今回は生産管理について解説します。この記事を読めば、生産管理の現場で起きる課題と解決策が分かるようになっています。IoTやAI、RFIDなどを活用した課題解決方法まで解説しているため、「どのように効率化していけばいいか?」と悩んでいる方は参考にしてみてください。
製造業で重要視される生産管理業務には、受注管理や在庫管理など幅広い業務が含まれています。
製造業において必要不可欠な生産管理業務ですが「他部門との連携が上手くできない」「生産工程のリアルタイムな状況が把握できない」などの課題が発生します。この記事をお読みの方も、業務の課題に悩んでいるのではないでしょうか?
そこで、今回は生産管理業務の課題を解決する方法をご紹介します。この記事を読めば、生産管理システムに関する知識が深まるはずです。製造現場を改善したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
生産管理とは
生産管理とは、生産計画書に基づいて業務全般を管理することをいいます。業務内容には「需要予測」「受注管理」「生産管理」「資材調達」「工程管理」「品質管理」「在庫管理」「販売管理」が挙げられます。受注から販売までの製品の製造工程を管理する、製造業の根幹を支える業務なのです。
生産管理の目的
生産管理の目的は「Quality(品質)」「Cost(原価)」「Delivery(納期)」を最適化することです。原価を抑えながら、品質が高い製品を短納期で作るために生産管理を行います。
生産管理が上手く行えて、自社製品の競争力を高めていければ、顧客満足度の向上や売上アップに繋げられます。自社の利益を最大化するためにも、QCDを最適化させる必要があるのです。
生産管理と工程管理の違い
生産管理と間違われやすい言葉に「工程管理」があります。2つの専門用語の違いは、以下の通りです。
- 工程管理:製品を生産する場合に、一定の品質と数量を保つために工程を管理する
- 生産管理:受注・計画・調達・工程管理・品質管理・在庫管理など業務全般を管理する
生産管理は業務全般を管理するため範囲が広く、工程管理は生産管理の一部分となります。
生産管理の業務内容
生産管理は製造全般の管理をいいますが、主な業務内容は以下の通りです。
- 需要予測
- 受注管理
- 生産計画
- 資材調達
- 工程管理
- 品質管理
- 在庫管理
それぞれの業務内容について詳しく解説します。
需要予測
需要予測とは、需要に見合う生産量を見定める業務をいいます。競合他社や市場動向、マーケティングデータなどを分析して需要を予測していきます。
需要予測を見誤ると、需要と共有のバランスが崩れてしまうため気をつけましょう。供給が追い付かなくなったり、過剰な在庫を抱えたりするリスクが高まります。
受注管理
受注管理とは、顧客から注文を受けた後に注文内容や在庫確認など受注情報を管理していく業務をいいます。
[受注管理の項目]
- 受注日
- 受注先
- 品目
- 数量
- 金額
- 納期
受注情報から生産数や製造工程を組み立てる必要があるため、情報を整理して共有しなければいけません。
例えば、営業部門で管理している受注情報を製造部門と共有できていないと生産計画に大きな影響が出ます。このようなトラブルを防止するために、受注管理を行います。
生産計画
生産管理とは、経営計画や販売計画、受注情報などから生産計画を立てていく業務をいいます。
[生産計画の管理項目]
- 生産日
- 品目
- 数量
- 納期
生産計画を立てる場合は、工場のスタッフや機械、資材の状況を把握して生産性を上げていかなければいけません。製造工程の全体像を固める上での重要なステップとなります。
資材調達
資材調達とは、製品を製造する際に必要な材料や部品を調達する業務をいいます。
[資材調達の管理項目]
- 発注日
- 発注先
- 数量
- 納期
製造会社では購買部門が発注手配を行うことが多いですが、生産計画を考慮して最適なタイミングで資材調達する必要があります。
製造量に見合う原材料の提供ができる仕入先であるかを見極めて、発注先を選ばなければいけません。適切な資材調達で製造現場へ原材料を供給できれば、製造工程が止まることもありません。生産計画に大きな影響を与える業務です。
工程管理
工程管理とは、製造工程における問題を統制・監督・調整する業務をいいます。
[工程管理の管理項目]
- 完成予定
- 進捗状況
- 標準時間
