画像認識AIモデル構築の流れとおすすめライブラリ9選

各業界の現場で画像認識AIを活用した業務効率化の取り組みが始まっています。この記事をお読みになっている方も画像認識AIの採用を検討していることでしょう。画像認識AIを採用する場合は、モデルの仕組みについて理解しておく必要があります。

モデルの仕組みを理解しないまま導入してしまうと 、理想通りの効果が見込めません。そのため、画像認識AIモデル構築の流れについて理解しておきましょう。この記事では、モデル構築の際によく利用されるライブラリなども含めて、画像認識AIモデル構築の流れを解説していきます。

画像認識について

画像認識とは、画像から特徴を掴み対象物を識別する技術のひとつです。データベースに保存した画像をコンピュータに学習してもらい、学習内容と同じ画像を与えられれば、画像内容を推測することができます。このような画像認識技術は、AIにおけるディープランニング技術の向上により発展してきました。

精度が高まりつつある画像認識AIの技術は、製品の検査工程(良品・不良品の判定)や設備の稼働状況の把握など、多種多様な業種の現場で活用され始めています。業務効率化・生産性向上に貢献する技術として、大きな注目を浴びている技術です。

画像認識AIの基本概要については「【導入事例の解説付き】画像認識AIの仕組みから導入方法までを解説」を参照してください。

機械学習ライブラリの定義について

画像認識AIシステムを構築する際には、機械学習ライブラリが使用されます。機械学習ライブラリとは何なのでしょうか?ここでは、機械学習ライブラリの定義について簡単に説明します。

ライブラリとは

ライブラリ(Library)とは、英語で「図書館」を意味します。IT業界のライブラリの意味を簡単に説明すると、多くのプログラムが保存されている場所のことです。プログラミング上では、同じコードを使用する場面も出てきます。汎用性の高いコードをライブラリに保存しておくことで、開発期間を大幅に短縮できます。

また、プログラムの動作も軽くなるなどのメリットが得られるため、プログラミングを構築する際に利用される場合が多いです。

■ライブラリの種類

静的ライブラリ

プログラムを構築するときに組み込まれるもの

動的ライブラリ

プログラム実行中に読み込まれるもの

共有ライブラリ

プログラムが実行された時にメモリ上に展開されるもの

機械学習ライブラリとは

機械学習ライブラリとは、機械学習を組み込むためのツールのことをいいます。大学や研究者、GoogleやFacebookのIT企業が機械学習ライブラリを提供しています。

機械学習のプログラムをゼロから構築するのは大変なため、機械学習モデルを構築する場合はライブラリが使用されることが多いです。画像認識AIのモデル構築でもライブラリが使用されます。

この記事では、画像認識AIのモデル構築に活用できるライブラリを紹介しています。ぜひ、参考にしてみてください。

機械学習モデル構築の流れ

機械学習ライブラリを使用してディープランニングを設計し、データを読み込ませてモデル構築していきますが、より具体的にモデル構築の流れを把握しておきましょう。ここでは、機械学習モデル構築の流れについて分かりやすく解説します。

データの準備

機械学習を行わせる場合は、データの準備は欠かせません。大量の画像データをコンピュータに読み込ませることで、機械が学習していくからです。

コンピュータに画像データを読み込ませる場合は「量」と「質」にこだわらなければなりません。どちらかが欠けても、理想とする画像認識の精度は期待できないからです。読み込ませるデータによって、画像認識の精度に大きな影響を与えるとして、データの準備を行う必要があります。

データの分析

画像データのどの項目を読み込ませるか目的を定めましょう。目的に一切関係がないデータを収集しても、画像認識で成果は出ません。そのため、画像認識AIの目的を定めた上で該当する項目が写っている画像を用意する必要があります。

データ項目を細かく定めて、該当するデータを収集して読み込ませることで、画像認識の精度は高くなります。

データの前処理

画像データを集めたら、各データを同じような基準で測定できるように設計していきます。データの欠損値の確認やカテゴリ変数としての変換、特徴量の設計、スケーリングの設計を行います。

また、不要な項目を削除したり、複数の項目を集めて別の項目に変換したりするなどの手法もあるので、要望に適した前処理をしていきます。

モデルの構築

データの前処理を終えたら、機械学習のモデルを構築していきます。機械学習のモデルには、様々な種類があり、得意分野と不得意分野があります。

例えば、画像認識を得意とするモデルもあれば、言語解釈が得意なモデルもあるため、目的に沿ったモデルを選択しましょう。モデルを選択したら適用するパラメーターを設定していきます。

