ドローンの活用事例6選!活用分野や課題を詳しく解説

  • 5月 14, 2025
  • RFID

ドローンの技術進化に伴い、農業や物流、点検、警備など、ドローンの活用範囲はどんどん広がっています。今回は、今後ドローンの活用が期待される分野と、ドローンの具体的な活用事例を紹介します。ドローンが直面している課題についても解説しますので、参考にしてみてください。

ドローンの活用が期待される分野

ドローンは、人手不足の解消や業務効率化、安全性の向上など、従来の手法が抱える課題を解決できる技術として、高い注目を集めています。

ここからは、既にドローンが活用されている分野や、今後ドローンの活用が期待される分野について詳しく解説します。

農業

農業分野では、ドローンが農薬散布や作物の生育状況の監視などに活用されています。従来は人力や大型機械が必要だった作業が、ドローンの利用により迅速、正確かつ低コストで行えるため、作業の効率化やスマート農業の実現に大きく寄与しています。

また、ドローンに高精度なセンシング技術を搭載すれば、作物の病害虫の早期発見や、水分量の把握なども可能になります。

物流

物流業界では、ドローンによる配送が注目されています。配送にドローンを活用することで、離島や山間部など、従来の輸送手段では時間やコストがかかっていたエリアに対して、迅速に荷物を届けられますまた、災害発生地域への配送にドローンを活用することで、緊急支援物資や医薬品をスムーズに被災地に届けられます。

ドローン配送は、現在、国内外で実証実験が進められています。将来的には都市部での短時間配送の実現も期待されています。

関連記事:ドローン配送とは?物流でのドローン活用のメリットや課題を徹底解説!

在庫管理

在庫管理にドローンを活用することで、在庫過不足の発生や人為的なミス、保管場所の不確実性といった課題が解消される可能性が高くなります。

たとえば、ドローンとRFIDを組み合わせれば、棚上の在庫を自動的にスキャンし、在庫数をリアルタイムで把握できるようになります。人が行うよりも圧倒的に早く正確に在庫管理ができ、高所作業や重作業のリスクを回避できることから、在庫管理にドローンを採用する企業が増えつつあります。

点検・整備

橋梁やトンネル、ダムや送電線などのインフラ設備の点検・整備においてもドローンの活用が進んでいます。

高所、狭所や危険な場所での作業をドローンが代替することで、作業員の安全性向上や点検時間の短縮につながります。また、足場の設置や大型機材が不要になるケースも多いため、コスト削減が実現できる可能性も高くなります。

さらに、ドローンとAIによる画像解析を組み合わせることで、ヒビや腐食、サビ、劣化といった異常箇所の早期発見にも役立ちます。

空撮

ドローンの普及により、かつてはヘリコプターやクレーンなどが必要だった上空からの映像が、手軽かつ低コストで撮影できるようになりました。

近年では、GPSによる安定飛行が可能な機体や、障害物回避センサーを搭載した機体など、空撮に特化したドローンも多数開発されています。高画質でダイナミックな映像が撮影できるため、映画やCMなどの映像制作だけでなく、不動産業や観光業など、幅広い分野で活用されています。

測量

ドローン測量は、ドローンに搭載したカメラやLiDARセンサーを用いて空中から地形データを取得し、地図や3Dモデルを作成する技術です。ドローンによる測量方法は、「写真測量」と「LiDAR測量」の大きく2種類に分けられます。

  • 写真測量

ドローンに搭載されたカメラで撮影された複数の写真から、対象物の3D形状を生成する方法。コストが低く、広範囲の測量に適している。

  • LiDAR測量

レーザー光を地面に照射し、反射時間から地形の正確な標高データを取得する方法。樹木の下の地面なども計測可能で、高精度が求められる場面に適している。

従来の測量方法と比較し、広範囲を短時間で高精度に測量できるため、土木・建設現場や災害調査、環境保全などさまざまな分野で活用されています。

警察

ドローンは高所からの俯瞰視点で現場全体を把握できるため、交通事故現場の空撮記録や、逃走犯の追跡等の警察活動にも活用されています。他にも、ドローンに赤外線カメラを搭載して夜間の捜査活動に役立てたり、現場の映像をリアルタイムで指揮本部へ送信するシステムを整備したりと、活用の幅が広がっています。

