棚卸業務は、企業にとって重要度の高い業務である反面、時間やコスト、従業員にかかる負担の大きい業務でもあります。棚卸業務の担当者の中には、棚卸をスムーズに進めて従業員の負担を減らしたい、ミスをなくして精度の高い棚卸を行いたいと考える方も多いでしょう。
そこで、今回は、棚卸業務の効率化を実現するのに欠かせない「棚卸システム」について解説します。導入のメリットやシステム選定のポイントなど、詳しく解説するので、参考にしてみてください。
棚卸の効率化が求められる理由
棚卸は、適切な在庫管理、利益の正確な把握、販売機会損失の回避などの観点から、企業にとって非常に重要な業務のひとつといえます。
しかし、一方で、従来のアナログの手法では、以下のように多くの課題や問題が発生しやすい業務でもあります。
- 数え間違いや入力ミス等のヒューマンエラーが起こりやすい
- 従業員の労力負担が大きい
- 在庫差異が発生しやすい
- 多くの時間・コストがかかる
以上のような課題を解決し、生産性の維持、経営判断の精度向上を目指すためにも、多くの企業で棚卸の効率化が強く求められています。
棚卸を効率化するシステム
棚卸を効率化する最も効果的な手法のひとつとして挙げられるのが「棚卸システム」の導入です。棚卸システムは、在庫管理システムの一部の機能で、主に「ハンディターミナル」と「ソフトウェア」の2つのツールで構成されています。
ここからは、棚卸システムの活用に欠かせないツールや、システムの活用手順について解説します。
棚卸システムの活用に必要なツール
システムを活用し、棚卸の効率化を目指すためには、商品に貼り付ける「バーコード」や「RFIDタグ」と、それを読み取る「ハンディターミナル」の導入が必要です。
それぞれのツールの概要や特徴について詳しく確認していきましょう。
バーコード
バーコードは、太さの異なる2種類の線とスペースを組み合わせ、数字や文字を表現した符号を指します。バーコードには主に、国名や業種、商品名や価格などの情報が含まれており、商品管理や流通の現場で幅広く活用されています。
スーパーやコンビニエンスストアなどで、私たちが普段よく目にする「JANコード」をはじめ、世界には100を超えるバーコード規格が存在します。日本でよく利用される代表的な規格としては、物流商品に使用される「ITFコード」、工業用として使用される「CODE39」、宅配便の伝票等に利用される「NW-7」などが挙げられます。
RFID
RFIDは、「Radio Frequency Identification」の頭文字をとった言葉で、電波を利用し、タグの情報を非接触で読み書きする自動認識技術を指します。私たちの身近なところでは、交通系ICカードや車のスマートキー、ユニクロの商品下げ札などにもRFIDの技術が活用されています。
RFIDの特徴やメリットは以下の通りです。
- 電波の届く範囲であれば、離れた場所からでも複数タグの一括読み取りが可能
- 非接触で読み取りができるため、箱等に入ったままでも情報が得られる
- 汚れに強い
近年では、RFIDタグの低価格化も進んでおり、幅広い業界業種でRFIDを導入する企業が増えています。
ハンディターミナル
ハンディターミナルは、バーコードリーダーが搭載された携帯性に優れた情報端末です。主に、バーコードやRFIDタグの読み取り、データ入力や処理、読み取ったデータの送受信機能などを備えており、製造業や小売業をはじめ、多くの現場で活用されています。
近年では、以下のようにさまざまなモデルや形状、機能をもったハンディターミナルが誕生しています。自社の作業環境や扱う商品の特性に合わせて、最適なハンディターミナルの選択、活用ができれば、業務効率の飛躍的な向上が期待できます。
- モデル
標準モデルの他、軽量薄型のモデル、堅牢性の高いモデル、薬剤消毒が可能なメディカルモデルがあります。防爆対応や冷凍対応など、特殊な環境下での利用に特化したモデルも誕生しています。
- 形状
近年主流となっているスマートホンタイプの他、キーボード搭載型のモデルや、タブレットタイプのモデルがあります。
- 機能
上述した機能に加え、文字の読み取りができる「OCR機能」や、ハンディターミナル内に読み取ったデータの蓄積を行う「バッチ機能」、読み取ったデータをリアルタイムで送受信する「無線通信機能」を搭載したモデルもあります。
棚卸システムの活用手順
棚卸システムは以下のような手順で活用されます。
- 在庫にバーコードやRFIDタグを貼り付ける
- ハンディターミナルで読み取る
- 読み取ったデータがシステムに転送される
在庫をバーコードやRFIDタグで管理することで、在庫の動きがリアルタイムで把握できるようになります。
