バーコードからRFIDに切り替えて業務効率化する企業が増えていますが、RFIDタグには、さまざまな種類があります。どのような利用用途でRFIDを導入するかによってRFIDタグの選び方が異なるため、それぞれの特徴を理解しておきましょう。
今回はRFIDタグについて詳しく解説します。RFIDの導入を検討している方は、ぜひこの記事を読んでみてください。
[はじめに]RFIDタグとは
RFIDタグとは、RFID(ワイヤレス通信でRFIDタグの情報の読み取りや書き換えを行うシステム)を構成する1つの要素です。
■RFIDを構成する要素
RFIDタグ |
商品情報などのデータが書き込まれているタグ |
RFIDリーダー |
RFIDタグに電波を照射して通信する装置 |
データ処理システム |
RFIDリーダーで読み取ったデータを出力する装置 |
RFIDはワイヤレス通信で複数のタグ情報(数字と英語を組み合わせたコード)を大量一括で読み取れるため、セルフレジや棚卸業務など、店舗、倉庫、工場など様々な現場で活用され始めています。
RFIDタグは、対象物や、什器、ダンボールに貼れるようにシール状にしたものや、カードに内蔵したものなど、さまざまなタイプのタグが存在します。そのため、利用用途に合ったタグを選ぶことが大切です。
RFIDとバーコードの違い
RFIDタグの低価格化が進み、バーコードからRFIDに切り替える企業が増えてきていますが、2つの違いは以下の通りです。
[RFIDとバーコードの違い]
バーコード |
(UHF帯)RFID |
|
データの書き換え |
不可 |
可能 |
データの同時読み込み |
不可 |
可能 |
読み取り距離 |
10cm |
5~10m |
遮蔽物の影響 |
遮蔽物があると読み取りできない |
遮蔽物があっても読み取りできる |
情報量 |
少ない |
多い |
タグの価格 |
– |
10円前後 |
RFIDで実現できること
ワイヤレス通信でRFIDタグの情報の読み取り・書き換えを行える(UHF帯)RFIDを活用すれば、以下のようなことを実現できます。
[RFIDで実現できること]
- ダンボール箱や袋の中に入っている商品データを取得できる
- 複数の商品データの同時読み取りができる
- 手の届かない高所の場所にある商品データを取得できる
RFIDタグの種類
ワイヤレス通信で読み取りができる便利なRFIDですが、(UHF帯)RFIDタグには、さまざまな種類があります。そのため、タグのバッテリーの有無と周波数帯の2つの観点から、自社に見合うタグを選ぶようにしましょう。
バッテリーによる分類
バッテリーの有無によって、以下の3つに分類できます。
通信距離 |
バッテリー |
価格 |
|
パッシブタグ |
5~10m |
無 |
安い |
アクティブタブ |
10m~ |
有 |
高い |
セミパッシブタブ |
10m~ |
有 |
中程度 |
パッシブタグ
パッシブタグ(Passive Tag)は、バッテリーが内蔵されておらず、RFIDリーダーなど外部の電磁波を動力に動作するタグです。
通信距離は5~10m程度ですが、タグの価格が安いことが特徴です。また、バッテリーが内蔵されていないため、電子交換のメンテナンスが不要で、半永久的に利用できます。そのため、多数の対象物にRFIDタグを貼付して、在庫管理を効率化する活用に適しています。
アクティブタグ
アクティブタブ(Active Tag)はバッテリーが内蔵されており、電波を発信できるタグです。そのため、パッシブタグと比較して通信距離が10m以上と長くなります。
一定時間毎に電波を発信する「自己通信型」と呼び出しがあった場合に発信する「待受通信型」があり、現場作業者や設備の位置把握に利用されるケースが多く見受けられます。
とても便利なタグですが、パッシブタグより価格が高く、バッテリーが消耗したら交換しなければいけません。そのため、ビーコンのように限られた対象物に活用して、10m以上の通信距離を確保したい場合におすすめのタグです。
セミパッシブタグ
セミパッシブタグ(Semi Passive Tag)とは、アクティブタグのように通信距離が10m~と長い一方で、アクティブタブより電池の消耗が少ないタグです。
RFIDリーダーからに呼びかけがあったときに、電波を発信します。特定の場面のみ動作させることで、電力を最小限に抑えられるのです。例えば、ドアの入退室を管理したい場合などにセミパッシブタグが利用されます。
周波数による分類
周波数による分類だと2つのタグに分類できます。
周波数帯 |
通信距離 |
利用用途 |
|
HF/NFCタグ |
13.56MHz |
10cm |
1対1で認証したいとき |
UHFタグ |
860~960MHz |
5~10m以上 |
遠隔読み取りしたいとき |
HF/NFCタグ
HF/NFCタグとは13.56MHzの周波数帯に対応するタグです。アンテナの巻数は少ないため、薄型や小型化も可能です。