将来的には、ドローンとAIを活用した不審者の自動検知や、無人監視システムとしての巡回パトロール、サイバーセキュリティに対応した国産ドローンの導入強化も期待されています。

災害調査

ドローンによる災害調査は、地震・台風・土砂災害・洪水などの発生直後に、被害状況を迅速かつ安全に把握するために活用されています。災害調査におけるドローン活用の大きなメリットは、人が立ち入れない危険な場所でも、上空から高精度な写真や動画、3D地形データを取得できる点といえます。

ドローンが撮影した写真や映像を、災害対策本部へリアルタイムで共有することで、救助活動や復旧計画の意思決定にも役立っています。また、広域調査や二次災害のリスク評価にも活用できるため、災害調査にドローンを導入する自治体も増えつつあります。

警備、捜索

ドローンが撮影する映像を警備に活用することで、地上の警備員では把握できない死角を監視でき、より効率的なパトロールが可能となります。具体的には、大規模イベントや重要施設周辺の監視等で、ドローンによる警備活動が行われており、群衆管理や不審者の早期発見に役立っています。

また、赤外線カメラや音声発信機能を有したドローンは、山岳地帯や水難事故現場など、人が立ち入りにくい場所での行方不明者の捜索に有効です。

報道

報道の現場では、災害現場や事故現場、政治イベントやデモ活動の様子を、視聴者に届ける手段としてドローンが活用されています。

ドローンを活用すれば、従来のヘリコプター取材よりも低コストで、さらに狭い場所や危険地域での取材も可能になります。臨場感やインパクトのある映像をリアルタイムで報道できるため、近年、ドローンの導入が急速に広まっています。

エンターテインメント

ドローンはエンタメ分野へも進出しており、ドローンショーやスポーツ中継、映画撮影やライブ演出などで利用されています。とくに数百~数千台のドローンが夜空に光のアートを描くドローンショーは、花火に代わる新たなエンターテインメントとして注目されています。

近年ではAI制御や大型LED搭載ドローンも登場し、よりダイナミックで自由度の高いドローン演出が可能になりました。

土木

土木の現場では、施工前後の地形データの取得や、工事進捗の記録にドローンが活用されています。施工現場の俯瞰映像を活用することで、関係者間の情報共有がスムーズになり、工程管理や品質管理の精度が高まります。

また、人が立ち入れない危険区域の調査にも有効で、現場作業員の安全確保にも役立っています。

建設

ドローンは建設分野でも活用が進んでおり、現場の監視や測量、進捗記録や安全管理などに利用されています。ドローンを活用することで、従来よりも短時間かつ高精度で作業が可能となるため、工期の短縮やコスト削減にも寄与しています。

また、建築物の高所の確認や、工事の安全対策にも役立っており、施工ミスの早期発見につながるメリットもあります。

ドローンの活用事例

ドローンの技術向上や活用範囲の拡大に伴い、ドローンの活用事例も増えつつあります。ここからは6つの事例を取り上げ、それぞれの現場でドローンがどのように活用されているかを解説します。

農業:ドローンによる農薬散布の最適化

スマート農業のパイオニア的存在として知られている株式会社オプティム。同社の提供する「ドローン農薬散布防除サービス」は、AIとドローンを組み合わせ、農薬の最適な散布を実現するサービスです。

圃場のセンシングデータをもとに、病害虫の発生リスクが高い箇所に重点的に散布することで、無駄な農薬使用を減らし、環境にも優しい農業が可能となります。人手不足の課題解決にもつながるこの取り組みは、持続可能な農業モデルとして注目されています。

