「DX推進に取り組みたいけれど、コストはどれぐらいかかるのだろうか?」と疑問を抱く方は多く見受けられます。DX推進に取り組む上で予算を間違えてしまうと失敗してしまうため、DXの導入コストがいくらになるかを学んでおきましょう。今回は、DX推進に取り組む上で知っておきたい導入コストの相場について解説します。
DXの導入コストはいくら?
DXの導入コストは、どのようなものを実現したいかで変わります。そのため、3つの段階に分けて予算を組むようにしましょう。
【DXの3つの段階】
- デジタイゼーション
- デジタライゼーション
- デジタルトランスフォーメーション
社内で取り組みたいDX推進は、どの段階であるかを意識すると計画が立てやすくなります。ここでは、各段階のDX導入コストがいくらになるかを解説していきます。
デジタイゼーション
デジタイゼーション(Digitization)とは、業務の一部をデジタルに切り替えることをいいます。
例えば、勤怠管理をWeb上で行ったり紙の資料を電子化したりなどがデジタライゼーションに該当します。具体的にどのような業務をデジタル化するかでも変わりますが、導入コストは50万円~200万円程度を考えておくとよいでしょう。
■デジタイゼーションの例
- 顧客管理システムの導入
- 勤怠管理システムの導入
- 書類の電子保存
デジタライゼーション
デジタライゼーション(Digitalization)とは、デジタルを用いて業務フローを変えることをいいます。
例えば、RPAを活用して事務作業を効率化したり、Web会議を活用してオンライン商談を実現したりすることが該当します。どのような業務を改革するかで変わりますが、導入コストは100万円~3,000万円程度を考えておきましょう。
■デジタライゼーションの例
- RPAによる事務作業の自動化
- IoT導入によるスマート工場の実現
- ロボット導入による倉庫業務の簡略化
デジタルトランスフォーメーション
デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)とは、既存のサービスやビジネスモデルを根底から覆すような業務改革をいいます。
例えば、電子マネー決済などフィンテックが代表例です。どのような新製品・サービスを生み出すかによって変わりますが、導入コストは1,000万円~1億円を考えておくとよいでしょう。
■デジタルトランスフォーメーションの例
- 電子マネー決済などフィンテック
- 自動運転者
- バーチャルメイクサービス
DXの導入コストの内訳
DXの導入コストの相場について解説しましたが、どのような内訳になっているのでしょうか?予算内に抑えるためにも、DXの導入コストの内訳を覚えておきましょう。
コンサルティング費用
社内でどのようにDX推進していけばよいかわからない場合は、DX分野の知見を持つコンサルティング会社に相談しましょう。DXコンサルティング会社に相談をすれば、効率的にDX推進していくための支援をしてもらえます。
[コンサルティング会社の支援内容]
- 戦略立案
- アイデア創出
- 組織改革
- システム選定
- 運用体制整備
顧問契約料の平均相場は数十万円から数百万円で、各社で大きく異なります。専門家に支援してもらいたいと思っている方は、事前に見積もりを取り、コンサルティング費用を予算に含めておきましょう。
システム開発費用
DX推進に取り組むとき、システム開発を依頼する必要があります。どのようなシステムを導入するかで費用相場は変動しますが、「パッケージ」と「スクラッチ」で費用相場は大きく異なります。
基本的にパッケージ開発の方が安く抑えられますが、それぞれのメリット・デメリットを踏まえた上で、どちらが自社に合っているかを判断するようにしましょう。
■パッケージ開発とスクラッチ開発の比較表
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パッケージ開発 |
スクラッチ開発 |
メリット |
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デメリット |
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インフラストラクチャ費用
デジタルを使うためには、インフラストラクチャ費用がかかります。インフラストラクチャとは、デジタルを使うために必要な以下のようなものを指します。
【インフラストラクチャ費用】
- パソコン
- サーバー
- ストレージ
- 各種ネットワーク機器
- ITラック
- 電源装置
- UPS・PDU
- 専用の冷却装置・設備
- カメラやセキュリティ設備
- 遠隔監視システム
システム運用費用
システム運用費用は「維持費」と「保守費」に分類できます。
- 維持費:システム障害が発生していないか運用状況を確認する
- 保守費:システムのアップデートをする
