ドローン配送とは?物流でのドローン活用のメリットや課題を徹底解説!

  • 4月 21, 2025
  • RFID

ドローン配送は、物流業界が抱える課題を解消し、物流の効率化を実現する一手として、高い注目を集めています。今回は、ドローン配送の概要やメリット、実用化に向けた課題について詳しく解説します。ドローン配送の実証実験や導入を進める企業の事例についても紹介しますので、参考にしてみてください。

ドローン配送とは

ドローン配送とは、小型無人航空機(ドローン)を用いて荷物を配送するサービスを指します。一般的な物流トラック等による配送と異なり、事前にルートを設定されたドローンが空中を移動し無人で配送を行うため、人手がかからず、迅速な配送が可能になります。

とくに災害時の物資輸送や山間部などの物流困難地域での活用が期待されており、国内外のさまざまな企業が実用化に向けた実証実験に取り組んでいます。

ドローン配送のメリット

ドローン配送のメリットには以下の点が挙げられます。

  • 人手不足の解消
  • 交通渋滞の緩和
  • コスト削減
  • 物流困難地域への配送

それぞれの点について詳しく確認していきましょう。

人手不足の解消

物流業界では、慢性的な人手不足が問題となっており、とくに長距離配送を担当するドライバーの不足が深刻化しています。

ドローン配送は、無人で飛行し、設定した目的地へドローンが自動的に配送を行います。人間の労働力に依存する必要がないため、物流業界が抱える人手不足解消と、配送の効率化の実現が期待されています。

交通渋滞の緩和

ECサイトの普及や宅配サービスの拡大などにより、配送荷物量や配送回数は増加の一途を辿っています。荷物量の増加に伴い配送トラック台数も増加しており、これが交通渋滞を引き起こす一因とされています。とくに都市部では渋滞が頻発しており、配送遅延が発生する可能性も高くなっています。

ドローン配送は上空を飛行するため、交通状況に影響を受けることなく、スムーズに荷物の配送ができます。また、空には障害物がなく、目的地まで最短距離で移動できるため、配送時間の大幅な短縮にも繋がります。

コスト削減

ドローンは、電力で動くため、ガソリンやディーゼル燃料を使用するトラックやバイクでの配送手段と比べ、環境負荷が少なく、エネルギーコストを抑えられるメリットがあります。

また、ドローンによる物流の自動化が進めば、人件費が抑えられ、物流効率の向上にも繋がります。とくにラストワンマイル配送での活用が進めば、配送コストを大幅に削減できる可能性が高くなります。

物流困難地域への配送

ドローンを活用すれば、従来の配送方法では時間やコストがかかる山間部や離島などの物流困難地域へも、迅速かつ低コストで配送が可能になります。

また、地震や洪水などの災害により従来の配送手段が機能しない場合でも、ドローンを利用すれば、緊急支援物資や医薬品の配送がスムーズに行えます。実際に、令和元年台風19号や能登半島地震の際にも、ドローンによる支援物資の配送が行われた事例があります。

今後、技術開発や安全性の向上、運用ノウハウの蓄積等が進めば、ドローンが災害時の新たな物流手段のひとつとして確立される可能性が高くなります。

ドローン配送実用化に向けた課題

ドローン配送の実用化には以下のようにさまざまな課題があります。

  • 飛行時の安全性
  • 操縦者の確保
  • GPS精度・バッテリー・重量
  • 法規制の整備

それぞれの課題について詳しく確認していきましょう。

飛行時の安全性

ドローン飛行時の安全性の確保は、ドローン配送を実用化する上で、最も重要な課題のひとつと言えます。

空中を飛行するドローンには、落下事故や他の航空機等との衝突リスクが常に伴います。とくに住宅やオフィスビルが多く、人の往来が激しい都市部で事故が発生した場合、甚大な被害をもたらす可能性が高くなります。

そのため、障害物回避技術や緊急時の自動着陸システムの開発や、衝突を防ぐための空域管理システム(UTM: Unmanned Traffic Management)の導入が不可欠です。さらに、悪天候下でも安定した飛行を可能にする技術や、通信障害等が発生した場合に備えたバックアップ通信、自律飛行システムの強化も欠かせません。

これらの技術開発が不十分で安全性が確保できなければ、ドローン配送実用化の実現は難しいと言えるでしょう。

操縦者の確保

ドローン配送のように、長距離かつ都市部で飛行を行う場合、専門的な知識と高度な技術を持った操縦者の確保が不可欠となります。しかし、ドローン操縦者の数には限りがあり、需要に対して十分な人材が確保できていないのが現状です。

操縦者確保のためには、ドローン操縦者の養成プログラムを充実させ、ライセンス取得を支援する制度の整備が必要です。また、AIを用いた自動運行システムや遠隔操作による飛行管理システムなど、少ない人員で多くのドローンを管理できる仕組みを確立することも重要です。

