工程管理とは?工程管理の6つの課題と解決方法をわかりやすく解説

この記事では、工程管理について解説します。製造現場で工程管理を行う必要性から、現場で起きやすい課題と解決策までご紹介します。AIやIoT、RFIDを活用して工程管理を効率化する方法まで紹介しているため、ぜひ参考にしてみてください。

製造業務の中でも製造工程の管理は重要です。その理由は、製造工程の管理が行えずに納期遵守ができなければ、顧客からの信用を失ってしまうためです。また、工程の作業実績を把握できていないと、非効率な生産体制になっていても、気付くことなく、改善につなげられません。

しかし、製造業の工程管理は容易なものではなく、さまざまな課題が出てきます。

今回は工程管理の基本知識について解説します。この記事を読めば、工程管理をする上での課題や解決方法が分かるようになるはずです。ぜひ、工程管理の参考にしてみてください。

工程管理とは

工程管理とは、製品を期日までに納品できるように、製造現場を効率的に稼働させていく業務をいいます。

自社製品で利益を生み出すために、納期や品質を守りながら製品を製造していかなければいけません。そのために「Quality(品質)」「Cost(コスト)」「Delivery(納期)」を最適化して製造工程を進めていかなければいけないのです。

 

工程管理と生産管理の違い

生産管理と間違われやすい言葉に「工程管理」があります。

  • 工程管理:製品を生産する場合に、一定の品質と数量を保つために工程を管理する
  • 生産管理:受注・計画・調達・工程管理・品質管理・在庫管理など製造全般について管理する

 

上記から分かるように、工程管理は生産管理の一部分となります。

 

工程管理の目的

工程管理の目的は5つあります。

  • 納期遵守:いつまでに製品を製造すれば良いか把握して納期通りに納品する
  • 作業標準化:作業を標準化して一定の品質を保てるようにする
  • リードタイムの短縮:製造工程を改善していくことでリードタイムを短縮する
  • 生産性の向上:リードタイム短縮して1日当たりの生産能力を上げる
  • 製造原価を抑える:製造工程のムリ・ムラ・ムダを省いて製造原価を抑える

 

工程管理の重要性

工程管理が重要な理由は、市場で競争激化が起きているためです。

お客様から自社製品を選んでもらうために、優位性のある製品を希望納期までに完成させなければいけなくなってきました。納期遅延やコスト超過が許されない時代となってきています企業の存続を左右するため、しっかりと工程管理を行う必要があるのです。

工程管理の手順

工程管理の手順は、以下の通りです。

  1. 工程設計を行う
  2. 工程管理の計画を立てる
  3. 工程管理を実施する
  4. 工程管理の結果を評価する
  5. 工程管理を改善する

それぞれの手順について詳しく解説します。 

1.工程設計を行う

最初に製品を製造するのに必要な「材料」「設備」「作業者」を選び、完成するまでの一連の加工プロセスを考えていきます。工程設計は「投資額」「原価」「利益率」が確定するための重要な作業です。

工程設計の段階で、製造順序を決めていきますが、細かく設定しないようにしましょう。その理由は、進捗管理を行う上での「着手」と「完了」の実績登録の負担が大きくなるためです。

2.工程管理の計画を立てる

工程管理を効率的に行うためには、工程計画が欠かせません。工程計画とは、製造する上での作業手順や日程を決める作業です。工程計画を立てられれば、各工程に必要なリソース(設備や作業員)がイメージできます

具体的には、順序」「日数」「設備」「作業員を決めていきます。また、マイルストーンごとにチェックするKPIを設定しておきましょう。その理由は、実績と目標の違いを把握して、現場の改善点が洗い出せるようにするためです

この工程計画は、製造の作業員が必要に応じて閲覧できるようにしておきます。

3.工程管理を実施する

工程計画に沿って作業を進めていきます。工程計画の通りに作業を進めていくと、さまざまな課題が見つかるかもしれません課題を見つけたらメモに残しておきましょう。

具体例を挙げると、工程計画に沿って作業を進めていたら、生産負荷に偏りが出ることがあります。これらの課題を改善していくことで、製造効率を上げていけるのです

また、計画が狂い始めたら納期に間に合わなくなる恐れがあるため、速やかに報告するようにしましょう。

4.工程管理の結果を評価する

工程計画に沿って、作業を進めた後は結果を評価していきます。現場の作業者の意見を聞き出して、問題が起きた原因を解明して解決策を検討していきます

DR(デザインビュー)やQG(クオリティゲート)と呼ばれる工程の評価を行うようにしましょう。

また、工程計画書に対して現状の進捗具合が遅れている場合は対策を講じて遅れを取り戻します

5.工程管理を改善する

工程管理の結果を評価して、浮き彫りになった課題を改善していきます。課題を改善していくことで、リードタイムの短縮や、品質や不良率の改善ができます

立案した改善策で結果が出なかったら、結果に結びつくまで計画→実施→評価→改善を繰り返し行っていきましょう。

工程管理を行う上での6つの課題

工程管理の手順で進めていくと課題が出てくる恐れがあります。製造業務を効率化していくために、工程管理を行う上での課題を把握しておきましょうここでは、6つの課題をご紹介します。

