政府の法改正により、さまざまな悩みを抱える物流会社が増えてきました。
- 「トラック運転業務の上限時間が制限されたら、経営が難しくなる…」
- 「宅配便の量は増加しているのに、ドライバーが不足している…」
- 「SDGsの意識が高まり、二酸化炭素排出量に気を配らなければいけなくなってきた…」
このような悩みが、物流DXで解決できるかもしれないと注目を浴びています。今回は、物流会社が抱える課題を解決できる物流DXについて解説します。
[はじめに]物流DXと深い関係がある4つの問題
最初に、物流会社が向き合わなければいけない4つの問題をおさらいしておきましょう。
1.2024年問題
1つ目が2024年問題です。2024年問題とは、働き方改革関連法により、ドライバーの時間外労働時間が年760時間に制限される問題を指します。
宅配ドライバーの労働時間が制限されると、1日に運べる荷物の量が減るため、売上や利益が減少してしまいます。売上や利益を確保し、従業員の収入が落ちることを避けるためには、宅配サービスの料金を上げなければいけません。
経済産業省や公益社団法人全日本トラック協会などが経営に大きな影響を与えると注意喚起を呼び掛けており、話題を集めています。
2.労働者不足の問題
2つ目が労働者不足の問題です。宅配ドライバーの労働者数は年々減少しています。
厚生労働省『一般職業紹介状況』によると、運転ドライバーの有効求人倍率は2.46倍と高い数字を記録しています。つまり、ドライバーの求人数に対して求職者が足りていない状況です。
労働時間に対して賃金が低かったり、配送料が増加して利益が少なくなったりすることが労働者不足の引き金となっています。
この問題を解決できず、ドライバー数を増やせなければ、2024年問題は荷物量を減らす選択しかできなくなってしまいます。
3.燃料利用による環境破壊の問題
3つ目が、二酸化炭素の排出などによる環境破壊の問題です。また、限りある燃料の高騰も大きな問題となっています。
2015年9月に国連サミットで採択された国際目標「SDGs」により、人々の環境配慮に対する意識が上がりました。投資先の企業の選定基準にESG(環境・社会・ガバナンス)が反映されるなど、企業経営を有利に進めていくためには、SDGsの取り組みが欠かせません。そのため、物流会社と深い関係にあるSDGsのゴールを把握した上で、SDGsに取り組みましょう。
物流業界におけるSDGsの取り組みについて詳しく知りたい方は、下記の記事をお読みください。
関連記事:『物流業界のSDGs取り組み事例3選!取り組み方まで徹底解説』
2024年問題を解決するための物流DX
2024年問題を解決するためには、トラック稼働率を向上させたり、新たな配送方法を実現したりする必要があります。これらを実現する物流DXには、以下のようなものがあります。
IoTで車両状態をモニタリングする
IoTを活用すれば、ドライバーの運転操作状況を遠隔でモニタリングしたり、蓄積したデータを分析して車両の故障の予兆を検知したりできるようになります。車両の故障の予兆を検知できれば、不測の事態を避けて配送業務に集中できるため、稼働率が上げられます。
宅配サービスアプリを提供する
お客様に宅配サービスアプリを提供すれば、アプリ上で「対面受取」「玄関ドア前の置配」「宅配ボックス」などの受け取り方法を選べるようになります。
お客様の予定は直前に変わるケースが多く、「荷物の受取を依頼していたけれど、急遽こどものお迎えが発生した」などで再配達を希望されてしまうと、業務負荷がかかります。このような問題を解決するために、宅配サービスアプリを提供して、直前でも荷物の受取方法が変更できるような仕組みを作っておくのです。
ヤマト運輸は宅配サービスアプリ「EASY」を提供しており、再配達率を抑制し、ドライバーの業務負荷を削減しています。
AI配車計画で最短ルートを導き出す
AIを活用して配車計画を作成すれば、アルゴリズムにより何十万通りの計画を瞬時にシミュレーションでき、配送時間が最も短い配送ルートを提案してもらえます。
土地勘のない経験の浅いドライバーだと配車計画に失敗してしまい、配送時間が遅くなる可能性があります。このような問題も、AI配車計画で解決できる便利なデジタル技術として注目を浴び始めてきました。
完全無人トラックサービスを提供する
完全無人トラックを実現できれば、ドライバー業務を自動化できます。国内ではヤマト運輸や三井物産が実証実験に取り組んでいる状況です。
