出荷管理は、企業の売上や信用に直結する重要な業務です。しかし、同時に課題や問題が発生しやすく、効率的な運用が難しい業務でもあります。
今回はそんな出荷管理の業務内容や、重要とされる理由、直面しやすい課題について解説します。現状の出荷管理をより効率化させるためのポイントやアイデアも紹介するので、参考にしてみてください。
出荷管理とは
出荷管理とは、注文を受けた商品が正しく出荷、納品されているかを管理する業務を指します。必要書類の作成や、梱包、ピッキング、積み込み作業、取引の記帳など、業務内容は多岐に渡り、受注した商品をスムーズに顧客や取引先に届けるために欠かせない業務とされています。
出荷管理を怠ると、指定された納期までに商品が届かない、発送先を間違えて送ってしまうなど、企業の信用失墜や販売機会の損失に繋がるミスやトラブルが発生する可能性が高くなります。そのため、出荷管理は、製造業をはじめ、小売業、販売業、物流業等、さまざまな業界で重要な業務の一つと考えられています。
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出荷管理の業務内容
出荷管理の業務内容は以下の通りです。
- 出荷指示書の作成
- 必要書類の作成
- 出荷・納品作業
- 売上伝票の作成・取引の記帳
それぞれについて詳しく確認していきましょう。
出荷指示書の作成
出荷管理において最初に行われるのが、出荷指示書の作成です。出荷指示書とは、受注伝票をもとに、出荷する商品の種類、個数、単価、納期、出荷先等、出荷に関する情報が記載された書類を指します。
作成された出荷指示書にもとづき、倉庫の在庫担当者は出荷に向けた準備を行います。そのため、納期までの期間が短い商品や、出荷準備に時間のかかる商品は、早めに出荷指示書を作成しておくと業務がスムーズに進みやすくなります。
必要書類の作成
出荷・納品時に必要となる納品書、納品書控え、受領書、領収書などの必要書類の作成を行います。それぞれの書類の特徴は以下のとおりです。
- 納品書
商品の詳細や数量、単価、発送日、発送先住所などが記載された書類です。商品と一緒に納入し、顧客に注文通りに商品が届いているかを確認してもらう目的で作成されます。取引が行われたことの証明書類としての役割も果たします。
- 納品書控え
納品書は商品とともに顧客へ納入し手元に残りません。そのため、自社での保管を目的とし、発行した納品書と同じ内容の控えを作成します。なお、法人税法により、納品書の控えには7年の保管が義務付けられています。誤って破棄したり、紛失したりしないよう注意しましょう。
- 受領書
受領書は、顧客が商品を受け取ったこと明らかにするために発行される書類です。法的な発行義務はありませんが、トラブルの防止やスムーズな取引のため、発行するのがおすすめです。
- 領収書
領収書は、顧客から商品代金を受け取ったことを証明するために発行される書類です。受取金額が5万円を超える場合は、金額に応じた収入印紙の貼り付けが必要となります。なお、領収書は、会社法により10年の保管が義務付けられています。
出荷・納品作業
必要書類が揃ったら、実際に顧客へ商品を出荷・納品するための作業を行います。出荷・納品までに必要な業務は主に「ピッキング」「検品」「梱包」「積み込み・発送」に分けられます。それぞれの工程の具体的な業務内容は以下のとおりです。
- ピッキング
出荷指示書をもとに、指定された商品を在庫保管場所から取り出します。
- 検品
商品(型番、数量など)が正しくピッキングされているか、欠品や不具合(破損、傷、汚れなど)がないか、食品等の場合は傷んだり、腐ったりしていないかを確認します。
- 梱包
ダンボールやクッション材を使い、商品を出荷可能な状態に梱包します。梱包の際は、商品の性質や特徴、重量、容量、天候や気温などを考慮し、資材を選ぶとよいでしょう。
- 積み込み・発送
梱包した商品をトラックなどへ積み込み、顧客へ発送します。
売上伝票の作成・取引記帳
顧客への出荷・納品が完了したら、納品書の控えや受領書にもとづき、売上伝票を作成します。売上伝票は商品などの売上があった際に起票する伝票で、売上日や出荷番号、商品名、数量、金額、納品先等の情報を記載します。
売上伝票の作成が完了したら、経理の担当者が、帳簿へ取引の記帳を行います。取引の記帳は決算書の作成に必要で、経理上重要な業務の一つとされています。
出荷管理が重要な理由
製造業をはじめとした幅広い業界で、出荷管理が重要視されている理由は主に以下のとおりです。
