ハンディターミナルとは?基本機能や種類・メリットを詳しく解説!

業務効率化や作業ミス削減のため、在庫管理や入出荷業務にハンディターミナルを導入する企業が増えつつあります。今回は、幅広い業界業種で導入が進んでいるハンディターミナルの基本機能や活用方法について解説します。ハンディターミナルの種類や期待できるメリットについても触れていますので、導入を検討している方や興味のある方はぜひ目を通してみてください。

 

ハンディターミナルとは

ハンディターミナルは、端末の上部や背面にバーコードリーダーが搭載された、携帯性に優れたデータ収集端末装置です。

 

ハンディターミナルには、主にバーコードや2次元コードなどの読み取り、無線通信、データの送受信などの機能が備えられています。ハンディターミナルを導入することで、ヒューマンエラーの発生、欠品や過剰在庫といった、従来の在庫管理業務や入出荷業務が抱える課題の解消が期待できます。

 

近年では、利用環境や使用目的に合わせたハンディターミナルも多数登場しており、物流、製造、小売業界をはじめとした幅広い業界業種でハンディターミナルの導入を進める企業が増えています。

ハンディターミナルの基本機能

ハンディターミナルの基本機能として挙げられるのは以下の通りです。

 

  • スキャニング機能
  • バッチ機能
  • 無線通信機能
  • 画面表示とキー入力
  • ファイル入出力と送受信

 

それぞれの機能について詳しく解説します。

 

スキャニング機能

ハンディターミナルに搭載されたバーコードリーダーにより、バーコードや2次元コード等を読み取る機能です。

 

ハンディターミナルで読み取れるもの

ハンディターミナルで読み取れるものにはどのようなものがあるのでしょうか。詳しく確認していきましょう。

 

バーコード(1次元コード)

バーコードとは、縞模様に並んだ線の太さで、数値や文字を表す識別子を指します。スーパーやコンビニなどで私たちが目にする商品についている「JANコード」をはじめ、世界には100を超える種類のバーコードが存在します。

 

ここでは、代表的な5種類のバーコードの特徴をご紹介します。

名称 扱える文字の種類 特徴
JAN 数字(0~9まで) ・世界共通のコード ・日本ではJAN、国際的にはEAN、  アメリカ・カナダではUPCと呼ばれる ・生活用品、書籍、家電製品、衣料品等、  幅広いジャンルで採用されている
ITF 数字(0~9まで) ・標準物流コード ・標準規格(14桁)以外に、国内規格(16桁)が存在する ・同じ桁数であれば、他のコードと比較して、 大きさを小さくできる点がメリット
CODE39 ・数字(0~9まで) ・アルファベット (大文字) ・記号(-,.,スペース,$,/,+,%) ・スタート/ストップキャラクタ (*:アスタリスク) ・工業用バーコードとして多く利用されている ・同じ桁数を表現したい場合、 ITFやNW-7より広い幅を必要とする ・読み取り精度が高い ・表現可能な桁数を任意に設定可能
CODE128 ・アスキーコード(全文字) ・数字(0~9まで) ・アルファベット  (大文字・小文字) ・記号 ・制御文字(CR、STX等) ・あらゆる文字が扱える ・GS1-128として、医療材料業界や食肉業界など、幅広い業界で採用され始めている ・12桁以上かつ数字のみの場合、他コードより小型化が可能
NW-7 (CODABAR) ・数字(0~9まで) ・記号(-,$,/,.,+) ・スタート/ストップキャラクタ (a~dのアルファベット) ・スタート/ストップキャラクタにはアルファベトを使用するが、表現できるのは数字と記号のみのシンプルなコード ・宅配便の伝票や図書館の貸出コードなどで利用されている

 

QRコード(2次元コード)

QRコードは、「クイックレスポンスコード」の略称で、高速読み取りが可能なマトリックス型2次元コードを指します。

 

