍率は1.31倍となっており、1人の求職者に1件以上の仕事がある状態となっています。
このように、就職・転職市場は売り手市場となっているため、求人を出しても人材が確保しにくい状況です。人材が確保できなければ、従業員に負担が重くのしかかってしまいます。このような悩みを、デジタル技術で業務を自動化、効率化することで解決していけます。
従業員エンゲージメントを上げられる
DXで業務効率化すれば、従業員エンゲージメントが上げられます。なぜなら、仕事を行う上で必要な設備が投資されていて業務も適切に割り振られており、能力を発揮しながら働ける職場であれば「従業員のことを考えてくれている会社だ」と満足してもらえるためです。
従業員エンゲージメントを上げられれば、仕事に対して意欲的に働いてもらえるようになり、顧客満足度も上がります。従業員が働きやすい環境を整えるためにも、DX推進に積極的に取り組みましょう。
DXで業務効率化する手順
DXで業務効率化するときの手順は、以下の通りです。
- 社内業務を把握する
- 社内の業務改善の優先順位を決める
- 課題を解決する業務改善施策を考える
- 課題を解決する業務改善施策を考える
ここでは、各手順について詳しく解説します。
1.社内業務を把握する
まずは、社内業務を可視化して、以下の内容を把握しましょう。
- どのような業務があるのか?
- 業務を誰が担当しているのか?
- 業務に対して、どの程度の人員が必要なのか?
- 業務の工数や所有時間はどれぐらいなのか?
業務を可視化することで、削減できる業務や1つにまとめられる業務を見つけられます。また、所要時間が長く改善すべき業務を把握していきましょう。
2.社内の業務改善の優先順位を決める
業務を改善すべき業務を洗い出せたら、取り組む順番を考えていきましょう。なぜなら、複数の業務改善施策にまとめて着手してしまうと、通常業務に追われながらデジタルツールの操作方法も覚えなければいけず、大きな負担になるためです。
そのため、社内の業務改善に着手する前に、優先順位を決めておきましょう。初めてDX推進に取り組む場合は、大きな業務改革ではなく、ペーパーレス化や脱ハンコなど取り組みやすいものを選ぶと、従業員の抵抗を抑制できます。
3.課題を解決する業務改善施策を考える
社内の業務改善の優先順位を決めたら、どのような方法で取り組むか計画していきます。計画を考える場合は、改善の8原則を活用しましょう。
■改善の8原則
廃止 |
業務をやめることはできないか? |
削減 |
業務の回数を減らせないか? |
容易化 |
業務を簡単に行う方法はないか? |
標準化 |
ルール化して統一できないか? |
計画化 |
計画的に短時間で行えないか? |
分業分担 |
仕事の負荷は適性であるか? |
同期化 |
業務を平準化して、まとめて処理できないか? |
機械化 |
ロボットで自動処理できないか? |
4.業務改善施策に取り組む
社内でDX推進に取り組む場合は、従業員から同意を得ておくようにしましょう。なぜなら、デジタルツールの操作方法を学ぶことに抵抗を抱く方も少なからずいるためです。
経営者からDX推進に取り組む旨を説明することで、本気度が伝わり同意が得やすくなります。
また、従業員の同意を得たらDX推進部門を設置しましょう。
DX推進部門は、デジタルツールの導入や運用に関する質問に回答する部門です。DX推進部門を設置しておくと、混乱せずにDX推進に取り組んでいけます。
業務改善に取り組んだら効果を検証して、PDCAサイクルで回していきましょう。
DXで業務効率化するためのアイデア10選
DXで業務効率化する手順をご紹介しましたが、どのようなアイデアがあるのかも覚えておきましょう。ここでは、DXで業務効率化するためのアイデアをご紹介します。
1.文書を電子化して探索時間を減らす
社内のある書類を電子化すれば、パソコンやスマホから検索するだけで必要な書類を取り出せるため探索時間を減らせます。
コクヨ株式会社の独自調査によると、1日のうち書類を探す時間は約20分と述べられています。つまり、1年間で書類の探索に約80時間(20分×240日)を消化してしまっているのです。
このような探索業務は、書類を電子化すれば解決できます。書類の電子化をする場合は、書類のタイトルや日付で探せるだけではなく、文書の全文検索もできるファイル管理システムを探しましょう。
2.RPAで事務作業を自動化する
RPA(Robotic Process Automation)は、人間に代わってバックオフィス業務を行えるソフトウェア型ロボットです。RPAを活用すれば、以下のような事務作業を自動化できます。
- パソコン画面上の基本操作
- アプリケーションの起動
- ID・パスワード入力
- データ入力
- 書類作成
- 請求金額の計算
3.オンラインストレージでデータを同期する
オンラインストレージとは、インターネット上にデータを保管する場所をいいます。オンラインストレージの魅力は、データを自動同期できることです。例えば、データ編集を複数名で行う際に、その都度データの送受信をしていたら手間がかかります。どのデータが最新版か分からなくなってしまうでしょう。このような問題をオンラインストレージで解決できます。
オンラインストレージ上でデータを編集すれば、常に最新のデータで保存され、複数名で同時編集することも可能です。データをメールで送受信している場合は、オンラインストレージを活用してみることをおすすめします。
4.デジタルツールのテンプレートを活用する
