新型コロナの流行以降、オンライン需要の高まりから、物流量が増加しています。
物流センターに関わる方であれば、「物流量増加への効果的な対策とは何か?」と、頭を悩ませていることでしょう。
本稿では、まずは物流センターの基礎を解説します。その後、物流センターが抱える課題と改善のポイント、改善事例に触れます。
今後直面するであろう課題解決のヒントとし、ぜひ参考にしてください。
物流センターの基礎①~機能~
物流センターには、大きく分けて5つの機能があります。
①保管
「保管」とは、物流センター内の倉庫にモノを保管する機能のことです。
一般的には、トラック等で運ばれてきたモノをパレット又はかご車に積み込みます。その後、フォークリフトを活用して倉庫内の決められたロケーションに保管します。
フォークリフトについては、ピッキング作業効率化!おすすめフォークリフト&ピッキングカートをご覧ください。
②輸送
「輸送」とは、モノを送り届ける機能のことです。
鉄道輸送、海上輸送、航空貨物輸送、トラック輸送などがあります。物流量増加や労働人口減少に伴う「ドライバー不足」が予想されており、多くの物流センターが輸送機能の効率化を追求しています。
③荷役
「荷役(にやく)」とは、入出庫機能のことです。
検品、仕分け、棚入れ、ピッキングなどの作業が該当します。大型の物流センターでは、日々、数百人規模の派遣やアルバイトスタッフが各工程を担当しています。言い換えると、荷役を効率化することで、人材を有効活用できます。
荷役をスピーディーに行いたい方は、下記の記事を読んでみてください。
関連記事:『物流センターの課題と改善ポイントとは?求められる対策と改善事例を徹底解説』
関連記事:『入出庫管理とは?押さえておきたい入出庫の基本と効率化に不可欠な在庫管理のデジタル化』
④包装
「包装」とは、商品の包装や梱包を行う機能のことです。
生協、コープなどの宅配サービスをイメージすると分かりやすいでしょう。これらのサービスでは、梱包スタッフが商品棚から商品をピッキングし、配送先ごとに梱包します。配送先ごとに梱包内容が異なるため、機械やロボットによる自動化は難しい面があります。
⑤流通加工
「流通加工」とは、顧客のニーズに応じて商品を加工する機能のことです。
ギフトセット、おまけ付け、お菓子の詰め合わせなど様々です。こちらも梱包と同じくライン工程を組み、複数のアルバイトスタッフが担当するのが一般的です。流通加工のニーズは定期的に変わるため、機械化が難しく、人による作業が続くと考えられます。
物流センターの基礎②~種類と役割~
物流センターの種類は、大きく分けて5つの種類があります。
①配送センター
「配送センター」とは、大規模な物流拠点のことです。
生産者から商品を仕入れ、保管・輸送・荷役の役割を担います。一例として、ヤマト運輸では、荷物を配送センターで仕分けした後に各地のセンターへ出荷し、そこから消費者の元へ配送します。
②デポ
「デポ」とは、小型の配送センターのことです。
エリア単位に配置された小規模な物流拠点を差します。配送先の近くに設置することで、配送距離やリードタイムを短縮できるメリットがあります。
③DC(Distribution Center)
「DC」とは、商品を一旦保管し、物流センター内で流通加工を行い、出荷指示に基づき各届先まで配送するセンターのことです。
保管面積が大きく在庫期間が長いことから「在庫型物流センター」とも呼ばれます。
Amazon、楽天、ASKULなど、ECの大半はこのタイプです。荷役、包装、流通加工を行う点で、配送センターやデポと区別されます。
DCでは、検品はもちろんのこと、棚入れやピッキングといった、在庫管理に伴う多くの作業が求められます。
④TC(Transfer Center)
「TC」とは、荷物を保管することなく、センター内で荷物を開梱し、検品・店舗別の仕分け・トラックへの積み替えなどを行うセンターのことです。
基本的には在庫を持ちません。入荷した荷物は保管することなく、そのまま仕分けされ、納品先別に配送されます。
一例として、ホームセンターのカインズでは、TC内で配送先(店舗)ごとにモノを仕分けしています。
在庫を抱えず店舗数の増加に対応しやすいことから、多くの大手量販店やコンビニエンスストアが利用しています。
⑤PDC(Process Distribution Center)
「PDC」とは、物流センターで商品の在庫を保管するだけではなく、加工も行う物流センターです。部品の組み立てを行う場所や、鮮魚や精肉の加工を行う場所が整っています。
生鮮食品を取り扱うことが多く、品質管理に欠かせない空調設備、生産ラインが整備されています。
⑥FC(Fulfillment Center)
「FC」とは最先端の設備・システムが導入された物流センターのことです。入荷業務から出荷業務だけではなく、決済処理や返品、クレーム対応までお任せできます。