大容量の情報を1つのコードで表現でき、数字をはじめ、アルファベットや記号、漢字など複数の言語を扱える特徴があります。データ読み取りや決済用コードなど、さまざまなシーンで活用されています。

 

RFIDタグ

RFIDとは、「Radio Frequency Identificatio」の頭文字をとった言葉で、日本語では「無線周波数識別」と表現されます。具体的には、無線通信を用いて、非接触でタグに記録された情報を読み書きする自動認識システムを指します。RFIDの技術は、アパレル店舗の商品タグといった私たちの身近なシーンをはじめ、製造、物流、医療など幅広い業界で活用が進んでいます。

 

RFIDタグは、アンテナとICチップを搭載した記録媒体で、RFタグやICタグ、電子タグ、非接触タグなど、さまざまな名称で呼ばれています。RFIDタグの特徴には、複数のタグを同時にスキャンできる、障害物があっても読み書きできる、汚れに強い、セキュリティ性に優れているなどが挙げられます。近年では、ラベルタグ、金属対応タグ、セラミックスタグなど、用途に合わせた多様な種類のRFIDタグも誕生しています。

 

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文字(OCR機能)

OCRとは、「Optical Character Reader」の頭文字をとった言葉で、日本語では「光学的文字認識」と表現されます。紙や写真等に記載されたテキストデータを読み取り、編集可能な文字データに変換する技術で、ハンディターミナルの中には、このOCR機能が搭載されているものもあります。

 

バッチ機能

バッチ機能とは、バーコード等から読み取った情報をハンディターミナル内で処理、蓄積する機能です。読み取りごとに随時データを転送するのではなく、ある程度データが溜まってからPCなどへデータ転送するのが特徴です。

 

ハンディターミナル内に多くの情報を蓄積するため、バッチ機能を使用する際は大容量のメモリが必要になります。

 

無線通信機能

無線通信機能とは、無線により読み込んだデータを随時送受信する機能です。リアルタイムでデータの収集が可能なため、作業の進捗情報や商品の製造過程などまとめて把握できます。万が一、ミスや問題が発生した場合でもすぐに状況の把握ができるため、被害やミスによる影響を最小限に食い止められる点がメリットといえます。

 

画面表示とキー入力

画面表示機能とは、ハンディターミナルに備え付けられた液晶画面に、読み取った商品の情報等を表示する機能です。近年では、カラー液晶や、背景・バックライトが白い液晶画面を採用する機種が増えており、視認性や利便性が向上しています。

 

また、液晶画面の解像度も向上しており、表示可能な文字数の多い機種や、画像表示が可能な機種も誕生しています。

 

キー入力機能とは、ハンディターミナルに付属するテンキーなどを使用し、商品情報の手入力や、スキャンなどの処理の確定、各種機能の呼び出しができる機能です。数字やアルファベットの他、カタカナや漢字の入力が可能な機種も登場しています。

 

ハンディターミナルには他にも、電源キーや機能(ファンクション)キーなど、作業をする上で必要なキーが備えられています。

 

ファイル入出力と送受信

ファイルの入出力機能とは、ハンディターミナル内に収集したデータを保持したり、事前に外部からダウンロードしたファイルを参照したりできる機能です。ファイルの追加や更新、削除、検索等が可能で、メーカーや機種によって入出力できるファイルの大きさや数、メモリ容量などが異なります。業務において大量のデータを扱う場合や、同時に複数のデータを参照する必要がある場合は、ファイルの入出力機能の仕様について事前に確認しておくと安心です。

 

ファイルの送受信機能とは、ハンディターミナルで収集したデータをパソコンなどへファイル送信(アップロード)したり、パソコンなどからファイルを受信(ダウンロード)したりする機能です。

 

ハンディターミナルの活用用途

ハンディターミナルはどのような業務や目的で活用されているのでしょうか。詳しく確認していきましょう。

 

