需要予測にAIを活用する動きが出てきています。需要予測をAIに任せると、どのような効果が見込まれるのでしょうか?そもそもAI需要予測は、どのような方法で行うものなのでしょうか?
今回は、AI×需要予測について詳しく解説します。この記事を読めば、AI×需要予測の基礎知識から導入方法までわかるようになるはずです。需要予測を見直したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
AI×需要予測とは
AI×需要予測とは「天候」「来客数」「商品の販売数」などのデータから傾向を読み取り、AIが需要予測することをいいます。
総務省の報告書によると、AI関連ソフトウェアの市場規模は前年比55.7%増と急拡大しており、AI×需要予測を利用する企業も増えてきました。ここでは、AI×需要予測について詳しく解説します。
従来の需要予測システムとの違い
従来の需要予測システムとの大きな違いは、自らロジックを考える必要がなく、システムがディープランニング(AI自身が学習する機械学習の一種)で推理できることです。
推理とは既にわかっている事柄を参考にして、考えの道筋を辿り、わかっていない事柄を推しはかることをいいます。AIにデータを与えるだけで推理を始めてくれます。
データの量が少ないと、最初は推理の精度が低いかもしれませんが、活用していく中で徐々に精度を上げていけます。
AI×需要予測のメリット
AI×需要予測を活用すれば、データを機械学習させることで需要予測の自動化が行えます。そのため、外部要因に関するデータを読み込ませれば、外部要因の影響度も判定できます。
予実管理に差があった場合は、AIが結果を学習して精度を上げてくれるため、手動で調整する必要がありません。精度が高まれば、適正な在庫量を確保できるようになり、販売機会の損失を防止できます。このように、AI×需要予測を活用すれば需要予測業務の属人化を防ぐことができます。
AI×需要予測のデメリット
AI×需要予測を活用するには、AIに機械学習させるためのデータを用意しなければいけません。機械学習させるデータは、入力規則や単位が揃っていなければなりません。また、内容が十分である必要があります。
精度はデータの品質で変わるため、定期的なチューニングが必須です。これらの準備をサポートしてくれるベンダーも存在しますが、サポート費用が上乗せされて導入コストが高くなるため注意してください。
AI需要予測の導入方法
AI×需要予測を活用したい場合は、下記の流れで導入します。
- 現場の改善点を把握する
- ベンダーに問い合わせをする
- AIモデルに必要なデータを定義する
- AIモデルにデータを学習させる
- AIモデルの精度を確かめる
- 現場でAIモデルを運用する
ここでは、それぞれの手順について詳しく解説します。
1.現場の改善点を把握する
まずは現場の改善点を把握して、AI×需要予測の必要性を検証します。
需要予測に関連する現場の課題として、以下のようなものがあります。
- 発注業務に必要な工数が大きい
- 欠品防止や過剰在庫に関するプレッシャーが大きい
- 在庫管理の工数が多い
- 過剰在庫による廃棄ロスが増加
このような悩みで大きな損失が出ており、AI×需要予測を活用することで解決を見込めるなら、ベンダーに問い合わせをしてみましょう。
2.ベンダーに問い合わせする
AI×需要予測を活用すべきと判断したら、ベンダーに問い合わせをします。
AI×需要予測サービスを利用する場合は「AI構築費用」「サービス費用」「データ保管費用」がかかります。どのような機能を利用するか、どこまでの作業を依頼するかで料金が変動します。どのようなデータを用意して、どのように需要予測するかまで提案して欲しい場合には「コンサルティング費用」がかかることを踏まえて相談してみましょう。
3.AIモデルに必要なデータを定義する
AIモデルに機械学習させないと、需要予測はできません。そのため、AIモデルに読み込ませるためのデータを定義しましょう。必要なデータは業種や目的によって様々ですが、下記に例を載せたので参考にしてみてください。
データの種類 |
データの粒度 |
期間 |
対象商品の売上 |
商品別 販売店別 |
3年分 |
曜日・カレンダー |
共通 |
|
商品データ |
商品単位 |
1年分 |
気象 |
地区 |
|
販売イベント |
商品、販売店単位 |
|
各拠点・販売店の地理データ |
販売店単位 |
4.AIモデルにデータを読み込ませる
AIモデルに、予測したい「目的変数」と目的変数を予測する「説明変数」のデータを読み込ませます。例えば、天気が良いことが売上に影響を及ぼしているかを検証したい場合は、目的変数に「対象商品の売上」、説明変数に「気象」のデータを用意します。
データを読み込ませてAIモデルの精度を確かめて精度が悪ければ、モデルのパラメーターを調整、それでも駄目な場合はデータの品質を上げなくてはいけません。この作業はベンダー側が対応してくれるため、安心してください。
5.AIモデルをシステム連携させる
満足のいく精度が出たら、AIモデルをシステム連携します。システム上で正しく動作することを確認したら、現場で運用していきます。
需要予測の精度が上がったら、社内に浸透させて、従業員にはコア業務に当たってもらうようにしましょう。
AI需要予測サービスの選び方
AI×需要予測の特徴を把握してサービスを利用したいと思っても、どれを利用すべきか悩んでしまうかもしれません。自社に合ったAI需要予測サービスを導入するために、選び方のポイントを覚えておきましょう。
操作方法が簡単であるか
AI需要予測サービスを導入しても、デマンドプランナーが使いこなせなければ意味がありません。できるだけシンプルなUIで操作が簡単なものを選ぶようにしましょう。ホームページの情報だけでは操作方法がわからない場合は、無料トライアルでサービスを利用してみてください。また、デモ画面を見せてもらったうえで検討してみることをおすすめします。
必要な機能が搭載されているか