作業の内容や手順、使用する機械や部材、場所などの工程を決めていき、納期通りに納品できるようにします。また、各工程の進捗状況を確認しながら改善していき、リードタイムを短縮していくための業務です。
工程管理の業務について詳しく知りたい方は、下記の記事をお読みください。
https://blog.rflocus.com/process-control/
品質管理
品質管理とは、顧客に製品を提供するに当たり、一定の品質を備えているかを検査・検証・保証する業務をいいます。
[品質管理の管理項目]
- 製品の品質
- 各設備の稼働率
- 工程能力指数
製品の品質は、顧客からの信頼につながるため、適切に進んでいるか十分に確認しなければいけません。また、品質検査をした後に不良品の報告をして製造工程を改善していき、製品の品質を保つ必要があります。
在庫管理
在庫管理とは、材料・部品・中間品・製品を「必要な量を」「必要な場所へ」「必要なときに」供給するための業務をいいます。
[在庫管理の管理項目]
- 品目
- 数量
- 入庫日
- 出庫日
在庫管理は、時系列で管理しなければいけません。適正な在庫管理ができれば、在庫管理のコストが減らせます。
在庫管理を効率化する方法として、RFIDが注目を浴びています。RFIDを活用すれば、簡単に時系列で在庫管理ができて便利です。RFIDに関する情報は以下を参考にしてください。
関連記事:『在庫管理とは?基本から効率化するツールまで徹底解説』
生産管理を行う上での6つの課題
生産管理の大まかな流れを説明しましたが、各工程を進めていく上で現場で課題が出てきます。生産管理業務を効率化するためにも、現場で出る課題を把握しておきましょう。
需要予測が難しい
生産管理は需要予測をして、生産計画を立てていきます。そのため、需要予測が重要となりますが、正確に測定しにくいことが課題となります。
市場変化や競合他社の動向の影響を受けることから、専門的な人材に依頼しても精度が高い予測はできません。また、新製品の需要予測は、分析するためのデータが十分に揃っていなければいけません。
需要予測がズレて供給が追い付かなくなると、過剰な在庫を抱えてしまうことになります。
業務の標準化が難しい
製造ラインによって、生産能力に差が出るため業務の標準化が行いにくいことも課題です。スムーズに製品製造ができるように、製造ラインの能力に合わせて生産量を振り分けると不公平感が出てしまいます。
特定の製造ラインへの負担が大きいと、現場からの不満が上がってくることもあります。
引き継ぎ業務が上手くいかない
生産管理業務が属人化してしまうと、後任者への引き継ぎ業務が上手くいきません。
生産計画を立てる場合には、製造ラインへの深い理解や各社員のスキルを把握して、適切に配置する能力が求められます。年数を重ねた社員の経験に依存し、ナレッジ共有していなければ、引き継ぎ業務が上手くいかなくなってしまうのです。
人為的なミスが発生しやすい
生産管理を手作業で行うと、人為的なミスが発生しやすくなります。
<人為的なミスの具体例>
- 生産個数を間違えてしまう
- 根拠がない生産計画を立てて過剰在庫を抱えてしまう
- 生産指示をメールで送り確認漏れが発生してしまう
このような問題が発生してしまうと、生産計画通りの製造が難しくなります。
部門間の調整が難しい
生産管理は受注から製造、出荷までの全般の業務を指します。そのため、営業部門や製造部門、購買部門など他部門が密接に関わることになります。しかし、部門間の調整が上手くいくとは限りません。
営業部門から、製品を届けるためにリードタイムの短縮が求められることもあるでしょう。「担当している顧客の受注を優先して生産して欲しい」と要求されることもあるかもしれません。その一方で、製造部門からは「納期の短縮は難しい」と相談されることもあります。
生産管理者は、複数の部門の板挟みになりがちで、不良品が出た場合の責任の所在を巡ってトラブルが起きることもあります。そのため、生産管理者には各部門の意見を調整できる高いコミュニケーション能力が求められるのです。
リアルタイムの情報が得られない
生産管理の課題として、リアルタイムに在庫確認ができないことも挙げられます。入荷や出荷のタイミングで在庫を確認しておかなければ、正確な在庫数を把握できません。
その結果、在庫不足により製造ラインの停止が起きてしまうのです。また、倉庫管理者と製造管理者が情報共有できていないと、適切な在庫数を保管しておけません。
