需要予測の手法とは?基本の流れから具体的なやり方まで解説

需要予測は、販売機会の損失や過剰在庫リスクを防止するために必要な業務です。しかし、大量のデータを取り扱い、複雑な計算をしなければならず、大きな負担と感じている企業も多く見受けられます。このような需要予測の業務の効率化はできないのでしょうか?

今回は需要予測の手法について詳しく解説します。この記事を読めば、基本の流れから業務効率化の方法までわかるようになります。需要予測の業務負担を軽減させたい方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

需要予測とは

需要予測(Demand forecast)とは、自社製品の需要を予測することをいいます。市場で自社製品がどれぐらい売れるのか予測することで、生産計画や在庫数を適正化できます。

ビジネスはグローバル化して競争激化に陥っているため、発注から納品に至るまでのリードタイムは短くなってきました。そのため、見込み生産を行わなければ、販売機会の損失を招いてしまいます。その一方で、過剰在庫になると廃棄ロスや保管コストが上がり、無駄なコストがかかってしまいます。

このような問題を解決するために、自社製品が売れる量を予測して生産計画を練る必要があるのです。需要予測は、生産計画の成否に影響を与える重要な業務となります。

需要予測の基本知識をおさらいしたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。

>>「需要予測とは」

需要予測の手法

需要予測は3STEPで進めていきます。

  • 需要予測の方法を決める
  • 計算式を用いて需要予測する
  • 需要予測と実績を比較する

ここでは、それぞれの手順について詳しく解説します。

1.需要予測の方法を決める

最初に、どのような方法で需要予測を行うかを決めます。

過去の実績を用いた統計的予測

過去の実績を用いて未来の状況を予測する

新しい外的要因が発生すれば予測が外れやすい

社内に蓄積したデータがあれば予測できる

専門家の意見による予測

専門家が保有する情報を参考にして需要を予測する

突然の状況変化にも柔軟に対応できる

近い将来を予測する場合に適している

複数人の意見を用いて予測する場合は時間がかかる

市場調査による予測

市場調査の結果を参考にして需要を予測する

新商品の需要の予測に適している

AI・機械学習による予測

ビッグデータを活用して需要を予測する

需要予測を自動化できる

AIの開発が必要である

2.計算式を用いて需要予測する

次に、どのような計算式を用いて需要予測するかを決めます。

算術平均法

過去のデータの数値の平均を出す

計算方法が簡単で大まかな結果を予測できる

移動平均法

数値を移動させながら平均を出す

直近のデータをもとに予測値を算出する

一部のデータがあれば算出できる

指数平滑法

過去のデータと予測から予測値を出す

「α×前期の実績値+(1-α)×前期の予測値」

回帰分析法

因果関係がある数値同士の関係性を算出して需要を予測する

予測したい内容に対して影響しうる要因を複数設定できる

加重移動平均法

最新の需要変動の影響を考慮して平均を出す

「(◯月の加重係数×◯月の販売数量)+(□月の加重係数×□月の販売数量)+…+(△月の加重係数×△月の販売数量)」

3.予測と実績を比較する

需要予測と実際の需要は100%的中するとは限りません。需要予測が実績とズレる場合もあります。そのため、予測と実績を比較してズレが生じていないかを確認してください。

ズレが生じている場合は「どのような箇所を見込めていなかったのか?」を検証することで、予測の精度を上げていけます。

需要予測の手法をサポートするツール

需要予測の手法をご紹介しましたが、多品種少量生産が主流になり、担当者が全ての製品の需要予測を行うことは難しくなってきました。また、外部環境の変化を加味した需要予測をしなければいけません。これらの状況下で精度の高い需要予測を行うためには、サポートツールを上手に利用することが大切です。ここでは、需要予測を行う際に利用したいツールをご紹介します。

エクセル

エクセルの関数や予測シートを利用すれば、需要予測の業務を効率化できます。エクセルは、多くの企業のパソコンにインストールされています。新たにインストールする場合でも、安価に導入できることが魅力です。

また、エクセル2016以降には「予測シート」機能が付いています。この機能を活用すれば、ワンクリックで将来の数値をグラフ化できて、簡単に需要予測することが可能です。正しい数値が得られるわけではないですが、需要予測を手動で行っていて、少しでも効率化したい方にエクセルはおすすめです。

需要予測システム

需要予測システムを利用すれば、搭載されている機能で需要予測の業務を効率化できます。需要予測では大量のデータを取り扱い、複雑な計算をしなければいけません。そのため、人的ミスが発生することもあります。このような人的ミスを防止して業務効率化をしたいとお考えの方は、需要予測システムの利用がおすすめです。

需要予測システムに搭載されている機能、おすすめの製品を知りたい方は、下記の記事を参考にしてみてください。

>>「需要予測システム」

AI

AIを活用すれば需要予測を始め、精度の見直しまで自動化できます。受注に影響する要因データをAIモデルに読み込ませると自動で分析して、将来の需要を予測してくれます。分析ツールとの大きな違いは、需要予測の精度の見直しまで自動化ができることです。AIは機械学習により、自ら需要予測の精度を上げるために勉強していきます。そのため、AIは需要予測の業務負担を軽減したい方におすすめです。

