探し物は、すぐ見つかりますか?
広い敷地に数多く積まれた物品があるとします。
現場に勤めて20年にもなるベテラン社員なら、必要な物をすぐに探し出せるでしょう。
しかし、最近入社したスタッフだとどうでしょうか?探し出すまでに多くの時間を費やしていませんか?
今後ますます人手不足が深刻化します。その際にモノ探しに時間を費やしてしまうと、生産性向上は望めません。ムダな時間を削減するためにも、位置情報をリアルタイムに可視化することが求められています。
測位技術は日々進化しており、ついにはRFIDによる位置特定技術も登場しました。
本稿では、測位技術の概要やメリット・デメリット、最新の位置情報サービスについて解説します。ぜひ最後までご覧ください。
測位技術とは
スマートフォンの普及やIoT(Internet of Things)の発展に伴い、位置情報が生活やビジネスの場で活用される機会が拡大しています。位置情報を取得するための測位技術は、大きく屋外測位と屋内測位の2つに分けられます。それぞれについて解説していきます。
屋外測位
屋外測位とは、GPSを代表とする人工衛星を使った測位技術です。具体的には、上空にある人工衛星が発信した時間信号と、スマートフォンなどの端末が信号を受信した時刻から位置を計測します。身近なところでは地図アプリで経路検索したり、SNSで現在位置を表示する際に用いられています。
屋内測位
従来、GPSからの信号が届かない駅構内や商業施設内では、スマートフォンは正しい位置情報を表示することできませんでした。しかし、ビーコン、Wi-Fi、UWBなどの測位技術が発展し、屋内でも正しい位置情報を取得できるようになりました。
矢野経済研究所の調査によると、国内の屋内位置情報ソリューション市場は、製造業・オフィス・病院への導入が進み、2020年には50.3億円、2025年には120億円にまでに拡大するようです。
参考資料:矢野経済研究所、国内の屋内位置情報ソリューション市場調査結果を発表
屋内測位をもっと詳しく
屋内測位には様々な方法があります。ここでは主な屋内測位技術を3つ紹介いたします。
ビーコン測位
ビーコン測位はBluetoothの一種であるBLE(Bluetooth Low Energy)を活用した位置特定技術です。ビーコンから発信された信号を、専用の受信機やスマートフォンで読み取ることで位置を測定します。
ビーコン・BLEについては以下で詳しく解説しているので、ご覧ください。
ビーコン・BLEとは?物品管理を大幅に効率化する位置情報サービスを分かりやすく解説!!
Wi-Fi測位
Wi-Fiのアクセスポイントに接続することで、端末の位置情報を測定する方法です。電波の強さからアクセスポイントと端末の距離を割り出すことで、正確な位置情報を提供します。
UWB測位
UWB(Ultra Wide Band)は超広帯域の電波網を使った位置特定技術です。2台以上のセンサーから発信された信号データの差分をもとに位置情報を特定します。1960年代に軍事用レーダー技術として研究が開始されました。
近年ではiPhone11で使用され、注目されている技術です。
UWBについては以下で詳しく解説しているので、ご覧ください。
あのUWBがiPhoneに搭載されて帰ってきた!UWBの位置測位について優しく解説します
屋内測位技術を3つ紹介しましたが、それぞれにメリット・デメリットがあり、導入に向けての課題もあります。
それぞれを比較すると以下のようになります。
測位方式 |
ビーコン |
Wi-Fi |
UWB |
メリット |
・低コスト |
・通信速度が速い |
・広い範囲において測定精度が高い(数10cm単位) |
デメリット |
・測定誤差が大きい(数m〜10m) |
・測定誤差が大きい(数m〜10m) |
・技術は確立されたが、市場に製品が少ない |
導入課題 |
・Beacon端末用電源の確保が必要 |
・受信機が高価 |
・専用システムが高価 |
活用事例の紹介
屋内測位技術は身近な所で使用されています。ビーコン、Wi-Fi、UWBそれぞれの活用事例を紹介します。
- ビーコンの活用事例
マルティスープ株式会社/iField indoor
人や設備の導線から屋内施設の仕事状況を、様々な視点から可視化し改善につなげるサービスです。工場、倉庫、病院なので利用が見込まれています。 - Wi-Fiの活用事例
株式会社日立システムズ/Wi-Fiリアルタイム位置情報サービス
既存の無線LANシステムと専用のWi-Fiタグを使って、位置情報を取得するサービスです。病院、流通業、製造業への導入が見込まれています。 - UWBの活用事例
Ubisense/リアルタイム位置測位ソリューション