AI需要予測サービスによって、搭載されている機能は異なります。需要予測の他にも、生産計画策定や在庫補充計画の作成機能などが搭載されているシステムが多く見受けられます。
しかし、機能が多ければよいわけではありません。不必要な機能が搭載されていると、サービス料金が高くなります。従って、費用対効果を得るためにも、必要な機能が搭載されているか、不必要な機能が搭載されていないかを確認してください。
サポート体制が整備されているか
AI需要予測サービスで効果を得るためには、現場の課題を洗い出して導入すべきか判断する必要があります。また、AIモデルに必要なデータを収集したりパラメーターを調整したりして、精度を上げていかなければいけません。これらの業務を社内で行う場合は、データサイエンティストなどの専門家が必要になります。
しかし、専門知識を持っていない企業もあるでしょう。そのような企業でも、サポート体制が充実しているサービスを利用すれば問題なく導入できます。自社に専門知識を有する人材がいない場合には、サービス側にサポート体制が整備されているか確認しましょう。
おすすめのAI×需要予測サービス3選
AI×需要予測の選び方をご紹介しましたが、比較の手間を省きたい方もいるでしょう。そのような方のために、おすすめのAI×需要予測サービスをご紹介します。
HITACHIのビッグデータが活用できる「ビッグデータ×AI」
HITACHIが提供する需要予測サービス「ビッグデータ×AI」は、ビッグデータとAIを活用して精度の高い需要予測を行えます。お客様の要望をヒアリングしてAIモデルを構築してくれるため、幅広い業界で利用されています。
大きな特徴は、HITACHIが保有するビッグデータを活用できること。そのため、予測が難しい新商品の需要予測なども可能です。また、予実管理で誤差が発生した場合は、推奨発注量を提示してくれるなど便利な機能が搭載されており、業務効率化を実現したい方におすすめです。
シンプルで操作しやすいAIツール「exaBase」
exaBaseは必要なデータを取り込み、数クリックするだけでデータ分析が行えるAIツールです。予測モデルを自動で作成するだけでなく、各項目の影響度まで結果として表示してくれます。そのため、データサイエンティストの知識がない方でも高度な分析が行えます。
誰でも使えるAI予測分析ツールとして注目を浴び、製品製造や研究開発、マーケティングなどあらゆる場所で利用されているツールです。
導入前に費用対効果や実現したいことの検証まで相談に乗ってくれるため、AIに関する知見のない方でも導入しやすくなっています。
サポートサービスが充実している「需給最適化プラットフォーム」
NECが提供する需要予測サービス「需給最適化プラットフォーム」は、サポートサービスが充実しています。需要予測相談ルームが設けられており、「需要予測AIを試してみたいけれど、本当に成果が期待できるのか不安」「需要予測の専門人材を育成したい」などの悩みにも回答してくれます。
きめ細かなサポートで、需要予測サービスを利用する不安を払拭した上でサービスを利用できます。フォロー体制が用意されているサービスをお探しの方におすすめです。
AI需要予測サービスの活用事例
実際にAI需要予測サービスを利用している企業は、どのような効果が得られているのでしょうか?ここでは、AI需要予測サービスの具体的な活用事例をご紹介します。
黒字転換の経営に成功した「不二家」
不二家は国民的キャラクター「ペコちゃん」でお馴染みの大手菓子メーカーです。2015年から赤字経営が続いていましたが、2021年に黒字転換して大きな注目を浴びています。黒字転換を迎える前の2020年度から、AIを活用した需要予測を行っていました。
AIの需要予測の結果、ターゲット顧客にしていなかった10代、20代に需要があることが判明。データを参考に、若年層に向けた商品開発やマーケティングを行いました。その結果、新たな需要を開拓することに成功したのです。
また、400商品の半分以上が新商品となっており、正確に需要予測ができず販売機会を逃していました。このような問題もAI×需要予測システムで解決して、順調に売上を伸ばしています。
AIとデマンドプランナーの協働を実現「資生堂」
資生堂は創業150年以上の大手化粧品メーカーです。同社は2018年以降、AI需要予測を活用してきました。市場と顧客に精通したプロフェッショナルとAIが協働することで、経営指標に直結する精度の高い需要予測を実現しています。
同社では、AIの予測値は人間が意思決定するためにあるものと捉えており、デマンドプランニングの方法を管理しています。予測値を解釈してロジックを説明する際にAIを活用し、それ以外の意思決定を人間が行うと役割を明確にして、高い精度を実現しています。
販売条件を根拠として割引額で食品ロスの削減に成功「イオン」
イオンリテールは、店内カメラの映像を分析することで売場レイアウトや接客の改良に役立てられる「AIカメラ」を約80店舗に導入しています。
また、商品販売数や天候、客数の条件を分析して瞬時に適切な価格を提示する「AIカカク」も導入しました。AIカカクは販売条件を機械学習しており、総菜売り場のバーコードを読み取って陳列数を入力するだけで、適切な割引率を提示してくれる画期的な機械です。
イオンリテールは、このような販売条件に裏付けされた割引を行うことで、食品ロスの削減に成功しています。
近年はバーコードの代わりとなるRFIDタグが低価格で利用できるようになりました。RFIDタグに切り替えれば、総菜売り場のバーコードの読み取りの効率化や自動化も行えるようになります。
まとめ
AIで需要予測をすれば、予測業務の自動化ができます。これまでは担当者の経験や勘で行っていたケースが多く、業務の属人化が問題とされていました。しかし、このような問題もAI×需要予測で解決できます。今回は、AI×需要予測の導入方法から、おすすめのサービスまでご紹介しました。この機会に、AI×需要予測の導入を検討してみてください。