企業経営においては、決算時の利益を正確に算出するため、棚卸資産の適切な管理が欠かせません。
しかし、特に製造業では、仕入れから加工まで複数の工程を経るため、棚卸資産の管理が複雑になりがちです。実際、棚卸資産の種類は豊富で、仕訳や評価には複数の方法があります。
本稿では、棚卸資産の基礎を分かりやすく解説し、合わせて棚卸資産管理のポイントをご紹介します。
「棚卸資産の基本をざっと確認しておきたい」と考えている方におすすめの記事です。5分ほどで読み切れる内容となっていますので、ぜひ参考にしてみてください。
棚卸資産とは?
製造にかかった原価(製造原価)は、「売上原価」と「棚卸資産」に分けられます。
棚卸資産とは、売上に関与していない資産で、いわゆる「在庫」にあたります。
棚卸資産の種類
棚卸資産は、大きく分けて以下の5種類に分類できます。
- 原材料
- 仕掛品
- 半製品
- 商品在庫
- 貯蔵品
順番に見ていきましょう。
①原材料
製造業では、材料を仕入れ、加工して製品を完成させます。製造に必要な材料のことを「原材料」と言います。製品を加工するために必要な消耗資材等も原材料に含まれます。
②仕掛品
製造途中で未完成の製品を「仕掛品」言います。
③半製品
「半製品」とは、完成済みで、販売前の製品のことです。「完成しているか否か?」によって、仕掛品と区別されます。
④商品在庫
小売業などは、メーカーや卸売業者から商品を仕入れて、そのまま販売します。このような在庫を「商品在庫」と言います。
⑤貯蔵品
「貯蔵品」とは、切手、印紙、事務用品などで、未使用のものです。
棚卸資産の仕訳方法
一般的に、入出庫時には、棚卸資産を管理するための補助簿(商品有高帳)に記帳していきます。
ここでは、その際に使用する代表的な6つの仕訳方法をご紹介します。
- 個別法
- 先入先出法
- 平均原価法
- 売価還元法
- 最終取得原価法
- 基準棚卸法
順番に見ていきましょう。
①個別法
「個別法」は、取得原価が異なる物ごとに区別して記録する方法です。多品種を扱う場合は手間のかかる記録方法になるため、適していません。宝石や貴金属など、高価で個々に在庫管理が可能な場合に適しています。
②先入先出法
「先入先出法」は、仕入れたものから順に払い出す仕訳方法です。倉庫からの出庫は「先入れ先出し」が一般的です。倉庫の入出庫に沿った記帳のため、製造業で幅広く利用されます。
③平均原価法
「平均原価法」は、取得した棚卸資産の平均原価を算定し、棚卸資産価額を求める方法です。算出方法には、「移動平均法」、「総平均法」の2種類があります。
④売価還元法
「売価還元法」は、異種商品を一つにまとめて加重平均を行う方法です。棚卸資産の売価合計額に原価率をかけて、棚卸資産価額を求めます。
⑤最終取得原価法
「最終取得原価法」は、全ての棚卸資産に最終取得原価を適用する方法です。
⑥基準棚卸法
「基準棚卸法」は、生産活動において、最低限必要な棚卸資産を基準量とする方法です。基準量は、基準棚卸法を採用したときの原価を適用し、価格の変動に関係なくその価額で評価します。
棚卸資産の評価方法
棚卸資産の評価方法は、大きく分けて以下の2種類に分類できます。
企業はいずれかの評価方法を選択し、継続的にその方針で期末在庫を評価します。
- 原価法
- 低価法
順番に見ていきましょう。
①原価法
「原価法」とは、棚卸資産の購入時に支払った金額を元に期末の金額を評価する方法です。棚御資産を仕訳した帳簿価額で評価します。
②低価法
「低価法」とは、原価法による評価か期末時価のうち、いずれか低い方を選択し、評価する方法です。直近で材料費が大幅に値上がりしたケースなど、時価のブレが大きい場合に利用されます。
棚卸資産管理の頻度
棚卸資産を管理する目的は、「製造原価を計算するため」です。
そのため、一般的には企業の決算前に行います。
しかし、決算直前に棚卸しを行うと、帳簿と在庫数が合わないケースに対応できなくなる恐れがあります。企業の業務や規模に合わせて、任意のタイミングで行うと良いでしょう。
棚卸資産管理のポイントはロケーションの把握
製造業では、一般的に棚卸資産は倉庫に保管されます。
倉庫内の保管場所をロケーション(地番)と呼び、ロケーション管理が徹底されていれば、「何がどこにあるか?」がすぐ分かるため、効率的に棚卸資産を管理できます。
棚卸資産の場所を把握するには、大きく分けて以下の3つの方法があります。
- エクセルの一覧表や図面
- 図面
- デジタルマップ
多くの製造業では「エクセルや図面に棚卸資産の位置(ロケーション)を記録しておき、実際の棚卸資産(コンテナ等)には、数量を手書きした用紙を貼っておく」として、棚卸資産を管理しているでしょう。
エクセルの一覧表や図面を利用した管理方法は、ある程度有効ですが、限界があります。
現在、ほとんどの商品がバーコードで管理され、入出庫などの検品作業は、バーコードの読み込みが主流です。
近年では、アパレルを中心に普及しているRFID を導入する企業が増え、RFID を起点とした棚卸資産管理にシフトする動きも見られます。
RFIDについてこちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
一例として、RFルーカス株式会社が提供する「Locus Mapping」があげられます。このサービスでは、RFID タグの情報がビジュアルとして表示され、一目でモノの位置が分かります。
デジタル技術を駆使して棚卸しを効率化することで、本業に集中することが可能になるでしょう。
RFIDによる在庫管理に関しては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。ぜひ、ご覧ください。
RFIDで在庫・物品管理!?RFID x ロボットで棚卸しを無人化!
まとめ
多くの企業では大小に関わらず常に棚卸資産(在庫)を抱えています。
企業の利益を正確に算出するためには、棚卸資産の適切な管理が欠かせません。管理に抜けが無いかどうか、しっかりとチェックすることが大切です。
実際の棚卸資産管理には、「帳票棚卸」、「実地棚卸」が行われます。
帳票棚卸は「入出庫管理」、実地棚卸は「在庫管理(棚卸し)」にあたります。
在庫管理(棚卸し)では、プリントアウトした棚卸表に在庫数を手書きで記入していく運用が大半ですが、近年は、RFIDなど、棚卸資産管理をさらに省力化するソリューションが登場しています。
近距離で一点ずつ照合を行うバーコードとは異なり、「離れた場所から一括で読み込める」特徴を持つRFIDは、棚卸効率を格段に向上させる可能性を秘めています。
「棚卸資産管理を効率化・省力化したい」と考えている方は、これらのソリューションの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
下の記事は、RFIDに積極的に投資をしているユニクロに関する記事です。こちらもぜひ参考にしてみてください。
RFIDタグを導入したユニクロから学ぶ他業界RFID活用のヒント