近年、ドローンは急速に発展し、私たちの生活やビジネスに大きな影響を与えています。空撮や物流、農業や災害対策など、ドローンが活躍するシーンは多岐に渡り、その可能性もますます広がっています。
しかし、そもそもドローンとはどのようなものか、ラジコンとどう違うのかと疑問に感じている方も多いかもしれません。そこで今回は、ドローンの定義や種類、用途やラジコンとの違いなどについて解説します。ドローンが注目されている理由や、ドローンの未来についても触れていますので、参考にしてみてください。
ドローンとは
ドローンは、無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)の一種であり、遠隔操作や自律飛行が可能な機体を指します。もともとは、軍事用途で開発された技術ですが、近年では民間分野でも幅広く活用が進んでいます。
ドローンの名前の由来
ドローン(Drone)は英語で「雄蜂」を意味する言葉です。これは、ドローン飛行時の「ブーン」というプロペラ音が蜂の羽音に似ていることが由来とされています。
また、1930年代にイギリスで開発された無人標的機「Queen Bee(クイーンビー)」にちなんで、アメリカ軍が「Drone」の名称を採用したという説もあります。
ドローンの定義
ドローンの定義は、用途や技術の進化に伴い変化していますが、一般的には「人が乗らずに遠隔操作や自律飛行が可能な無人航空機」とされています。
日本では航空法上の「無人航空機」に分類され、重量が100g以上のものが規制対象となります。なお、この規制対象には、産業用の大型機だけでなく、小型(100g以上)のホビードローンも含まれます。
ラジコンとの違い
ドローンと混同されやすいものに「ラジコン」が挙げられます。ドローンとラジコンの大きな違いは、自律飛行機能の有無です。
ラジコンは手動操作によって動かす機体であり、飛行中は基本的に操縦者によるコントロールが必要となります。
一方、ドローンは、操縦者による直接コントロールだけでなく、GPS機能やナビゲーション機能を活用した自律飛行も可能です。他にも、カメラや各種センサーを搭載しているため、多様な用途に対応できる点も、ドローンの大きな特徴といえます。
ドローンの機体の形状の種類
ドローンは、機体の形状・構造から、大きく「シングルローター」「マルチコプター」「VTOL型(垂直離陸型)」の大きく3種類に分けられます。それぞれの種類の特徴について解説します。
シングルローター
シングルローターは、1つの大きなメインローター(回転翼)と、機体のバランスを取るためのテールローター(尾部の小さなプロペラ)を備えたドローンです。
ヘリコプターと同じ構造を持ち、高い機動性と安定性を有しています。エネルギー効率がよく、長時間飛行が可能である点や、積載能力が高い点から、主に測量、農薬散布、救助活動、軍事用途などに活用されています。
高機能な反面、構造が複雑でメンテナンスが難しい点や、安定した飛行を行うには高い操縦技術が求められる点が、シングルローターのデメリットとして挙げられます。
マルチコプター
マルチコプターは、複数のローターを機体に備えたドローンです。マルチローターとも呼ばれており、最も一般的なドローンのタイプとして知られています。初心者からプロまで幅広く操作でき、空撮、測量、農業、点検、物流など、多目的に活用できる点が特徴です。
マルチコプターは、ローターの数によって「トライコプター」「クアッドコプター」「ヘキサコプター」「オクトコプター」の4種類に分類できます。それぞれのローター数、特徴、主な用途は以下の通りです。
ローター数 |
特徴 |
主な用途 |
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トライ コプター |
3 |
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※産業用・商業用には不向き |
クアッド コプター |
4 |
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ヘキサ コプター |
6 |
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オクト コプター |
8 |
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一般的に、ローターの数が増えるほど、安定性、耐風性、冗長性、積載能力が高くなりなります。しかし、機体が大きくなるぶん、持ち運びに不便であったり、機体構造が複雑になったりするため、注意が必要です。
VTOL型(垂直離陸型)
VTOL型のVTOLは「Vertical Takeoff and Landing」の略称で、日本語では垂直離陸を意味します。その名の通り、垂直に離着陸できる固定翼機型のドローンを指し、従来の飛行機のような固定翼機の特徴とマルチコプターのようなホバリング能力を併せ持っています。
VTOL型は、固定翼機の揚力を利用するため、エネルギー効率が高く、数十km~数百kmの長距離飛行も可能で、かつ、高高度や強風時でも高い安定性を発揮します。カメラやセンサー、通信機器など大型機材の搭載も可能なため、物流や軍事用ドローンとしても活用されています。
ただし、VTOL型のドローンは、通常の固定翼機やマルチコプターより構造が複雑で、機体価格も高額なものが多くなります。また、適切なバッテリー管理や高い操作技術を要するため、初心者やホビー目的での利用は不向きといえます。
ドローンが注目される理由
ドローンが注目される理由は、その多機能性と利便性にあります。特に、空からの視点を提供することで、危険な作業や従来の方法では難しかった作業を容易にする点が高く評価されています。
また、農業や建設、物流など、人手不足が深刻化する業界では、省人化、自動化の一手としてドローンが活用されるケースも増えています。さらに、低コストで効率よくデータ収集ができる点も、ドローンが注目される要因のひとつと考えられています。
ドローンの用途
近年、ドローンの小型化、低価格化、飛行精度の向上が進んだことで、以下のように軍事以外の目的でドローンが活用されるケースが増えています。
- プロモーション・広告
- 物流
- 測量・調査
- 農業
- 警備
- 災害復旧・調査
- 娯楽
それぞれどのように活用されているか、詳しく確認していきましょう。
関連記事:ドローンの活用事例6選!活用分野や課題を詳しく解説
プロモーション・広告
ドローンには、従来のカメラやヘリコプター等では難しかったダイナミックな映像を、低コストで撮影できる特徴があります。そのため、映画やCM撮影のほか、観光地のPR動画、不動産の紹介映像、スポーツイベントの中継など、プロモーションや広告分野で幅広く活用されています。
また、近年では、ドローンショーと呼ばれるライト付きドローンを使った空中演出が、企業のブランドPRやテーマパークのショー等に活用されています。
ドローンが提供する映像は、視聴者の関心を惹きやすく、SNSとの相性もよいため、今後も広告・マーケティング分野での活用が拡大すると予想されています。
物流
ドローンを活用したドローン配送も急速に発展しています。近年では、Amazon、Google、UPSなどの企業がドローン配送を試験運用し、一部地域では実用化も始まっています。
ドローン配送のメリットには、従来の陸路・空路による配送と比べ、コスト削減が可能である点、都市部の渋滞を回避できる点が挙げられます。また、僻地や災害時の物資輸送にも適しており、医薬品や食料の迅速な配達に貢献することが期待されています。
バッテリーの持続時間、飛行ルールの整備、安全性の確保など、課題も多く残されていますが、ラストワンマイル配送の自動化や、都市部での短距離輸送の実現に向けて、各国で規制緩和や技術開発が進められています。
関連記事:ドローン配送とは?物流でのドローン活用のメリットや課題を徹底解説!