デジタルツールのテンプレートを活用すれば、各書類の作成業務を効率化できます。例えば、人事評価システムの中には「OKR」「MBO」「1on1」「コンピテンシー」などの、さまざまな評価シートが用意されています。このテンプレートは好みに合わせてカスタマイズできるため、各書類の作成業務の効率化が可能です。
5.プロジェクト管理ツールで業務プロセスを共有する
プロジェクト管理ツールを活用して、業務プロセスを共有しておけば作業効率化が高まります。例えば、Web制作の場合「文章作成」「デザイン作成」が終わらないと、Webサイトのコーディングに入れません。
プロジェクト管理ツールで文章作成、デザイン作成の完了報告をして、相手に通知をすれば、すぐに業務を引き継げます。そのため、業務連携を強化したい方は、プロジェクト管理ツールを活用してみましょう。
6.データを活用して意思決定を行う
インターネットの普及により、気軽に情報が収集できるようになりました。このようなデジタルデータを分析してデータドリブンな意思決定を行えば、正確さとスピードを上げていけます。現在は経営者の意思決定のスピードを上げたい場合に活用されています。
7.ナレッジ共有ツールでナレッジを共有する
ナレッジ共有ツールで、マニュアルやノウハウを共有しておけば、業務の属人化が防止でき、誰がやっても同じように業務を行えるようになります。
また、職場で活躍している従業員が持っているノウハウを共有して他の人に教えれば、人材育成効果を見込むことも可能です。
8.Web商談を導入して営業効率化する
Web商談を行えば、相手先に出向く移動時間を短縮できて営業を効率化できます。例えば、訪問営業の場合、アポイント1件に対して3時間ほどかかります。
遠方に出向く場合は半日以上を移動に要することもありますが、Web会議であれば移動時間が削減できるのです。移動をする必要がないため、遠隔地の顧客獲得にもつながります。
9.チャットボットを活用して一次対応を自動化する
チャットボットとは、相手と自然に会話ができるソフトウェアロボットです。ユーザーが質問文を入力すると、その内容に適した回答をしてくれます。ユーザーからよくある質問に対して自動返答できる仕組みを整えておけば、オペレーター業務を削減できます。
10.業界のDX事例を参考にして取り組む
業界に応じてDX推進の方法が異なります。例えば、物流会社ではRFIDで入出庫業務を自動化する、荷物の搬送・ピッキングをロボットに行わせるなどのDX化が行われています。また、製造会社ではAIの自動検査による不良品発見などのDX化が行われているのです。
そのため、業界のDX事例を参考にして、業務効率化ができないかを考えましょう。
各業界のDX推進については、下記にまとめているため参考にしてみてください。
関連資料:『製造業DXとは?DXが進まない企業に推奨したい導入4STEPを紹介!』
関連資料:『物流DXとは?3つの課題を解決するデジタルテクノロジーを紹介』
関連記事:『小売業のDXとは?店舗が抱える4つの課題を解決するテクノロジー』
DXで業務効率化を実現した企業事例
実際にDXで業務効率化が見込めている企業は、どのような効果が見込めているのでしょうか?ここでは、DXで業務効率化を実現した企業事例をご紹介します。
RPAで受発注業務20,000時間削減に成功(NECグループ)
NECグループは電気メーカーです。同社はシステム製品の受発注の手続きが多く、年間120,000件の受注手続きに対して、約140,000時間を使っていました。
これらの業務にRPAを用いることで、1件あたり約48分かかっていた業務を約10分に短縮し、受発注業務を20,000時間削減することに成功しました。さらに、ヒューマンミスの防止効果も得られています。
営業リードタイムを23日分短縮(株式会社ビズリーチ)
株式会社ビズリーチはインターネットサービスを提供している会社です。同社はアウトバウンドの電話営業で商談のアポイントを獲得して、訪問営業する手法を取っていました。しかし、この営業手法だと商談の成約率が低く、リードタイムが40日もかかってしまったのです。
そのため、営業手法をWeb集客などのインバウンドに移行し、営業手法にWeb商談を取り入れました。その結果、お客様からお問い合わせがあった当日には商談が行えるようになり、リードタイムを17日までに短縮することに成功しました。さらに、国内全域への顧客開拓にもつなげられています。
書類の電子化で1億円のコスト削減に成功(タマホーム株式会社)
タマホーム株式会社は日本の住宅メーカーです。同社は契約書の電子化に取り組み、1億円のコスト削減に成功しました。
同社は住宅の施工前に締結する「工事請負契約」のほか、工事開始後に変更が生じた場合に締結する「合意契約」のたびに印紙を貼っていました。印紙代だけで1億を超えるコストがかかっており、経費削減できないかを考えていたのです。電子契約の導入により、これらの課題を解決しました。
まとめ
DXで業務効率化を行えば、生産性向上が見込めたり、労働者不足の問題を解消できたりします。また、働きやすい職場を作れば、従業員エンゲージメントを上げられます。
業務効率化を実現したいと思っている方は、この記事で紹介したDXで業務効率化を行う手順とアイデアを参考にしながら、自社に合った方法で取り組んでみてください。
当社は「小売業」「製造業」「物流業」のDX導入支援を得意としている会社です。この記事を読んでDX推進したいと思った方は、お気軽にご相談ください。