在庫管理

顧客ニーズの多様化、市場の変化等の影響を受け、企業のものづくりは少品種大量生産から多品種少量生産にシフトしつつあります。扱う商品の種類が多くなれば、当然ながら在庫管理は煩雑化し、従業員にかかる負担や、時間、コストが増大します。また、従来のような手作業の在庫管理では、入力漏れやミスが起こるリスクも高くなります。

 

ハンディターミナルを活用すれば、商品やロケーションに貼り付けたコードを読み込み、数量を入力して登録するだけで、在庫の現品管理が容易に行えます。ヒューマンエラーの削減や業務属人化の解消にも繋がるため、入出庫や在庫管理にかかる従業員の負担軽減も期待できます。

 

手作業の在庫管理が抱えていた課題や問題を解消し、在庫管理をより効率化、簡略化するための一手として、在庫管理業務にハンディターミナルの導入を進める企業が増加しています。

 

入荷検品

入荷検品とは、入荷された品物と納品書を照合し、品物や数量に誤りがないか、損傷や異常がないかを確認する作業です。万が一、入荷検品時に見落としや見間違い、台帳への記入ミス等のヒューマンエラーが発生してしまうと、在庫差異の発生や誤発注に繋がるリスクが高くなります。

 

入出荷検品にハンディターミナルを導入することで、作業時に起こりがちなヒューマンエラーを解消し、誤出荷等の致命的なミスを防止できます。また、目視検査や在庫台帳などを用いたこれまでの入荷検品と比較し、人的、時間的リソースを大幅に削減できる点も魅力です。

 

トレーサビリティ

トレーサビリティは、追跡を表す「トレース」と能力を表す「アビリティ」を組み合わせた造語で、日本語では「追跡可能性」と訳されます。トレーサビリティの定義は業界によって多少異なります。たとえば製造業では、その製品がいつ、どこで、誰に作られたかを明らかにするために、原材料や部品の調達から製造、消費、廃棄までの流れを追跡可能な状態にすることを指します。

 

トレーサビリティでは、調達、製造といった各工程のデータが適切に記録、保管される必要があります。ハンディターミナルを活用すれば、バーコードを読み取るだけで、製品番号や生産地、製造日や賞味期限、入出荷先等の情報が簡単に取得できます。さらに、各工程の情報が一元的に管理できる点も、トレーサビリティの実現に大きく役立ちます。

 

ポカヨケ

ポカヨケとは、不良の発生や作業遅延に繋がるヒューマンエラー(ポカミス)の発生を防ぐ仕組みや装置を意味します。

 

ポカヨケは、「異常停止」「ミス補正」「予知警報」といった不良を予知する仕組みと、「不良停止」「流れ規制」「発生警報」といった不良を検知する仕組みの大きく2種類に分けられます。これらの仕組みや装置を組み合わせることで、不良の発生や不良の混入を防ぐだけでなく、ポカミスが発生した原因や工程の特定、再発を防止する改善策の策定もしやすくなります。

 

ハンディターミナルを活用したポケヨカの事例として挙げられるのは以下の通りです。

 

  • 出荷検品および社内・客先のかんばん照合による誤出荷防止
  • 部品入荷時・部品補充時の保管場所確認、混入防止
  • 金型・治具の整合性や手順の確認
  • 原材料の品質、調合や配合の確認

 

誤出荷や不良品の混入、部品や材料の取り違えなど、現場で起こり得るポカミスにはさまざまなものがあります。これらのポカミスは、ハンディターミナルによる一致照合、比較照合を各工程で徹底して行えば、防ぐことが可能です。

 

ハンディターミナルの種類

ハンディターミナルには、「モデル」「形状」「通信方法」によってさまざまな種類があります。詳しく確認していきましょう。

 

モデル

ハンディターミナルには、使用シーンや用途に合わせたさまざまなモデルが存在します。

 

  • 標準モデル

あらゆる現場で使える汎用性の高いモデル。軽量薄型のモデルや高所からの落下にも耐えられる高い堅牢性を有するモデルも存在する。

 