ECサイトを運営しているAmazonや楽天が採用している形態です。FCに委託すると、依頼先によってリアルタイムの状況が確認できなくなります。そのため、委託先は慎重に選ぶようにしましょう。
「生産立地型倉庫」と「消費立地型倉庫」の違い
部中センターには「生産立地型倉庫」と「消費立地型倉庫」があります。
「生産立地型倉庫」
「生産立地型倉庫」とは、材料の仕入れ先の近くに拠点を持つ物流センターをいいます。
主な目的は、仕入れコストを抑えることです。仕入れ先から物流センターの距離が近ければ、配送コストが抑えられます。仕入れ数が販売数を上回っているときに向いており、アパレルや農協が採用しています。
「消費立地型倉庫」
「消費立地型倉庫」は、商品の販売先の近くに拠点を持つ物流センターをいいます。
主な目的は短納期を実現することです。商品の販売先の近くに拠点を構えれば、顧客が短納期を希望した場合でも間に合わせられます。
販売数が仕入数を上回っているときに向いており、食品卸売販売業者が採用しています。
物流センターが抱える課題
物流センターが抱える課題について、規模問わず次の2点が課題としてあげられます。
ECニーズの高まりによる物流量増加
新型コロナウイルスは、私たちの暮らしを一変させました。外出制限がかかるケースが増えたことで、巣ごもり需要が伸びています。
販売側からすると、飲食やファッションなど、特に対面販売を軸としていた業界は大きな打撃を受けました。活路を見いだすため、各業界はECへのシフトを急ピッチで進めています。
EC販売が増えれば、販売店ではなく、物流センターを軸にモノが消費者へ流れるようになります。
物流センターは、これまで以上の物流量を捌く必要に迫られるでしょう。
少子高齢化に伴う人手不足
団塊の世代が2025年頃までに後期高齢者(75歳以上)に達します。
少子化も進んでおり、国内の人口は減少を続ける見込みです。「働き手が減る」ことは、近い将来やって来ます。
課題改善のポイント
「物流量の増加」、「人手不足」の2つの課題に備えるためには、これまで以上の効率化・省力化が必要です。
物流センターの運用には多くの人が関わります。「全自動化」は、コストがかさみ費用対効果が薄いことが見込まれるため、現実的ではありません。
ビジネスを大局的に捉えつつ、局所的なアプローチを実践していくことが大切になるでしょう。
次章でこれらの課題を解決すると期待されているトレンドをご紹介します。
物流センターの自動化・省力化トレンド
物流センターの自動化・省力化を進める上で、注目を集めている4つのトレンドをご紹介します。
DX
DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略で「ビジネスのデジタル化」を意味します。
業務の自動化・省力化を進め、これまでのビジネスモデルに変革をもたらすことがDXの目的です。
昨今、あらゆる業界でDXが浸透し始めていますが、DXはあくまでも概念です。ビジネスに落とし込むためには、具体的な施策を検討しなければなりません。
物流センターにおけるDXの具体的な実現方法としては、本稿で紹介するブロックチェーン、ロボット、WMS、RFIDなどがあります。
DXについては、デジタルトランスフォーメーションとは?革新的な3つの活用事例から学ぶ技術戦略をご覧ください。
ロボット
物流センターに導入するロボットとしては、荷役(ピッキング、補充)、包装、流通加工を代替するケースがあげられます。
一例として、大阪府茨木市にあるAmazonの工場では、ピッキングロボットが導入されています。
ピッキングは「人が商品棚に取りに行くのではなく、商品棚が人に向かってくる」仕組みです。人の移動を減らし、業務の効率化を実現しています。
しかし、最終的に梱包するのは人であるため、人手が全て無くなる訳ではありません。
一部の作業をロボットが代替し、徐々に適用範囲を広げながら、ロボットの活用が進むと見込まれます。
ピッキングについては、ピッキングとは?ピッキング種類から業務効率化の方法まで徹底解説をご覧ください。
ピッキングロボットについては、ピッキングロボットで作業時間を1/4に!物流業界の救世主を徹底解説!をご覧ください。
WMS
WMSとは、Warehouse Management Systemの略で、「倉庫管理システム」と訳されます。
入出荷・保管といった倉庫における物流業務を一元管理するシステムです。導入することで、業務の正確性とスピードアップを実現できます。
物流センターに関連するシステムには、「在庫管理システム」があります。WMS とは、「入出庫などの物流作業をサポートできるか否か」により区別されます。
WMSについては、WMS(倉庫管理システム)とは?WMSの有効な活用方法とおすすめのWMS6選をご紹介!をご覧ください。