参考記事:株式会社オプティム:ドローン農薬散布防除サービス

点検・整備:ドローンによる動画撮影とそのデータ解析

株式会社補修技術設計は、橋梁やトンネルなどのインフラ構造物の点検・調査・補修設計を専門とする企業です。同社では、作業の効率化と安全性向上を目的に、ドローン技術を業務に積極的に導入しています。

ドローンの活用により、これまで3日かかっていた現地調査が1日で完了するようになり、作業時間の大幅な短縮、点検コストの削減が実現しました。さらに、高精度な空撮データから3Dモデルを作成し、損傷箇所を詳細に把握できるようになったことで、点検の質も向上しました。

また、高所や狭所での業務をドローンに任せられるため、作業員の安全性確保にも大きく貢献しています。

参考記事:現地調査が3日から1日に ドローンが橋梁点検の常識を変えた

警備:ドローンで監視を強化

セコム株式会社は、山口県美祢市のPFI刑務所「美祢社会復帰促進センター」において、自律型飛行監視ロボット・セコムドローンを活用した巡回監視サービスの実証実験を行いました。

​このサービスでは、ドローンが事前に設定された経路を自律飛行し、搭載されたカメラの映像をリアルタイムで監視卓に送信します。これにより、従来の人的巡回や地上の固定監視カメラでは難しかった屋上や死角の監視が容易となり、警備員の負担軽減や巡回時間の短縮に寄与しました。

将来的には、画像処理技術やAIもあわせて活用し、異常の自動検知など、さらなる省力化、高セキュリティ化の実現が期待されています。

参考記事:刑務所でセコムドローンの巡回監視サービスを実施

測量:3D都市モデリングデータの民間活用

​A.L.I. Technologiesは、国土交通省が主導する「PLATEAU(プラトー)」プロジェクトに参画し、ドローンを活用した3D都市モデリングデータの民間活用に向けた実証実験を実施しました。

実証実験は、2021年3月1日から4日にかけて石川県加賀市の片山津温泉街で行われ、自社開発のUAV管制システム「C.O.S.M.O.S(コスモス)」と連携し、3D都市モデルを用いたドローンの飛行ルートシミュレーションを実施しました。この実証実験では、航空法に則った自動空路の可視化や、運航者トレーニングによる業務の効率化とコスト削減の可能性が検証されました。

さらに、物流ドローンが撮影した配送ルートの写真から写真測量を行い、3D都市モデルのアップデートが可能かどうかも検証されました。​この取り組みにより、都市モデルのメンテナンス性の向上や、地図データの更新頻度の向上が期待されています。

参考記事:A.L.I.、3D都市モデリングデータ民間活用に向けたドローン測量の実証実験を実施

災害調査:熱海市土石流災害での活用

​2021年に静岡県熱海市伊豆山地区で発生した土石流災害では、災害調査ベンチャー・株式会社テラ・ラボがドローンを活用し、被害状況の把握と捜索活動の支援を行いました。

災害発生直後、テラ・ラボはドローンを活用して被災現場を上空から撮影し、被害状況の「見える化」に取り組みました。​さらに、撮影した映像や写真データを解析し、被災前の地図と重ね合わせた「共通状況図(ベースマップ)」を作成しました。共通状況図は、災害発生から2日後に一般公開され、自衛隊や警察、消防などの捜索活動にも活用されました。

参考記事:【2021.7.3.熱海土砂災害_第一報】ドローン空撮「共通状況図(ベースマップ)」を作成、災害対策本部へ提供

在庫管理:ドローン×RFIDによる在庫管理

物流業や製造業の現場では、ドローンとRFIDタグを組み合わせた在庫管理を行う企業が増えています。ドローンとRFIDタグによる在庫管理は、具体的に以下のような手順で行います。