1.納期遅れが発生する

工程管理の課題として納期遅れが挙げられます。その理由は、作業工程に遅延が発生すると、顧客の希望納期日に製品を納品できなくなるためです。納期遅れが発生する原因には、以下のようなものが挙げられます。

<納期遅れが発生する原因>

  • メンバーの作業遅延
  • インフラの稼働遅延
  • 進捗状況の共有不足 

さまざまな原因により納期遅れが発生するため、シッカリと進捗状況を管理する必要があります。

2.生産負荷に偏りが出る

工程管理の課題として、生産負荷に偏りが出ることも挙げられます。その理由は、特定のメンバーに仕事が偏ると不満が出てしまい離職問題に繋がるためです。そのため、生産負荷に偏りが出ないように気をつける必要があります。

しかし、製造現場では多品種少量生産が多くなってきているため、生産の標準化が難しい状況です。

3.不良率を管理できない

製造現場の各工程では、不良品が出てしまう恐れがあります。不良品が出ると原価率が上がってしまうため、利益を上げるためにも不良率を下げなければいけません

しかし、不良率を管理できていない現場もあります。その理由は、生産工程が複雑化してきているためです。不良率を把握できずに、利益率を上げられないことが課題に上がります

4.人為的ミスが発生する

製造を機械が自動で行う場合でも、準備や運搬などは人が関わらなければいけません。人が関わる時点で、手配漏れや誤動作などのリスクを完全になくすことは困難です

このようなリスクを抑えるために、二重チェックで対応する方法もありますが、余分な手間がかかります。

5.業務が属人化してしまう

製造現場の工程管理が属人化すると、担当者が不在の場合にカバーできる人がいなくなってしまいますまた、担当者により品質が変わることが多く、品質が不安定になりがちです。

担当者しか業務内容を把握していないため、業務の質が高いのか、どれぐらい成長したかなど上司は判断できません。適正な評価ができなければ、担当者が不満を抱き離職してしまう恐れがあります。

6.製造プロセスを最適化できない

製造プロセスを最適化できないと、生産性が低下します。

しかし、多種多様な品種の製造や工程の多い製造では状況把握が難しくなります管理者が現場の状況を把握できず「どのように製造プロセスを最適化すればよいかわからない」という悩みが出てくるため気をつけてください。

 

工程管理の課題の解決方法

工程管理の課題をご紹介しましたが、これらは以下の方法で解決できます。 

  • AIで工程管理表を作成する
  • IoTやRFIDで製造実績を可視化する
  • 生産管理システムで情報管理する 

それぞれの解決方法について解説します。

AIで工程管理表を作成する

AIを活用すれば、これまでの実績で培ったノウハウデータを活用し最適な工程管理表が作成できます

例えば、コスト計算(人件費・加工費・材料費・運搬費)が自動化できれば、利益率を意識しながら作業が行えるようになります。また、製品毎の製造難易度を数値化したり、担当者の技量や機械の精度を数値化して割り当てたりしてもらえます。

そのため、工程管理表の作成時間を大幅に削減できます。

IoTやRFIDで製造実績を可視化する

IoTを活用して製造現場の設備の稼働実績データを活用する動きが出てきています。IoT技術で、通常より遅延している製造ラインや、稼働当初より慢性的に時間がかかっている製造ラインの発見が容易に行えます。

製造現場に設置したカメラとIoTを連携させれば、異常が出ている製造現場の映像を観ることも可能ですそのため、現場で何が起きているのかを確認できます。

また、RFIDの技術を活用する製造現場も増えてきましたRFIDタグを従業員のネームプレートに貼り付ければ、「誰が」「いつ」「どこで」「どのような作業をしたか」が把握できます。また、作業指示書にタグを付けておけば、作業の進捗状況が可視化できます。

担当者から製造現場の課題が聞けない場合でも、IoTやRFIDを活用すればデータで現場の状況が分かるようになるため便利です。

生産管理システムで情報を一元管理する

生産管理システムを導入すれば、工程管理の業務を効率化できますその理由は、生産管理システムには、以下のような機能があるためです。 

<生産管理システムの機能>

  • 材料調達の最適化
  • 生産負荷の標準化
  • 不良品の発生原因と特定
  • 在庫管理
  • 原価管理
  • 生産情報の共有
  • 生産情報の一元管理 

生産管理システムを導入して生産情報を一元管理すれば、さまざまな課題を解決していけるでしょう。

まとめ

生産管理の中でも工程管理は重要な業務です。お客様からの信用を得て自社製品で利益を生み出すためにも工程管理を行いましょう。

今回は工程管理の手順だけではなく、課題と解決方法をご紹介しました。AIやIoT、RFIDを活用して工程管理を効率化していく動きも出てきていますぜひ、これを機会に工程管理を見直してみてください。