- 正確な売上予測を立てるため
- 生産性低下を防ぐため
- スムーズな顧客対応を行うため
それぞれのポイントについて、詳しく解説します。
正確な売上予測を立てるため
一般的に、売上予測や経営戦略、営業戦略は、自社の現状の売上をもとに策定します。そのため、精度の高い予測や戦略立案を行うには、正確に売上を把握することが非常に重要になります。
出荷管理は、注文を受けた商品が正しく出荷、納品されているか、正しく売上が計上されているかを管理する業務です。適切な出荷管理が行われれば、出荷、納品の情報が正しく記録され、正確な売上の把握もしやすくなります。
つまり、出荷管理は、精度の高い売上予測や効果的な経営戦略、営業戦略を立てるために不可欠な業務といえます。
生産性低下を防ぐため
出荷管理が徹底されず、在庫状況が正確に把握できていないと、欠品による機会損失や、余剰在庫によるコスト増大など、生産性低下を招くさまざまリスクが発生する可能性が高くなります。
また、出荷管理の情報が適切に共有できていないと、キャンセルや取り消しなどがあった際、スムーズに対応できず、無駄な在庫や人員が必要になります。労力やコストが余計にかかることで、生産性がますます低下してしまうケースも考えられます。
このような無駄を減らし、生産性低下を防ぐためにも、日頃から適切な出荷管理を行うことが非常に重要であると考えられています。
スムーズな顧客対応を行うため
適切な出荷管理を実施し、商品や在庫の状況が把握できていれば、顧客からの問い合わせにもスムーズに対応できます。
出荷や在庫を管理する担当者だけでなく、顧客との窓口となる営業や販売部門の担当者とも情報を共有できる体制を整えておくことも重要です。迅速かつ正確な顧客対応ができれば、販売機会の損失を防ぐのはもちろん、企業の信用向上にも繋がります。
出荷管理で起こりがちな課題
出荷管理の現場で課題として挙がりやすいポイントは以下の通りです。
- 在庫状況を適切に把握できていない
- 追加注文・キャンセルへの対応
- 連携不足による出荷待ちが発生する
それぞれについて詳しく解説していきます。
在庫状況を適切に把握できていない
顧客からの注文に 迅速に対応するためには、在庫状況を常に把握しておくことが不可欠です。しかし、生産や在庫の状況は常に変化しているため、リアルタイムで正確な在庫状況を把握するのは難しいと感じている企業も多いでしょう。
とくに在庫や出荷の管理を、Excelやスプレッドシートなど、手動で行っている場合は注意が必要です。変動する在庫状況の把握が難しいだけでなく、入力に手間がかかったり、ミスや入力漏れなどのヒューマンエラーが発生したりするリスクも高くなります。
追加注文・キャンセルへの対応
追加注文やキャンセルなど、顧客からの注文内容が変更になるケースは少なくありません。出荷管理では多くの場合、商品を顧客へ発送するまでに複数の部署が連携して作業にあたっています。そのため、注文確定後にデータの変更があっても、情報が社内で共有されにくい課題があります。
情報共有がしっかりとされていないと、無駄な作業が増え、納品ミスや納期遅れ、販売機会の損失など、さまざまなリスクに繋がる可能性も高くなります。イレギュラーな事態が起きた際に、いかに迅速かつ正確に情報共有ができるかは、出荷管理においてとくに重要なポイントになります。
連携不足による出荷待ちが発生する
商品の生産状況や在庫管理が適切にできていても、物流システムとの連携不足により効率的な輸配送計画が立てられないケースがあります。輸配送計画とは、顧客から要求された通りの数量、品質で、商品を輸送できるよう手配することを指します。
出荷と物流は直結しているため、スムーズに連携が取れないと、商品は用意できているのに顧客への引き渡しに遅延が生じるといった問題が発生します。
出荷管理を効率化するための5つのポイント
ここからは、出荷管理をより効率化するための具体的なポイントやアイデアを5つ紹介します。
課題の把握・業務フローの改善
出荷管理を効率化するためにまず必要なのは、自社の課題や問題点を正確に把握することです。課題の洗い出しをする際は、出荷管理業務の工程ごとに、作業の手順や所要時間を記録し、「ムリ・ムダ・ムラ」が生じている業務がないか確認していくとよいでしょう。
課題が洗い出されたら、解決すべき課題に優先順位をつけ、改善策を考え、実行していきます。たとえば、特定の従業員に業務負担が偏っている、業務が属人化している等の問題がある場合は、業務フローの見直しや、作業の標準化、マニュアル化などの対策が考えられます。