AI×需要予測の仕組みについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。

>>「AI×需要予測」

需要予測を行う際の課題と解決策

需要予測を行う上で課題が出てくることもあります。予測の精度を上げたり、予測の精度が悪い場合の対処法を把握したりしておくと安心できるでしょう。ここでは、需要予測を行う際の課題と解決策をご紹介します。

需要予測の精度が悪い

過去のデータを大量に用意したにもかかわらず、需要予測の精度が悪いと悩む企業も珍しくありません。需要予測の精度が悪いと、販売機会の損失や過剰在庫のコスト増が発生してしまいます。需要予測の精度が悪いことでビジネスチャンスを逃す企業も多く存在するため、注意しなければいけません。

解決策:正確なデータを用意して精度を上げる

過去のデータを活用する場合は、データの量だけではなく「品質」にこだわる必要があります高品質なデータの定義は目的によって異なりますが、以下のようなデータを揃えておくと精度を上げられます。

◆高品質なデータの定義

網羅性

観測事象についての必要な情報が網羅されているか

粒度

必要な情報を把握するために十分な頻度、詳細度で記録されているか

精度

データが現実と合致しているか

一貫性

同一の事象を表すデータが同一の表現で記録されているか

最新性

最新の情報をデータに反映できているか

完全性

データに抜け漏れはないか

妥当性

事前に定義した形式にデータが合致しているか

再利用性

当事者以外でも把握できるデータになっているか

生産品目が多くて需要予測が大変

製造業で多品種少量生産を行っているなど生産品目が多い場合は、想像以上に労力がかかります。個々の製品の需要予測を部門スタッフで行うと、不注意からヒューマンエラーが起こってしまうでしょう

また、予測需要の数値を算出するまでに莫大な時間がかかります。生産品目が多くて需要予測が大変だという課題は、多くの企業が抱えています。

解決策:分析ツールやAIを活用して自動化する

担当者の経験や勘に頼り、需要予測を手動で行うには限界があります。生産品目が多い場合は、分析ツールやAIを使って自動化することで、効率的に対応できるようになります。手動で行う作業をなくすことで、ヒューマンエラーの防止対策にもなります。需要予測の労力を減らしたい方は、自社に合ったツールやシステムを導入して、上手に活用しましょう。

需要予測が当たるとは限らない

需要予測の手法を説明しましたが、予測値と実績値と合うとは限りません。あくまでも予測のため、外れてしまう場合もあります。AIの需要予測はデータの質を高めれば精度を上げていけますが、需要に影響する新たな要因が出れば、それを加味できずに予測が外れてしまう場合もあります。

解決策:予測の外れを前提として考えておく 

需要予測は外れる場合もあると説明しましたが、外れることを前提に対策しておくと不測の事態にも慌てずに済みます。

例えば、許容範囲を超えた誤差が出ないように上限値や下限値を決めておき、それらの基準を超えたら早期にアラートが出るようにしておきましょう。早期に異常値を検知して生産計画を修正するなどの対応ができる状態にしておくと、トラブルを最小限に抑えられます。

需要予測の手法に関するよくある質問

最後に、需要予測の手法に関するよくある質問をご紹介します。

Q.需要予測に役立つエクセルの関数を教えてもらえますか?

需要予測における計算式は、エクセルの関数を活用することで自動計算できます。

FORECAST関数

過去の需要データを基に将来の需要を予測する際に用いられる

xとyの関係が直線的である場合に有効

=FORECAST.LINEAR(予測に使うx,yの範囲,xの範囲)

TREND関数

複数のデータを基に来年の売上金額を予測する際に用いられる

xとyの関係が直線的である場合に有効

=TREND(yの範囲,xの範囲,予測に使うxの範囲)

SLOPE関数

yとxの範囲を参考に回帰直線を求め、その傾きから需要予測を行う

xとyの関係が直線的である場合に有効

=SLOPE関数(yの範囲,xの範囲)

Q.AIの需要予測の手法について詳しく教えてもらえますか?

AIの需要予測の手法は、以下のような流れになります。

  1. 現場の改善点を把握する
  2. ベンダーに問い合わせをする
  3.  AIモデルに必要なデータを定義する
  4.  AIモデルにデータを学習させる
  5.  AIモデルの精度を確かめてみる
  6. 現場でAIモデルを運用する

AIモデルの構築にはプログラミング言語の知識が必要になりますが、ベンダーにおまかせすることも可能です。

Q.需要予測を学びたい場合は、どのような本を読めばよいですか?

需要予測に関する専門書は、さまざまなものが発売されています。下記のような内容の専門書で学習すれば、予測需要の精度を上げていけるでしょう。

  • 需要予測の基本
  • 需要予測の戦略
  • 需要予測の成功事例
  • 需要予測×ITに関する技術
  • 需要予測×AIのアルゴリズムに関する技術書

まとめ

今回は需要予測の手法について詳しく解説しました。 

[需要予測の手法]

  1. 需要予測の方法を決める
  2. 計算式を用いて需要予測する
  3. 需要予測と実績を比較する 

需要予測は3つの手順で行えますが、大量のデータを扱う必要があり複雑な計算をしなければいけません。そのため、エクセルやシステム、AIを活用して効率化、自動化をしていくことが必要不可欠です。ビジネスのグローバル化により競争が激化し、受注から納品までのリードタイムは短縮しています。素早い需要予測ができるように、これを機会に業務を見直してみてください。