システム運用費用は、システムの規模や担当者の人数、期間により変動します。パッケージ開発を選んだら、ライセンス料にシステム運用費が含まれているケースが多く見受けられます。
従業員の教育費用
システムを導入しても従業員が操作できなければ意味がありません。そのため、システムの操作ができるように社内研修を実施したり、マニュアルを整備したりする必要があります。
従業員の教育費用を極力安く抑えたい方は、システムの機能は必要最低限に留めて、シンプルなUI設計で操作しやすいものを選ぶようにしましょう。
DXの導入コストに対する予算
DX推進にどれぐらい投資をすべきだろうかと悩んだら、「年間売上高×1%」で計算できます。
例えば、年間売上高1億円で1%の投資を行う場合、「1億円×1%×100万円」となります。
将来を見据えて先行投資する場合は「年間売上高×1%×ITツールの利用期間」で計算することも可能です。例えば、年間売上高1億円で1%の投資を行い、ITツールを10年間利用する場合は「1億円×1%×10年=1,000万円」となります。
DXの導入コストに悩んだら、この計算式を用いてコストを計算してみてください。
DXの導入に活用できる補助金・助成金
DX推進にはコストがかかると感じた方もいるかもしれませんが、要件に該当していれば補助金・助成金を活用できます。
[補助金・助成金の活用方法]
- 実施計画書の作成
- 実施計画書の提出
- 実施計画書に沿って実施
- 補助金・助成金の支給申請
- 労働局による調査
- 補助金・助成金の支給
ここでは、DXで活用できる補助金・助成金をご紹介します。
IT導入補助金
IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者がITツール(会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフトなど)を導入する際に利用できる補助金です。
例えば、インボイス対応するために会計ソフトを導入する場合は、会計ソフト代金の75%分を補助してもらえます。お得にITツールを導入したいと考えている方は、IT導入補助金をチェックしてみましょう。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、業態転換や業種転換、事業再編など思い切った事業再構築に挑戦する中小企業を支援する補助金です。WithコロナやPostコロナ時代の経済環境の変化に対応するために、新分野展開・業態展開・業種展開する企業を支援しています。
補助額は100万円~5億円と高額なため、コロナ禍の影響で売上が減少して、思い切ってビジネスモデルを切り替えたいという方は事業再構築補助金をチェックしてみましょう。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金とは、中小企業・小規模事業者などが取り組むサービス開発、試作品開発を行うための設備投資を支援する補助金です。
例えば、ベッドを販売していて売上減少に悩む寝具店が販売強化するため、睡眠時の脈・心拍数を計測できるセンサーを導入したいなどの際に活用できます。デジタル技術を活用してサービスの品質を上げたいという方は、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金をチェックしてみましょう。
成長型中企業等研究開発支援事業
成長型中企業等研究開発支援事業とは、中小企業・小規模事業者が大学などの研究機関と連携して行う製品開発・販路開拓を支援する補助金です。日本のものづくりの競争力強化と新事業の創出を目指す企業を支援しています。
研究機関とアドバイザーと一緒に製品開発に取り組もうと考えている方は、成長型中企業等研究開発支援事業をチェックしてみてください。
補足:複数の補助金を申し込もう
DXに活用できる補助金・助成金には、さまざまなものがあります。事業者は、複数の補助金に申し込むことが可能です。
1つのITツールを導入する際に補助金Aと補助金Bの両方を利用することはできません。しかし、AツールにA補助金、BツールにB補助金と併用することはできます。補助金・助成金を上手に活用して、DXを推進していきましょう。
まとめ
DXの導入コストは、どのようなものを実現するかで変動します。そのため「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「デジタルトランスフォーメーション」の段階別の予算を把握しておきましょう。
また、DX導入の見積金額には、どのような項目が含まれるかを把握しておき、予算を確保しておけば失敗を防止できるでしょう。DX推進にどれくらい投資すべきか計算しておくと、安心です。
これからDX推進に取り組もうと思っている方は、この記事を見て予算、計画を立ててみてください。当社でも製造業や物流業、小売業などのDX推進を支援しています。DX推進を検討している方は、ぜひお気軽にご相談ください。