Ubisense9000Seriesセンサーシステムを用いて、高精度な3次元位置を測位可能です。測定された位置情報をもとにデジタルツイン環境を構築し、そのギャップから最適化につなげるサービスです。生産管理、安全管理、物流管理の分野への導入が見込まれています。
上記の活用事例は、主に人や設備の位置情報を取得するサービスです。しかし近年、モノの位置情報を活用できる技術が次々と登場しています。話題となっているBluetoothの最新サービスを紹介いたします。
活用が進むbluetoothの位置情報サービス
「Bluetooth市場動向2019」によると、Bluetooth搭載デバイスの拡大が予測されています。位置情報ソリューションの発展により、2022年にはBluetooth搭載デバイスの年間出荷台数が52億台以上にもなるようです。こちらでは、それを後押しする技術を2つ取り上げます。
1.新規格:Bluetooth 5.1
1つ目は2019年に発表されたBluetooth5.1に搭載された「方向探知機能」です。従来は、電波の強度からデバイスまでの距離を割り出すことしかできませんでしたが、この方向探知機能により、デバイスがどの方向にあるかまで割り出せるようになりました。
Bluetoothに関しては以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
Bluetoothによる位置測位の仕組みをわかりやすく解説-Bluetooth 5.1に追加された方向検知とは-
2.Bluetoothタグ
2つ目はBluetoothタグです。イスラエルの企業Wiliot社が開発したBluetoothタグが話題です。このBluetoothタグは「バッテリー不要」「切手のようなサイズで軽い」が特徴です。
コストは1枚数十円で、商品1つ1つに貼り付けることが可能です。このBluetoothタグ登場で、これまでBluetoothの位置情報サービスが人中心だったものが、モノにも活用できること期待されています。
参考資料:電池不要で貼るだけで個品管理、Bluetoothとスマホによる電子タグの革新 (1/2)
Wiliot社は2019年にAmazonウェブサービス(AWS)やサムスンなどから3,000万ドル(約32億円)もの資金調達を行い開発を加速しています。今後、タグの価格がさらに下がれば一気に普及する可能性があります。
このBluetoothタグを使った、小売店(PARCO)での活用事例を見てみましょう。
PARCOでの取り組み
商品の一つ一つにBluetoothタグを貼り付けることで、好みの商品情報やコーディネートのチェックや、リアルタイム在庫管理ができるようになります。
購入者・店舗の双方向にメリットがあるサービスを構築できます。
(出典:http://www.sato.co.jp/taggingtown/)
以上のようにモノを位置を含めて管理する技術が登場しており、近年はRFIDという無線技術でも、位置情報を取得しながら在庫・物品管理ができるようになっています。
RFIDの位置情報サービス
RFIDとは
RFID(Radio Frequency IDentification)とは、電波を用いてRFIDタグ(ICタグ)に登録された識別情報をRFIDリーダーによって、非接触で読み取る技術のことです。
RFIDについて詳しく知りたい方は、以下で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
Locus Mapping
こちらでは、RFルーカスが提供するRFIDを用いたロケーション管理システムをご紹介します。
Locus Mappingは在庫や物品にRFIDタグを付けることで、地図上で、どこに何があるのかを可視化することができます。
従来RFIDで位置を特定することはできませんでしたが、RFルーカスは日米欧で特許を取得した技術によって、RFIDで位置を特定することに成功しました。
Locus Mappingを活用することで、入出庫・在庫管理の生産性が大幅に見込めます。
Locus Mappingについて詳しく知りたい方はRFルーカスのサービスページをご覧ください。
まとめ
本稿では、屋内測位技術を中心に紹介しました。
人手不足の深刻化によって、労働生産性の向上は欠かせなくなっています。人やモノの位置情報を独自に可視化することは難しく、最適なシステムの導入が必要でしょう。
ぜひ本稿を参考に、自社に合ったシステムを検討してみてください。
以下の記事ではRFIDを積極的に活用しているユニクロから学ぶヒントを掲載しています。ぜひご覧になってください。
RFIDタグを導入したユニクロから学ぶ他業界RFID活用のヒント