また、ハンディターミナルで読み取ったデータをそのまま電子データとして活用できるため、実在庫数と帳簿上の在庫数に差異がないかの確認も容易にできるようになります。
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棚卸システム導入のメリット
棚卸にシステムを導入するメリットはどのような点にあるのでしょうか。詳しく確認していきましょう。
棚卸工数の削減
棚卸にシステムを導入すれば、従来の手作業による棚卸に比べ、作業工数の大幅な削減が期待できます。
たとえば、無線タイプのハンディターミナルを活用すれば、在庫の入出庫状況がリアルタイムで把握できるようになります。在庫をカウントし、手書きで記録したり、データを入力をしたりする一連の作業が不要になるため、従業員の作業負担の軽減、作業スピードの向上にも繋がります。
ヒューマンエラーの抑制
手作業による棚卸作業には、数え間違いや入力ミス等のヒューマンエラーが起こりやすい課題がありました。ヒューマンエラーが発生すると、実在庫と帳簿上の在庫に差異が生じる可能性が高くなります。棚卸作業時に、在庫差異が判明すると、原因究明や在庫の数え直し、データの修正など、多大な時間とコストが必要になります。
棚卸システムを導入すれば、データ収集が自動化できるため、人によるミスやエラーを大幅に抑制できます。正確な在庫数の把握、精度の高い棚卸作業の実現が可能となるため、業務効率の大幅な改善が期待できます。
棚卸システムの選び方
棚卸の効率化を目指すためには、自社に最適なシステムの選定を行うことが不可欠です。ここからは、棚卸システムを選ぶ際に、重視したいポイントについて解説します。
ハードウェアの機能性・信頼性
棚卸に使用するハンディターミナルは、利用する現場の環境に適したモデルを選択しましょう。特に製造業や物流業など、過酷な状況下で利用する場合は、落下耐性や防水機能など、高い堅牢性を備えたモデルの選択が必要になります。
また、自社で扱う製品の特徴や、現場従業員の意見を取り入れ、操作性や、バッテリー容量、メンテナンス、サポートの有無などを考慮して選択することも重要です。信頼性の高いハンディターミナルの選択ができれば、長期的かつ安定した運用が可能になります。
ソフトウェアの機能性・利便性
棚卸システムは、以下の点に考慮して、選択することが重要です。
- 棚卸の効率化や生産性向上に寄与する機能が備えられているか
- 自社の課題解決に繋がる機能が備えられているか
- ユーザーインターフェースがわかりやすいか
- 操作性が良く、現場の従業員が使いやすいか
企業によっては、棚卸の頻度が少ない(年2回、四半期に1回等)ケースもあるため、使用間隔が空いても迷うことなく作業に使えるか、誰でも簡単に使用できるかという点もソフトウェア選択のポイントといえます。
システムのカスタマイズ性
自社の規模や業務形態、扱う商品に合わせてシステムのカスタマイズが可能かどうかも考慮しましょう。自社の棚卸のルールや規則性に沿った柔軟なカスタマイズができれば、よりスムーズかつ効率的な棚卸作業が実施できます。
また、カスタマイズ性が高いシステムであれば、将来、業務拡大や業務内容の変更を行う際にも、スムーズに対応しやすくなります。
サポート・メンテナンスの体制
システム導入後のサポート体制やメンテナンス体制についても、選定の際に確認しておきたいポイントです。
システム導入直後や、運用中に、想定外のトラブルが発生する可能性はゼロではありません。特に、社内にシステムやITに精通した人材が不足している場合、問題の解決が遅れ、業務へ影響が出てしまうケースも考えられます。
そのため、サポートの有無や対応範囲、問い合わせ方法、定期的なメンテナンスの有無や頻度について事前に考慮し、システムの選択を行いましょう。
サポートが充実した信頼性の高いシステムを選べば、導入の効果が得やすくなる、従業員の安心感に繋がるなどのメリットも見込めます。
まとめ
棚卸システムを導入すれば、従来のアナログな棚卸手法が抱えていた課題を解決し、棚卸業務の効率化を実現できる可能性が高まります。
近年では、さまざまな機能や特徴をもった棚卸システムが数多く誕生しています。導入するシステムを選定する際は、知名度やコストだけで判断するのではなく、必要な機能や、サポートの有無、現場の従業員の意見等を考慮して選択することが重要です。
自社にどのシステムが適しているか判断できない場合は、同業他社の事例を参考にしたり、専門家へ相談したりするのもおすすめです。
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