倉庫ロケーションの最適化
倉庫のロケーション管理を最適化することで、在庫管理やピッキング業務の効率化が見込めます。ロケーション管理とは、倉庫内の商品の保管場所に住所を割り振り、管理する方法です。
ロケーション管理には大きく「固定ロケーション」「フリーロケーション」「ダブルトランザクション」の3つの方法があります。それぞれの特徴やメリット・デメリットは以下の通りです。
特徴 |
メリット |
デメリット |
|
固定 ロケーション |
商品ごとに保管場所を固定する管理方法 | 商品の保管場所が わかりやすく、 管理が容易 | 保管スペースに 無駄が生じる可能性 |
フリー ロケーション |
空いている場所に商品を保管していく管理方法 | 保管スペースを無駄なく活用できる | ピッキング作業の 効率悪化に繋がる 可能性 |
ダブル トランザクション |
ピッキングとストックのエリアを分けて商品を管理する方法 | 保管効率・作業効率の向上が見込める | ピッキングエリアへの商品補充作業が 必要 |
ロケーションを割り振り、在庫管理をすることで、どこに何が保管されているかが明確になり、倉庫内で商品を探し回る時間や手間が削減できます。
ロケーション管理を導入する場合は、自社が扱う商品の特徴や扱う数量、品数を考慮し、管理方法を決定することが重要です。
たとえば、保有する商品数が少ない・定番商品が多い場合は固定ロケーション、在庫の入れ替わりが激しい・消費期限のある商品を扱っている場合はフリーロケーションを採用した方が、効率の良い管理を実現できる可能性が高くなります。
在庫の一元管理
複数の拠点に分散している在庫を一元管理するのも、出荷管理の効率化を図る上で有効な方法です。バラバラに管理されていた在庫が一箇所に集約されることで、注文情報の管理がしやすくなるのはもちろん、在庫の正確な保管場所や数量の把握もしやすくなります。
過剰在庫や欠品などにも気づきやすくなるため、不要なコストの削減、生産効率アップ、販売機会損失の回避など、さまざまなプラスの効果も期待できます。
ペーパーレス化の推進
出荷管理の際に発生する紙伝票でのやりとりを削減し、ペーパーレス化を進めるのも効果的です。紙伝票による管理の場合、手書きによる転記・転載ミスなどのヒューマンエラーが発生しやすくなります。また、紙書類の管理の煩雑さ、紛失リスク、保管スペースの圧迫など、さまざまな問題が生じる可能性も高くなります。
ペーパーレス化を進め、データの電子化を行えば、ヒューマンエラーや紛失リスクの削減に繋がります。在庫や出荷に関する情報の探索もしやすくなるため、顧客からの問い合わせや注文に迅速に対応できるようになります。
システムの導入
在庫や出荷の管理に、Excelを使用したアナログな手法を用いている企業も多いでしょう。アナログな手法には、低コストで運用が可能、誰でも使いやすいというメリットがあります。しかし、一方で、膨大なデータを手動で管理するため、担当者に大きな負担がかかる、入力ミスや管理上のトラブルに繋がりやすい等のデメリットも存在します。
アナログ管理のデメリットを払拭し、より効率的に出荷管理を進めるには、在庫管理や出荷管理に適したシステムの導入を行うのがおすすめです。システムを活用すれば、在庫情報が可視化され、在庫の状況がリアルタイムで把握できるようになります。余剰在庫を抱える、欠品に気づかない等のリスクが低減できるため、保管コストや人件費など最適化、無駄な保管スペースの削減にも繋がります。
近年、在庫管理や出荷管理を効率化できるシステムが数多く誕生しています。システム導入を検討する際は、必要な機能や操作性、かけられるコストやサポートの有無、既存システムとの互換性などさまざま点を考慮し、自社に最適なサービスを選択することが重要です。
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まとめ
出荷管理は、精度の高い経営戦略の策定、企業の生産性向上や高い顧客満足度の維持のために欠かせない業務です。同時に、納品間違いや納期遅れなどのミスやトラブルが起きると、企業の信用失墜や顧客離れに直結してしまう業務でもあります。
ミスを減らし、より効率的な出荷管理を実現するには、在庫の一元管理、ロケーション管理の実施、在庫管理システムの導入、ペーパーレス化の推進といった取り組みが有用です。
とくにExcelや紙伝票を使ったアナログな出荷管理を行っている場合は、上記の取り組みを実施することで、出荷管理の効率や正確さが劇的に向上する可能性があります。