  • メディカルモデル

医薬品消毒が可能で、医療現場や食品工場などで多く採用されているモデル。

 

  • 防爆モデル

爆発や火災等が起きる危険のあるエリアでも利用できるモデル。可燃ガスや液体を扱う化学工場や塗料工場、一部の食品工場などで利用されている。

 

  • 冷凍モデル

冷凍倉庫など、特殊な環境に耐えられるよう設計された特殊モデル。

 

  • タブレットモデル

ハンディターミナルの機能を有したタブレット端末。

 

形状

ハンディターミナルの形状には大きく「スマートフォンタイプ」と「キーボード搭載タイプ」の2種類があります。

 

  • スマートフォンタイプ

スマートフォン感覚で使用できるハンディターミナル。手袋をしたままでも液晶操作ができるなど、利便性も高い。近年、スマートフォンタイプを採用する企業や、キーボード搭載タイプから乗り換えを行う企業も増えており、ハンディターミナルの主流となりつつある。

 

  • キーボード搭載タイプ

物理的なキーボードが搭載された従来タイプのハンディターミナル。冷凍倉庫などの現場では、キーボード搭載タイプが使われているところも多い。

 

通信方法

ハンディターミナルの通信方法には、「無線タイプ」と「メモリタイプ(バッチタイプ)」の2種類があります。

 

  • 無線タイプ

読み込んだデータを、無線を通じてその都度、送信するタイプのハンディターミナル。作業進捗や在庫数をリアルタイムで把握できるのがメリット。

 

  • メモリタイプ(バッチタイプ)

読み込んだデータをハンディターミナル内に蓄積し、後でまとめてデータの受け渡しを行うタイプのハンディターミナル。データに若干のタイムラグが生じるが、Wi-Fi(無線LAN)がない場所でも利用できるのがメリット。

 

ハンディターミナル活用のメリット

ハンディターミナルを活用することでどのようなメリットが見込めるのでしょうか。詳しく確認していきましょう。

 

リアルタイムでのデータ管理

紙伝票やエクセルを用いた在庫管理には、入出庫の状況や現状の在庫数などをリアルタイムで把握できない課題がありました。

 

無線タイプのハンディターミナルを活用すれば、読み取ったデータの即時共有が可能となります。在庫数や入出庫状況をリアルタイムで把握できるようになるため、商品の欠品や過剰在庫の防止などにも役立ちます。

 

業務効率化の実現

ハンディターミナルを利用すれば、コードを読み取るだけで、商品データの取得、登録、照合などの業務が完了します。これまで手作業で行っていた作業の手間や時間を削減でき、ヒューマンエラーの防止にも繋がるため、大幅な業務の効率化が見込めます。

 

また、業務の品質やスピードが従業員の経験や能力に左右されにくくなるため、業務の標準化の実現や、属人化の解消も期待できます。

 

ヒューマンエラーの削減

在庫管理や入出庫管理等を、手作業で行っている場合、確認ミスや見間違い、記入や入力のミス、漏れなど、さまざまなヒューマンエラーが起こる可能性が高くなります。また、棚卸作業での不正等、業務上の不正が起こるリスクもゼロではありません。

 

ハンディターミナルは、読み取った情報を自動で記録するため、ミスや漏れなどのヒューマンエラーを大幅に削減できます。また、読み取ったデータを送信し、そのデータを元に在庫管理を行うため、業務上の不正が起こりにくいメリットもあります。

 

まとめ

ハンディターミナルは、これまで手作業で行っていた業務の問題点を解消し、業務の効率化、簡略化する手段として、幅広い業界業種で導入が進んでいます。

近年では、さまざまな現場や商品の特徴に合わせたモデルや、多様な機能を持つハンディターミナルが数多く誕生しています。

導入を検討する際は、自社の業務や扱う製品の特徴、必要な機能やコスト、既存システムとの互換性などを考慮して製品選択を行いましょう。