モデルの評価

モデル構築後は、評価をしていきます。例えば、画像データを学習用とテスト用に分類して、テスト用の画像を理想通りに読み取るかを評価していきます。モデル評価方法も、ホールドアウト法やクロスバリデーション法などがありますが、専門的な内容になってしまうため本稿では割愛します。

利用シーン別の主な機械学習ライブラリ

機械学習ライブラリを活用してモデル構築をしていきますが、どのようなライブラリがあるのでしょうか?画像認識AIのモデル構築をする際には、画像処理・ディープランニグ・データ拡張などでライブラリが活用されます。それぞれ、どのようなライブラリであるか、代表的なものを簡単にご紹介します。

画像処理全般

主な画像処理の機械学習ライブラリには、以下の3つが挙げられます。

(1)OpenCV

OpenCV(Open Souece Computer Vision Library)とは、画像や動画を処理するための機能がまとめられているライブラリです。コードが短くて読みやすく、可読性が高いため本格的な画像処理が実現できます。また、エラーの原因を特定しやすいことも大きな特徴です。

周辺ライブラリも充実しており、他のライブラリと組み合わせて使えるなどの機能性に優れたライブラリです。

(2)Pillow

Pillowとは、Pythonで画像処理を行うためのライブラリです。画像処理のライブラリとして有名なのがOpenCVですが、単純な画像処理を行うだけであればPillowがシンプルで扱いやすいです。画像の情報取得や回転、補正や保存などが行えます。

(3)scikit-image

scikit-imageは、画像処理に特化したPythonライブラリです。18種類のモジュールが用意されており、Pillowのような単純な画像処理だけではなく、測定や特徴抽出など高度な画像処理が行えます。

ディープラーニング関連

主なディープランニング関連のライブラリには、以下の3つが挙げられます。

(1)torchvision

torchvisionは、PyTorchのパッケージで、画像変換処理やデータセットに必要な下処理用の関数が入っているライブラリです。物体検出などの画像認識の調整の役割を担います。画像のキーポイントとなる項目の検出などが行えます。

(2)TensorFlow

TensorFlowとは、Googleが開発した機械学習ライブラリです。TensorFlowを活用すれば、ニューラルネットワークが構築できます。ニューラルネットワークを構築すれば、コンピュータが人間と同じように論理的思考を持つようになります。iOSだけではなくAndroidなどの環境でも動作するため、分散学習に役立ちます。

(3)Caffe

Caffeとは、画像認識に特化した機械学習ライブラリです。高速動作やGPU対応、洗練されたソースコードが主な特徴です。カリフォルニア大学が中心となって開発しており、Yahooジャパンがスポンサーとなっています。開発コミュニティが活発であるため、不明点を尋ねることができます。

データ拡張

主なデータ拡張の機械学習用ライブラリとして、以下の3つが挙げられます。

Albumentation

画像データに何らかの処理を施してバリエーションを増やすData Augmentationで使用されます。オープンソースのネットワークライブラリであり、とても簡単なコードで書けることが魅力となっています。

imgaug

imagaugは、データ拡張のために使用されるライブラリです。特定のフレームワークに依存しない柔軟性に富んだライブラリのため、使い勝手が良いです。また、楽に実装できるため、データ拡張が容易に行えます。

Augmentor

Augmentorは、フレームワークに依存しないライブラリで、詳細な制御を可能にするライブラリです。演算をパイプラインで繋ぎ合わすことができます。また、様々な変換がサポートされているため、非常に使い勝手の良いライブラリとして認知されています。

まとめ

画像認識AIのモデルは、データの準備・データの分析・データの前処理・モデル構築・モデル評価のような流れで構築されていきます。どの段階が劣っても、理想通りの結果は得られません。また、どの程度の精度を求めるかを決めておくことも重要です。

このように、画像認識AIモデルを構築する際は、ディープランニングを導入すれば良いだけではなく、読み込ませるデータにも配慮する必要があるのです。そのため、ベンダーに相談する前に、どのような流れで画像認識AIのモデルが構築されるかを把握しておきましょう。