通信距離は10cm程度と短いため、人やモノを1対1で認証するような利用用途に適しています。遮蔽物があっても通信が遮断さないため、交通系カードやおサイフケータイに利用されています。
UHFタグ
UHFタグは860~960MHzの周波数帯に対応するタグです。
数cmと近くにあるタグをはじめ、5~10m離れたタグのデータも読み取れます。
パッシブタイプの価格が安いため、アパレルを中心として小売、製造、物流、医療などの在庫管理や物品管理に急速に普及してきています。
しかし、水分や電磁波の影響を受けやすいため、防水タグや金属タグなど、利用用途に見合うUHFタグを選ぶようにしましょう。
RFIDタグの選び方
RFIDタグについて理解できたと思いますが、さまざまな種類のタグが登場しているため、RFIDタグの選び方を覚えておきましょう。ここでは、RFIDタグの選び方について解説します。
読み取り距離
RFIDタグを選ぶときは、利用目的に沿った読み取り距離のタグを選ぶことが大切です。
特定の人やモノだけを読み取り、周囲を誤読したくない場合には、HF/NFCタグが適しています。例えば、交通系カードにHF/NFCタグが採用されているのはそのためです。読み取り距離が長いと、駅に入場していないのに、改札機の近くを通過した人を誤読してしまうリスクがあります。
一方、棚卸しや入出荷検品などの在庫管理を効率化するため、店舗や倉庫における対象物を大量一括読み取りしたい場合は、読み取り距離の長いUHFタグを選ぶようにしましょう。UHFタグであれば、手の届かない場所に保管されている商品や、ダンボール箱に入っている商品を読み取ることができます。
保守
RFIDタグを選ぶときは電池交換など保守面を考慮することが大切です。
アクティブタグは電池によって動作するため、電池交換が必要となります。電池容量や通信間隔、動作温度でも変化しますが、寿命は1~2年が一般的です。
一方で、パッシブタグは電池が不要でRFIDリーダーからの電波で動作します。そのため、電池交換は必要ありません。このような違いがあるため、保守の観点からタグを選ぶようにしましょう。
価格
RFIDタグを比較するときは、価格を重視しましょう。UHFタグは1枚当たり10円前後と安いので、大量の在庫・物品に貼って活用することができます。一方で、HF/NFCタグは1枚当たり数十円しますので、何百枚、何万枚となればコストが膨れ上がります。そのため、利用用途に見合ったタグを選ぶようにしましょう。
また、屋外で利用するために防水加工にしたり、80℃以上の耐熱にするなど特殊加工にするとタグの価格が高くなります。
UHFタグの価格について詳しく知りたい方は、下記の記事を読んでみてください。
関連記事:『RFIDタグの価格は?気になる最新価格動向と導入事例を徹底分析!』
RFIDタグを導入している企業事例
RFIDタグを積極的に導入していて有名な企業が、ユニクロやGUのアパレル店舗を運営している株式会社ファーストリテイリングです。
同社は2018年以降、ユニクロは全商品にRFIDタグを導入しました。
アパレル商品に取り付けているRFIDタグは、下げ札に付いています。副資材メーカーから提供されており製造段階から付けられていて、トレーサビリティを把握するのに役立てています。安価に購入できるUHFタグを使用して使い捨てにしています。
商品にRFIDタグを取り付けることで、店舗や倉庫における棚卸しや入出荷検品などの在庫管理を効率化しています。また、無人レジに活用していることも有名で、生産から物流までサプライチェーンの最適化を目標としていることが大きな特徴です。
- 商品はどこで作られているのか
- 商品は今どこにあるのか
- 商品はいつ届くのか
- 商品と同じものはバックルームにどれだけあるのか
このような情報をリアルタイムで管理して、サプライチェーンを最適化してビジネス機会の損失を防ぎ、収益を最大化しようとしているのです。同社はRFIDを積極的に活用している企業として知られているため、導入時に参考にしてみることをおすすめします。
ユニクロのRFID活用事例については、下記の記事で詳しく紹介しています。そのため、興味のある方は記事を読んでみてください。
関連記事:『【更新】RFIDタグを導入したユニクロから学ぶ他業界RFID活用のヒント』
まとめ
RFIDタグは、RFIDを利用するために必須です。バッテリーの有無や周波数など、さまざまなRFIDタグが存在しているため、どのようなタグを選ぶべきかを押さえておくことが大切です。
基本的には、パッシブタイプのUHF帯RFIDタグが安価で、小売、製造、物流、医療などの現場における在庫・物品管理を効率化するために、急速に普及しています。「通信距離はどれぐらい必要か?」「内蔵バッテリーは必要か?」の観点からタグを選ぶようにしましょう。
もし、この記事を読んでもRFIDタグの選び方がわからないと悩んだら、専門業者に相談することをおすすめします。当社ではお客様の要望をお聞きして、最適なRFIDタグをご提案いたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。