棚卸表は、法人税法によって、在庫を抱える全ての企業に作成・保存が義務付けられています。
業務に馴染みのある帳簿だからこそ、「効率的に棚卸表を運用できないか?」と考える企業も多いのではないでしょうか?
本稿では「棚卸表」について解説し、合わせて活用のポイントをご紹介します。
棚卸表とは?
棚卸表とは、その名の通り「棚卸しの際に使用する帳簿」です。
倉庫や店舗で管理している棚卸資産(製品、仕掛品、貯蔵品など)を、一覧形式で記録します。
棚卸表の保管要件
棚卸表の保管期間は「最低7年間」と、法人税法で定められています。
参考資料:国税庁『法人税法 No.5930「帳簿書類等の保存期間及び保存方法」』
原則として紙媒体での保管になりますが、一定の要件を満たすことで、電子媒体やスキャンでの保管が可能です。
なお、電磁的記録による保存を行う場合には、あらかじめ所轄税務署長に対して申請書を提出し、承認を得なければなりません。
棚卸表に使われる経理方式
棚卸表に使われる経理方式には、「税込経理方式」と「税抜経理方式」の2種類があります。
法律上は、どちらの方式を選択しても良く、要件を満たすことで併用も可能です。
参考資料:国税庁「No.6375 税抜経理方式又は税込経理方式による経理処理」
棚卸表の種類
棚卸しには「帳簿棚卸」と「実地棚卸」の2種類があります。
帳簿棚卸
「帳簿棚卸」とは、帳簿や専用のソフトウェアを用いて在庫数を管理する方法です。いわゆる「入出庫管理」にあたります。
取引伝票の数値を会計ソフトへ入力する方法や、バーコード・QRコード、RFIDなどのデータを読み取るハードウェアを活用し、検品時に製品情報を読み込む方法などがあります。
帳簿棚卸のメリット
常に在庫状態を把握できるので、在庫過多のリスクを抑えられます。
なお、データは一元管理されるので「在庫データを製造ラインの管理端末で確認する」といった運用が可能です。
帳簿棚卸のデメリット
通常、製品の中身を確認しないため、汚れ、キズ、破損などの把握は困難になります。
帳簿の記載ミスや会計ソフトへの入力ミスがあった場合、原因追及に時間を要することもデメリットとして挙げられます。
実地棚卸
「実地棚卸」とは、店舗や倉庫にある製品を実際にカウントし、個数と品質をチェックする方法です。いわゆる「在庫管理」にあたります。
プリントアウトした棚卸表に書き込む方法や、「帳簿棚卸」同様、バーコード・QRコード、RFIDなどを活用し、製品数・状態を登録していく方法があります。
実地棚卸のメリット
汚れ、キズ、破損などの製品状態を把握できます。複雑な手順でなければ、パート、アルバイトによる対応も可能です。
実地棚卸のデメリット
在庫数が多ければ、その分、人手がかかります。通常業務終了後に棚卸しを実施するなど、業務への影響を抑える工夫が必要です。そのため、RFIDなどのシステムを活用した作業の効率化が求められています。
実際の運用手順
一般的に、帳簿棚卸、実地棚卸は、以下のステップで実施します。
日常業務
①日々の入出庫にて、帳簿棚卸(入出庫管理)を行います。
②実地棚卸の実施計画を立てます。
多くの企業は、売上原価の確定が必要になる決算前に実地棚卸を行います。
必要に応じて、仕入れ先へ「入荷ができない」こと、卸先へ「出荷ができない」ことを伝えましょう。
実地棚卸当日
③必要な人員を配置します。
④帳簿棚卸のデータを集計し、理論在庫(帳簿上の在庫)を確認します。
⑤作業員が受け持ち場所の棚卸しを行い、棚卸表に在庫数を記入します。
⑥帳簿棚卸と実地棚卸の在庫数を照らし合わせて、両者に差異がないことを確認します。
⑦万が一、両者の間に差異があった場合、その原因を調査します。
実地棚卸のポイントはロケーション管理
製造業の場合、工場と倉庫は分かれていて、実地棚卸は倉庫内で実施されます。
倉庫内の製品保管場所はロケーション(地番)と呼ばれます。
製品のロケーション管理が徹底されていれば「何がどこにあるか?」がすぐに分かりますので、効率的な実地棚卸が可能です。
例えば、倉庫管理システム(WMS)を導入すれば、製品が倉庫のどこに入荷されたか記録できるので、在庫の把握が容易になるでしょう。
しかし、一般的に倉庫管理システムの導入費用は高額です。予算の兼ね合いから、大がかりなシステムを用いることなくロケーション管理を行いたい場合は、専用ソリューションの活用がおすすめです。
一例として、RFルーカス株式会社が提供する「Locus Mapping」があげられます。
Locus Mappingでは、RFIDタグ(ICタグ)の情報がビジュアルとして表示され、一目でモノの位置が分かります。
このような最新のテクノロジーを用いることで、効率的な棚卸しが可能になります。人手不足解消のためにも、このようなソリューションを活用することを検討すると良いでしょう。
RFIDを用いた在庫管理は、こちらの記事で詳しくご紹介しています。ぜひ、ご覧ください。
10分でバーコード・QRコード・RFIDを利用した在庫管理がわかる
まとめ
棚卸しには、帳簿棚卸、実地棚卸の2種類があります。
帳簿棚卸(入出庫管理)では、検品したタイミングで在庫数が反映される仕組みを採用している企業が多いでしょう。
実地棚卸(在庫管理)では、基本的には製品を目視で確認し、紙の棚卸表に手書きで記録していきます。
最近では、バーコードやRFID を活用し、「製品にハンディリーダーをかざしてデータを読み込むだけで、実地棚卸が完了する」といった運用も増え始めています。
特にRFID は、離れた場所から一括で読み込むことが可能なので、実地棚卸の効率が格段に向上します。
「棚卸表の運用を省力化したい」と考えている方は、これらのソリューションを検討してみてはいかがでしょうか。
RFIDについてこちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。