  1. 倉庫内の在庫品やパレットなどにRFIDタグを取り付ける
  2. ドローンにRFIDリーダーと位置測位センサーを搭載。倉庫内をあらかじめ設定したルートまたはAI制御で自律飛行させる
  3. 棚の間を飛行しながら、ドローンがRFIDタグの電波を読み取り
  4. クラウドに自動送信されたRFID情報を在庫データベースと照合
  5. 読み取った情報から「どこに・何が・いくつあるか」をリアルタイムに把握

ドローンとRFIDタグを活用することで、在庫管理業務の自動化が可能になり、作業時間の大幅な短縮や、業務の正確性向上が見込めます。また、高所や人がアクセスしにくい場所にある在庫の管理もドローンに任せらるため、作業員の安全性向上につながります。

関連記事:【更新】RFIDとは?仕組みや特徴、最新の活用事例をわかりやすく解説!

ドローン活用における課題

ドローンの活用分野は今後さらに拡大し、私たちの生活にとって欠かせない存在となることが予測されています。

しかし、安全かつ効果的なドローン運用を行うためには、乗り越えなくてはならない課題も数多く存在します。ここからは、ドローン活用における課題について詳しく解説していきます。

飛行時の安全性

ドローン飛行時には、事故やトラブルのリスクが常に伴います。主なリスクは、以下のようなものが挙げられます。

  • バッテリー切れや風による墜落・衝突事故
  • 操縦ミスやGPS不良による制御不能
  • 電波干渉による通信断 など

また、誤って人や建物に接触したり、撮影した映像がプライバシー侵害につながったりする可能性もあります。

こうしたリスクを防ぐためには、飛行前の点検、安全な飛行ルートの設定、操縦者の技術向上や、法令の理解と順守が求められます。

操縦者の確保・教育

ドローンを効果的に運用するには、高度な技術と、法律、電波、気象等の専門的な知識を持つ操縦者の確保が不可欠です。しかし、ドローン産業はまだ発展途上であり、十分な実務経験を持つ操縦者は不足しています。

今後、即戦力となる人材を育成してくためには、体系的な操縦技術や知識を学べる教育機関や専門スクールの拡充、ドローン国家資格制度の周知や取得支援、インターンやOJTの機会を提供等の取り組みの充実が求められます。

バッテリー性能

ドローンの稼働時間はバッテリー性能に大きく左右されますたとえば、産業用ドローンにも利用されるリチウムイオンバッテリーの一般的な飛行時間は20~30分程度とされており、広範囲の測量や長時間の監視業務には不十分なケースもあります。

また、積載する機器が増えると消費電力が増加し、飛行時間はさらに制限されます。そのため、頻繁な充電や、予備バッテリーや複数機体の用意が必要となり、運用の効率性や作業の連続性に大きな影響を与えます。

ドローンの運用をスムーズに進めるためには、より高性能・長寿命なバッテリー開発や、燃料電池などの代替電源の導入が求められます。

法規制の壁

ドローンの飛行には国や地域によってさまざまな規制が設けられています。日本では、航空法により、人口集中地区での飛行や目視外飛行、夜間飛行などに厳しい制限があり、これらの条件下での飛行には、国土交通省への申請・許可が必要になります。

航空法以外にも、電波法や個人情報保護法、小型無人機等飛行禁止法など、ドローンに関する法規制は複数存在します。これらに違反すると、罰則や飛行停止命令が科される可能性もあるため、事前に法規制の内容をしっかりと確認し、運用に必要な手続きを取ることが重要です。

まとめ

ドローンの活用範囲は、農業、土木、建設、物流、災害対策や点検・整備など多岐に渡ります。これまで人が行っていた業務を、ドローンが代替することで、業務の効率性や正確性の大幅な向上が期待できます。また、人が立ち入ることができない場所や危険な場所での作業をドローンに任せられるため、安全性の確保や人手不足の解消にも役立っています。

一方で、安全性や法規制、操縦者の確保やバッテリー性能など、ドローンの活用には運用面での課題も多く残されています。今後、ドローンがさらに普及するためには、技術面の進化だけでなく、ドローン人材の育成や、法規制や各種制度の整備がより強く求められます。