測量・調査
従来の手法では時間やコストがかかる測量作業が、ドローンの活用により、短時間かつ高精度で実施可能になりました。
たとえば、建設現場では、ドローンで現場を定期的に撮影し、工事の進捗管理や土量計測に活用されています。また、火山や氷河など、人が立ち入りにくい場所の調査にも適しており、学術研究や環境保護の分野でもドローンが活躍しています。
農業
農業分野では、ドローンを活用したスマート農業が進んでいます。スマート農業とは、先端技術を活用して行う農業を指し、日本農業が抱える高齢化や人手不足の課題を解決する手段として注目されています。
具体的には、ドローンが農薬散布や種まき、病害虫の監視などに活用されており、作業の効率化や労力削減に寄与しています。
また、ドローンにマルチスペクトルカメラを搭載したり、AIと連携させたりすることで、作物の健康状態や土壌の水分量の解析、収穫時期の予測や異常検知などに役立てる取り組みも進められています。
警備
ドローンを活用すれば、監視やパトロールの自動化が可能になります。
たとえば、工場や発電所、大規模なイベント会場など、人による警備に限界がある場所でも、ドローンを活用すれば広範囲の監視を効率的に行うことが可能になります。また、赤外線カメラやAIによる顔認識技術を組み合わせれば、夜間でも不審者の検知や侵入者の追跡が可能になります。
警察や軍事分野では、ドローンが犯罪捜査や国境警備にも活用されており、リアルタイムでの情報収集や救助活動に貢献しています。今後は、自動巡回機能を持つドローンが増え、無人の防犯システムが一般化する可能性も考えられています。
災害復旧・調査
人が近づけない危険な場所でも、調査や情報収集が可能なドローンは、災害現場や救助活動においても重要な役割を果たしています。
たとえば、瓦礫の下に取り残された人を赤外線カメラで発見したり、災害の被害状況を航空写真としてリアルタイムで提供したりすることが可能になります。
日本では、消防や自治体で災害対応ドローンの導入が進んでいます。山岳救助や水難救助の現場では、救命用具をドローンで運搬する試みが行われており、災害・事故発生時の迅速かつ的確な初動対応の実現が期待されています。
娯楽
ドローンは、娯楽分野でも大きな影響を与えています。特に、ドローンを高速で飛行させ、障害物をクリアしていくドローンレースは、世界中にファンを持つ競技として知られています。
また、子ども向けのホビードローンや、VRゴーグルと連携した没入型のドローン体験なども登場し、新たな娯楽のひとつとして確立されつつあります。
ドローンの未来
2024年11月に開催された「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」において、「空の産業革命に向けたロードマップ2024」が策定されました。このロードマップは、日本政府がドローンの社会実装を推進するための指針を示したもので、「ドローンの活用拡大」「安全対策の強化」「技術・法整備の促進」を主な目的としています。
ロードマップでは、ドローンの飛行レベルを以下のように分類し、段階的に運用を拡大しています。
- レベル1:目視内での操縦飛行
- レベル2:目視内での自動飛行
- レベル3:無人地帯における目視外飛行
- レベル4:有人地帯における目視外飛行
2022年にはレベル4が解禁され、さまざまな分野でのドローン利用が見込まれています。特に、物流、インフラ点検、災害対応、農業、警備が重点分野とされており、ドローンの社会実装のために取り組むべき項目が列挙されています。
また、同ロードマップでは、今後の課題として、AI・バッテリー・通信技術の向上、安全性の確保、ルール整備、社会受容性の向上を挙げています。これらの課題を解消することで、今後ドローンは都市や産業の発展に不可欠な存在になると考えられています。
関連記事:空の産業革命に向けたロードマップ2024
まとめ
ドローンは、日本のみならず、世界中で注目を集めている革新的な技術です。ラジコンとは違い、自律飛行や高度な機能を備えた機体が多く、娯楽や広告をはじめ、ビジネスや農業、災害対策など幅広い分野で活用されています。ドローンの技術や機能は日々進化しており、今後、法整備が進めば、私たちの生活やビジネスシーンにより浸透していくことは間違いないでしょう。
今度、ドローンの活用を考えている方は、まずは基本的な仕組みや用途を理解し、自社のビジネスに適した機体や運用方法を選択することが重要です。