先進国の米国では、Walmart社が完全無人の自動運転サービスを実現したり、Amazon社が手紙などの郵送を手伝う自動配送ロボット「Scout」を開発したりして、サービス化されています。
国内の完全無人トラックサービスが提供開始されれば、ドライバー不足の問題を解決できます。
ドローン配送サービスを提供する
完全無人トラックサービスと一緒に注目を浴びているのが、ドローン配送サービスです。国内では佐川急便やイオンリテールが実証実験に取り組んでいる状況です。
先進国の米国では、すでにAmazon社やGoogle社がドローン配送サービスを提供しています。このサービスが提供開始できれば、ドライバー不足の問題を解決できます。
共同輸送マッチングを実現する
近年、プラットフォームを活用した共同郵送マッチングが注目を集めています。共同郵送マッチングとは、AI技術を活用して荷主同士をマッチングさせて1台のトラックに荷物を積む仕組みです。
このような共同輸送により、実車率や積載率が上げられ、効率のよい配送で二酸化炭素排出量の削減などの効果が見込めるとされています。
労働者不足の問題を解決するための物流DX
物流業界の労働不足の問題は「業務効率化」や「業務自動化」で生産性を上げることで解決できます。ここでは、労働者不足の問題を解決するための物流DXをご紹介します。
手書き帳票類をAI-OCRでデータ化する
物流会社は手書き帳票類を使用している現状です。バックオフィスの人は1人あたり平均で毎日40枚の帳票を処理しており、2時間ほど伝票作業に時間を費やしていることになります。
この現状を改善するために、AI-OCRを活用する物流会社が増えています。AI-OCRを活用すれば、手書き帳票類のデータ化が瞬時に終わらせられます。
自動ロボットを導入する
物流会社の流れは「受注」「梱包」「仕訳」「流通」「加工」「ピッキング」「商品管理」「配送」となりますが、各工程をロボットに手伝ってもらえば、労働者の業務負荷を軽減できます。自動ロボットには、以下のようなものがあります。
- 荷下ろし・積み込みを実現するロボット「ULTRA Blue」
- フォークリフト作業を行うロボット「Rinova AGF」
- 倉庫内の搬送を手伝うロボット「AGV」
このようなロボットを活用して、完全自動倉庫に取り組んでいるのがユニクロやGUの店舗を運営している株式会社ファーストリテイリングです。同社の完全自動倉庫には、ロボットの活用アイデアが豊富に詰まっているため、参考にしてみることをおすすめします。
自動ロボットについて詳しく知りたい方は、下記の記事を読んでみてください。
関連記事:『【2021年最新版】主要なAGVメーカーをご紹介』
関連記事:『ピッキングロボットで作業時間を1/4に!物流業界の救世主を徹底解説!』
RFIDで倉庫業務を効率化する
RFID(無線通信自動認識システム)を活用すると、倉庫の入出荷検品が素早く行えるようになります。従来の入出荷検品は荷物のタグ1枚1枚を読み込まなければいけませんでした。しかし、RFIDを活用すれば、非接触で複数枚のタグを一括で読み込めます。さらに、ゲートに荷物を通過させれば、入出荷の検品作業を自動化するものまで登場しています。
RFIDのRFタグは1枚100円と効果なものだったため導入する企業が少なかったですが、タグの価格が5円程度になったことで、導入する企業が増加しています。
RFIDについて詳しく知りたい方は、下記の記事を読んでみてください。
関連記事:『【更新】RFIDとは?仕組みや特徴、最新の活用事例をわかりやすく解説!』
環境破壊の問題を解決するための物流DX
環境破壊の問題を解決するためには、「最適な配送計画」「資源のムダな利用を控える」などの取り組みが欠かせません。
AIを活用して、宅配便の集配を行う営業所の業務量を予測できるようになりました。これにより、宅配分の量に応じて最適なトラック台数を割り当てできて、緊急傭車(ようしゃ)を最小化できます。さらに、輸配送の最適化を行えば、稼働トラック台数を減らせて二酸化炭素の排出量を抑えられます。
まとめ
物流業界は「2024年問題」「労働者不足の問題」「環境破壊の問題」など3つの問題を抱えています。今回は、3つの問題を解決するための物流DXをご紹介しました。
物流DXの成功の秘訣は、自社の現状を把握した上で、支援実績を豊富に持つベンダーに相談をしてみることです。気になる物流DXを見つけたら、その分野を得意としているベンダーに相談してみてください。
当社はRFIDを活用した業務効率化の支援を得意としています倉庫業務の入出荷業務や棚卸業務など効率化したいとお考えの方は、お気軽にご相談ください。