RFID
RFID(radio frequency identification)は、情報が埋め込まれたRFIDタグ(ICタグ)とRFIDリーダーで、近距離無線通信によって情報をやり取りする技術です。
バーコードとは違い「離れた場所から、一括でタグ情報を読み込める」特性を持ち、ユニクロをはじめとしたアパレル業界を中心に普及しています。
物流センターでは、多数の商品で溢れかえっています。そのため、目的のモノを探すのに苦労するものです。
「目的の商品がパレットの一番奥にあった」
「商品が別のロケーションに入っていた」
これらは、商品探しを担当したことがある方であれば、一度は経験があることでしょう。
物流センターにおいては、モノ探しの時間を短縮することで、商品管理の効率化を目指せます。
遠距離からモノの位置を特定する「RFIDタグ検知システム」などを活用すれば、モノ探しにかかる時間を大幅に削減できるでしょう。
RFIDについては、RFIDとは?最新動向と活用事例を解説!をご覧ください。
物流センターの課題改善事例
ここでは、ブロックチェーン、ロボット、WMS、RFIDの各種事例をご紹介します。
ケース①:ニトリ/ブロックチェーンを活用したスマート物流網
ニトリは、ブロックチェーンを活用した物流網の構築を推進しています。
同社の課題であった各拠点間での契約処理にかかるコストを下げることが目的です。
ブロックチェーンの「スマートコントラクト(契約の自動化)」を活用し、契約処理を紙媒体からデジタル化します。
「拠点に到着したら自動で手続きが行われる」といった仕組みを構築することで、より低コストでクリアな物流網の管理を目指しています。
ブロックチェーンについては、5分でわかるIoTとブロックチェーンの関係性!国内の活用事例とあわせて徹底解説!!をご覧ください。
ケース②:ASKUL/ピッキングロボット111台導入
ASKULは、大阪府吹田市の物流センターに、株式会社ギークプラスが提供する搬送ロボット「P500R」を111台、導入しました。
ピッキングの際、人がモノを取りに行くのではなく、モノが人に届く「Goods to Person」を実現しています。
巣ごもり消費の増加が後押しし、同社のBtoC向け通販サイト「LOHACO」の売上が好調です。今後は更なるロボットへの投資が進むと予想されます。
【参考記事】
ロボスタ:アスクルの物流センターにGeek+の自動搬送ロボットを111台導入 出荷製品を自動運転でスタッフまで運ぶスマート物流
ケース③:ダスキン/WMS活用で12物流センターの在庫を可視化
株式会社ダスキンは、NEC社のWMS を導入し、「12物流センターの在庫の可視化」に成功しています。
全国展開している大型の物流センターになると、配送センターからデポにモノが送られるケースが大半です。
モノの移動を可視化するためには、「在庫がどこにどれだけあるか?」透明性の高いトレーサビリティが必要です。
WMSを導入すれば、入出庫から倉庫のあらゆるデータが一元管理されますので、物流のデジタル管理が構築できます。
【参考記事】
NEC:導入実績
ケース④:センコー/RFID活用でフォークリフトでの保管作業を効率化
一般的に、倉庫内で仕分けや流通加工されたモノは、パレットに積まれます。その後、パレットの外周をラッピングし、最後に管理用のバーコードシールをパレットに貼り付けます。
フォークリフト作業者は、パレット番号と保管先のロケーション番号を紐づけて、倉庫内に保管する仕組みです。
大半の物流センターはこの運用ですが、効率化の面では課題があります。
それは、「毎回、作業者はフォークリフトから降りてバーコードを読み込まなければならない」点です。
センコーはこの作業を効率化するため、パレットに、バーコードシールではなくRFIDタグをくくりつける運用に変更しました。
作業者はフォークリフトから降りることなく検品が可能になったことで、保管作業を効率化しています。
パレット管理以外にも、モノ探しや棚卸しなど「バーコードの至近距離での一点照合」が効率化の足かせとなっている場合、RFIDが有効な解決策となりえるでしょう。
【参考記事】
Lnews:RFID事例(センコー)
まとめ
今後、物流センターは更なる物流量増加と人手不足に直面します。
将来の物流に対して、国交省は次のメッセージを発信しています。
「デジタルトランスフォーメーション(DX)により、物流最適化を推進するとともに労働力不足に対応する。」
~2020.11.6:次期総合物流施策大綱の策定に向けた有識者検討会にて~
しかし、DXはあくまでも概念です。
物流センターの規模や課題によって、適したアプローチは異なります。具体的なDX施策に落とし込むことが大切です。
本稿で紹介したトレンドなどを参考に、自社のビジネスに合わせた最適なソリューションを検討していきましょう。