生産管理の課題を解決する方法
生産管理の課題を説明しましたが、これらは解決していけるため安心してください。ここでは、生産管理の課題を解決する方法をご紹介します。
AIを活用して需要予測する
生産管理にAIを活用すれば、蓄積されたデータを分析して正確な需要予測ができます。AIの需要予測は膨大なデータに基づいた客観的な数値のため、人為的な方法より精度が高くなります。
また、AIを活用すれば設備のメンテナンスのタイミングを予測することも可能です。設備が故障する前にメンテナンスを行えば、製造途中で設備が停止するといった不足の事態が避けられます。このように、生産管理を効率化するためにAIを活用する動きも出てきています。
ノウハウを蓄積・共有する
生産管理のノウハウを共有すれば、業務の属人化を防げます。業務が属人化してしまうと生産管理者の負担が大きくなり、担当者不在の際にカバーできる人材がいなくなるといった問題が発生してしまいます。このような問題を防ぎ、他の従業員に生産管理業務を引き継ぐためにも、ノウハウを共有しておきましょう。
ノウハウは製品の製造に必要な「メンバー数」「工数」「期間」などをまとめて共有しておくと安心です。
生産管理システムで情報を一元管理する
生産管理システムを導入すると、生産管理業務を効率化できます。
生産管理システムとは、生産管理を行う上で必要な情報を一元管理するシステムのことです。「受注管理」「生産計画」「資材調達」「製品製造」「品質管理」「在庫管理」に関する情報を一元管理することで、適切なスケジュール通りに製品を製造していけます。
製品情報もリアルタイムで追跡できるため、トラブルが発生したときにも迅速に対応できます。
RFIDで工程管理を効率化する
生産管理の工程管理業務にRFIDを活用すれば、業務を効率化できます。
RFIDとは、電波を用いてRFタグのデータを非接触で読み書きするシステムです。
製品や部品、または作業指示書などにRFIDタグを付けておけば、各工程の通過実績や処理時間などをリアルタイムに自動集計できます。また、従業員の名前プレートにRFIDタグを貼り付けておけば、出社・退社時刻や、どの作業に何時間携わっていたかを可視化できます。
そのため、生産管理者が行っていた工程管理業務の負担が大幅に減らせるのです。
RFIDについて詳しく知りたい方は、以下の記事をお読みになってください。
関連記事:『RFIDとは?仕組みや特徴、最新の活用事例をわかりやすく解説!』
生産管理者に適材な人材を配置する
生産管理者に適材な人材を配置することで、生産性向上が実現できます。その理由は、指示の出し方や物事の考え方で製造のリードタイムは大きく変わるためです。生産管理者に適材な人材の特徴は以下の通りです。
性格・適正 |
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スキル・能力 |
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IoTを活用して製造現場を可視化する
IoT(モノとモノをつなぐインターネット)技術を活用すれば、製造現場の状況が確認しやすくなります。生産ラインに設置したロボットやセンサーから収集したデータをシステムと連携させれば、製造現場の業務を効率化していけます。IoT技術の活用方法は、以下の通りです。
- 不稼働分析システム:工場設備の稼働状況、停止回数などを収集する
- 設備始業点検システム:各設備の状態をセンサーで収集する
- 日報自動化システム:日報の報告書を自動生成できる
- 予兆診断ソリューション:収集データの変化を検出する
- 設備資産管理システム:設備の長寿命化のための予防保全計画に必要なデータを収集する
IoTについて詳しく知りたい方は、以下の記事をお読みになってください。
関連記事:『IoT活用事例を一挙大公開 〜工場・物流・医療編〜』
まとめ
生産管理は「Quality(品質)」「Cost(原価)」「Delivery(納期)」を最適化させることを目的に行われます。生産管理を上手く行うことで、自社製品の競争力を上げていけます。その結果、顧客満足や業績アップにつなげていけるのです。
しかし、生産管理では課題が発生しますが、これらは解決していけます。この記事では、生産管理業務を効率化するための方法をご紹介したため、これを機会に各工程を見直してみてください。