GPS精度・バッテリー・重量

ドローン配送の実用化には、GPS精度、バッテリー性能、積載重量の問題を解決する必要があります。それぞれの課題について確認していきましょう。

GPS精度

ドローンのGPSの精度が低いと、目的地の特定が困難になり、誤配送や事故のリスクが高まります。とくにたくさんの高層ビルが立ち並ぶ都市部では、GPS信号が乱れるケースが多いため、より精度の高い測位技術の導入が求められます。

バッテリー

現在のドローンは、バッテリー寿命が短く、1回の充電で約20〜30分程度の飛行が限界とされています。長距離配送には飛行時間が不足しており、またバッテリー切れによる停止、墜落などのリスクも懸念されています。

都市部や山間部等への長距離配送を実現するためには、高エネルギー密度のバッテリーの開発や、ワイヤレス充電技術の導入、エネルギー効率の良いドローンの設計など、飛行時間を延ばすための取り組みが必要です。

重量

ドローンの積載重量には制限があり、現在の技術では、1〜5kg程度の小型荷物しか配送ができません。より重量のある荷物を運ぶためには、機体の軽量化や強力なモーターの開発が不可欠です。

積載重量の課題が解決すれば、ドローン配送の利便性が飛躍的に向上し、より幅広い用途での活用が期待できます。

法規制の整備

現在、多くの国では、安全性やプライバシー保護の観点から、ドローンの飛行に厳しい制限を設けています。日本においても、ドローンを運用する際は、「航空法」「電波法」「小型無人機等飛行禁止法」「個人情報保護法」など複数の法律を遵守する必要があります。

ドローン配送を本格的に普及させるためには、法整備を進め、安全基準の確立、ドローンの飛行ルールの明確化を行うことが必要です。具体的には、飛行高度の制限、飛行可能エリアの設定、許可制の導入などが考えられます。

さらに、事故が発生した際の責任の所在や、補償制度の整備、ドローンが収集したデータの取り扱いルールの策定、プライバシー侵害を防ぐ仕組みの構築など、企業が安心してドローン配送を導入できる環境を整えることが重要です。

ドローン配送の事例

  • 楽天ドローン
  • Amazon prime Air
  • ゆうあいマーケット

楽天ドローン

楽天ドローンは、楽天グループが展開するドローン配送サービスです。2016年に国内初の商用ドローン配送サービスとして注目され、2020年には「そら楽」という名称で、サービスを本格的にスタートさせました。

ゴルフ場への飲食物配送や、離島や山間部など買い物困難地域への日用品配送、災害時の物資輸送など、幅広い用途に対応しており、三重県志摩市や長野県白馬村など、さまざまな地域で実証実験が行われています。

また、楽天ドローンは、5G通信やAI技術を活用した自律飛行システムの開発にも取り組んでおり、将来的には都市部でのドローン配送の実現を目指しています。

Amazon prime Air

Amazon prime Airは、米・Amazon社が開発を進めるドローン配送サービスです。ドローン配送のパイオニア的存在として知られており、注文から30分以内に荷物を届けることを目標として掲げています。配送には完全自律飛行型のドローンを採用しており、AIとセンサー技術により、障害物を回避しながら安全に目的地へ荷物を届けることが可能です。

2013年の構想発表以降、2016年にはイギリスで初の試験配送に成功し、2022年にはアメリカのカリフォルニア州とテキサス州で商業運用が開始されています。

将来的には、Amazonの物流ネットワークと連携し、世界中でドローン配送を実現することを計画しています。

ゆうあいマーケット

​ゆうあいマーケットは、長野県伊那市が提供するドローンによる買い物支援サービスです。高齢者や交通手段が限られる住民の買い物をサポートすることを主な目的とし、2020年8月にサービスが開始されました。

自治体が運営する国内初のドローン配送サービスとして高い注目を集め、以下のような仕組みでサービスが運用されました。

  1. 利用者がテレビリモコンや電話で必要な商品を注文
  2. 地元ケーブルテレビが注文情報を受付
  3. 地元スーパーマーケットが注文商品を用意・梱包
  4. ドローンへ積み込み・離陸
  5. ドローンが近くの公民館などへ商品を配送
  6. 集落支援員(ボランティア)などが利用者宅へ商品を配送・対面受け渡し
  7. 商品代金および利用料はケーブルテレビ料金とまとめて徴収

2025年4月現在、ドローンによる配送は休止されていますが、ICT技術と地域の人的資源を組み合わせて社会的課題の解決に取り組む先進的な事例として、他の自治体からも高い関心が寄せられています。

まとめ

ドローン配送の実用化が進めば、物流業界の効率化はもちろん、災害時の救援物資輸送や医療支援など、社会課題の解決にも貢献すると考えられます。

ドローン配送を本格的に導入するためには、官民一体となって、法規制の整備や技術革新に取り組み、ドローン飛行時の安全性や運用ルールを確立することが求められています。

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